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2016年12月26日更新

歩けない、転ぶ、飲み込めない…サルコペニア(筋力低下)が原因?症状・予防

サルコペニアは、別名「加齢性筋肉減弱症」。加齢や疾患・栄養・活動が原因で、筋肉量が著しく減少すること。サルコペニアがきっかけとなり、要介護状態を引き起こす可能性があるので早めの予防が大切。症状・判断基準・予防法(栄養・運動)等ご紹介します。
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1.介護予防に密接に関係!加齢・疾患による筋力量の低下”サルコペニア”

2016年9月現在日本の65歳以上の高齢者は、3,461万人(総人口の27.3%)で、そのうち70歳以上は2,437万人(総人口の19.2%)にも上っています。これは、統計を取り始めた1950年(同4.9%)以降、年々増加の一途をたどり、国際的にみても類を見ない速いスピードで超高齢社会を迎えています。

高齢者人口(出典)高齢者人口と割合の推移|総務省統計局

昔に比べ、活動的ではつらつとした高齢者が増えている一方で、筋肉量の低下によって「転倒」したら「骨折」してしまい、更にそのまま「寝たきり」の要介護状態を引き起こす可能性もある「サルコペニア」に罹っている高齢者も増えています。

今回は、そんな日常生活の動作が、段々と制限されていくような体の状態「サルコペニア」について、判断基準や症状・原因・予防法についてご紹介します。

(参考)高齢者の人口|総務省統計局
こちらのページでは、高齢者の人口推移の具体的な数字および国際比較も見ることが出来ます。

歩く速度が遅い、握力が弱い、転びやすい-サルコペニアの症状セルフチェック

  • よく転倒する。
  • 歩く速度が遅くて、青信号の間に渡り切れない。
  • 怪我をしていなくても、立ち上がる時や歩行に杖や手すりが必要となり、動くのが億劫になる。
  • よくつまづく
  • 日常生活の動作がうまくこなせなくなる。(握力が弱く、ペットボトルが開けられないなど)
  • 形あるものを上手く飲み込めない。食べるとむせる。(嚥下障害)
  • 病気からの回復がしにくくなる。
  • 体重が急激に減る。(低栄養
  • 活動量が減り、より肥満になった。
    →膝の負担が増えて、さらに別の疾患(変形性膝関節症など)に繋がることも。

これらの症状のうち、複数該当がみられる場合、サルコペニアに罹っている可能性があります。

高齢になると、次第に食べる・飲み込むことに必要な筋肉が低下し、嚥下障害(えんげしょうがい)を起こしやすくなります。
また、嚥下障害が起こすと痩せてくる高齢者も多いのですが、逆に痩せていなくても、実は筋肉が脂肪に変わっているサルコペニア肥満に罹っている場合もあり、近年問題となっています。

サルコペニア太もも画像
(出典)筋肉を強くしよう「サルコペニアを防ぐ」|きょうの健康 NHK

上記のような症状が複数見受けられる場合には、まずはかかりつけ医に相談してみると良いでしょう。

(参考)嚥下障害|テーマパーク8020 日本歯科医師会
こちらのページでは、加齢による高齢者の咽頭位置の変化についても、イラスト画像とともに解説されています。

全身の筋肉量が減少する「サルコペニア」が、”寝たきり”や”要介護状態”の原因にも。

サルコペニア」とは、ギリシャ語で筋肉「sarx(サルコ)」+喪失「penia(ぺニア)」を合わせた造語で、アーウィン・ローゼンバーグ氏(Irwin H Rosenberg )によって1989年に発表されました。

日本では、別名「加齢性筋肉減弱症(かれいせいきんにくげんじゃくしょう)」とも呼ばれています。
あまり聞きなれない名前ですが、この「サルコペニア」は、ここ数年テレビや新聞などでも特集されることが増えてきた言葉なのです。

サルコペニアとは、加齢や疾患に伴って筋肉量が著しく減少することによって、握力や体幹筋など全身の筋力低下が起こるような病態(状態)のことです。

実は、サルコペニアも「メタボ」同様に”予防概念”の意味合いが強い病態です。

そもそも「予防」とは、病気を治す「治療医学」に対し「予防医学」の観点から、病気の発生を未然に防ぐという意味だけでなく、寿命の延長や身体的・精神的健康の増進という広い意味もあります。

