インフルエンザの治療薬(タミフル/リレンザ/イナビル)効果・飲み方・副作用・予防投与
2017年現在、日本で流通しているインフルエンザの治療薬は、タミフル(飲み薬)、リレンザやイナビル(吸入薬)、ラピアクタ(点滴薬)の4種類です。
他にも、2014年に製造販売認可されたファビピラビル(商品名:アビガン)という抗インフルエンザ薬がありますが、「とっておきの薬」なので、今のところ流通していません。
また、タミフルといえば、異常行動についてメディアに大きく取り上げられ、一時期話題となりました。
しかし、現在までに「薬による現象ではない」と否定されています。
抗インフルエンザ薬は年齢に合わせ、定められた量をきちんと服用することで、治療や予防にも効果を発揮します。
今回は、家で服用可能な3つのインフルエンザ治療薬(タミフル・リレンザ・イナビル)の特徴・効果や服用方法・副作用と予防投与、また最新の抗インフルエンザ薬(アビガン)について、ご紹介します。
1.タミフル/リレンザ/イナビル、抗インフルエンザ薬に共通する3つの特徴
タミフル/リレンザ/イナビルの抗インフルエンザ薬に共通する特徴として、次の3つがあります。
- インフルエンザA型、B型の両方に効果がある
- 発症後(症状が現れてから)48時間以内に服用しないと、効果がない
- インフルエンザ感染者の同居家族・共同生活者には、予防目的で処方される(予防投与)
①タミフル・リレンザ・イナビルは、インフルエンザA型とB型の両方に効果がある
タミフル・リレンザ・イナビルは「ノイラミニダーゼ阻害薬」と呼ばれ、インフルエンザA型とB型のどちらにも効果があります。
「ノイラミニダーゼ阻害薬」の働きとは、ウイルスの増殖を抑えることです。
インフルエンザウイルスA型・B型それぞれの表面にある「ノイラミニダーゼ」が、細胞から放出されることを抑え、細胞内にウイルスを閉じ込める働きを持っているため、感染拡大を防ぐことが可能です。
なお、インフルエンザA型・B型とは異なる構造を持つインフルエンザC型は、「ノイラミニダーゼ」を持っていないため、タミフル・リレンザ・イナビルといった抗インフルエンザ薬では、効果がありません。
また、2009年に世界的に流行した新型インフルエンザ(H1N1)でも、タミフル・リレンザの有効性が認められています。
その後、イナビルについても、新型インフルエンザ(H1N1)に対する有効性が確認されています。
(参考)成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン-厚生労働省
こちらのページでは、新型インフルエンザ(H1N1)でタミフル・リレンザ・イナビルの有効性について、記載されています。
②抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内の服用が必要
厚生労働省によると、「インフルエンザの治療薬は、発症後48時間以内に服用しないと、効果がない」とされています。
この「48時間以内の服用」には、理由があります。
前述した通り、タミフル・リレンザ・イナビルといった抗インフルエンザ薬は、インフルエンザウイルスにある「ノイラミニダーゼ」が細胞から放出されることを抑えます。
そのため、ウイルスが増殖し終わる(=細胞からノイラミニダーゼが放出される)前のだいたい48時間以内に、抗インフルエンザ薬を服用しておかないと、あまり効果がなくなってしまうのです。
※48時間を過ぎたからといって、全く効果がなくなるわけではありません。
最近では、インフルエンザを早期(発症から8時間以内で)発見できる「高感度迅速検査機」を導入している医療機関が増えてきています。
■高感度迅速検査機については、次の記事で詳しく説明しています。
インフルエンザ感染が早期発見できる高感度迅速検査機の原理と簡易検査キットとの比較
③インフルエンザ感染者と同居家族・共同生活者には、予防投与されることも。
一緒に暮らす家族や入院中・高齢者施設で同じ部屋の人がインフルエンザに感染してしまい、インフルエンザに感染する可能性が高い場合には、感染予防を目的として、抗インフルエンザ薬(タミフル・リレンザ・イナビル)が処方されることがあります。
