15分で判定!マイコプラズマ肺炎検査の主流は抗原キットによる迅速診断
マイコプラズマ肺炎は早期診断が難しい病気。
発熱、咳……、風邪と似た症状から始まるマイコプラズマ肺炎は、突然の発熱に続き、数日遅れて特徴的な乾いた咳が出始めるというような経過をとるため、早期に病名を確定するのが難しい病気です。
内科や小児科を受診し、医師が聴診器を当てて胸の音を聞いても初期では異常は認められないことも多いため、特別な検査をせず通常の風邪薬を処方されてしまうこともあります。
数日間、薬を服用しても治らなかったり、悪化しているような場合には次の段階として肺炎を疑い、胸部レントゲンなどの検査を行うことになります。
2017年度のマイコプラズマ肺炎の流行状況や症状については以下の記事で詳しく説明しています。
2017年秋冬の流行はある?乾いた咳が長引くマイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎はどうやって判定するの?
炎症が進行した肺は、レントゲンを撮るとすりガラス状に白く「もや」がかかったようになっており、「肺炎」を起こしているかどうかはすぐに診断ができます。
(※発症初期の状態ではレントゲンでは白く写らないこともあります。)
(参照)医療法人 富寿会 村田クリニック
※こちらページの「長引く咳の原因となる疾患」の紹介の中にマイコプラズマの説明があります。
しかしその肺炎を引き起こしているのがマイコプラズマかどうかを特定するためには追加で検査を行う必要があります。
早期治療はムリ?検出に時間がかかるマイコプラズマ感染検査の問題点とは。
従来よりマイコプラズマを検出するための検査には「培養検査(ばいようけんさ)」「血液検査」「遺伝子検査」の3つの方法が行われていました。
①培養検査
「培養検査」は患者さんから採取した菌を専用の培地(培養するための環境)で1~2週間かけて培養する検査です。
原因となる細菌を特定する確実性は高いのですが、マイコプラズマは他の細菌に比べると増殖が遅いことが特徴で、時間がかかりすぎるため実際の急性期の診断には適していません。
②血液検査
通常の肺炎になると体内では細菌が増殖します。
そのため血液検査を行うと、白血球数の増加やCRP(体に炎症や異常がある時に血液中に増える物質)の値が急激に高くなり、その値の上昇から炎症反応を確認することが可能です。
しかし、マイコプラズマ肺炎の場合、その値が一般的な風邪と同じくらいしか値が上がらないため、通常の血液検査では判定できません。
確実にマイコプラズマを特定するためには、急性期(症状が起きている時)と回復期(2週間後)の2回に分けて行う「ペア血清」といわれる血液検査を行う必要があります。
2回の検査において、血液中のマイコプラズマ抗体(MPHA:発症すると体内に作られる病原菌と戦うための物質)の数値が4倍以上増えている場合、はじめてマイコプラズマ肺炎と診断されます。
(※1回の採血でも血液中の抗体量が64倍以上に増えている場合は、マイコプラズマと診断されることもありますが、1度ではっきりと判定できる場合は少ない。)
ペア血清は精度の高い方法ですが、やはり結果が出るには3週間近くかかるため、実際に2回採血するケースは全体の10%程度と言われています。
※1回の採血のみ、5分程度で診断可能な採血による迅速診断キットも開発されていますが、判定が擬陽性(ぎようせい:陽性と陰性の中間)となってしまう場合や大人だと反応が弱いなどの欠点もあり、確定診断(病名を特定すること)にはペア血清がすすめられています。
③遺伝子検査
LAMP法(ランプ法)と言われる「遺伝子検査」は、患者さんの喉から綿棒で菌をこすり取り、その中のマイコプラズマの特徴的なDNAを検出する検査法です。
検査の精度は高く、発症後2日目からDNAの検出が可能です。
2011年から健康保険も適用になり、とても有効な検査法ですが、検出には特殊な機器を必要とするため、一般的なクリニックで行った場合は外部の検査機関に出す必要があり、結果が出るのに通常2~3日かかってしまいます。
以上のように、従来からあるこれらの検査法はどれも特別な設備が必要だったり、時間がかかりすぎるというデメリットがありました。
これでは検査結果が出る頃にはすでに病気が治っている、または逆に症状が悪化してしまうなど、急性期(発症している時)に受診した際、医師が治療方針を決めるのには役立ちません。
さらに、場合によっては大病院を受診し直して検査を受ける必要があるなど、具合が悪い患者さんにとっては大きな負担になってしまいます。
これらの事情から、これまでは症状や臨床例(過去の診察や治療)、周囲の流行状況からマイコプラズマ肺炎が疑われる場合、医師はとりあえずマイコプラズマに効果のあるマクロライド系抗生物質などを投与し、飲んでみて効き目があれば、後からマイコプラズマ肺炎と診断するケースもありました。
(参考)マイコプラズマ肺炎
