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2018年7月6日更新

骨折や寝たきりのリスク大!高齢者や女性に多い骨粗鬆症の原因、症状、予防法、体験談

骨が弱く、スカスカになる骨粗鬆症は、高齢者や女性に多い病気。平均寿命が延びている現代、健康で長生きするためにも骨の健康を保つことはとても重要。早くから発症予防に取り組む必要があります。骨粗鬆症の原因や症状、予防法、体験談などをまとめました。
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高齢者や女性に多い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、骨の強度が落ちてもろくなる病気。骨内部のキメが粗くなってスカスカになり、骨折を起こしやすい状態になっています。

発症初期は自覚症状が全くなく、気付かないうちに少しずつ症状が進行することから「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」とも言われる骨粗鬆症。本人が気付かないうちに症状が進行し、骨折を起こしているというケースも少なくありません。

高齢者に多いこのような骨折は「いつのまにか骨折」と呼ばれており、最近、テレビCMなどでも注目されていますが、年齢が上がってからの骨折は、要介護や寝たきりの主な原因になるため、大きな社会問題になっています。

年々延びている日本人の平均寿命。いつまでも健康で自立した生活を送るためにも、骨粗鬆症の予防はとても重要。そこで今回は、骨粗鬆症の原因や症状、予防法について詳しくご紹介します。

(参考)厚生労働省 平成28年 国民生活基礎調査 Ⅳ介護の状況
※厚生労働省による介護についての調査結果です。
(参考)日本イーライリリー株式会社 骨粗しょう症による「いつのまにか骨折」
※いつの間にか骨折の内容や検査や治療法などを詳しく見ることができます。

1.骨粗鬆症(こつそしょうしょう)ってどんな病気?

骨強度(骨の強さ)が落ちることによって発症する骨粗鬆症。

骨強度は骨量(骨密度:骨に含まれるカルシウムの量*1)骨質(こつしつ:骨内部の質)によって決まりますが、骨量が若い頃(20代)に比べて2割減少すると「疑いあり」、3割以上の減少が認められると「骨粗鬆症」と診断されます。

「年を重ねれば骨が弱くなるのは当たり前」と思うかもしれませんが、骨粗鬆症は決して自然な老化現象ではありません。

明らかに骨の病的な変化であり、体質や長年続けてきた生活習慣も関係していることから生活習慣病の一つと考えられています。

現在、日本国内の骨粗鬆症患者は推定1,280万人。高齢化が進んでいる日本では、今後さらに患者数が増えると予想されています。

また、高齢者の病気と思われがちな骨粗鬆症ですが、骨に良くない生活習慣を続けていれば、若い方でも発症する可能性も。潜在的な骨粗鬆症予備軍の方も大勢いると考えられます。

まずは、ご自身で骨粗鬆症の兆候や発症のリスクがあるかどうか、セルフチェックしてみましょう!

*1 骨密度とは体積あたりの骨量のこと。 カルシウムなどのミネラルが、骨にどれくらい含まれているかを示しています。

骨粗鬆症セルフチェック

≪症状編≫

  1. 腰や背中に痛みを感じる
  2. 背中が丸まってきた
  3. 以前より身長が縮んだ(2㎝以上)
  4. 歩きにくさを感じ、転ぶことがある
  5. ちょっとしたことで骨折したことがある

≪生活習慣編≫

  1. 偏食気味である
  2. 塩分の高い食事が多い
  3. 牛乳や乳製品、小魚などのカルシウムをあまりとらない
  4. タバコを吸う
  5. お酒を飲む
  6. ダイエットを繰り返している(いた)
  7. 運動不足である
  8. 女性である(閉経している)
  9. 年齢が70歳以上である
  10. 家族に骨粗鬆症の人がいる

≪症状編≫のチェックが多い場合、すでに骨粗鬆症を発症し、症状が進行している可能性が高くなります。

また、≪生活習慣編≫にチェックが多かった場合は、現在の生活が骨粗鬆症発症リスクの高い生活(状態)になっている恐れがあります。今一度、ご自身の生活習慣を見直してみましょう。

※上記チェックリストは、あくまでも目安です。確定診断には医療機関での受診が必要です。

骨粗鬆症

(引用画像)公益財団法人 骨粗鬆症財団 正常な背骨の縦断面
※正常な人の背骨は、内部がきめ細かくなっています。

骨粗鬆症②

(引用画像)公益財団法人 骨粗鬆症財団 骨粗鬆症の背骨の縦断面
※骨粗鬆症の方の場合、内部が粗くスカスカになっているのが分かります。

骨粗鬆症を発症しやすいのはどんな人?

