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2017年4月21日更新

仕事中の居眠り、慢性的な眠気は「ナルコレプシー」かも?症状、原因、体験談

夜しっかり寝ても日中の眠気で居眠りが…。こんな症状が長期間続いている場合、それは単なる寝不足ではなく、ナルコレプシーかもしれません。過眠症の一種で、脳の覚醒を維持することが出来なくなる疾患、ナルコレプシーの原因や症状、体験談をご紹介します。
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夜十分に寝ているはずなのに日中の眠気が強く、仕事や勉強中、何度も居眠りをしてしまう……。

このような慢性的な眠気症状に悩まされたことはありませんか?

睡眠が足りていない時には誰でも起こりうる症状ですが、睡眠障害の1つである「ナルコレプシー」はこのような症状が毎日現れ、3ヶ月以上続く疾患です。

睡眠障害と言えば「必要な睡眠がとれない」不眠症がまず思い浮かびますが、睡眠障害の中には不眠症とは反対に日中も起きていられない位の眠気を感じる「過眠症」と言われるタイプの障害もあり、ナルコレプシーも慢性過眠症の1つです。

「たくさん眠れるならば良いのでは?」と思われる方もいると思いますが、ナルコレプシーは時間場所を選ばずに眠気が起こり、患者さんの意志に関係なく眠りに落ちてしまう「睡眠発作(すいみんほっさ)」という症状がたびたび現れるため、日常生活に大きな影響を及ぼしてしまいます。

頻発する睡眠発作により、患者さんの生活の質(Quality of Life)は著しく落ちてしまう事はもちろん、周囲の人からは「居眠りしていて不真面目」「たるんでいる」というような誤解を招くこともあり、人間関係が悪化したり、仕事上の信頼を失うなど、ナルコレプシー特有の悩みを抱えている患者さんもたくさんいらっしゃいます。

今回は、「居眠り病」などと言われ、まだまだ偏見があるナルコレプシーの正しい理解をするために、詳しい症状や、原因などについてご説明していきたいと思います。

 1.「ナルコレプシー」ってどんな病気?

ナルコレプシーの名前の由来である「narco」とはギリシャ語で「麻痺、脱力」、「lepsy」は「発作」という言葉を意味しています。

健康な人の場合、夜にまとめてしっかりと睡眠をとれば、通常、昼間にそれほど眠くなるということはありませんが、ナルコレプシーは、夜間に睡眠をとっているかに関わらず、昼間に睡魔が襲ってきて、起きていることが出来なくなってしまう脳神経の疾患です。

もしかしたら自分も?まずはナルコレプシーのセルフチェック!

ナルコレプシーになると、患者さん本人も慢性的な眠気に慣れてしまい、「眠気が起きている」という自覚がなくなってしまうことも。

日中いつも「ぼんやり」としていたり、仕事や勉強中、頻繁にやってくる睡魔は、単なる睡眠不足や体質によるものではなく、「脳神経の異常」によるものかもしれません。

まずは一度、ご自分の眠気のレベルを知るためのセルフチェックをしてみましょう。

実際に病院で行うナルコレプシーの診断には、問診や各種の睡眠状態を確認する検査を行い、総合的に判定されますが、ナルコレプシーの兆候があるかどうかは「エップワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale:略してESS)」という簡単なテストで知ることができます。

簡単な8つの質問に答えるシンプルなものですが、信頼性が高く各国の病院でも取り入れられているテストです。

それぞれの質問に対し、患者さんの状態に当てはまる状態の点数(0~3点)を付け、その合計点数が11点以上であれば、病気を判定する目安と考えられています。

もちろん11点以上だからと言って、このテストだけでナルコレプシーであるという確定が出来るわけではありませんが、何らかの睡眠のトラブルが起こっている可能性があるので、合計得点が高く心配な方は一度、病院を受診することをお勧めします。

※日本では日本版のJESS(Japanese version of the Epworth Sleepiness Scale)を利用します。

エップワース眠気尺度表

(図)エップワース眠気尺度 (ガイドラインをもとにCalooマガジン編集部作成)

※図はクリックすると拡大します。

(参考)ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン 

(参考)日本睡眠学会 ナルコレプシークリニカルクエスチョン 

 2.ナルコレプシー発症で現れる症状とは?