つまり、”「メタボリックシンドローム(メタボ)」がきっかけで、糖尿病や高血圧・脳血管障害など「生活習慣病」が引き起こされる可能性がある”と同様に、サルコペニアがきっかけで、寝たきりなど要介護状態が引き起こされる可能性があります。

そのため、できるだけ早い段階でサルコペニアを予防し改善することが、介護が必要な状態にならない、介護が必要となったとしても、できるだけ心身の機能維持・悪化させない”介護予防”に繋がると考えられています。

(参考)元気なうちから介護予防 |横浜市
(参考)サルコペニア|健康長寿ネット 公益財団法人 長寿科学振興財団
こちらのページでは、サルコペニアの発生メカニズムや筋肉量の減少のしくみについても、解説されています。

サルコペニアの判断基準-①歩行速度②握力③筋肉量の測定

2010年に策定された欧米人向けの判断基準を基に、2014年日本人を含む韓国・中国・台湾などアジア人向けのサルコペニア判断基準AWGS(ASIAN working Group FOR SARCOPENIA)により策定されました。

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(参考)サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&Aより|厚生労働省

(1)対象は、65歳以上の高齢者
(2)握力および歩行速度の測定を行う。

①握力 両手で3回ずつ計る。最高値を取る。 基準:男性 26kg未満・女性 18kg未満
②4~5mの歩行で測定し、歩行速度が秒速0.8m以下の場合(≒横断歩道を青信号のうちに渡り切れない速さ

上記のうち、①か②もしくは両方に該当する場合は、(3)の筋肉量の測定に進む。

(3)筋肉量の測定(DXAまたはBIA)を行う。

①DXAの場合 男性7.0kg/m²未満・女性5.4kg/m²未満
②BIAの場合 男性7.0kg/m²未満・女性5.7kg/m²未満

①または②に該当した場合には、サルコペニアである可能性があります。

また、筋肉量が基準値以上の場合でも、握力や歩行速度が基準値に満たしていない場合、別の病気(変形性膝関節症など)が関連している可能性があります。

<DXAとは?>

二重エネルギーX線吸収測定法。脂肪と骨を識別することに使われることが多く、骨量測定の標準方法として重視されている。CTやMRIに比べ、放射線被ばくが少ない。DEXA法と呼ぶことも。

(引用)福岡逓信病院

<BIAとは?>

生体電気インピ-ダンス法。生体に微弱な高周波電流を通電して脂肪量と除脂肪量(脂肪以外の体組織:骨・内臓など)を測定する。持ち運びできるタイプが多い。

(引用)サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A より|厚生労働科学研究補助金 高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究 研究班

2.サルコペニアが起こる原因と発生頻度は?

サルコペニアを発症する高齢者は、原因を1つに特定できず、複数重なっていることも多く、病態に個人差も多いのです。

サルコペニアが起こる原因-①加齢 ②加齢以外(活動・疾病・栄養)

筋肉量を見てみると、30代から年間1~2%ずつ減少していき、80歳頃までには約30%の筋肉が失われていきます。

(参考)サルコペニア|国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

一次性サルコペニア(加齢性サルコペニア)……「加齢」が原因。

また、長期ケア施設にいる高齢者よりも、在宅高齢者の方が一次性サルコペニアを生じやすい傾向があります。

二次性サルコペニア……加齢以外にも原因がある場合。

長期ケア施設・急性期病院にいる高齢者の場合、二次性サルコペニアを生じることが多くなっています。

  • 活動……寝たきり(ベッドで安静)・閉じこもりの生活習慣。
    入院時に生じることが多いが、障碍者や高齢者の中には短時間の安静でも筋肉量が減少していく。
    そのため、全身の筋肉量を無駄に低下させないようにすることが大事。
  • 疾患……炎症性疾患・悪性腫瘍(がんなど)や内分泌疾患(糖尿病など)、筋肉量を減少させる病気(パーキンソン病筋萎縮性側索硬化症多発性筋炎など)
  • 栄養……吸収不良・消化管疾患、食欲不振
    平成25年国民健康・栄養調査報告によると、”高齢者は健康維持に必要なたんぱく質が不足していることが多く、特に70歳以上では急激に摂取量が低下”していきます。