予防投与が認められているのは、インフルエンザを発症している患者の同居家族・共同生活者のうち、原則的に重症化の恐れがある以下の条件にあてはまる方です。(2017年現在)
- 高齢者(65歳以上)
- 慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
- 代謝性疾患患者
- 腎機能障害患者
ただし、この条件に当てはまらない場合でも、医師の診断により予防投与が可能なケースがあります。
2009年の新型インフルエンザ(H1N1)大流行時、濃厚接触した(同じ部屋に長時間いる等)妊婦さんに対して予防投与が行われており、妊婦さんの重症化防止に有効だったと考えられています。
そのため、家族がインフルエンザに感染した妊婦さんや受験生や大事な商談を控えた方など、できるだけインフルエンザの感染を予防したい方は、一度医療機関で確認してみてはいかがでしょうか。
タミフル・リレンザ・イナビルの予防投与の詳細については、後述する「3.タミフル/リレンザ/イナビル予防投与の効果・服用方法・費用相場」で説明しています。
2.抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ、イナビル)の特徴や副作用、服用方法
タミフル・リレンザ・イナビルは、インフルエンザウイルスの増殖に必要な「ノイラミニダーゼ」放出を阻害する作用を持った「ノイラミニダーゼ阻害薬」です。
感染初期(48時間以内)に服用することで、症状や治癒日数を軽減する効果が期待できます。
また、インフルエンザA型・B型・新型インフルエンザ(H1N1)に有効です。
商品名 | 服用回数 | 服用日数 | 服用推奨年齢 | 注意点 |
---|---|---|---|---|
タミフル | 1日2回 | 5日間 | 0歳~9歳、20歳以上 | 原則10~19歳は使用差し控え |
リレンザ | 1日2回 | 5日間 | 5歳以上 | 喘息・乳製品アレルギー患者は慎重使用 |
イナビル | 1日1回 | 1日 | 10歳以上 | 喘息・乳製品アレルギー患者は慎重使用 |
※上記のタミフル、リレンザ、イナビルの比較表は、治療目的での基準です。
①タミフル(一般名:オセルタミビルリン酸塩)の特徴・効果・服用期間
■タミフル 特徴・効果・服用期間
- タミフルは、インフルエンザウイルスに直に作用する世界初の飲み薬で、現在最も普及している抗インフルエンザ薬。
- Aソ連型インフルエンザウイルスの一部で、タミフルに耐性を持ったタイプがある。
- カプセル型とドライシロップがあるので、小さなお子さんでも服用することが可能。
- 10歳以上20歳未満の未成年者には、原則的に用いない。(※合併症等から、ハイリスク患者と判断された場合は除く)
→因果関係は不明だが、異常行動による転落事故等の報告があったため。 - 子どもや未成年者が服用する場合には、異常行動による事故の予防対策として、必ず一人にせず、注意深く見守ること。
- 妊婦・授乳中でも、服用可能。
→経口薬なので、若干血中や母乳に移行するが、胎児・赤ちゃんには重大な影響はないとして、服用推奨されている。 - 服用上の注意点が色々あるので、使用上の注意を守って正しく服用する必要がある。
- 服用期間は、1日2回×5日間。
■タミフル 薬の種類
- カプセル
- ドライシロップ
→溶かして飲むタイプ。そのまま飲んでもOKだが、多めの水で飲むこと。
薬の量は、1歳児より0歳児の方が多い。(幼小児:2mg/kg、新生児・乳児:3mg/kg)
2016年12月より、1歳未満の赤ちゃん(0歳児)も健康保険で処方OK。
(参考)公知申請に係る事前評価が終了した適応外薬の保険適用について|厚生労働省
こちらのページでは、1歳未満のタミフル使用について、薬事承認上は適応外でも保険適用とする旨が掲載されています。
■タミフル 副作用・服用上の注意点
- 主な副作用は、下痢や悪心(吐き気、胸のむかつき)、腹痛など胃腸症状。
→稀に、アナフィラキシーショック、肺炎、肝機能障害、急性腎不全、幻聴や妄想。 - 腎臓病を持っている場合は、必ず医師に伝えること。