主な症状は耐え難い、強烈な眠気による「居眠り」

ナルコレプシー患者さんが抱えている「慢性的な眠気」の辛さは周りからはなかなか分かりづらいものです。

自分では抑えることが出来ない強い眠気は「健常者が、丸3日間睡眠をとらずに過ごした後に難しい数学の問題に取り組んでいる」状態に相当すると言われ、「引きずり込まれるような」と表現されることもあります。

ここで、まずどのように発症し、どのような症状が起きるのか、実際にナルコレプシーを発症した二名の体験談をご紹介したいと思います。

 【体験談①】発症は中学の時。日中の眠気が強く授業中に居眠り…。仕事にも支障が。

中学生の頃から授業中に居眠りをしてしまうことが度々あり、日中に強い眠気を感じることがほぼ毎日ありました。

高校を卒業して就職してからも症状に改善が見られることはなく、仕事中に眠くなってしまうので、とても困っていました。
また、生々しく恐ろしい夢を見てしまう「入眠時幻覚」、面白いことで笑おうとすると体の力がガクンと抜けてしまう「情動脱力発作」、これらの症状も出ていました。

(引用)日中の強い眠気を伴うナルコレプシー。服薬である程度は改善。

【体験談②】夜寝ていても関係なく起きる眠気。睡眠発作は運転時にも!

発症したのは、さかのぼること中学2年ぐらいのときでしょうか。
授業中の居眠りからはじまりました。よく先生に頭を殴られたりしてたたき起こされましたが、授業の内容などは一切覚えていないほどに眠り続けてしまいます。
それは社会人になっても続き、今までの何回か転職をしてきたのですが居眠りをしなかった時がないぐらいひどいものでした。夜はちゃんと寝ていてもだめでした。運転中も信号待ちでの経った数十秒でさえ眠ってしまい、後ろの車のクラクションでやっと起きたりしてました。

(引用)居眠りで悩み、ナルコレプシーと判明。脱力発作、金縛りも特徴。

どちらの方も、やはりナルコレプシーの主症状である「強い眠気」に苦しんでいらっしゃいました。

ナルコレプシーの患者さんは、脳の覚醒を維持する機能が弱く、日中も睡眠と覚醒の間を行ったり来たりしているような状態であり、睡眠発作は食事中や歩行中、車の運転や大切な試験の時など、緊張したり、通常であれば決して寝ないような時でも現れます。

一回の睡眠発作は数分~20分ほどと短く、目が覚めるとスッキリとした感覚になりますが、またしばらくすると眠気を感じて発作を繰り返すということが一日に何度も起こります。

これは、健常者の大人が一日に一回まとめて眠る「単相型睡眠」であるのに対し、ナルコレプシー患者の睡眠は、一日中寝ている赤ちゃんと同じように、昼夜問わず浅い眠りを繰り返す「多相型睡眠」になっているためです。

時には、眠気を我慢するうちに、いつの間にか睡眠に入ってしまい、無意識の状態で行動をしてしまう「自動症(自動行動)」という状態になる事もあります。

本人は全く覚えていないのに、気が付いたらご飯を食べていたり、歩いていたというようなケースも見られます。

特徴的な症状は他にも!「情動性脱力発作」「睡眠麻痺」「入眠時幻覚」

ナルコレプシーの特徴的な症状である「睡眠発作」はナルコレプシーの患者さんに100%見られる症状ですが、患者さんによっては、下記のような特徴的な症状が現れることがあります。

①情動性脱力発作(じょうどうせいだつりょくほっさ:カタプレキシー)

体験談①の方も経験されている情動性脱力発作(カタプレキシー)は睡眠発作に次いで多い特徴的な症状です。

「情動」とは「一時的で急激な感情で、筋や腺など身体の動きを伴うもの」のこと。

笑う、怒る、びっくりするなどの喜怒哀楽を感じた時に、顔、首、膝など体を支えている筋肉の緊張がゆるみ、力が抜けてしまうのがカタプレキシーです。

特に「うれしくて興奮する」、「楽しくて大笑いする」と言ったような「陽的な感情が強く起こった時」に起きやすいことが分かっています。

「ガクッ」と脱力するのは、感情が起きた数秒程度とごく短い時間が多いですが、人によっては何分も長く続く時もあり、「何とかしなければ」と焦ってしまうことで、発作を繰り返してしまうこともあります。

カタプレキシーの起きる頻度も、一日に数回起きるケースや、週に1回程度起きるケースなど、患者さんによって異なります。

症状が重い時は力が抜けてその場に倒れてしまうこともありますが、このような時も患者さんは気を失うわけではなく、意識はしっかりと保たれています。

睡眠発作と併せてカタプレキシー症状があるかどうかは、ナルコレプシーの診断には欠かせないとても重要なものですが、中にはカタプレキシーを伴わないナルコレプシーの存在も認められています。