①高齢者

骨の成分に欠かせないカルシウムは、毎日の食事で取り入れることができますが、高齢になると食事量そのものが減るため、カルシウムが不足してしまいがち。

さらに、腸のカルシウムを吸収する力や、その吸収を助けるビタミンDを作る力も鈍くなってくるので、年齢が上がるにつれて骨粗鬆症のリスクは上がっていきます。

骨粗鬆症年代別有症率

(図)骨粗鬆症の年代別有病率 Calooマガジン編集部
※年齢が上がるにつれて骨粗鬆症を患う人の割合は増えていきます。クリックすると図が拡大します

②閉経後の女性

女性の骨量は18歳頃に最大値になります。*2

その後、40代半ばまでほぼ一定量を維持しますが、閉経を境にガクッと減少します。これは骨量(骨密度)を保つ働きのある女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が閉経を境に激減するため。

閉経の平均年齢は50歳前後と言われており、閉経後10年程度で女性の骨粗鬆症患者さんが急増します。(子宮や卵巣の手術で人工的に閉経した場合も例外ではありません。)

実際、日本国内の骨粗鬆症患者のうち、男性患者は300万人程度ですが、女性患者は980万人程度3倍以上。もともと男性に比べると女性は骨が細く骨量が少ないこともあり、60代女性の3人に1人が骨粗鬆症を発症するとも言われています。

*2 男性の骨量(骨密度)が最大値になるのは18~20歳程度です。

女性の骨密度変化
(図)女性の骨量(骨密度)の変化  Calooマガジン編集部 ※クリックすると図が拡大します
※成長期に最大骨量に達し、その後ほぼ一定だった骨量が、閉経を機に急激に減少しています。

③ダイエットをしている人

乳製品などをよく摂る欧米人に比べ、日本人はもともとカルシウムの摂取量が足りていない状態。

その上にダイエットのために無理な食事制限を行ってしまうと、さらにカルシウム不足は深刻になります。(もともと食が細く、痩せ体質の人もカルシウム不足の可能性あり)

特に10歳代の身体の成長期は骨の成長もピーク。この時期に骨量を最大に増やしておくことは将来の骨粗鬆症の予防に役立ちます。反対に、この時期に体重や体脂肪を落としすぎて、十分な骨量を作ることができないと、若いうちから骨粗鬆症を起こしやすくなってしまいます。

④内分泌疾患、生活習慣病の持病がある人、ステロイド剤の内服をしている人

骨粗鬆症の中には、副甲状腺機能亢進症、関節リウマチ、糖尿病などの内分泌疾患生活習慣病によって発症するものや、胃の切除手術吸収不良症候群*3などによって十分な栄養が摂れなくなるために発症するものがあります。

さらに薬の作用が原因で骨粗鬆症になる場合もあります。体内の炎症を抑え、免疫を抑制する効果があるステロイドは、さまざまな病気の治療に使用されますが、長期にわたる使用は骨形成を促すホルモンの分泌の減少につながり、骨粗鬆症を招くことが分かっています。(ただし塗り薬を除く)

このように病気や薬が原因で発症する骨粗鬆症は「続発性骨粗鬆症(ぞくはつせいこつそしょうしょう)」と呼ばれています。加齢や閉経、誤った生活習慣による「原発性骨粗鬆症(げんぱつせいこつそしょうしょう」とは異なるタイプの骨粗鬆症で、自分の意思では進行のコントロールが難しいのが特徴です。

*3 吸収不良症候群とは、病気や手術など何かしらの理由により食物の栄養素が小腸で適切に吸収されなくなってしまう状態のこと。

(参考)公益財団法人 骨粗鬆症財団 骨粗鬆症について
※こちらは骨粗鬆症財団のサイトです。骨粗鬆症の原因や症状、治療法などについて分かりやすい説明を見ることができます。
(参考)公益財団法人 骨粗鬆症財団 骨粗鬆症の予防は成長期から 骨が育つ思春期までを大切に過ごす
※骨粗鬆症予防のために作られたパンフレットです。
(参考)一般社団法人 日本生活習慣病予防協会
※こちらのページでは骨粗鬆症の患者数の内訳や、要支援になる原因などのデータを見ることができます。
(参考)骨粗しょう症有病率の性・年代別分布 いいほね.jp
※骨粗鬆症についての情報発信サイトです。骨粗鬆症についてのさまざまな情報を見ることができます。

2.骨粗鬆症発症で現れる主な症状とは?

