水泳で喘息体質改善も!運動誘発性喘息の予防に効果的な運動・ツボ・体験談
1.意外とアスリートにも喘息持ちは多い!「運動誘発性喘息」とは?
喘息を起こしやすい人の気管支(空気の通り道)は、実は既に過敏になっていること(アレルギー素因)が多いと知っていますか?
そこにアレルギーなどの環境因子が刺激となり、炎症を起こしてしまいます。
その結果、気管の内側が腫れ、痰が出ることでより狭くなってしまい、空気が通りにくくなるため呼吸困難などの症状(喘息発作)が出てしまいます。
喘息が発症する環境原因は、運動誘発性喘息、アスピリン喘息、アトピー型喘息、非アトピー型喘息と大きく4つに分けられます。
中でも、運動することで起こる喘息発作は、「運動誘発性喘息(うんどうゆうはつせいぜんそく)」と呼ばれています。
そんな運動誘発性喘息を持っている人でも、1985年のロサンゼルスオリンピックでは金15個、銀21個、銅5個のメダルを獲得しています。
日本では、霊長類最強とも言われるレスリングの吉田沙保里選手やフィギアスケートの羽生結弦選手、プロ野球選手の藤川球児選手など喘息を持っていながらも、喘息を上手にコントロールしながら、競技生活を送っています。
運動誘発喘息が起きたとしても専門医と相談して、きちんと喘息を管理していれば、運動ができ、プロにもなれ、オリンピックに出てメダルを取ることもできるのです。
喘息発症の原因については、次の記事で詳しく説明しています。
アレルギーだけが原因じゃない?小児喘息の発作症状・薬・対処法・体験談
(参考)院長コラム 喘息を乗り越えたアスリート達2|ほがらかクリニック
こちらのページでは、錦織圭選手・デビットベッカム選手など喘息を持ちながらも前向きに乗り越えている選手たちが紹介されています。
運動誘発性喘息の症状
運動誘発性喘息は子どもに多く、小児喘息患者の中でも半数近くに見られます。また、「気管支喘息」の最初の兆候として、運動をして喘息発作が出ることがよくあります。肺機能の低下の程度が喘息の重症度と関係し、重症の喘息患者さんほど、運動によって発作が誘発されやすいのです。
運動誘発性喘息(exercise induced asthma :EIA)は、”運動直後に起きる即時型”と”運動後6~12時間後の遅発型”があります。即時型は「典型的な運動誘発喘息」と言われ、運動後5~10分で気管支の収縮が起こり、喘鳴、息苦しさに繋がります。
ほとんどの場合、特に治療しなくても20~30分後には自然に回復しますが、中等度~重症の発作になることもあります。
また、後発型の場合、特に運動会などの行事の夜に起きることが多く、運動誘発性喘息と気づかれないことがあるため、注意が必要です。
(参考)運動誘発喘息|はねだ内科クリニック
こちらのページでは、運動誘発喘息の症状について、丁寧な解説をされています。
運動すると、喘息発作が出やすくなる理由とは?
運動すると呼吸が多くなります。それにより、水分が失われたり、気管の温度が下がったりしてしまいます。
その結果、気道粘膜の浸透圧が高くなり、気道が収縮してしまい、喘息発作が起こってしまうのです。
運動誘発喘息が起きやすい条件は、喘息の重症度×運動の種類×運動時間×気温・湿度が関係しています。
<重症度>
喘息患者さんのうち、軽症の10%、中等症の50~60%、重症の場合には80%以上の人に運動誘発喘息があると言われています。
気管支が過敏になっているほど、運動で発作が出やすいのです。
<運動の種類>
運動の軽い重いは、重症度にも関係するため、個人差があります。
しかし、一般的に運動量が多く、一定のスピードで長く走るようなマラソン・サッカー・ラグビー・登山などの運動は、喘息発作が起こりやすく、逆にゆっくりと運動量を強くしたり、さらに休憩時間を入れる”インターバル運動”では起きにくいとされています。
特に、気管支の乾燥が少ない水泳や剣道、ウォーキング、サイクリングなど喘息発作を起こしにくい傾向があります。
<天候>
湿度が低い時や気温が低い時に発作が起こり易いとされるため、夏よりも冬の乾燥した寒い日に起き易くなります。
子どもの運動誘発性喘息
子どもの場合、学校の体育の授業や運動会、部活などで喘息発作が出てしまう子も多いようです。
とはいえ、発作を防ぐために完全な運動制限をしてしまうのは、特に小、中学生にとって、大人の想像以上につらいことで身体機能の発達の妨げになったり、自己否定にも繋がってしまう可能性もあります。
普通の運動ができるくらいに、日頃から喘息をコントロールしておくことが大切です。
また、保護者や本人だけでなく、担任・クラスメートなどにも運動誘発性喘息の理解を深めてもらい、早めに発作に気付いてもらったり、腹式呼吸をしたり、発作が起こった時の対処法を事前に確認しておくことも大切です。
<運動誘発性喘息発作の予防 8つのポイント>
- ウォーミングアップをしてから運動する。(いきなり運動をすると、発作が出やすくなる)
- なるべく鼻呼吸を心がける。
- 短時間で強い運動負荷をかけるのではなく、時間をかけて持久トレーニングをするようにする。
- 持久走ではマイペースで走って、苦しくなったら我慢せず休む。
- 運動中に少し休憩(インターバル)を取る。
- マスクをする。(気管の湿度や温度を保つのに有効)
- 急に運動を止めないで、クーリングダウンをする。
- 運動前に気管支拡張剤や抗アレルギー薬(インタール)を吸入または内服しておくと発作が出にくい。(運動を開始する15分前くらいに吸入すると発作予防の効果がある)
クーリングダウンとは?
