「慢性腰痛」治療の基本は薬物療法-神経障害性疼痛薬・漢方薬・神経ブロック注射
40代~60代の多くは、実は「腰痛持ち」!?隠れ国民病「慢性腰痛」
40代・50代・60代の4割が、自覚している腰痛。その半数が「慢性腰痛症」と医学的に定義される”3か月以上にわたって腰痛症状がある”所謂「腰痛持ち」さん。
痛み方もダラダラ鈍痛が続くことが多く、「そのくらいで……」と病院に行かない隠れ腰痛の人も多数存在しています。
厚生労働省研究班の調査によると、「腰痛」は、今や日本人のうち約2,770万人、実に4人に1人が腰痛に悩んでいると言われる隠れた国民病です。
また、慢性腰痛は安静にしていても自然に完治はしづらく、高齢化社会を迎え、ますます「腰痛持ち」で悩む人は増えていくでしょう。
1週間経っても痛い、安静にしていても痛い、どんどん痛みがひどくなるなら、整形外科を受診しましょう。
(参考)膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための地域代表性を有する大規模住民コホート追跡研究|平成24(2012)年度 厚生労働省研究班
こちらのページでは、大規模住民調査による腰痛・膝痛の有病率だけでなく、要介護移行率などについての調査結果も公開されています。
「慢性腰痛」の治療の基本は、消炎鎮痛剤や神経障害性疼痛(とうつう)治療薬などの薬物療法
ぎっくり腰、椎間板ヘルニアなどの急性腰痛の場合には、骨や関節・筋肉・じん帯のどこかに障害が起こることで痛みが発生するため、一時的に痛みを和らげる目的で非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの消炎鎮痛剤が処方されます。
しかし、慢性化した腰痛では、はっきりとした原因が不明であることが多く、消炎鎮痛剤だけでは痛みが緩和されないことが多いことがあります。
(参考)治療-腰痛診療ガイドライン 2012|日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・腰痛診療ガイドライン策定委員会
こちらのページでは、腰痛治療における薬物療法や神経ブロック注射についての日本整形外科学会/日本腰痛学会 の考え方が解説されています。
①神経障害性疼痛治療薬-リリカ・トラムセット
神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)とは、名前の通り神経が傷つくと、その支配領域の感覚に異常を来す病気です。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)の水疱が治っても、皮膚がピリピリ痛く感じるといった帯状疱疹後神経痛が有名です。
また、慢性腰痛のように痛みが慢性化すると、実は心も強い精神的ストレスを感じているのです。
そのような状態になると、痛みを抑える脳の機能が低下して、神経伝達物質(痛みを伝える物質)が過剰に放出されてしまい、痛みに敏感となり、より強く感じるようになります。
神経障害性疼痛治療薬は、そんな過敏となった神経伝達を鎮めて、神経が障害を受けることで起こる痛みを緩和するお薬です。
(出典):神経障害性疼痛治療薬|疼痛.jp
こちらのページでは、神経障害性疼痛治療薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)など薬物療法ついても解説されています。
<代表的な薬>
- プレガバリン(商品名:リリカ) 2010年承認。
→主な副作用:めまい、眠気、ふらつき、意識消失が出ることがあるので、車の運転や高齢者は転倒による骨折などに注意が必要。
- トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤錠(商品名:トラムセット) 2011年承認。
→主な副作用:眠気、嘔吐、フワフワするめまい、胃のむかつきなど起こることがある。授乳中はNG。
(参考):トラムセット配合錠|おくすり110番
②抗うつ薬・抗てんかん薬-サインバルタ
痛みが慢性化することで、不安やストレス、うつなどを引き起こすことがあります。
心理的要因からくる腰痛(心因性腰痛症)に効果があります。
<代表的な薬>
- デュロキセチン(商品名:サインバルタ)
もともと抗うつ薬ですが、2016年3月「慢性腰痛症に伴う疼痛」も適応となりました。
中枢神経の痛みを抑える経路に働き、痛みを緩和します。
→主な副作用:下痢、便秘、むかつきなど。また、重篤な精神神経系リスクがある。授乳中はNG。
(参考):デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ)|お薬110番
③血流改善薬-オパルモン
血流改善薬として、血液をサラサラにして、血液が届かなかった部分への血流を改善することで、痛みを和らげるプロスタグランジン製剤が使われることがあります。
主に、腰部脊柱管狭窄症に伴う疼痛に対し、処方されることが多いお薬です。
<代表的な薬>
- 血流改善薬:リマプロスト アルファデクス(商品名:オパルモン)
→主な副作用:下痢、吐き気、食欲不振など。子宮収縮作用があるため、妊娠中はNG。
④漢方薬-八味地黄丸、牛車腎気丸、当帰芍薬散など
鎮痛薬の長期間服用による副作用で胃の調子が悪くなっている時に
漢方薬は、一般薬と比べ副作用が少なく、その上全身の血液循環を良くすることができるため、痛みの改善だけでなく、体調そのものの改善にも効果的です。
<代表的な薬>
- 漢方薬:八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)など
(参考)
●八味地黄丸|お薬110番
●牛車腎気丸|お薬110番
●当帰芍薬散|お薬110番
⑤神経ブロック注射-特に痛みが激しい時
消炎鎮痛薬が効かず、特に痛みが激しい場合には、腰痛の原因と考えられる神経やその周辺に、直接麻酔薬や鎮痛薬を注射し、神経の経路を一時的に遮断して、痛みを抑える治療法です。
患者さんの症状によって個人差がありますが、治療の回数は、4~5回程度の接種が一般的です。
また、麻酔自体の痛みを抑える効果は数時間とされていますが、血流や筋肉の強張りも改善する作用もあるので、腰痛が抑えられる効果も期待できます。
そのため、平均して数日~数週間効果があるとしています。
なお、神経ブロックは、ペインクリニック・麻酔科・整形外科で受けることができます。
(参考)神経ブロック療法・薬物治療|港南ひだまりペインクリニック
こちらのページでは、神経ブロック注射の種類(星状神経節ブロックなど)やプレガバリン(リリカ)をはじめとする様々な痛みの治療薬について、解説をされています。
コメントを残す