初期は自覚症状がないため、発症に気付きにくい骨粗鬆症。変化や違和感を感じた時点で医療機関に行くとすでに骨粗鬆症が進行していることも少なくありません。

以下のような症状は骨粗鬆症が始まっているシグナル。ぜひ早いうちに一度、医療機関で検査を受けることをおススメします。

①以前より身長が低くなった

「身長の低下」は、骨粗鬆症に良く見られる症状。身長が2㎝程度縮んでいる場合には、骨粗鬆症の可能性があります。

身長が低くなるのは、骨が弱くなることで、積み重なった背骨の小さな骨(椎骨)がぐしゃっと潰れてしまうため。これがいわゆる「いつのまにか骨折」と言われるもので、「脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)」を起こしてしまっている状態です。

骨は、潰れたままの状態で固まっていくため、背中が後に湾曲して丸くなり、さらに身長が低下していきます。

また、椎骨の1ヶ所が骨折すると、今度は周囲の椎骨に負担がかかるため、ドミノ倒しのように第2、第3の骨折も起こりやすくなります。(骨折連鎖といいます)

【体験談】健康に気を付けていても発症。骨粗鬆症でいつのまにか背骨を骨折していた!

私は、60過ぎたころから健康に気を使うようにしていてサプリメントは勿論、普段の生活習慣でも、よく歩く、エレベーターじゃなくて階段を使う等骨や筋肉が衰えないようにしていました。
しかし、1年に一回の健康診断で骨粗しょう症と診断されました。
そして背骨が骨折をしていました。背骨の骨折は全く痛みもなく、本当に骨折しているのかどうか半信半疑でした。
しかし、先生いわくこれは[いつのまにか骨折]だと言われました。
MRIのレントゲンを撮ると背骨が3本折れていました。
言われてみると最近腰が曲がりがちで身長が2~3センチ位低くなっていると子供達からも指摘されていました。

(引用)毎日牛乳200ml、小魚を食べていて健康ヨガもしているのに、骨粗しょう症でいつのまにか骨折をしていました。さくらもも(60歳代・女性)

上記の患者さんのケースでは、ご家族は身長の低下に気付いていたようですが、ご本人は特別な自覚症状を感じてはいませんでした。そのため発症に気付かず、健康診断で初めて骨折を指摘されました。

②腰や背中の痛みがある

脊椎圧迫骨折を起こすと、腰や背中の痛みが起こることがあります。

重いものを持ちあげる時や立ち上がる時など、動作をする時に痛みが強くなるのが特徴で、寝返りが打てなくなったり、仰向けに寝ることができなくなったりすることもあります。

通常、潰れてしまった椎骨が固まるにつれて、痛みは治まることが多いですが、骨が上手く固まらないといつまでも痛みが残ってしまうことがあります。

【体験談】長期間続く原因不明の腰痛。風邪のための通院時に骨粗鬆症が判明。

酷い腰痛が毎日続いてるんだけど、仕事柄仕方ないのかしら…と母が漏らしたのがはじめでした。
母は男性でもしんどいと言われる力仕事を生業としており、普段から重い物を持ったり長時間立ちっぱなし…という日常を送っています。

痛い痛いとあまりにも長い間言うもので、内臓に何か病気を抱えているのでは?と、大きな大学病院に連れていきました。
簡単な検査をしたところ異常はないし、その年の健康診断でも引っ掛かっていないのであれば問題ないんじゃないかなぁ?というのが医師の診断でした。

しかし、日に日に痛みは強くなるのか、腰を押さえてうずくまるようにする母を何度も見かけるようになりました。
内臓でないなら子宮の病気ではと、今度は産婦人科に掛かりました。
そこでも特に異常はないとのことで、原因がわからず困り果ててしまいました。

風邪にかかり、近所の病院に点滴を打ってもらいに行ったところ、咳の度に腰を押さえる母に先生が気付き、『いつからなのか』『どういった時に痛むか』などを聞いてきたそうです。
そこで先生が『もしかしたら骨粗鬆症かもしれないよ?』とレントゲンを撮り、超音波検査をしてくれたそう。
そこで骨粗鬆症と診断されました。