激しい運動をした後、心身を平静に戻すために行う軽い運動。例えば、ゆっくり呼吸と安定させながらの軽いジョギング・体操やストレッチなど。
(引用)デジタル大辞泉
(体験談)薬と一緒に、ラジオ体操や犬の散歩で運動を。20歳になると、発作はほとんど起きず。
高校生のときから、本格的な喘息の治療薬をはじめました。このときの医師の説明で、自分の身に起こっていたことを「発作」と呼ぶことをはじめて知りました。
使用した薬は、毎日吸う粉の薬と、発作が起きたときに吸う薬、身体に張る気管支拡張剤です。
初めはたまに忘れてサボっていましたが、続けていると徐々に症状がでなくなり、1年後には、ほとんど息ができない発作が襲ってくることは無くなりました。発作がひどくなりそうだなと思ったら、気管支拡張剤を1プッシュだけ使いました。ひどくなるまえに抑えることができたのではないかと思います。
医師も、この使い方で良いといってくれました。
薬と同時に、朝のラジオ体操と、犬の散歩などの適度な運動を生活に取り入れました。20歳近くになってくると、ほとんど発作はおきず、年に数回、気管支拡張剤を使うだけになりました。
身体の持久力もついてきて、運動で息切れをする事もなくなりました。
運動誘発性喘息の治療法
薬物療法で喘息の重症度を改善することが、運動誘発性喘息の予防となります。
通常の喘息治療薬に加え、ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン、キプレス、シングレアなど)の内服が運動誘発性発作の予防に有効と言われています。
また、運動開始前には即効性のある気管支拡張薬(β2気管支拡張剤やインタール)の吸入を行うことで、より発作が抑えられます。
その他の喘息治療薬については、次の記事で詳しく説明しています。
薬物療法(吸入ステロイド薬)が基本!喘息治療のステップと薬の種類・使い方
(参考)運動誘発喘息|村田クリニック
こちらのページでは、運動誘発喘息の予防法・治療薬など丁寧に解説されています。
運動負荷試験とは?
運動によって誘発される喘息症状の強さを検査するため、一定量の運動負荷を実際にかけて、時間をおって呼吸機能を調べます。
具体的には、自転車エルゴメーター(エアロバイク)またはトレッドミル(ルームランナー・ランニングマシン)に15分くらい乗ったり、走ったりして、呼吸機能がどうなるかをチェックする検査です。
注意点は、満腹状態で臨むと検査結果に影響があるため、運動負荷試験の40分前くらいには、食事を終えている必要があるようです。費用は健康保険の適用があるので、3,000円程度(3割負担の場合)。
(参考)医科点数表2016年|診療報酬どっとこむ
こちらのページでは、治療効果目的で”連続呼気ガス分析”を行った場合の加算点数も記載されています。
その他に、日常的に行えるピークフローの測定が有効です。
ピークフローとは、思い切り息を吸い込んで、一気に吐き出した時の風の強さ(最大呼気流量)のことで、喘息がきちんとコントロールできているかを調べることができます。
喘息の検査方法については、次の記事で詳しく説明しています。
喘息かも……と思ったら早期の病院受診が肝心!喘息検査の種類・方法まとめ
2.喘息持ちさんにオススメの運動鍛錬療法
運動療法は上手に運動を導入し、継続することによって運動誘発性喘息を改善することができると言われています。
また、運動への苦手意識をなくし、運動に対して自信と積極性を持ってもらうための療法です。
ステップ1:腹筋と背筋を鍛える。
- 仰向けに寝て、手を頭の後ろで組み、ひざを立て、腹筋を鍛える。
- 頭を持ち上げて、お腹のヘソを覗く。覗く体勢でしばらくキープ。
- 次に仰向けのまま、両手を身体の側面におき、ひざを立て、背筋を鍛える。
- 腰を持ち上げて、お尻をキュッと締める。そのままの体勢でしばらくキープ。
- 自分の体力に合わせて、数回繰り返す。
ステップ2:腹式呼吸を体に覚えさせる。(発作時でも楽に呼吸ができるようになる)
- 仰向けに寝て、両足を肩幅より少し狭い感じで開きます。軽くひざを合わせましょう。
- 足先は、「八」の字にする。爪先が軽く触れるイメージ。
- 手のひらが入るくらい、腰を少し反らす。
- 下腹を引っ込めて、ゆっくりとできるだけ長く息を吐き出しましょう。息を吐くときは、背中は床にしっかりとつけて、お尻は床から少し浮かせる。
