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2018年8月27日更新

プール熱(咽頭結膜熱)の感染力の強さに注意!原因、症状、治療法と2018年の流行状況は?

毎年、6月頃から小さい子供を中心に流行りだし、7~8月に大流行するプール熱(咽頭結膜炎)。その特長・症状(発熱、のどの痛み、結膜炎)・治療法・二次感染を防ぐ方法を紹介するとともに2018年度の流行動向についてまとめました。
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2018年夏。沖縄や奄美地方に続き、今年は関東甲信越地方が過去に前例のない6月中の梅雨明けとなり、例年より早い夏の到来に驚かれた方も多いのではないでしょうか?

そしていよいよ夏休みも本番、日本全国で記録的な猛暑が続いています。

海や山、プールなど楽しいレジャーがいっぱいの夏はお子さんにとって、とても嬉しいシーズン。夏休みを満喫しているお子さんも多いと思います。

そんなお子さんにとってワクワク、楽しみな夏ではありますが、一つ忘れてはいけないのが夏風邪の流行。

6月くらいから患者が増え始めるプール熱(咽頭結膜熱)は、例年7~8月にかけて、小さなお子さんを中心に本格的な流行が始まる夏風邪の一つです。

気象庁の発表では、向こう3ヶ月(7月~9月)の気温は高くなると予想されてます。気になるこの夏のプール熱(咽頭結膜熱)の流行はどうなるのでしょうか?

そこで今回はプール熱(咽頭結膜熱)の原因や症状、治療法などの説明とともに、2018年の流行動向についてもご紹介していきます。

(参考)気象庁 向こう3か月の天候の見通し7 月~9 月  

1.2018年8月現在、プール熱(咽頭結膜熱)の流行状況は?

国立感染症研究所の調べによると、2018年 第32週(8月6日〜 8月12日)のプール熱の患者報告数は全国で1,180人(1定点あたりの患者数は0.39人*1)でした。

第23週(6月4日〜 6月10日)2,904人(1定点あたりの患者数は0.92人)をピークに、その数は少しずつ減少。プール熱の流行は落ち着いてきていると見られます。

しかし、まだ一部地域では小流行も見られているようですので、引き続き今後の動向には注意が必要です。

ちなみに第32週(8月6日〜 8月12日)時点、患者数が多かった都道府県上位3位は、①沖縄県(定点あたり1.21人)、②鹿児島県(定点あたり0.94人)、③新潟県(定点あたり0.88人)となっています。

プール熱2018_32w

(出典)プール熱(咽頭結膜熱)の患者数の推移 2018年 第32週(8月6日〜 8月12日)
厚生労働省/国立感染症研究所 感染症発症動向調査 IDWR 感染症週報 :通巻第20巻 第32号
※過去10年の患者数の比較ができます。赤太字が2018年のグラフ。

*1 定点あたりの患者数とは、すべての定点医療機関からの報告数を定点数で割ったもので、一医療機関当たりの平均報告数のこと。

水遊びの増えるこれからの季節まだまだ油断は禁物!広島では引き続き警報発令中。

徐々に患者数が減ってきているプール熱(咽頭結膜熱)ですが、今シーズン、一部の地区で定点あたりの患者数が警報発令値3を超えた広島県鳥取県では、一時、患者数の増加を受けて警報が発令されました。

鳥取県は、6月27日の時点で解除の基準値1を下回ったため、すでに警報は解除されていますが(詳しくはこちらをご覧ください。)、広島県で5月31日に発令された警報はまだ解除となっていません。(第21週(5月21日~5月27日)、定点あたりの患者数が3.50であった北部(三次市、庄原市)の患者数増加を受けて発令されたもの。詳しくはこちらをご覧ください。)

8月下旬になった今も引き続き気温が高い日が多くなっています。プールや水遊びなどでお子さん同士が接触する機会も増えると考えられることから、まだまだ患者数は増加する可能性があります。