→腎排泄なので、腎臓機能が低下している場合、血中濃度が高くなり副作用が強まりやすくなる。 - 原則、10代の若者には使用されません。
→喘息を持っている子どもなど重症化が懸念される場合は、例外的に処方されることもあります。 - 子どもや未成年者が服用する場合には、事故の予防対策として、①異常行動の発現の可能性がある②自宅療養の場合、保護者等は最低2日間、子どもや未成年者が1人にならないよう配慮する必要があります。
【体験談】インフルエンザ感染で、子どもに「熱せん妄」の幻覚症状。
子供がインフルエンザにかかり、インフルエンザによる高熱でおこってしまう異常行動「熱せん妄」が出て慌てました。
タミフルやリレンザを処方された10歳未満の患者の内、約15%で異常行動があったというデータが発表されていますが、まさか自分の子がかかるなんて‥。
薬との関係ははっきりしておらず、詳しい原因も解っていないんだそうです。
異常行動によって、窓から飛び降りた例などもニュースであったので怖かったため、常に横についていました。
高熱を出したその日と次の日に起りやすいそうですが、うちの場合はほんの数時間でした。
熱で幻覚?のようなものが見えるようで、あっちに行け!的な言葉をずっと発していました。
幸い数時間でなくなったので、ホット肩をなでおろしました。インフルエンザにかかる度に怖くなってしまします。
(引用元):インフルエンザで高熱‥
②リレンザ(一般名: ザナミビル水和物)
(出典)https://caloo.jp/reports/view/1129
■リレンザ 特徴・効果・服用期間
- リレンザは、粉末状になった薬剤を口から吸う、吸入薬。
- インフルエンザウイルスが増殖する気道にピンポイントで作用するため、全身への影響が少なく、副作用の発生も比較的少ない。
- 吸入薬なので、正しく吸えないと効果がでない難点がある。成人やタミフルの使用が差し控えられる10代の若者に処方されることが多い。
→一般的に、上手に吸入ができない小さなお子さん(5歳未満)には、処方されないことが多い。 - 子どもや未成年者が服用する場合には、異常行動による事故の予防対策として、必ず一人にせず、注意深く見守ること。
- 妊婦・授乳中でも、服用可能。
→わずかに血中や母乳に移行するが、胎児には重大な影響はないとして、服用推奨されている。 - 服用上の注意点が色々あるので、使用上の注意を守って、正しく服用する必要がある。
- 服用期間は、1日2回×5日間。
■リレンザ 薬の種類
- 専用吸入器+粉薬が入っているディスク
→1ディスクに、1日分の薬(=1度に2回ずつ吸入するため、1日分として薬剤が4つ入っている。)をセットして使用。※大人も子どもも同じ服用量。
■リレンザ 吸入方法
<正しく吸入するためのポイント>
- ディスクをセットする時やブリスターは、吸入器はテーブルの上など水平のところで行う。
- 吸入前に息を吐き、下を向かず、口との隙間ができないように、吸入口をしっかりくわえる。
→ただし、側面の空気口まで塞がないように注意! - 勢いよく吸う。
- 吸入後、3秒~5秒程度息を止め、気管支に薬剤を留める。
リレンザの吸入は、お子さんや高齢者の場合、失敗してしまうことも少なくありません。
しかし、1日2回(しかも1回あたり2度吸入)×5日分ということで、20回吸入するチャンスがあります!
もし失敗してしまった場合でも、吸入を諦めずに初めからやり直し、ほんのわずかな薬剤でも吸入しましょう。
次第にコツをつかんで、うまく吸入できるようになるでしょう。
とはいえ、どうしてもリレンザの吸入がうまくできない場合は、早めに医師に相談しましょう。
他の抗インフルエンザ薬についても、効果的なのは「発症48時間以内の服用」ということに変わりはありません。
下記のサイトでは、リレンザの服用方法について、動画で詳しく説明されています。
(出典)成人編吸入動画 リレンザ【解説編】|環境再生保全機構公式動画チャンネル
■リレンザ 副作用・服用上の注意点
- 副作用は、ほとんどありません。
→稀に、アナフィラキシーショック、喘息発作の誘発、発疹・じんましん、声枯れ、幻聴や妄想。 - 喘息など呼吸器疾患を持っている場合には、医師に必ず伝えること!