(参考)リハビリテーション栄養とサルコペニア|外科と代謝・栄養 50巻1号 2016年2月
(参考)サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A より|厚生労働科学研究補助金(長寿科学総合研究事業)高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究 研究班

高齢者の約8%、リウマチ患者の約50%がサルコペニアを発症しているというデータも。

国立長寿医療研究センターによる大規模な集団調査によると、地域在住高齢者(自立して生活をしている高齢者)のうち約7.9%、病院に通院している高齢者のうち約15%にみられ、約300万人(推定)もの高齢者がサルコペニアを発症していると考えられています。

さらに、サルコペニアと骨粗しょう症について、お互いの存在が骨と筋肉の脆弱化に関連していることも分かり、中でも調査を行ったリウマチ患者の約50%がサルコペニアを発症していました

そのため、今後リウマチ治療においても、サルコペニアの進行予防が重要な問題となっていくでしょう。

(参考)地域在住高齢者におけるサルコペニアの実態|医学のあゆみ 248巻9号
(参考)長寿医療研究開発費 平成26年度 総括報告書|国立研究開発法人

3.サルコペニア予防=意識的に運動して、お肉を食べ、外に出て社会とのつながりを持つ。

サルコペニア治療に承認されている薬剤は、2016年現在まだありません。

現在のところ、栄養管理・運動療法が推奨されています。

前述した通り、加齢とともに、人間の骨格筋の筋肉量は減少し、筋力も低下していきます。

筋肉を作るには「お肉」!面倒がらず、意識して栄養を取る。

筋肉を構成する細胞である”筋線維”の萎縮は、筋線維内の筋肉たんぱく質量に依存していると分かっています。

健常高齢者の健康維持には、最低でも体重1kgにつき 1.0 g/日のたんぱく質が必要とされていますが、サルコペニア状態の場合には、体重1kgにつき 1.2~1.5g/日程度のたんぱく質が必要です。(ただし、慢性的な腎臓障害など持っている場合は除く)

たんぱく質は、肉や魚、卵、牛乳、豆類などに多く含まれているので、日頃からバランスよく摂っていれば意識せずとも摂れる数値です。

しかし、高齢になってくると”お肉は体によくない”と思い込んでいる方も多く、さらに一人暮らしになると、より面倒くさくなり簡単なもので済ます→ますますお肉を食べない→抵抗力がつきにくく、病気になりやすい体→虚弱(フレイル)になりやすくなります。

特に、75歳以上の後期高齢者は低栄養になりやすいので、意識してお肉を摂ることが重要です

(参考)超高齢社会におけるサルコペニアとフレイル|日本内科学会雑誌 104 巻 12 号

有酸素運動(歩行など)+筋トレ(椅子スクワットなど)で筋肉量アップを目指す

筋肉量の増加には、散歩などの有酸素運動だけでなく、レジスタンス運動(筋トレ)を行うとより効果的です。
手軽に自分の体重を使って、椅子からの立ち上がりやスクワットなど行うことは、筋肉に適度な刺激を与えることになるので、サルコペニア予防には重要です。

(出典)体操で楽々介護予防|京都府理学療法士会
こちらのページでは、雨で外に出られない時にもできる体操など一日10分でできる椅子を使った体操を紹介されています。

人生は70歳より。サルコペニアの進行は予防で抑えられる。

「70才にてお迎えあるときは、今留守と言え

80才にてお迎えあるときは、まだまだ早いと言え

90才にてお迎えあるときは、そう急がずともよいと言え

100才にてお迎えあるときは、時機をみてこちらからボツボツ行くと言え」

(引用)人生は70歳より|仙厓義梵

こちらは、よく「長寿の心得」として有名な江戸時代の禅僧であり画家でもあった仙厓義梵こと、仙厓和尚の言葉です。

人は老いていくものです。誰でも最期まで人の手を煩わせたくないと思いますが、いつかは人の手を借りる時が来るかもしれません。

加齢は止められませんが、サルコペニアは早くから予防・トレーニングを行うことで、進行の程度を抑えることができます。

これからの超高齢社会に向けて、しっかり栄養と取りつつ運動を行い、要介護状態にならないよう日頃から介護予防に努めたいですね。

(参考)サルコペニア|e-ヘルスネット 厚生労働省

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