②睡眠麻痺(すいみんまひ)

寝付く時や、目を覚ました時に体の力が抜け、声が出なかったり、自由に動かすことが出来なくなったりする状態を「睡眠麻痺」と言います。

これは、いわゆる「金縛り」と言われる状態で、健康な人でも2割程度は経験する現象ですが、ナルコレプシー患者さんの場合はその頻度が高くなります。

ナルコレプシーを発症して間もない時期には特に多く見られる症状で、悪夢や幻覚と一緒に現れることがあり、患者さんは強い恐怖を感じることもあります。

③入眠時幻覚(にゅうみんじげんかく)

寝付く時や目が覚める時に、人や動物の姿などが鮮明に見えたり、声が聞こえるなど、現実と思いこんでしまうほど生々しく、驚きや恐怖などの感情を伴うリアルな夢を見ることがあります。

この症状も発症初期に金縛りと同時に起こることが多く、ナルコレプシーの7~8割の患者さんに見られる症状です。

目が覚めても内容を鮮明に覚えているため、長年続くことで、夢と現実の区別がつかなくなることもありす。

まだ完全に眠っていない覚醒から睡眠に移行している時期に、夢の中の体験が現実と交錯して起きるためと考えられています。

レム睡眠の異常によって起きる現象「レム睡眠関連症状」

「カタプレキシー」「睡眠麻痺」「入眠時幻覚」の3つの症状は、人によっては症状が出なかったり、発症後、数年たってから出るなど患者さんによって個人差があります。

これらの症状はナルコレプシー特有の「レム睡眠が不規則に頻繁に起きる」ことが原因であるため、「レム睡眠関連症状」とも言われています。

レム睡眠のレムとは「Rapid Eye Movement」の頭文字をとったもので、「眼球急速運動」のこと。

レム睡眠時には、眠りが浅く、眼球の動きが見られ、脳は覚醒に近い状態になっています。

それに対し、ノンレム睡眠は深い眠りで脳自体が休息をとっている状態です。

レム&ノンレムしくみ

(図)レム睡眠とノンレム睡眠 Calooマガジン編集部

通常、人は眠りにつくとまずノンレム睡眠に入ってから、眠りが深まった状態でレム睡眠に移行していき、その後、90分程度の周期でレム睡眠とノンレム睡眠の定期的なリズムを数回繰り返します。

ところが、ナルコレプシーの場合は覚醒した状態からいきなりレム睡眠に入ってしまい、ノンレム睡眠に入っても深い熟睡段階になる事がほとんどなく、浅い眠りのレム睡眠を不規則に頻発するのが特徴です。

睡眠段階

(画像引用)認定NPO法人 日本ナルコレプシー協会「なるこ会」 ナルコレプシーQ&A

そのため、身体が眠っていても意識がまだ残っていることも多く、上記のようなレム睡眠関連症状が起きると考えられています。

レム睡眠が多いナルコレプシーの患者さんは、鮮明な夢をたびたび見ているため、夜の睡眠の質が悪く、たびたび目を覚ましてしまうことがある他、熟睡したという感じが得られなかったり、眠気を我慢することで頭痛、頭重、重視(ものが二重に見える)ような体調不良を感じることもあります。

(参考)認定NPO法人 日本ナルコレプシー協会 なるこ会

(参考)ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン

(参考)医療法人 上島医院 ナルコレプシー
※こちらの病院のサイトにはナルコレプシーについての情報が分かりやすく掲載されています。

3.10代の発症が多い!ナルコレプシーの発症時期やその原因は?

罹患率が高い日本。600人に1人が発症している!

体験談でご紹介した2名の方にも当てはまりますが、ナルコレプシーは中学生や高校生など、10代の半ばの成長期に発症することが多く、発症が最も多く見られる年齢は14~16歳です。

ナルコレプシー発症年齢

(画像引用)認定NPO法人 日本ナルコレプシー協会 なるこ会

欧米でもナルコレプシーは4000人に1人程度の発症すると言われていますが、日本人は特に世界の中で最も罹患率が高く、人口の0.16~0.18%、600人に1人という高い割合で発症することが分かっています。

男女によって発症の割合は変わりませんが、周囲からの指摘があったり、仕事上の支障や影響を考えてか、実際に治療を受けられる方は男性の方が多くなっています。

ナルコレプシーの疫学

(画像引用)ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン

遺伝的要因と環境的要因の両方が。発症のメカニズムは未だ解明されておらず。

ご説明してきたようにナルコレプシーは、睡眠や覚醒のリズムの乱れによる「睡眠の多相化」と、「レム睡眠が複雑かつ頻繁に現れる」ことによって起きる病気ですが、どういうメカニズムでこれらの症状が起こるのかはまだ完全には解明されていません。