プール熱をはじめとする夏風邪は、まだ体力がない小さなお子さんに多いのが特徴で、一度、周囲で流行りだすと、保育園や学校を通して爆発的な流行になる場合もあるので油断は大敵。

猛暑の夏を乗り切るためにも、引き続き流行の動向に注意を払うとともに、体力を落とさないように体調管理をしっかりとしておきましょう。

2.プール熱(咽頭結膜熱)はウイルスによる急性感染症。

毎年、6月頃からじわじわと小さい子供を中心に流行りだし、7~8月に大流行する病気がプール熱(咽頭結膜炎)です。

夏場に屋外のプールの水を介して集団感染するケースが多いことからプール熱と呼ばれています。

別名を「咽頭結膜熱」ともいいますが、これはプール熱だけではなく、夏風邪の全般的な症状を示す疾患のことを指しています。

主に5歳以下の小さな子供がかかりやすく、患者さんは10歳までの子供で9割を占めていますが、まれに大人でも発症する場合があります。

特に学校で流行しやすい病気である「学校伝染病第二種」に指定されていて、お子さんが発症すると出席停止になってしまうので、お母さん方にとってはとても気になる病気です。

発症の原因は?「アデノウイルス」は一年中いる。

アデノウイルスという直径75~80nm(ナノメートル)のごくごく小さなウイルスによって引き起こされるため、「アデノウイルス感染症」ともいわれます。

感染すると発熱やのどの痛みなどの風邪症状をひきおこすウイルスで、その感染力はとても強力です。

アデノウイルスの中にもいろいろな型があり、現在67種類ほど確認されていますが、その中の3型、4型ウイルスに感染すると、「咽頭結膜熱」を発症し、8型ウイルスに感染すると「はやり目(流行性角結膜炎)」という病気を発症するといわれています。

感染源はプールだけじゃない。飛沫感染、接触感染も!

「プール熱」というくらいなので、夏の病気と思われがちですが、アデノウイルス自体は、1年中いるウイルスで、冬でも感染することはあります。

主に水が感染源となるため、子供の幼稚園や学校のプールの時期に一気に感染が拡大し、毎年この時期になると爆発的な感染をおこすのです。

プールからの感染以外にも、くしゃみや咳などの飛沫感染、口や手などからの接触感染もするため、子供の間では一度流行りだすと、あっという間に感染が拡大してしまいます。

ウイルス感染から発症までの流れは?潜伏期間は5~7日程度。

アデノウイルスが結膜(まぶたの裏側と眼球の表面、黒目までを覆っている膜で目を異物から守っている)に入るとそのまま咽頭(のど)にまで侵入し、まず始めに咽頭炎をおこします。

更に、咽頭炎の部位から子供が指で目をこするなどして結膜に運ばれると結膜炎の症状も起きてきます。

お子さんが突然高い熱を出し、慌てて病院を受診することも多いと思いますが、体の中ではその時、すでにウイルスに感染してから5日~7日ほど経っていて、潜伏期間を経て、辛い高熱の症状となって現れてきたということになります。

体力があると、感染してウイルスが体内にあっても発症しない場合もありますが、ウイルスは体内に持っている状態なので、他の人への二次感染源になってしまう危険性はなくなりません。

(参考)国立感染症研究所 咽頭結膜熱とは
(参考)横浜市衛生研究所 咽頭結膜熱について
※プール熱(咽頭結膜熱)の原因、症状、治療などについて詳しい情報を見ることができます。

3.プール熱(咽頭結膜熱)の特徴は?三大症状は発熱、のどの痛み、結膜炎

プール熱(咽頭結膜熱)に感染すると特徴的な以下の3つの症状が現れます。

1.発熱(38℃~40℃)

高い熱が突然出て、4日~7日続く。
普通の夏風邪に比べて熱がなかなか下がらないのが特徴。
高熱が続き、脱水になる事も。寒気や震えをともなうことがある。

2.のど(咽頭)の痛み、腫れ

咽頭が赤く腫れ、ひどく痛む。悪化すると、水や食事などを飲み込むのも辛くなる。
症状は3日~5日くらい続くが、完全に腫れが引くまでには1週間ほどかかる。

3.結膜炎(目の充血、腫れ、目やに)

