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2017年2月6日更新

体質改善で花粉症やアレルギー性鼻炎を治療。「皮下免疫療法」の効果・期間・費用

皮下免疫療法は、アレルギーの原因となる「アレルゲン」を体内に少しずつ3年以上にわたり注射する減感作療法の一種です。舌下免疫療法に比べ痛みはありますが、毎日の治療が不要な点などメリットもあります。ハウスダストやカビアレルギーにも向いています。
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減感作療法(アレルゲン免疫療法)は、治らないといわれていた花粉症などのアレルギーを治す画期的な治療法です。

花粉などのアレルゲンに過剰に反応してしまう自身の体質を改善することで、「くしゃみ」や「目のかゆみ」などの症状を軽くします。

現在では、注射による皮下免疫療法と、舌の下に投与する舌下免疫療法が行われています。

比較的新しいスギ花粉の舌下免疫療法の内容は、こちらの記事をご参照ください。

注射に替わるスギ花粉症の治療法「舌下免疫療法」。費用・効果・副作用と開始時期は?

今回は、注射による皮下免疫療法についてご紹介します。

1. 花粉やダニ、ハウスダストが原因のアレルギーを治療可能な皮下免疫療法

皮下免疫療法は、減感作療法(アレルゲン免疫療法)というアレルギー治療法の一種です。

減感作療法とは対症療法(投薬治療やCO2レーザー治療など)と違い、アレルギー症状を引き起こす原因のアレルゲン(花粉やダニ)を少しずつ体内に投与して体をアレルゲンに慣らすことで、症状を和らげていく治療法です。

減感作療法は以前は皮下免疫療法だけでしたが、スギ花粉症では2014年10月からは注射に頼らない舌下免疫療法も保険診療が開始されているため、治療の選択の幅が徐々に広がっています。

今まで薬物療法を選んでいたけれど摂取する薬物の量を減らしたい方や、薬の副作用に悩んでいる方にもおススメの治療法です。

皮下免疫療法が行われているアレルゲン

皮下免疫療法では、大きく2つのアレルギー症状に対して治療を行うことが出来ます。

それは、季節性アレルギー鼻炎と通年性アレルギー鼻炎です。

季節性アレルギー鼻炎は一般的に花粉症と呼ばれます。

皮下免疫療法で保険診療が可能なアレルゲン(花粉)は以下の通りです。

  • スギ
  • ブタクサ
  • アカマツ
  • カモガヤ
  • ホウレン草

一方、通年性アレルギー鼻炎は季節に関係なく年中症状が表れるアレルギー性鼻炎です。

主なアレルゲンは、室内のちりやほこり、昆虫などの死がい、ペットの毛などのハウスダスト、ダニ、カビです。

皮下免疫療法で保険診療が可能なアレルゲンは以下の通りです。

  • ハウスダスト
  • ダニ
  • カビ(アスペルギルス、アルテルナリア、カンジダ、クラドスポリウム、ペニシリウム)

参照:アレルゲン製品一覧-鳥居薬品株式会社

皮下免疫療法で抑えることが出来るアレルギー症状

季節性アレルギー鼻炎、通年性アレルギー鼻炎、あるいはどちらのアレルギー鼻炎にお困りの方でも、皮下免疫療法で治療を行うことが出来ます。

アレルギー鼻炎の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりです。他にも、目の充血やかゆみ、皮膚の炎症があります。これらの症状の改善あるいは治癒が報告されています。

また、喘息でお悩みの場合、症状が軽くなったり気管支の敏感さ(気管支過敏性)が改善あるいは治癒が報告されています。

参照:「アレルゲン免疫療法」の基本的考え方-一般社団法人日本アレルギー学会

寒い時期だと、風邪と勘違いするケースもありますので、どうしてもこれらの症状が治まらない場合、一度医療機関を受診することをおススメします。

2. 皮下免疫療法の治療の流れ

1. 確定診断(アレルギー症状の原因となっているアレルゲンを特定)

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減感作療法(アレルゲン免疫療法)を行う場合、自分がどのアレルゲンが原因で症状が出ているかきちんと特定する必要があります。