→発作の引き金や症状が悪化する場合もあります。その場合、使用をやめて、すぐ受診すること。
喘息用の吸入薬と併用する場合には、喘息用を先に使用すること。 - 粉薬に乳蛋白が含まれているため、牛乳など乳製品アレルギーがある場合には、アナフィラキシー症状に注意のこと。
- 子どもや未成年者が服用する場合には、事故の予防対策として、①異常行動の発現の可能性がある②自宅療養の場合、保護者等は最低2日間、子どもや未成年者が1人にならないよう配慮する必要があります。
【体験談】初めてのリレンザ服用、2日程度で解熱しひと安心。
少し熱っぽかったのですが、病院には行かずに過ごしました。夕方頃になると、頭がボーっとしてきて、動くのもつらくなってきたので、このままじゃまずいと思って、近くの病院に、風邪薬を貰いに行きました。
熱を測ると、39度くらいあったみたいで、インフルエンザも流行していた時期なのもあって、検査をすることになりました。結果は、感染していました。風邪薬を貰いに来たのに、インフルエンザと診断され、翌日から家で安静にするしかなくなりました。
薬はリレンザと言う、吸引薬を貰いました。吸引薬は初めてだったので、説明書を見ながら使いました。粉を吸い込むだけで、今まで水で飲む、飲み薬しか使ったことがなかったので、本当に効くのか半信半疑でした。
服用回数通りに服用すると、2日くらいで熱はかなり下がり、だいぶ動けるようになって来ましたが、筋肉痛のような、関節痛のような痛みが出ていて、それが完治するまで、一週間近くは要しました。リレンザがかなり効いたみたいで、熱が長引かず安心しました。
③イナビル(一般名:ラニナミビル オクタン酸エステル水和物)
(出典)ラニナミビル-Wikipedia
■イナビル 特徴・効果・服用期間
- イナビルは、リレンザ同様、粉末状になった薬剤を口から吸う、吸入薬。
→リレンザとの違いは、服用回数。長時間効果があるので、1回分で治療終了。 - インフルエンザウイルスが増殖する気道にピンポイントで作用するため、全身への影響が少なく、副作用の発生も比較的少ない。
- 吸入薬なので、正しく吸えないと効果がでない難点がある。成人やタミフルの使用が差し控えられる10代の若者に処方されることが多い。
→一般的に、上手に吸入ができない小さなお子さん(5歳未満)には、処方されないことが多い。 - オセルタミビル(タミフル)に耐性を持つ、インフルエンザウイルスに対しても、効果が期待できる。
- 子どもや未成年者が服用する場合には、異常行動による事故の予防対策として、必ず一人にせず、注意深く見守ること。
- 妊婦・授乳中でも、服用可能。
→わずかに血中や母乳に移行するが、胎児には重大な影響はないとして、服用推奨されている。 - 服用上の注意点が色々あるので、使用上の注意を守って、正しく服用する必要がある。
- 服用期間は、1回分だけ。
→可能であれば、病院や薬局で服用させてもらった方が、ベター。
■イナビル 薬の種類
- 専用吸入容器
→1つの吸入容器には、粉薬が2箇所に充填されている。(1本で2箇所吸入)
大人や10歳以上の子どもの場合……1回分は、吸入容器2本を使用
10歳未満の子どもの場合……1回分は、吸入容器1本を使用
■イナビル 吸入方法
<正しく吸入するためのポイント>
- 前準備:(薬剤トレーをスライドさせる前に)吸入容器をテーブルの上にトントンと当てて、薬剤を底に集めておく。
- 吸入前に息を吐き、下を向かず、口との隙間ができないように、容器を横から持って、吸入口をしっかりくわえる。
→ただし、持つ時に底の空気口まで塞がないように注意! - 勢いよく吸う。(イメージは、ジュースをストローで思いっきり吸い込むように)
- 吸入後、3秒~5秒程度息を止め、気管支に薬剤を留める。
- 吸い残しが無いよう、最後に薬剤トレー①②をもう一回ずつ吸う。
イナビルの吸入は、お子さんや高齢者の場合、失敗してしまうこともあるでしょう。
1回分で治療が終わるという画期的な薬ですが、正しく吸入できていなければ、元も子もありません。
病院や薬局によっては、その場で吸入させてくれる場合もあります。
失敗が心配な場合は、一度相談してみてはいかがでしょうか。
(※シーズン最盛期など混雑状況によっては、対応が難しいケースも)
どうしてもイナビルの吸入がうまくできない場合は、早めに医師に相談しましょう。
他の抗インフルエンザ薬についても、効果的なのは「発症48時間以内の服用」ということに変わりはありません。
下記のサイトでは、イナビルの服用方法について、動画で詳しく説明されています。
(出典)成人編吸入動画 イナビル【解説編】|環境再生保全機構公式動画チャンネル
■イナビル 副作用・服用上の注意点
- 副作用は、ほとんどありません。
→稀に、アナフィラキシーショック、喘息発作の誘発、下痢、吐き気、発疹・じんましん、幻聴や妄想。 - 喘息など呼吸器疾患を持っている場合には、医師に必ず伝えること!
