「心不全かも?」と思ったら。まずは受診!気になる検査の種類、目的は?

1.早期発見が大事!自分の心臓の状態を知るために。
息切れ、動悸、むくみ、疲れやすいなどの症状が一過性ではなく、しばらくの間続くようなことがあると心不全が疑われます。
心不全とは心臓の働きが弱まってしまう状態のこと。
一度、弱ってしまった心臓は、自然に良くなることはないので、必ず治療が必要になります。
見過ごして放置してしまうと、どんどん症状は進行していってしまうこともあるため、早期発見・早期治療が大切です。
一刻も早く治療を始められるよう、そのためにも、まずは検査をすることが大事です。
自分の心臓の機能レベルはどのくらい?心不全の程度を表す「分類」とは?
心不全といっても、その状態には軽いものから重いものまであるので、ひとくくりにはできません。
その心不全の程度を表すのに、以下の2つの分類があります。
これらの分類に当てはめてみることで、心不全の進行度を知ることが出来ます。
1.NYHA(エヌワイエイチエー、ニーハー)分類
クラスⅠ | 心疾患はあるが、身体活動に制約はなく、通常の労作では疲労感、動悸、呼吸苦が生じない状態。競技スポーツも行うことができる。 |
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クラスⅡ | 身体活動に軽度の制約があり、安静時には苦痛はないが、通常の身体活動が疲労感、動悸、呼吸苦を認める状態。軽いジョギングやレクリエーションゴルフはできるが、競技スポーツは苦しくてできない。 |
クラスⅢ | 身体活動に高度の制約があり、安静時に苦痛はないが、通常以下の身体活動で疲労感、動悸、呼吸苦を認める状態。自分のペースなら何とか家事を行ったり歩いたりすることはできる。 |
クラスⅣ | いかなる身体活動も苦痛を伴う状態。安静時にも疲労感や呼吸苦がある、または少しでも身体活動を行うと苦痛が増加する状態。 |
(参照)公益財団法人 日本心臓財団 「慢性心不全ガイドライン・エッセンス」
2.AHA/AHC分類
ステージA危険因子を有するが、心機能障害がない |
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ステージB無症状の左室収縮機能不全 |
ステージC症候性心不全 |
ステージD治療抵抗性心不全 |
(参照)公益財団法人 日本心臓財団 「慢性心不全ガイドライン・エッセンス」
2.何科を受診?病院ではまずどんな診察をする?
心不全は循環器である心臓の障害なので「循環器内科」、「心臓血管内科」などを受診することになります。
病院では、まず初めに問診から行います。
胸に聴診器を当てて、「心臓に雑音がないか」、「肺に水が溜まっている兆候がないか」などを確認します。
また、息苦しさ、動悸などの気になる症状の度合いや、いつからその症状が現れたかなどを聞かれます。
更に浮腫(むくみ)がある場合は、ふくらはぎを押してむくみの度合いなどをチェックします。
この結果、やはり心不全が疑われるとなると、検査に進むという流れになります。
最初は採血、レントゲン、心電図の簡単な検査から。
「どんな検査をやるのだろうか?」と不安になる方もいらっしゃると思います。
ですが、まず最初にするのは「採血、レントゲン、心電図」の3種類の検査です。
これらは健康診断でもお馴染みな検査なので、落ち着いて検査を受けることができるのではないでしょうか?
これら3つの検査で分かることは?
◆心電図
脈の乱れやこれまでに心筋梗塞などの病気がおきていないか、心臓が大きくなっていないかを確認します。
◆胸部レントゲン
X線で心臓が大きくなっていないか、肺に水が溜まっていないか、息切れの原因になるような症状がおきていないかを確認します。
◆採血
心不全になるとBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)というホルモンが増加するので、血液中のこのBNPの濃度を測定します。
精密検査が必要なケースは?
上記3つの検査の結果、数値に異常があると、更に追加でいくつかの検査が必要になります。
これらは心臓の専門医によって行われます。
◆心エコー法
超音波を使って心臓の断面図を描写する心不全の診断に欠かせない検査です。
心臓の動きを動画で記録出来るので、心臓の動きの状態を確認する他にも心臓のサイズを測ったり、形を見たり、弁の機能の確認ができます。
◆ホルター心電図
胸に電極のパッチをつけ、首には記録装置の入っている袋を下げます。
24時間、心電図を装着し、通常の生活を送っている間の心臓の動きを記録し続ける検査です。
◆心臓核医学検査(心シンチ)
心筋(心臓を構成している筋肉)の代謝を調べる検査で、所要時間は30分程度かかります。
放射性同位元素(ラジオアイソトープ:RI)を腕の静脈に注射し、特殊なカメラで撮影をします。
心臓の血液の流れを映し出すことが出来ます。
◆心臓カテーテル検査
心臓の中に細くて柔らかい管(カテーテル)を通し、心臓の部屋の圧力や血流を測定する検査です。
首腕や足の鼠蹊部などの動脈と静脈に針を刺し、カテーテルを挿入します。
当日は朝絶食する必要があります。所要時間は30分~1時間程度です。
◆冠動脈造影
カテーテル検査とセットで行う検査です。
カテーテルから造影剤を冠動脈に入れ、冠動脈で十分血液の流れているかを確認します。
◆MRI(磁気共鳴画像検査)
心筋の構造の詳しい画像から心筋のダメージを調べることが出来ます。
これらの検査を一人一人の症状にあわせて行います。
その後、心不全の確定診断、重症度レベルの判定がされると、それに必要な治療が始まることになります。
検査に入院は必要?日数はどれくらい?