薬物治療などの対症療法では、鼻水やくしゃみなど症状に対して治療を行うため、この診断は必ずしも行われるわけではありません。

しかし、減感作療法は特定のアレルゲンに対して自身の体質(免疫機能)を少しずつ改善していく治療法です。

ですので、原因となるアレルゲンを特定する確定診断が非常に重要になってきます。

確定診断で行われるのは、問診や皮膚反応テスト、血清抗体検査(特異的IgE抗体検査)です。

問診では、症状が起きた場所や時間、症状の内容や規模を受診前にあらかじめ記録しておきましょう。

また、ペットの有無や部屋の掃除頻度もあらかじめ記録して、症状の変化を覚えておくとスムーズに進めることが出来るかもしれません。

他にも、家族のアレルギーについて聞かれることがあります。

皮膚反応テストでは、薄めたアレルゲンを皮膚に注射する「皮内反応テスト」、もしくはアレルゲン試料を含んだテープを皮膚に貼りつける「パッチテスト」が行われます。

血液検査(特異的IgE抗体検査)では、血中の白血球に含まれる好酸球の割合を調べて、症状の原因が本当にアレルギー反応によるものか調べます。

確定診断や注射は、病院のアレルギー科、皮膚科、耳鼻咽喉科、小児科で受診することが出来ます。来院前に実施しているかご確認ください。

2. 肩と肘の間(二の腕)に注射(週に1回または月に1回)

Boy you are afraid of injections

処方場所:病院で行い、注射後30分間は院内で様子を見ます。

治療にかかる年数:約半年間治療を続けて大きな副作用が見られなかった場合、3年以上続けます。

注射する位置:肩と肘の間(二の腕)にあるたるみの部分です。

注射量:人によって異なります。徐々に薬液を増やしていく増量期と薬液を一定に保つ維持期に分かれています。

注射回数:週に1回(増量期)、月に1回(維持期)。ただし、維持期の場合2~3カ月に1回の病院もあります。

治療開始時期:季節性アレルギー鼻炎(花粉)の場合、飛散時期は避ける必要があります。通年性アレルギー鼻炎(ハウスダスト、ダニなど)は通年です。

3. 皮下免疫療法の効果は80%以上

スギ花粉症に対する減感作療法(皮下免疫療法)の効果

厚生労働省の研究によると、皮下免疫療法でスギ花粉症が軽症や無症状に改善された患者は80%以上というデータがあります。

参照:的確な花粉症の治療のために-厚生労働省

室内塵ダニに対する減感作療法(皮下免疫療法)の効果

皮下免疫療法の治療薬を製造販売している鳥居薬品株式会社の発表によると、皮下免疫療法でダニアレルギーの症状が改善した患者は80%~90%、うち完治した患者はおよそ80%というデータがあります。

参照:臨床に関する概括評価-鳥居薬品株式会社

ハウスダストに対する減感作療法(皮下免疫療法)の効果

鳥取大学医学部の研究チームの報告によると、症状の一時改善は95%以上の患者にみられたものの、症状の1年以上の安定的な改善は65%であったとして、他療法との併用も示唆しています。

参照:ハウスダスト鼻アレルギーに対する減感作療法の長期継続例の検討-耳鼻と臨床 Vol. 36 (1990) No. 5Supplement6 p. 1105-1110