→発作の引き金や症状が悪化する場合もあります。その場合、使用をやめて、すぐ受診すること。
喘息用の吸入薬と併用する場合には、喘息用を先に使用すること。 - 粉薬に乳蛋白が含まれているため、牛乳など乳製品アレルギーがある場合には、アナフィラキシー症状に注意のこと。
- 子どもや未成年者が服用する場合には、事故の予防対策として、①異常行動の発現の可能性がある②自宅療養の場合、保護者等は最低2日間、子どもや未成年者が1人にならないよう配慮する必要があります。
(参考)ラニナミビル オクタン酸エステル水和物|おくすり110番
【体験談】インフルエンザ感染でイナビル吸入。すぐ効いて、びっくり!
昨年、小学生の時以来20年ぶりのインフルエンザにかかりました。
毎年しっかり予防接種を受けていたのですが、過労で免疫力が低下していたようです。その日の朝になって急に寒気と、嫌な体のだるさを感じましたが、仕事が立て込んでいたのでマスクをして出勤。
午前はなんとか乗り切れたのですが、午後の会議の後に容体が急変しました。
明らかに体に熱がこもってきて、頭も痛く、咳も出てきました。
上司命令で、早退して病院に直行しました。
病院に向かう道のりが辛かったです。体は重いし、関節が痛いし、熱で意識は朦朧とするし…。病院は、ちょうど空いている時間でした。
呼ばれるまで、待合室の椅子で横になって待ちます。
鼻に何かを入れて、インフルエンザの検査を受けたところ、すぐに判明。やっぱりインフルエンザとのことでした。今回初めてイナビルという吸引薬を処方されたのですが、これすごいです。
一発で効く!その場で薬剤師さんのサポートを受けながら吸引して、それでもう終りです。
楽でいいですね。その日の夜は関節の痛さで苦しかったですが、翌日1日寝ていたら一気に熱が下がりました。
子どものインフルエンザ感染で特に注意したいこと……異常行動を防ぐために、子どものそばに!
前述した通り、子ども・未成年者が抗インフルエンザ薬を服用する上で、特に気を付けなければならない副作用は「異常行動」です。
厚生労働省の調査によると、異常行動が起きた年齢の平均値及び性別は、8歳前後・男児が約7割で、その多くは予防接種を受けていない子どもでした。
特に「外に飛び出す」など重症の異常行動は、発熱1日目または2日目に発生することが多くなっています。
<報告されている異常行動の例>
- 突然立ち上がって、部屋から出ようとする。
- 興奮状態となり、手を広げて部屋を駆け回り、意味のわからないことを言う。
- 興奮して窓を開けて、ベランダに出ようとする。
- 自宅から出て外を歩いていて、話しかけても反応しない。
- 人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す。
- 変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る。
- 突然笑い出し、階段を駆け上がろうとする。
2000年代初頭、タミフルを服用した10代前半の子どもたちが、「窓から飛び降りる」「突然外に飛び出す」といった異常行動を起こし、重傷や死亡するという事故が相次いで起こりました。
この事故を受け、2007年厚生労働省では、安全対策調査会を発足し、調査に乗り出しました。
この時の調査では、「異常行動は、抗インフルエンザ薬の服用有無にかかわらず、インフルエンザ自体に伴って発現する場合がある」という結論に至っています。
その後も毎年調査会が開催され、タミフルだけでなく、リレンザ・イナビル・解熱剤のアセトアミノフェンを服用した場合や何も服用していなくても、同様の異常行動が確認されており、2016年の調査会では、過去10年のデータから「タミフル・
そのため、異常行動を過度に恐れることなく、タミフル・リレンザ・イナビルなど抗インフルエンザ薬が処方されたら、すみやかに服用することが大切です。
そして、お子さんがインフルエンザに感染した場合には、少なくとも発症から2日間はそばについて、見守ってあげましょう。
(参考)2015-2016年シーズンのインフルエンザ罹患による異常行動研究|安全調査会2016
こちらのページでは、インフルエンザ感染の際に発生した異常行動についての統計(服用あり・なし等)が報告されています。
3.タミフル/リレンザ/イナビル予防投与の効果・服用方法・費用相場
緊急回避に!タミフル・リレンザ・イナビルの予防投与
