982views
2016年10月20日更新

フルミストは効果あり?アメリカやヨーロッパ、日本国内の医療機関の見解や対応

2016年日本の多くの病院がインフルエンザ生ワクチン「フルミスト」の取扱いを止めた理由は、アメリカCDCが無効果・非推奨としたからです。ただこの発表を受けたイギリスやフィンランドでは利用を継続、日本でも独自に考察や検証を行う病院があります。
982views

インフルエンザの点鼻スプレー式生ワクチンのフルミスト、2016年はその効果や利用について様々な発表がありました。カルー編集部ではフルミストの効果と利用について、アメリカやヨーロッパ、日本の立場とその理由をまとめました。

1.どうなるフルミストの効果?撤回のアメリカと推奨のヨーロッパ

フルミストの効果の検証と利用の方針について、アメリカは無効かつ非推奨の立場を取る一方、ヨーロッパ(イギリス、フィンランド)は有効かつ推奨という全く正反対の立場を取っています。

アメリカCDC(米国疾病予防管理センター)

2016年6月アメリカCDCは2016-2017シーズンはフルミストを推奨せず、不活化ワクチン(注射型ワクチン)を推奨すると発表しました。

アメリカCDCは、日本の国立感染症研究所のような組織で、アメリカ国内外問わず様々な病気や医療に関する情報を調査・発信している組織です。発表される文書やガイドラインはグローバルスタンダードに適用される程、高い影響力を持っています。

フルミストは2012年までは、不活化ワクチンとほぼ同程度の効果があると報告されていましたが、フルミストの効果が表れなかったという3年間の調査結果を受け、アメリカはフルミスト非推奨の立場を取りました。

参照:http://www.cdc.gov/media/releases/2016/s0622-laiv-flu.html

イギリスPHE(英イングランド公衆衛生庁)とフィンランドTHL(フィンランド国立健康福祉センター)

イギリスのPHE(英イングランド公衆衛生庁)は、2016-2017シーズンもフルミストの使用を発表しています。

フルミストの接種を推奨しないとしたアメリカCDCの発表と比べて、イギリス国内では2015年~2016年シーズンに使用されたフルミストは一定以上の効果があったことを確認しました。

フィンランドでもイギリスと同様の効果があったとして、2016-2017シーズンも利用することを発表しています。

参照:https://www.gov.uk/government/news/child-flu-vaccine-plays-important-role-in-annual-flu-programme

2.日本ではアメリカの報告を受けてフルミスト取扱いを止める病院、続ける病院も様々

2016年度は、去年まで取り扱っていたフルミストの輸入を止めて、不活化ワクチンのみの予防接種を実施する病院や、引き続きフルミストを取り扱う病院など対応は様々です。

2016年度フルミストを取り扱っている病院はこちらの記事にまとめてあります。

2016年フルミストを取扱う病院(東京・大阪・福岡、他)受診方法・料金

2016年度のフルミスト取扱いを止めた病院の主な中止の理由は、アメリカCDCのフルミストを推奨しない発表を受けたものです。また、日本では未承認薬ワクチンということから、安全性を改めて検討したことを理由に挙げています。

一方、引き続きフルミストを取り扱う病院は、継続の理由として、病院のもつ予防接種の結果から有効性を判断したことや、引き続き希望する患者の意向を汲んだこと、フルミストのメリット(注射しないなど)を重視したことを挙げています。

フルミストの有効性は、医師によっても見解が分かれています。国内の病院には、フルミストの有効性について独自に考察を行っている病院もあります。

3.フルミストが効かなくなった理由は温度管理?和歌山県生馬医院のブログから

フルミストの無効の原因ははっきりと解明されていませんが、温度管理のずさんさなどが原因であるという指摘があります。

和歌山県の生馬医院が、フルミストの効果が無かった理由について3つ原因を考察されています。

第一に、フルミストの温度管理のずさんさです。

生馬医院の小山先生が紹介しているニュースによると、アメリカのワクチンを取り扱うクリニックの約70%が、ワクチン保存温度が不適切であったということです。フルミストの生ワクチンは摂氏1度~5度の範囲での保存が推奨されているにも関わらず、凍結しているものもあったようです。

ワクチン、特に生ワクチンは有効性と安全性を維持するため取扱いにおいて温度管理が徹底されなければなりません。

保存温度を守らないクリニックが多かった結果、失活したワクチンが接種されたことで効果に繋がらなかったのではないか、という指摘がされています。

第二に、フルミストが多種類混合生ワクチン(4価ワクチン)であるためです。

2013-2014シーズンから、アメリカではインフルエンザワクチンを3価ワクチンから4価ワクチンへ変更しました。4価ワクチンは2種類のA型インフルエンザウィルスと2種類のB型インフルエンザウィルスのすべてに効果のあるワクチンです。

これら多種類のウィルスが同時に接種されることで互いのウィルス株が干渉して効果が発揮されなくなるという予想です。しかし、具体的な因果関係や効果が見られなかった理由は解明されていません。

第三に、インフルエンザの流行が早まったためです。

患者が鼻詰まりや鼻炎を起こしていると、フルミストの生ワクチンが作用しないことが考えられます。

生ワクチンは、体内に他のウィルスが既に侵入している場合、干渉現象が起こり無効化されやすい特性があります。アメリカではフルミスト発売より先にインフルエンザの流行が確認されたため、既に軽微な感染があったのではないかという予想です。

ウィルス性鼻炎が流行する10月に入るまでに、フルミストが接種できる環境を整えることが理想であると指摘されています。

もっと詳しく知りたい方は、生馬医院の小山先生が自院のブログで解説しています。

参照:http://www.ikomaiin.com/index.php?QBlog-20160903-1

生馬医院

4.付録:アメリカCDCの2013年から2016年までの調査結果の概要

アメリカにおけるフルミストの有用性は、この3年間で推奨しない段階まで落ち込みました。アメリカCDCの発表ということもあり、世界の医療機関はこの結果を受けて、フルミストの効果について改めて検討を続けています。

2013-2014シーズン

H1N1/09パンデミックウイルスという2009年に起きたパンデミック(世界的流行)の原因となったインフルエンザウィルスにフルミストは効果を示しませんでした。フルミストはマイナス1%の効果だったとされています。

マイナスの効果は、フルミストを接種するよりも、ワクチン未接種の場合の方がインフルエンザに感染しないことを表します。

2014-2015シーズン

小児における不活化ワクチン(従来の注射ワクチン)に対するフルミストの優位性を否定し、どちらを選んでも問題ないと見解を変えました。

A香港型インフルエンザ(H3N2)流行にも効果が見られませんでした。2~8歳の小児で調査したところ、不活化ワクチンは15%の効果、フルミストはマイナス23%の効果がありました。

この内容を受け、米国予防接種諮問委員会(ACIP)は2~8歳に単独の推奨ワクチンだったフルミストを撤回し、不活化ワクチン(注射ワクチン)も同様に推奨することにしました。

参照:http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6430a3.htm#Groups_Recommended_Vaccination_Timing_Vaccination

2015-2016シーズン

フルミストは推奨せず、不活化ワクチンによる予防接種を推奨する立場になりました。昨シーズンのフルミスト優位の撤回をさらに進めた立場です。

2歳から17歳を対象とした2015-2016年の予防効果の成績は、不活化ワクチンは63%の効果、フルミストは3%の効果となったため、今年6月に、2016-2017シーズンではフルミストを推奨しないと発表しました。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
calooマガジンの最新情報をお届けします
コメント
まだこの記事へのコメントはありません。

コメントを残す

CAPTCHA