4. 皮下免疫療法にかかる費用と保険適用の条件

皮下免疫療法を始める前に、アレルギー検査を必ず受けなければなりません。

アレルギー検査は保険が適用されます。しかし、保険が適用されるためには、「アレルギー症状が見られる場合のみ」という制約があります

アレルギー症状が無い状態や、花粉症のアレルギー検査のついでに食物アレルギーを検査してもらう場合、保険は適用されないため注意が必要です。

血液検査はアレルゲン単位で行われるため、スギ花粉のアレルゲンはスギ花粉の検査結果でしか確認することが出来ません。

スギ花粉やダニ、ハウスダストなど複数のアレルゲンが疑われる場合、全てを検査する必要があります。

血液検査では「Viewアレルギー36」や「MAST33」と呼ばれる検査が行われます。

料金は健康保険が適用されて、約5,000円~8,000円です。

パッチテストの料金は約1,000円~1,500円程度です。

検査するアレルゲンの数によって、料金は増減します。

皮下免疫療法の料金は、薬代が保険が適用されて1回500円~1,000円程度です。薬液の量によって増減します。

ですので、皮下免疫療法にかかる料金は、目安として初年度が約20,000円、2年目以降が約8,000円です。

対症療法(薬物治療)との比較

薬物治療の場合、かかる費用は目安として初年度が12,000円~17,000円、2年目以降が7,000円~12,000円程度になります。

参照:花粉症Q&A集(平成22年度)-厚生労働省

5. 皮下免疫療法を受けられるのは5歳以上のアレルゲンを有している方

皮下免疫療法を受けることが出来るのは、こちらの条件に当てはまる人です。

  • 年齢が5歳以上であること
  • アレルゲンを有していること
  • 治療について十分な理解と納得が済んでいること

皮下免疫療法は5歳から適応されていますが、治療で注射しなければならないため保護者の方の十分な理解と協力が必要です。

必ず確定診断で特定されたアレルゲンについて治療が行われます。

治療にかかる期間が3年以上と非常に根気のいる治療になるため、始める際に医師から十分な説明が行われます。きちんと納得した上で皮下免疫療法を選択してください。

皮下免疫療法を受けることが出来ない人

こちらの条件に当てはまる人は、皮下免疫療法を受けることが出来ません。別の治療法を選択しましょう。

  • 年齢が5歳未満
  • 妊婦の方
  • 重度の気管支喘息をお持ちの方
  • 自己免疫疾患や重篤な全身性合併症をお持ちの方
  • 悪性腫瘍をお持ちの方
  • β阻害薬など心臓病薬や高血圧薬を服用している方
  • アレルゲンの特異抗体を有していない方

治療期間中(3年~5年)に妊娠予定の方はあらかじめ医師に相談してください。

自己免疫疾患は、関節リウマチなどの膠原病や、ギランバレー症候群などを指します。

β阻害薬は心臓の働き過ぎを抑えて心臓を保護する薬です。アーチスト、メインテート、ロプレソールなどがあります。

その他、体調が悪い場合は医師の判断で注射を取りやめることがあります。

6. 皮下免疫療法と舌下免疫療法の比較(メリット・デメリット)

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画像引用:通年性アレルギー鼻炎の治療-トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ

皮下免疫療法のメリット

皮下免疫療法のメリットは舌下免疫療法に比べて4つあります。

①スギ花粉のアレルゲンとダニのアレルゲンについて同時治療が可能

皮下免疫療法では、スギ花粉とダニの2つのアレルゲンを有していた場合どちらも治療することが出来ます。

舌下免疫療法では、併用は現在のところ推奨されていません。

②通院時の治療のみで済む

皮下免疫療法では、来院時に治療を行うため日々の生活リズムが大きく乱れることはありません。

舌下免疫療法では、毎日必ず決められた量を服用しなければなりません。

③舌下免疫療法に比べて若干効果が高いという報告がある

皮下免疫療法では、約7~8割の患者に症状の改善が見込まれたというデータがあります。

舌下免疫療法では、約7割の患者に症状の改善が見込まれたというデータがあります。

しかしながら、治療の効果に差は無く同程度であるという見解もあります。

④対象年齢が低い

皮下免疫療法は、5~7歳頃から治療を始めることが出来ます。

舌下免疫療法は、12歳以上が治療薬の適応とされています。

皮下免疫療法のデメリット

皮下免疫療法のデメリットは舌下免疫療法に比べて3つあります。

①注射の痛み、患部(腕)の「腫れ」や「かゆみ」が起こる

皮下免疫療法は必ず注射によって治療が行われます。注射後の15~30分は副作用の有無の観察のために院内で安静にする必要があります。

皮下免疫療法の主な副作用は、注射した部位(腕)の「腫れ」や「かゆみ」があります。

注射が苦手な人や、痛みに耐えられない人は向いていません。

舌下免疫療法は薬液を舌の下に垂らすだけなので、痛みはありません。

舌下免疫療法の主な副作用は、口内や唇の「腫れ」や「かゆみ」があります。

②維持量までにかかる期間が長い

維持量とは、治療効果が表れるように薬液濃度を最も高く調節した量です。体質やアレルゲンによって維持量は異なります。

皮下免疫療法では、維持量に至るまでに4~6ヶ月の期間がかかります。

舌下免疫療法では、維持量に至るまでに2~4週間の期間しかかかりません。

皮下免疫療法では、舌下免疫療法に比べて長期になる可能性があります。また、何らかの理由で治療を中断した場合、舌下免疫療法の方が維持量が短いため治療を再開することが容易です。