母は38歳で閉経したのもあり、ホルモンのバランスが崩れているからか骨粗鬆症になりやすいからだになっていたそうです。

(引用)腰痛から始まった母(56歳)の骨粗鬆症。早期閉経だったのも一因か… みふみふ(30歳代・女性)

上記の患者さんのケースでは、長い間悩まされていた腰痛は骨粗鬆症による痛みだということが判明しました。女性は閉経を迎えると骨粗鬆症になりやすくなります。この方の場合、早期閉経も骨粗鬆症の発症に影響を及ぼしていると考えられます。

③ちょっとしたことで骨折する

脊椎の圧迫骨折以外にも、尻もち転倒などのちょっとした衝撃で骨折をしてしまうことがあります。

「脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ)」と呼ばれ、骨の強度が落ちていることが原因で起こる骨折であり、時にはくしゃみでも骨折することもあります。

特に骨折しやすい部位は、足の付け根(大腿骨頚部:だいたいこつけいぶ)、胸や腰(胸腰椎:きょうようつい)、肩(上腕骨頚部:じょうわんこつけいぶ)、手首(橈骨遠位端:とうこつ)です。

中でも、足の付け根の大腿骨頸部の骨折は、歩くことが難しくなり、杖や車いす生活を余儀なくされるため、高齢者の方の場合、寝たきりや引きこもりの原因になることがあります。

高齢者の骨折部位

(図)高齢者が骨折しやすい部位 Calooマガジン編集部

【体験談】度重なる骨折や骨のひび。検査の結果は「骨粗鬆症の一歩手前の状態」だった!

母親が、たんすに小指をぶつけて冷やしていたのですが、明らかに色がおかしくなってきて何もしなくても激痛があるとのことで病院へ行くことになりました。

病院でレントゲンを撮ってもらい写真を確認したところ骨が折れていました。小指を固定して、ギブスをつけて様子を見ることになりました。出来るだけ、足に負担をかけないようにと言われ、痛み止めの薬も貰いました。定期的に通院を繰り返して2ヶ月くらいで完治しました。次からは怪我をしないように気をつけてよと笑って話していたのですが、母親が掃除中に今度は横腹をドアにぶつけたみたいでした。そんなに強くぶつかっても居ないのに激痛が走っているみたいで、病院に行きました。レントゲンを撮ってもらい確認するとひびが入っていました。コルセットと痛み止めを貰い、定期的に通院して3ヶ月くらいで完治しました。

年齢的に骨が弱くなっているのか聞いてみたのですが、レントゲンを見たところ、それもあるかもしれないと医師に言われ、低骨密度群という骨粗鬆症予備軍の可能性も指摘され、気になるようなら総合病院の紹介状出すから検査してもらうかどうか聞かれたので、総合病院で検査をすることになりました。

骨密度の測定、レントゲン、尿検査、血液検査を行ったところ、骨粗鬆症までは行かないが、骨粗鬆症予備軍と言うことで予防するように言われました。それからは、散歩を毎日のように行う、牛乳や豆腐でカルシウムをよく摂取するようになりました。骨粗鬆症にならないように現在も予防を続けています。

(引用)足の小指の骨折で発覚。母親が骨粗鬆症予備軍でした。牡丹372(30歳代・女性)

上記の患者さんの場合、前述で紹介した部位ではありませんでしたが、骨折やひびが続いたことで検査をしたところ、骨粗鬆症の予備軍と診断されました。それほど強い衝撃でなくても骨折やひびが入ってしまっていることから、骨量が減ってきたために起こる脆弱性骨折であったと考えられます。

(参考)亀田メディカルセンター 亀田総合病院 脊椎脊髄外科
※こちらのページでは脊椎圧迫骨折についての詳しい情報を見ることができます。
(参考)公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット 高齢者の病気 骨折
※こちらのページでは高齢者の骨折について詳しい情報を見ることができます。

3.骨粗鬆症の発症のメカニズムと原因

なぜ骨の中のカルシムが減ってしまうのか?今度は骨ができる仕組みや骨が弱くなる原因を見てみましょう。

骨が作られる仕組みと骨粗鬆症発症のメカニズム

硬い骨は一度作られるとずっとそのまま使われると思っている方も多いのではないでしょうか?