目が赤く充血し、腫れや痛み、かゆみが出る。
涙が止まらない、目やにがたくさん出て目が開けづらい、ゴロゴロするなどの症状が現れることもある。
目の症状が一番治りづらく、完治には10日ほどかかることもある。
※まれに結膜炎の症状がない場合もあるので、この場合アデノウイルスの診断が難しくなるケースもあります。

上記の3つの症状以外にも、人によっては全身倦怠感、鼻水、頭痛、腹痛、吐き気、下痢、食欲不振などの一般的な風邪症状が現れることもあります。

何科を受診する?小児科、内科、耳鼻咽喉科へ

お子さんであれば小児科、大人の場合は内科もしくは耳鼻咽喉科を受診しましょう。

病院では発熱、結膜炎、のどの腫れなど明らかな三大症状が出ているようであればプール熱(咽頭結膜熱)であると予見し、通っている学校や保育園などで流行しているかどうかを確認をします。

周囲で流行しているようであれば、特別な検査をせず、状況や症状でプール熱(咽頭結膜熱)と診断を下すこともあります。

アデノウイルスの検査法2種「迅速検査」「血液検査」とは?

周囲ではまだそんなに流行していないという場合は、確定診断のために「迅速検査」という検査を行います。

口を開け、綿棒で喉をこすり、粘膜にアデノウイルスがいるかどうかを判定します。

30分ほどで結果が分かるので、今はこの検査方法が主流となっていますが、発熱してすぐには陽性にならないこともあるので、その場合、症状から判定し、治療に入る場合もあります。

また、もう一つの検査法に「血液検査」があります。

2週間以上空けて2回採血し、1回目と2回目で抗体が上がっているかを確認します。

血液検査は結果が出るのに時間がかかるので、結果が出た時にはすでに治っていることもあります。

肺炎など合併症があったり、事後、プール熱だったという確認をとるために行われることが多いです。

(参考)国立感染症研究所 咽頭結膜熱とは
(参考)横浜市衛生研究所 咽頭結膜熱について

4.プール熱(咽喉結膜熱)の治療法は?対症療法がメイン

ウイルスには抗生物質が効かないので根本治療は行うことができません。

治療は辛い症状を抑えるための対症療法が行われ、以下のようなお薬がよく処方されます。

  • 熱には解熱剤(アセトアミノフェン製剤:カロナール、アンヒバ(坐薬))
  • のどの痛みには鎮痛剤(トランサミン)
  • 痰がひどい時は去痰薬(ムコダイン)
  • 鼻水がひどい時はアレルギー症状を抑える薬(セルテクト、ぺリアクチン)
  • 結膜炎の症状が強い時、細菌感染を予防する薬(クラビット)

その他、脱水の場合は水分や電解質を補う点滴、体力低下による二次感染を防ぐために抗生剤(セフゾンなど)が状態に応じて処方されます。

(参考)おくすり110番 カロナール
(参考)おくすり110番 アンヒバ
(参考)おくすり110番 トランサミン
(参考)おくすり110番 ムコダイン
(参考)おくすり110番 セルテクト
(参考)おくすり110番 ペリアクチン
(参考)おくすり110番 クラビット
(参考)おくすり110番 セフゾン

合併症はあるの?持病のある小さいお子さんは要注意。

重篤な合併症は少ないと言われていますが、基礎疾患のある乳幼児などにはまれに合併症がおこることがあります。

腸間膜リンパ節炎(盲腸に似ている症状で診断が難しい)、重症肺炎髄膜炎をひき起こすことがあるので注意が必要です。

乳幼児の場合、命にかかわることもあるので、下記のような症状が出てきたら早めに受診し、治療を行うことが大切です。

・高熱が4日~7日以上経ってもなかなか下がらず、元気もなくなってきた。

・のどの痛みや腫れが4日~7日以上経ってもひかない。咳も出る。

・結膜炎をおこしている目が赤く腫れ、涙や目やにが止まらず、目を開けているのが辛い。

また、目の結膜炎症状が治まってくる頃に黒目(角膜)の表面に小さな点の濁りが出てくることがあります。

この時、途中で治療を止めてしまうと、角膜が濁ってしまい、視力の低下につながることもあるので、お医者さんの指示に従い、完治するまで治療を続けましょう。

5.プール熱(咽喉結膜熱)に感染してしまったら。看護中の二次感染を防ぐ注意点とは?

