痛くない!インフルエンザ予防接種「フルミスト」のメリットやデメリット
1.痛くないインフルエンザ予防接種で、お子さんも安心!「フルミスト」とは?
秋に入ると、インフルエンザの予防接種の季節がやってきます。
インフルエンザの予防接種は、一般的に「皮下注射」となります。
しかし、小さいお子さんの場合、注射を嫌がり、なかなか予防接種に連れて行けないことってありますよね?
また、病院で大号泣してしまったり、暴れてしまったりすることもあるかもしれません。
さらに、13歳未満のお子さんの場合、2回接種となっているので、1回目はなんとか頑張れたとしても、もう一度病院に連れて行かなければなりません。
小さなお子さんがいる親御さんにとって、インフルエンザの予防接種は、ちょっと大変なイベントの一つですよね。
そんなお子さんの辛い思いと保護者の苦労を両方解消する、新たな予防接種「フルミスト」が、日本国内でも一部の医療機関で取り扱われています。
「フルミスト」は、インフルエンザ生ワクチンを鼻に吹きかけるだけ
「フルミスト」とは商品名で、アメリカのmedImmune社が製造している経鼻スプレー式インフルエンザ生ワクチン( LAIV:Live attenuated influenza vaccine)のことを意味しています。
2003年にアメリカで承認され、2011年にはヨーロッパで承認されており、今や世界で利用が広がっています。
しかし、日本では「フルミスト」は未だ認可されておらず、現在は一部の医療機関が個人輸入を行って、提供している状態です。
フルミストは、スポイトのような容器で、患者の鼻の粘膜に菌を弱めた生ワクチンを吹きかけるだけです。
注射ではないので、針は必要ありません。
海外の動画ですが、フルミストの接種の様子が撮影されています。
子どもは少し顎を上げ、軽く吸い込むだけで、わずか十数秒で終わります。
2017-2018年シーズンにフルミストが接種可能な医療機関については、後述する4.2017-2018年フルミストを受けることが出来る病院一覧でお伝えします。
フルミストは、「flu(インフルエンザ)+mist(霧・もや)」-注射に頼らない接種方法
フルミストの大きな特徴は、名称の由来にもなっている接種方法です。
通常、インフルエンザの予防接種は、不活化ワクチンが入った注射を腕(皮下)に刺すことで行われます。
しかし、フルミストの場合、注射は必要としません。
フルミスト(FluMist®)の語源は、「flu(インフルエンザ)+ mist(霧・もや)」から。
ただ両方の鼻の穴に、インフルエンザ生ワクチンをスプレーで、シュッと軽く吹きかけるだけです。
フルミストの有効性-撤回のアメリカ、推奨のイギリス、自己判断の日本
アメリカで生まれた「経鼻スプレー式インフルエンザ生ワクチン」フルミスト。
アメリカでは、1996年の開発当初からこれまで、不活化ワクチンと比べ、フルミストの有効性は高いと評価されていました。
しかし、2016年アメリカCDC(米国疾病予防管理センター)は、「2012年から3年間の有効率は、不活化ワクチン(注射)の60%に対し、フルミストは数%だった」と発表し、一転して非推奨を宣言しています。
一方で、イギリスやスコットランド、フィンランド、カナダでは、フルミストの有効性を認めています。
日本では、フルミストは未承認なので、基本的に自己責任での接種となります。
<インフルエンザワクチンの有効率とは?>
ワクチンの有効率とは、例えばワクチン接種を受けた100人中80人が感染しなかったから、有効率80%ということではありません。
本来100人感染していたところを、80人も感染することを防げたら、有効率80%となるのです。
例を挙げてみると……
100人全員が予防接種を受けたAチームと、100人全員が受けなかったBチームがあるとします。
ウイルス感染を調べたところ、Aチームでは10人、Bチームでは50人の感染が確認されました。
予防接種を受けなかったら、未接種Bチームのように50人が感染していたはずなのに、予防接種を受けたら10人しか感染しなかった。
つまり、予防接種によって、50人-10人=「40人の感染を防ぐことができた」と考えられます。
そのことから、有効率は40(人)÷50(人)=0.8、つまり80%という数字が導き出されます。
■各国のフルミスト取り扱い動向については、次の記事で詳しく説明しています。
フルミストはインフルエンザ予防に効果がある?2017-2018年 日本・外国の取扱動向
2.フルミスト予防接種のメリット・デメリット。
フルミストによる予防接種のメリット
これまで一般的だったインフルエンザ予防接種に比べて、フルミストには大きく3つのメリットがあります。
①注射を使用しない
一番のメリットと言えば、この「注射ではない」こと!