10代の成長期に発症することが多いことから、発達段階で、睡眠に関わる脳の機能に何らかの通常とは違う状態(段階)が起こってしまう為ではないかと推測されています。

特にナルコレプシー患者の家族は普通の家族に比べてナルコレプシーを発症する確率が高いことや、ナルコレプシー患者は、DR2と言われるHLA(ヒト組織適合抗原:遺伝的に決定される白血球の型)の遺伝子を高い確率で持っていることから、遺伝的要素もあると考えられていますが、この遺伝子を持っていても発症しないケースもあり、遺伝以外のストレスや生活環境などの後天的な要因も関係しているとみられています。

さらに最近では、脳の中の視床下部から分泌されるたんぱく質「オレキシン(ヒポクレチン)」が、ナルコレプシーの発症に深くかかわっていることが分かってきました。

オレキシンには、食欲のコントロールや、睡眠・覚醒の制御や維持する作用があり、ナルコレプシーの患者の髄液を採取して調べたところ、9割の患者さんのオレキシン濃度の低下が認められました。

しかし、オレキシンがなぜ低下するのかなど不明な部分も多く残されており、今後の更なる研究や検証の結果が出てくることが期待されています。

成長期にはしっかり眠り、体調管理で発症予防を!

このように、ナルコレプシーの詳しい発症のメカニズムは未だ不明ですが、患者さんの中には発症時、「睡眠リズムが大きく乱れていた」「大きなストレスを抱えていた」という人や、「頭部のケガ」や「大出血」などの身体的トラブルがきっかけで発症したと思われるケースもあります。

そのため、成長期の時期には大きな病気にならないように体調管理を万全にする、睡眠リズムの乱れに気を付けて規則正しい生活をする、過剰なストレスを受けないようにする、などの対策をとることで、ある程度は発症を回避する事が出来ると考えられています。

(参考)認定NPO法人 日本ナルコレプシー協会 なるこ会 

(参考)ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン

(参考)オレキシンの生理機能の解明 筑波大学大学院人間総合科学研究科・感性認知脳科学専攻(基礎医学系) 桜井 武

4.異常を感じたら早期に受診を!睡眠障害を扱う精神科、神経内科

まだあまり認知の進んでいないナルコレプシーは、その症状が疑われる時、どこの科を受診して良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか?

ナルコレプシーの専門は精神科や神経内科になりますが、中でも睡眠に特化した治療を行う「睡眠障害専門外来」のある病院がおすすめです。

睡眠障害専門外来では、睡眠中の脳波を測定する特殊な装置を使った検査や、専門医による薬物療法などを受けることが出来ますが、国内ではまだまだ数が少ないのが現状なので、診療を行っている病院をネットで探して受診してみるのも良いでしょう。

病院口コミ検索「Caloo」で全国の「睡眠障害専門外来」を探す

今はまだ、ナルコレプシーを根本的に治癒する方法はありませんが、適切な薬物治療を受けることで、日中の眠気はかなり改善し、日常生活を問題なく過ごすレベルにコントロールすることは可能です。

発症当初は比較的、症状が強く出ることもありますが、治療を続けるうちに、症状が軽減し、やがては薬がいらなくなるまでに回復された方もいらっしゃるので、決して諦めないことが大切です。

1人で悩まないで。ナルコレプシー患者の会「なるこ会」

ナルコレプシーならではの睡眠発作などの症状は、周りからはなかなか理解されにくいこともあり、罪悪感や劣等感を感じて孤独がちになってしまったり、内向的な傾向が強くなる患者さんも多くいらっしゃいます。

日本には、このような患者さんが適切な治療を受け、社会の中で患者さん本人やその家族が安心して暮らせるようにと設立された日本ナルコレプシー協会「なるこ会」という患者の会があります。

なるこ会のサイトではナルコレプシーについてのさまざまな情報や睡眠障害専門病院のリストなども見ることが出来るので、ご興味のある方はサイトをチェックしてみるのも良いでしょう。

認定NPO法人 日本ナルコレプシー協会「なるこ会」

ナルコレプシーは患者さんご本人でさえ体質だと思いこみ、病気だとわかるのに10年以上もかかってしまうケースも少なくありません。

毎日の快適な生活を取り戻すためにも、まずはナルコレプシーという病気を正しく理解し、1人で悩まず、早めに専門医に相談するようにしましょう。

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