現在、特効薬はないので、一にも二にも「安静」が絶対です。

睡眠を良く取り、弱った体力回復させることが大切です。

熱があるのは身体がウイルスと戦っているということなので、解熱剤で無理やり熱を下げてしまうのは逆効果です。

ぐったりして、食欲や水分が取れなくなってしまった時など、限定的に使うようにしましょう。

しっかりと栄養を摂ることも大切ですが、のどの痛みで食事がとれない時や、高熱で食欲がない時は、プリンやゼリー、スープなど食べやすいものを少量づつ摂れば大丈夫です。

ただし、脱水症状を起こさないように麦茶やイオン飲料など水分の補給はこまめに行いましょう。

入浴はウイルスを洗い流すためにも効果的ですが、家族への感染を防ぐため、お湯をかえる、入る順番を最後にするなどの工夫が必要です。

また、熱が高く、体力を消耗して辛い時は無理して入らないにしましょう。

二次感染を防ぐために。3つの気を付けたい事。

感染力が強いアデノウイルスは、お子さんが発症するとその兄弟や親にまでうつってしまうことも多いので、注意が必要です。

家族が感染してしまったら、これ以上の感染拡大をしないために、以下のようなことに注意しましょう。

  1. 家族の間でもタオルや洗面器などは共用しないようにする。
  2. 症状がなくなり、治った後も2週間くらいは便の中にアデノウイルスはいるので、おむつ交換は使い捨て手袋を使用し、マスクなども活用する。
  3. 手すりやドアノブ、お子さんのおもちゃなど共用のものは消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウム(0.02%)でこまめに消毒する。

消毒用エタノールIPA消毒用エタノールIPA

【次亜塩素酸水スプレー市販品】 商品名:バイバイ菌

バイバイ菌 次亜塩素酸バイバイ菌 次亜塩素酸

≪消毒液の作り方≫  消毒薬は自分で手作りすることもできます。

花王の「ハイター」などの次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした漂白剤をペットボトルキャップ1杯を500mlのペットボトルに入れた水に混ぜる。家具や床など一般的な消毒に使うことが出来ます。
※飲料水と間違えて誤って飲むようなことがないないように、ペットボトルには消毒液であることをはっきりと表示しましょう。

花王:ハイター 漂白剤 ハイター花王:ハイター 漂白剤 ハイター

(参考)広島市 感染症情報センター 消毒液の作り方
※こちらのサイトでは更に詳しい次亜塩素酸ナトリウムを使用した消毒液の作り方や、使用上の注意などを見ることができます。

免疫力を高めて発症の予防を!!

プール熱(咽頭結膜熱)は重篤な合併症にならない限りは、10日~2週間程度でウイルスに対する抵抗力が付き、自然治癒する病気です。

ですが、今のところ特効薬もなく、感染すると高熱や辛い痛みなどが長く続く病気で、小さいお子さんがかかると大変辛い思いをすることになってしまうため、なるべくかからないように予防したいものです。

インフルエンザと違い、現在、有効な予防のためのワクチンはありません。

感染予防には、「うがい、手洗い」など基本的な風邪と同じ予防法を普段からこまめに行うことが大切です。

プールに入る前後にはよくシャワーを浴び、上がった後は目を良く洗う、うがいをするなど感染しないための予防策を取りましょう。

そして、なんといっても日頃からバランスの良い食事、十分な睡眠をとるなど、普段から体力をつけて免疫力を高めておくことが一番の予防になります。

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