前述した通り、抗インフルエンザ薬の予防投与の対象となる人は、高齢者や慢性呼吸器疾患や腎機能障害など基礎疾患がある人等、原則的にインフルエンザに感染すると、重症化するリスクが高い人となっています。
一般的に、予防接種は免疫力を高めて、発症予防および重篤化を押さえることから、打ってから効果が現れるまで、約2週間かかるとされています。
しかし、抗インフルエンザ薬の予防投与では、治療同様、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることから、すぐに発症予防効果が期待できます。
ただし、飲んでいる間しか、効果は持続しません。
また、治療と同様に予防投与の場合でも、”インフルエンザ感染者に接触後、48時間以内に服用する必要”があります。
<タミフル・リレンザ・イナビルの予防投与 服用方法>
- タミフルやリレンザ……成人・子どもともに、1日1回服用×7日~10日間。(用量は、治療時と同量)
- イナビル……成人および10歳以上の子どもは、1日1回(吸入容器1本、20mg)服用×2日間または1回(吸入容器2本、40mg)
10歳未満の子どもは、1回(吸入容器1本、20mg)。
イナビルの予防投与は、2016年8月に用法・用量が追加承認され、成人および小児に対して、単回予防投与が可能となりました。
治療と予防では、用量や期間が異なる場合があるので、注意が必要です。
<タミフル・リレンザ・イナビルの予防投与 費用相場>
抗インフルエンザ薬の予防投与は「治療ではない」ため、健康保険は適用されず、自費診療になります。
費用相場は、約5,200円。
予防投与を行った場合でも、完全に発症を防ぐことはできません。
また、既に感染が成立していた場合には、予防量では防げないことがあります。
4.未知なるインフルエンザウイルス対策に-最新の抗インフルエンザ薬「アビガン」
従来の抗インフルエンザ薬とは、作用が異なる新薬「アビガン」
前述した通り、日本の抗インフルエンザ薬には、実はもう一つ薬が開発されていたのです。
最新の抗インフルエンザ薬は、2014年に製造販売認可されたファビピラビル(商品名:アビガン)です。
アビガンは、ノイラミニダーゼ阻害作用を持つ、既存の抗インフルエンザ薬が効かないインフルエンザが発生した際、国から使用の許可が出るまで製造販売することができない薬なのです。
というのも、既存薬のようにインフルエンザウイルスに対する有効性は高いのですが、これまでと作用自体が異なり、動物実験では、重篤な副作用も見られるため、使用に際し、慎重に使用されるべき薬でもあるのです。
■アビガン(一般名:ファビピラビル) 特徴・注意点*
*アビガンに関する情報は、2017年10月現在判明しているものです。今後、内容変更される場合があります。
- 既存の抗インフルエンザ薬が効かないインフルエンザが発生した時に、厚生労働大臣(国)から要請を受けて、初めて製造・供給となる薬。
- ウイルス細胞の中で遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐ。(RNAポリメラーゼ阻害剤)
- 対象とするウイルスは、鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)・A(H7N9)等を想定。
→現状は、通常のインフルエンザ感染症には使用される予定はありません。 - 妊婦さんや妊娠している可能性のある女性には、使用不可。
→妊娠の可能性がある女性には、投与前の妊娠検査による「陰性」の確認が必要。
動物実験で、初期胚の致死・催奇形性が確認されている。 - 精液にも移行が確認されている。
(参考)ファビピラビル製剤の承認条件変更に当たっての留意事項について(平成29年3月3日付通知) |日本病院薬剤師会
こちらのページでは、アビガンの製造販売に関する条件や使用上の警告など、公表されています。
インフルエンザに感染したら、①発症2日以内に受診②薬は最後まで服用③子どもを一人にしない
「備えあれば、憂いなし」ですが、インフルエンザ感染で一番大切なのは、「予防に勝る治療なし」ということ。
これから、本格的にインフルエンザシーズンが始まろうとしています。
うがい手洗いの徹底やマスク着用など、感染予防に努めましょう。
それでも感染してしまった場合には……
- 発症48時間以内に、医療機関へ受診しましょう。
- 処方された薬は、異常行動を過度に恐れず、最後まで服用しましょう。
- お子さんが感染した場合には、最低2日間は一人にしないよう見守りましょう。