- 息を吸うときは、背中を反らし、お尻は床にぴったりとつける。お腹を動かさずに、腰で吸うようにします。
- 自分のペースで1~5で適度に繰り返す。この動作を1分間に3~4回行うのが目安。
ステップ3:無理のない範囲で運動をしてみる。
- 軽いジョギング(喘息児は呼吸法が下手な場合が多く、走る時に鼻で2吸気、口で2呼気とリズムをとって走るとよい)
- 乾布摩擦による皮膚の鍛錬
- エアロバイクやルームランナー
- 水泳
水泳は”喘息発作が起きにくい”スポーツであることが知られています。
(参考)ぜんそく予防体操|公益財団法人 世田谷区保健センター
こちらのページでは、腹筋・背筋を鍛える運動や腹式呼吸のやり方をイラストを用いて、分かりやすく解説されています。
(体験談)週1の水中ウォーキングや水泳で、免疫力や体力増進に。
喘息に良いとされる水泳をたまにしています。
水に入るだけでもいいとのことなので、水中ウォーキングやリラックス程度で浮かぶだけでも効果があると思います。
運動は体調が良ければ医師に相談しながら無理のない程度から始められれば良いかと思います。
私自身運動をする前と後ではかなり病状の重さに違いがあります。水中ウォーキングなどの軽めから定期的に週1から2回の運動をお勧めします。
私は免疫力も上がり体力もつき、良いことばかりでした。
(体験談)小学生の時に水泳部に入部。呼吸器を鍛える遠泳で発作軽減。
物心付いたときには、重度のぜん息と戦っていました。
風邪を引けば息苦しさとヒューヒューという喉の音で眠れず、年に一度は肺炎にかかり入院していました。
ステロイド吸入薬を吸引すれば一時的には治るのですが、根本的な体力が無いため、季節の変わり目にはすぐまた症状が出てしまう状況でした。最もひどかったのは小学3年生の時で、併発した肺炎がなかなか治らず、1か月にわたり入院するほどでした。
さすがに両親はこれに堪え、家庭用吸入器を購入するとともに水泳部へ私を入部させました。水泳部では、タイムを伸ばすというよりは呼吸器を鍛えるという意味でひたすら遠泳をさせられていた記憶があります。
結論として、それからぜん息は非常によくなり、年に1回出る程度になりました。
(引用元):水泳で治った小児ぜんそく
3.押してみて!喘息症状の緩和・予防にオススメのツボ。
喘息に効くツボ① 定喘(ていぜん)
比較的軽度の喘息発作に有効なツボです。
<ツボの探し方>
首を前に倒すと襟足あたりに隆起する骨(第七頸椎)より少し下です。
第1胸椎との間から左右5mm程度離れたところにあります。
<ツボの押し方>
息を吐きながら、爪で強めにつねるか、つまようじ(尖っていない方)などで気持ち良い強さで刺激する。息を吸うときは力を弱める。その後お灸や温めたタオルなどで患部を温めるとより有効です。
小児喘息の場合は、大人が撫でてあげるだけでもオススメ。
喘息に効くツボ② 咳喘点(かくぜんてん)
<ツボの探し方>
手のひらの人差し指と中指の付け根の少し下を押してみる。
押して少し痛みのある場所。
<ツボの押し方>
爪で強めにつねるか、つまようじを数本束ねて、押し当てる。
5秒×5回刺激する。
喘息に効くツボ③ 中府(ちゅうふ)
鎖骨にある肺経のツボです。中=当たる、府=集まるを意味しています。
肺経の気が集まるところのツボという意味を持ち、肺の臓は呼吸機能を司るため、呼吸機能を高めたり、気道を広げることにつながるとされ、息苦しく感じる時にオススメ。
<ツボの探し方>
鎖骨外側の下にあるくぼみを探す。
くぼみから親指1本分下に中府がある。
<ツボの押し方>
片方ずつ押す。
また、中府に指をあてて、円を描くようにマッサージしてあげても効果的。
(参考)つぼ|静岡市の鍼灸専門治療院 喜らく
こちらのページでは、定喘・咳喘点・中府以外にもかわいいイラストとともにツボの解説がされています。
4.日頃の喘息コントロールと適度な運動で喘息の改善を!
運動誘発性喘息は、喘息重症度を軽減させることで、ある程度予防できるものです。
また、水泳は、心肺機能が高まり、基礎体力がアップして、発作が起こりにくい体づくりに有効です。
日頃からきちんと薬物療法を行い、喘息をコントロールしながら、呼吸器を鍛えるような運動を行うことは、運動誘発性喘息の改善につながります。無理のない範囲で運動鍛錬療法を取り入れてみるのは、いかがでしょうか。
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