実は、しなやかで丈夫な骨を保つため、破骨細胞(はこつさいぼう:古い骨を壊す)と骨芽細胞(こつがさいぼう:新しい骨を作る)という細胞によって常に3~6%の骨が新しく作り替えられています。

古い骨を壊して吸収する「骨吸収(こつきゅうしゅう)」と新たな骨を作る「骨形成(こつけいせい)」は、3ヶ月くらいかけて行われます。この一連の骨のメンテナンスは「骨代謝(骨リモデリング、骨改変)」と言われ、このバランスがうまく保たれていれば、骨粗鬆症になることはありません。

そのメンテナンスのカギになるのがカルシウム。体内に摂り込まれたカルシウムの99%は骨や歯に蓄えられ、骨代謝をコントロールしています。

しかし、何らかの理由でカルシウムが不足してしまうと、骨形成よりも骨吸収の方が上回ってしまいます。すると、新しい骨の形成が追い付かなくなるため骨の強度が落ち、その結果、骨粗鬆症を招いてしまいます。

骨代謝

(引用画像)骨のリモデリング いいほね.jp
※破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成の流れが良く分かります。

発症要因①加齢

年を重ねると食事量が減るのが一般的。カルシウムの摂取量も少なくなります。また、腸の栄養を吸収する力が落ちていることや、骨を作るためのホルモンの分泌も悪くなっていることなどから、骨代謝のバランスは崩れやすくなります。

加齢により緩やかに骨量が減るのは自然な生理現象ですが、骨粗鬆症のような明らかな骨量の減少は、ロコモティブシンドローム*4の大きな要因の一つであり、介護や寝たきりなどになる可能性が高くなります。

*4 ロコモティブシンドロームとは、骨や関節、筋肉などが衰えて自立した生活が難しくなり、介護などが必要になる可能性が高くなること。

発症要因②食習慣

骨形成に必要なカルシウムは食事で摂る必要がありますが、カルシウムだけを摂れば良いというわけではありません。

カルシウムは吸収率の悪い栄養素(吸収率は成人の場合25~30%)であるため、カルシウムの吸収を高めるビタミンDビタミンKたんぱく質など他の栄養もバランスよく摂る必要があります。

毎日の食事で好き嫌いやダイエットなどの偏食を続けていると、充分な栄養が確保できずに低栄養状態になり、カルシウム不足にも陥りやすくなります。

発症要因③運動不足

適度な運動は、骨に刺激を与え、負荷をかけることで骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きが活発になるということが分かっています。

そのため、普段からあまり身体を動かさずに運動不足の状態が続いていると、骨の形成のスピードが鈍くなり、結果的に骨の強度が弱くなります。

発症要因④嗜好品(たばこ・アルコール・カフェイン)

タバコは、血流を悪くして胃腸の働きを抑えてしまうため、カルシウムの吸収が悪くなります。また、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌も妨げてしまうため、女性の場合はさらに骨量が減るリスクが高まります。

アルコールは、適量であれば食欲を増進し、栄養摂取に役立ちますが、量が多くなるとアルコールの利尿作用でせっかく取り込んだカルシウムを排出してしまいます。

同じくコーヒーのカフェインにも利尿作用があるため、飲み過ぎないように注意が必要です。

発症要因⑤遺伝

骨の強さは加齢や生活習慣の他に、遺伝的な要素もあることが分かっています。

家族に骨粗鬆症患者がいる場合や、足の付け根(大腿骨近位部)を骨折した方がいる場合は、特に注意が必要。

なかでも、母と娘の場合、骨密度への遺伝の影響はおよそ70%と考えられています。また、父母どちらかの親に足の付け根の骨折歴がある場合は(家族歴)、骨粗鬆症による骨折のリスクが1.18倍に上がります。

(参考)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版 
※骨粗鬆症の治療法についてのガイドライン。原因や症状などについても詳しい記載があります。
(参考)いいほね.jp