※こちらのページはマイコプラズマ肺炎の検査についてわかりやすくまとめられています。
健康保険の適用も!最近の検査の主流は「マイコプラズマ抗原キット」による迅速診断。
そんな状況の中、「もっと簡易に検査できる方法を!」ということで、画期的な「マイコプラズマ抗原迅速診断キット」が開発され、2013年からは一般のクリニックでも簡単に抗原検査ができるようになりました。
そして現在ではこの迅速検査がマイコプラズマ肺炎判定の主流となっています。
(参考)旭化成ファーマ株式会社 マイコプラズマ抗原キット リボテスト®マイコプラズマ
「抗原(こうげん)」とは「病気を引き起こす物質」のことです。
専用の滅菌された綿棒で喉の壁(咽頭:いんとう)をこすり、ぬぐい液(検体)を採取し、診断キットでマイコプラズマ抗原があるかどうかを判定します。
インフルエンザなどではすでにお馴染みになっている迅速診断キットと同じように、特別な準備も必要なく、わずか15~20分で診断ができるため、外来受診時に受けることが出来るのが特徴です。
特に、マイコプラズマ肺炎はお子さんに多い病気なので、怖い思いをして採血をしなくて済むというのもうれしい点です。
【体験談】子供の風邪で受診。自分も念のために受けた迅速検査で陽性に。
【病気に気づいたキッカケ】
子供の風邪の受診でしたが、私自身も少し咳が出てきたので早めについでに見てもらおうと受診。ちょうど流行っているというので検査したところ陽性でした。検査は扁桃腺あたりを脱脂棒で拭うだけで、あとは菌を調べるキットで10分~15分位で分かりました。【症状】
始めは少し咳が出るかなと思っていたら、2、3日して四六時中出るようになり寝ていても咳で起きる始末。次いで風邪がうつったのかもしれませんが、くしゃみ鼻水地獄でティッシュが離せない状態に。また微熱と食欲不振もありました。飛沫感染するというので家でも食事以外マスクをしていました。【薬】
対マイコプラズマ用にはオゼックス、他は咳を鎮める薬と整腸剤が出ました。咳は二週間は出続けると言われましたが、私は発症から10日ほどで咳は軽減し楽になってきました。その後は軽い咳は時々出るという位です。【まとめ】
最近流行っているようなので、咳が止まらないという方は検査してもらった方がいいと思います。また潜伏期間が長いので感染源が特定しづらいのも特徴です。私は平日は会社へ通勤、休日は買い物へとほぼ毎日大勢の中にいたので、いつ感染したか全く分かりませんでした。
上記の体験談の方もお子様の受診のついでに、ご自身にも気になる咳症状があったため検査を行ったところ、陽性反応がみられました。
この方のように気軽に検査することが出来る上、すぐに結果が分かるのがマイコプラズマ抗原キットによる迅速診断の最も大きなメリットです。
気になる検査費用はどれくらい?
マイコプラズマ抗原迅速検査は健康保険が適用できます。
1回の検査で1,500円(3割負担なら450円)と気軽に受けられる金額なのではないでしょうか?
(※検査費用のみ。実際の会計は初診料、胸部レントゲンなどの他の処置により異なります。)
(参考)旭化成ファーマ株式会社 マイコプラズマ抗原キット リボテスト®マイコプラズマ
迅速診断のデメリットはあるの?
検査方法が簡単で結果がすぐ分かるなど、その有効性が高い迅速診断は、今やマイコプラズマ肺炎検査の主流ですが、やはり迅速診断だけにその精度は100%ではありません。
付属の綿棒で検体をこすり取る際に、綿棒に唾液が混ざってしまったり、咽頭以外の部分についてしまったりといったように検査の行い方によっては正確に判定できないことがあります。
また発症後、いつ検査を行うかといった検査の時期によっても感度が低下してしまったり、症状がなくても陽性反応が出てしまう(偽陽性:ぎようせい)、反対に検査で陰性でも実際は感染しているケース(偽陰性:ぎいんせい)になってしまうケースも認められており、この迅速検査の結果だけを100%信じてしまうのは危険があります。
そのため内科や小児科の医師は、キットによる迅速検査の結果をふまえつつ、胸部レントゲンや現れている症状、周囲の流行状況などを確認するなど、問診の際の患者さんからの聞き取りにも十分な時間をかけた上で、総合的に判断されます。
その咳や発熱はただの風邪じゃないかも?気になる症状がある時は検査を受けましょう!
これから冬にかけて風邪やインフルエンザなど他のウイルスによる感染症の流行も始まります。
どれも初期には症状が似ていることもあり、なかなか自分では原因を判断できませんが、そのような時に簡単に行える検査があるのはとても助かりますね。
迅速診断キットの登場で、「採血なし」「口を開けているだけでOK」と、便利になったマイコプラズマ肺炎の検査。
いつまでも咳がおさまらないなど疑わしい症状がある時は一度、内科や小児科を受診し、検査を受けてみることをおすすめします。
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