これらの検査は、自覚症状がほとんどないような軽症の場合は、外来での検査もできます。
ですが、すでに日常生活の上でも息切れや、むくみ、動悸、夜間の呼吸困難などの症状が強く出ている場合は、入院をして検査となります。
お薬で体調をコントロールしながら検査を受けたほうが安心な場合があるからです。
入院の日数は症状の重さによって変わりますが、検査と治療の両方を並行して行う場合は、2週間程度の入院が必要となります。
費用は必要な検査の項目数、保険の負担率によって異なります。
3.検査から治療へ。悪化させないために。
検査結果で「心不全」と診断されると、まずはお薬での治療が始まります。
・強心剤
心臓の収縮する力を高める作用があります。
重症度に応じて数種類の薬を組み合わせて使うこともあります。
・利尿剤
心臓のポンプ機能がおちて体内に余分な水分が溜まると、全身にうっ滞(浮腫、うっ血)して心臓に負担がかかります。
利尿剤で余分な水分を出すことで心臓への負担を減らす目的で処方されます。
・血管拡張剤
心臓の血管を広げて、心臓の負担を減らす効果があります。
その他にも、心不全をおこす原因となる病気がある場合は、悪化させないように、その治療薬とあわせて処方されるケースもあります。
これらのお薬は、お医者さんが、一人一人の経過を見ながら処方しています。
症状がなくなったからと途中でやめると再発する恐れがあります。
心不全の状態が進行してしまうと、服薬ではすまず、ペースメーカーの埋込、心臓移植などの外科的手段が必要となる場合もあります。
処方されたお薬は、自己判断せず、必ず継続して飲み続けることが何よりも大事です。
4.心不全は毎日の生活習慣の影響を受けやすい!自分の体を守るためにできること。
心不全と言われて、「これからの生活はどうなるの?」と不安になるかもしれません。
何もしなければますます進行してしまいます。
ですが努力次第では今と同じような状態をキープすることもできるのです。
病院での治療と併せて、毎日の生活の中でも意識して気を付けることで、体調を維持し、症状の悪化を抑えることは可能なのです。
心臓の負担を減らすための5カ条
1.食事に気を付ける。
塩分と水分の取り過ぎは体の水分の循環が悪くなり、心臓に負担をかけるので、摂取する量をコントロールしましょう。
また、肥満も心臓への負担が高くなります。食べ過ぎに気を付けましょう。
2.タバコはやめる。
タバコに含まれる化学物質のニコチンは心臓だけでなく、肺にもよくありません。今すぐに禁煙をしましょう。
3.お酒の飲みすぎはやめる。
お酒の飲みすぎは心不全の原因となり、お酒を止めると劇的に心臓の働きが良くなることも。
少量のお酒はストレス発散などに良いですが、飲みすぎると心臓に負担となります。
4.軽い運動をする。
激しい運動は心臓の負担になりますが、ウォーキングなどの軽い運動は心臓の基礎力を高められます。
ストレスの解消やリフレッシュにもなるのでおすすめです。
お医者さんと相談し、それぞれの状態に応じて、運動の強度を調整しましょう。
5.感染症に気を付ける。
風邪やインフルエンザなどの感染症になると、発熱や炎症がおきます。
それによって身体の代謝が良くなりますが、心臓には負担となってしまいます。
インフルエンザはワクチンの接種をする、普段からうがいや手洗いを徹底するなど、感染しないための対策をとりましょう。
これらの5つのことは、毎日の生活の中で自分で気を付けられることばかりです。
どんなに有効な治療をしていても、生活が乱れたままでは改善はしません。
少しでも辛い症状を抑え、1日でも長く、今の心臓の機能を保てるように、日々の対策をすることが重要です。
貴方自身やあなたのことを大事に思っている人たちのためにも、検査、治療、生活改善に取り組み、「心臓に優しい生活」をしていきましょう。