4.毎日の積み重ねが大切。骨粗鬆症予防の対策3つ

一度、発症してしまうと少しずつ進行していってしまう骨粗鬆症。まずは発症を予防することが大切です。

年齢が上がってからだけではなく、若いうちから食事や運動などに気を付けることで、将来の発症のリスクを減らすことは可能です

せっかく平均寿命が延びても寝たきりでは困りますよね。大切なのは、健康で長生きできる「健康寿命」を延ばすこと。

かけがえのないご自身の身体です。食事や運動など日々の努力を怠らず、いつまでも元気でいられるようにしておきましょう。

①毎日の食事でカルシウムをたっぷり補給する。

一日に必要なカルシウム量は成人の場合700~800㎎程度。日本人の場合は常に100~200㎎足りていない状態なので、日々、意識して摂ることを心がけなければなりません。

カルシウムが豊富な食材の代表は乳製品。牛乳200mlには220㎎、ヨーグルト1個には約120㎎のカルシウムが含まれています。そのほか、チーズやアイスクリームなど、手軽に摂れるものが多いので、間食やデザートに取り入れると良いでしょう。

また、大豆製品や海藻、骨ごと食べられる小魚もカルシウムが豊富。いつもの食事にもう一品、副菜としてプラスするなど、毎日コツコツと摂るようにしましょう。

カルシウムを効率よく吸収するビタミンD(乾燥シイタケ、魚類など)やカルシウムの取り込みを促すビタミンK(納豆、緑黄色野菜、海藻など)を一緒に摂ることも大切です。

一度に栄養を大量に摂っても吸収できる量は限られています。まずは「欠食や偏食をしないで、毎食、バランスよく食べるということ」がポイントです。

農水省カルシウムが豊富な食品

(表)カルシウムの豊富な食品 農林水産省 みんなの食育を参考にCalooマガジン編集部で作成

※クリックすると図が拡大します。

カルシウムを排出させない!摂り方に注意が必要な食品とは?

食品の中には、せっかく摂り込んだカルシウムを身体の外に排出してしまう作用を持つものもあります。

その代表的な成分が「塩分」「リン」。これらの成分にはカルシウムの排出作用があります。

日頃から、薄味を心がけ、塩分の高い食事にならないように気を付けましょう。

また、リンは食品添加物に多く含まれています。インスタント食品やベーコン、ハムなどの加工食品、清涼飲料水を摂りすぎないようにすることも大切です。

その他、利尿作用でカルシウムを排出してしまうコーヒーアルコールの飲み過ぎにも注意が必要です。

②こまめな運動で体を動かす。

骨は、負荷がかかるほど骨を作る骨芽細胞の働きが活発になり、強くなります。

骨を強くするには、ウォーキング、ジョギング、エアロビクスなどの運動がおススメですが、階段の昇り降りや歩いて買い物に行くといった日常生活上の動作でも十分に効果があるので、なるべく日々の生活の中でこまめに体を動かすことを心がけましょう。

≪参考≫ 思い立ってすぐできる!「片足立ち体操」

簡単で、いつでも行うことができるおススメの体操は「片足立ち」。片足に体重を乗せ、フラミンゴのように立ってバランスをとります。

片足で立つことで両足の2倍の負荷がかかるため、骨が強くなるうえに、バランス感覚も鍛えられるので転倒予防にも効果的。

もし、片足で立つのが難しく、フラフラしてしまう時には無理をせず、壁やテーブルなどにつかまりながら行っても良いですが、すでに膝や腰などに痛みが出ているような方は、主治医の先生に相談してから行うようにしましょう。

片足立ち

(引用画像)いいほね.jp 骨粗しょう症の運動療法とは(2)
※脚は軽く上げるだけで良いので高齢者でも行いやすい体操です。

③タバコは百害あって一利なし!今すぐ禁煙を。

全身の血流を悪くし、カルシウムの吸収を妨げるタバコは骨量を減らす大きな原因になります。

また、女性ホルモン(エストロゲン)の低下をもたらすため、タバコを吸っている女性は骨粗鬆症のリスクがさらに高くなることも分かっています。

加齢、閉経などは自分では避けられない要因ですが、生活習慣の一つである喫煙は、自分自身で見直して改めることができるもの。

骨粗鬆症だけでなく、そのほか多くの病気の原因にもなる喫煙は、百害あって一利なし。丈夫な骨や健康な身体を保つためにも今すぐに禁煙に取り組みましょう。

(参考)「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書
(参考)公益財団法人 骨粗鬆症財団 保健指導シート1 カルシウムを多く含む食品 
(参考)いいほね.jp 食事と運動
(参考)厚生労働省 e-ヘルスネット 喫煙によるその他の影響

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