日本では、乳児期から予防接種法により、接種が推奨されているので、1度は経験しているであろう注射。
とはいえ、大人になっても「注射は苦手」という方もいますよね。
小さなお子さんの場合、怖くて嫌がったり、痛みで泣いてしまったりすることも無理もありません。
注射である以上、刺す時の物理的な痛みや薬剤を注入する時の痛みは、少なからず発生してしまいます。
しかし、「フルミスト」なら鼻の穴にシュッと吹きかけるだけです。
注射ではないので、チクッとしません。また、怖い思いをせずに済みます。
医師や保護者が嫌がる子供の身体を抑える……なんて必要もありません。
②たったの1回で予防接種が済む
注射によるインフルエンザ不活化ワクチンの予防接種では、13歳未満のお子さんは「年2回接種」が推奨されています。
一度接種したあと、2~4週間後にもう一度接種しなければなりません。
しかし、予約や病院に連れて行くのは、なかなか手間のかかるものです。
その点、フルミストなら13歳未満のお子さんでも、たった1回でそのシーズンのインフルエンザ予防接種が完了します。
※例外として、8歳以下で今までインフルエンザにかかったことが無い場合、またはインフルエンザワクチン(注射も含め)を1回も受けたことが無い場合には、2回接種となります。
③注射よりも高い効果(感染自体を防ぐ・色んな型に対応・長い抗体有効期間)が見込まれる
これまでのインフルエンザ予防接種など、体内への注射で得られる抗体は、ウイルスに対抗するための全身の力を高めます。そのため、インフルエンザになっても重症化を防ぐような目的となっています。
一方フルミストでは、鼻の穴に直接ワクチンを吹きかけるため、感染の場となる鼻やのどの粘膜で直接インフルエンザウイルスから防御する力(=免疫グロブリンA(IgA))を高めます。
そのため、インフルエンザへの感染自体を防ぐことが期待されています。
また、注射によるインフルエンザ不活化ワクチンは、流行する型を予想して作られているので、ワクチンと実際流行したウイルスの型が外れると、効果が弱くなるという欠点がありました。
しかし、フルミストは、弱めている病原体を直接接種するので、免疫が色んな型に対応しやすく、流行の型と異なっても軽症化する効果が期待できます。
さらに、注射によるワクチン接種の有効期間は、4ヵ月~6ヵ月*1程度しか効果が続きませんが、フルミストの場合、直接免疫を誘導できるため、効果は約1年間と長く持続する特徴があります。
*1:13歳未満の子どもの場合は、これまでの免疫が少ないこともあり、効果が下がってくる1回目の接種後、4週間前後に2回目を打つことで、免疫がより増幅する効果(追加免疫効果)を利用し、年2回接種が推奨されています。
フルミストによる予防接種のデメリット(注意点)
残念ながら、フルミストは日本では未認可の薬なので、接種によるリスクも事前に考えなければいけません。
①接種できる人に制限がある
フルミストの予防接種に関して、使用してはいけない人(禁忌)が設けられています。
- 2歳未満、50歳以上
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方
- 5歳未満で喘息もち(喘鳴の指摘をされた)のお子さんや過去1年以内に喘息発作を起こしたお子さん
- 心疾患や糖尿病、免疫不全など慢性疾患をお持ちの方
- 免疫不全者と接触をする方
- 重度の卵白・ゼラチンアレルギーをお持ちの方(卵アレルギーでアナフィラキシーの既往のある方)
- アスピリンを長期にわたって内服しているお子さん
- ワクチン接種後に、ギランバレー症候群になったことがある方
- 生ワクチン接種後、4週間未満の方
これらに当てはまる人は、インフルエンザ予防接種で、フルミストを使用することが出来ません。