③重篤な副作用が出たとの報告がある

どちらの減感作療法も、ひどい喘息発作やアナフィラキシーが起こることは非常にまれです。

しかし、皮下免疫療法では、重篤な副作用が出たという報告があります。

舌下免疫療法では現在のところ服用中にアナフィラキシーなどの重篤な副作用が出たという報告はありません。

7. 皮下免疫療法の副作用

皮下免疫療法の副作用は、以下の局所的な症状が挙げられます。

  • 患部の腫れやかゆみ
  • じんましん
  • 下痢、おう吐、腹痛などお腹周りの症状

これらの症状が表れた場合すぐに医療機関を受診して下さい。医師の判断で治療の継続もしくは中断が決められます。舌下免疫療法に変更することもあります。

また、まれにアナフィラキシーという重度の副作用が起こる可能性があります。

アナフィラキシーでは主に以下のような症状があります。

  • 全身にわたるじんましんや皮膚のかゆみ
  • 唇や口内、舌、まぶたの腫れ
  • 息切れ、呼吸困難、チアノーゼ
  • 不整脈、頻脈、血圧低下
  • ひどい吐き気、おう吐、下痢

これらの症状が表れた際は、救急車などを呼んで速やかに医療機関を受診して下さい。

副作用に気を付けるタイミングは接種後30分とアレルゲンの増量期、激しい運動

副作用に気を付けるタイミングは、接種後少なくとも30分です。しかし皮下免疫療法の場合、注射のために病院を受診しているため、もし副作用が発生した場合でも迅速に対応することが出来ます。

また、花粉アレルギーの皮下免疫療法を行っている場合、花粉の飛散時期は特に注意が必要です。

スギ花粉の場合は、3月~4月にピークを迎えます。

ブタクサの花粉の場合、9月頃ピークを迎えます。

参照:花粉カレンダー-花粉症ナビ

ダニアレルギーの皮下免疫療法を行っている場合、花粉と違って目立ったピークはありません。

しかしダニの量が増える6~7月と、気温・湿度が低下して大量にダニが死んで死がいが発生する9月頃は特に注意が必要です。

参照:要注意!秋はダニアレルゲンが増える時期-ヤマセイ株式会社

他にも、激しい運動を行ったときや、体調が優れないときは副作用が発生するリスクが高まります。

注射のタイミングや、日々の健康、運動量に気を付けましょう。

減感作療法は副作用のリスクも含んだ治療であることを忘れずに

皮下免疫療法含む減感作療法は、非常に薄めたアレルゲンを体内に取り入れることで、体質改善を目指す治療法です。

ですので、体質が改善し、治療が完了するまで副作用が起こるリスクを避けることが出来ません。

効果だけでなくリスクも考えた上で、治療に臨みましょう。

8. アレルゲンの除去や回避も大切!

減感作療法を行う上で、大切なことは「日々のアレルゲンの除去や回避を怠らないこと」です。

特に初めの半年間は、減感作療法でアレルギーを治療していても症状が表れることがあります。

花粉症など季節性アレルギー鼻炎をお持ちの場合は、マスクの着用や日々の洗濯や衣服にも気を配りましょう。

ハウスダストやダニなど通年性アレルギー鼻炎をお持ちの場合は、寝具を念入りにした部屋の掃除や洗濯、部屋の温度(20~25℃程度)や湿度(50%程度)の調整を心掛けましょう。

治療の中で決められた量のアレルゲンよりも多く身体が反応してしまうと、治療に悪影響を与える恐れがあります。

基本的なアレルゲン対策も忘れずに行いましょう。

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