また、接種当日にひどい風邪や鼻炎で鼻がつまっている方、鼻水や鼻汁が止まらない方も、効果が薄れる可能性があるので、控えた方がいいでしょう。
その他、体調や健康状態に不安のある方は、一度病院やクリニックに確認しましょう。
②数が限られている
現在、日本におけるフルミストは未認可の薬のため、入手方法は病院が直接海外から個人輸入する形となっています。
そのため、病院にあるフルミストも、予約および接種状況によっては、早い段階で終了してしまうことが考えられます。
なるべく早めの接種を心掛けるとともに、フルミストを取り扱っている病院のホームページなどで、情報を確認するようにしましょう。
③数%の確率で、副作用の可能性も
注射によるインフルエンザワクチン接種に用いられるワクチンは、不活化ワクチンです。
不活化ワクチンとは、細菌やウイルスを一旦殺して毒性を無くしてから、免疫を作るために必要な部分だけを取り出したものです。
一方で、フルミストに用いられるワクチンは生ワクチンです。
生ワクチンとは、毒性を弱めた細菌やウイルスを生きたまま体内に接種し、免疫を高めるものです。
そのため、生ワクチンの特性上、副作用が起こる可能性がゼロではありません。
確認されている副作用は、数%の確率で、鼻づまりや鼻水のような鼻炎症状、軽い発熱、咳など風邪のような症状が報告されています。
しかし、これまで前述している通り、日本では未認可ワクチンです。
もし万が一、重篤な副作用が出た場合でも「予防接種健康被害者救済制度」が適用されないので、接種の前にはよく検討することが大切です。
3.フルミストの選択は、医師との相談のもと判断しましょう!
フルミストで感染自体予防できることや注射を使わずにストレスフリーで接種できることは、大きなメリットでしょう。
しかし、生ワクチンや未認可であることによるデメリットも存在します。
現在のところ、フルミスト接種は最終的に保護者(とお子さん)の判断に委ねられています。(自己責任)
しっかりと医者から説明を受け、よく考えた上で、どちらかの予防接種方法を選ぶようにしましょう。
インフルエンザ予防接種について、フルミストと従来の注射による違いを表にまとめました。
フルミスト | 従来の注射ワクチン | |
---|---|---|
接種方法 | 経鼻スプレータイプ | 注射 |
対象年齢 | 2歳~49歳 | 生後6ヵ月以上 (※病院によって異なる) |
禁忌 | 妊娠中・喘息・慢性疾患など | 37.5度以上の発熱状態など |
ワクチンの種類 | 弱毒性生ワクチン | 不活化ワクチン |
有効期間 | 1年間 | 4ヵ月~6ヵ月 |
副作用 | 鼻水・咳・微熱 | 注射部位の腫れ・かゆみ |
フルミストは、こんな人におススメ!
- 大人でも子どもでも、とにかく注射が苦手な方
- 過去、注射による予防接種で効果が出なかった方
- 受験生など、何としてもインフルエンザに感染したくない事情をお持ちの方
フルミストを接種すべきかどうか
フルミストの予防接種は、原則的に自己責任での接種となっています。
医師との相談は、もちろん必要です。
接種本人の注射への抵抗感や年齢、予防接種にかかる時間やコスト、その他の事情をよく考えて判断しましょう。
4.2017-2018年フルミストを受けることが出来る病院一覧
全国でも、フルミストを受けられる病院は限られています。
■2017-2108年シーズンのフルミスト予防接種を行っている病院については、以下の記事で詳しく説明しています。
2017-2018年フルミストを取扱う病院(東京・大阪・福岡、他)受診方法・料金
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