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2016年9月8日更新

静かに進行する怖さ。アルツハイマー型認知症の進行度を表す「3つの段階」

アルツハイマー型認知症は、一度発症すると治癒することはない病気。数年かけて少しずつ進行していきます。症状の進行度合いは3つの段階に分けて考えられます。それぞれの段階の特徴や症状をまとめました。
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アルツハイマーは年月とともに徐々に進行していく病気。

脳の神経細胞が破壊され、脳が萎縮することで起こるアルツハイマー型認知症はまだそのメカニズムが解明されていない病気です。

現在、有効な予防薬や特効薬もなく、一度発症すると、数年という時をかけて静かに、しかし確実に進行していく病気です。

アルツハイマー型認知症の病気の進行度は軽度認知症、中等度認知症、高度認知症と3つの段階に分類されます。

患者さんにより個人差はありますが、その多くが発症から4~6年程度で高度認知症へと進行していきます。

進行の段階が進むにつれ様々な機能が低下し、記憶障害見当識障害判断力の低下といった障害が現れ、これまで問題なく出来ていたコミュニケーションや日常生活を送るのが難しくなります。

段階別にみる「中核症状」にはどんなものがある?

認知症の直接の発生原因である「脳細胞が壊れる」ことでおき、認知症を発症した方に誰にでもみられる症状を「中核症状」と言います。病気の進行段階別による主な症状や特徴を以下にまとめてみました。

◆軽度認知症

最初は周囲も本人も気づかないような些細な「物忘れ」など、加齢による症状と見分けのつかないような記憶障害が始まります。
次第に見当識障害と言われる症状が徐々に始まり、まず日付や曜日などを把握する認知能力に衰えが見られます。
また、物の置き場所が分からなくなるため、財布や通帳といった貴重品を周囲の人が盗ったと疑う「もの盗られ妄想」というのもこの時期から現れます。
これまで出来ていた料理の手順が分からなくなったり、電化製品の使い方が分からなくなったり、だんだん分からなくなることが増えてくるため、本人も焦りや、不安などのストレスを感じるようになり、うつ症状が出る場合もあります。

◆中等度認知症

軽度から始まっていた見当識障害がさらに進行し、場所や時間、人の認知が難しくなります。
過去と現在の時間軸が交錯し、記憶が混同することがあります。
出かけるときは靴を履く、季節感にあった洋服を選ぶなどという常識的な判断能力が衰え、家の中や慣れている場所であっても、自分のいる場所が分からなくなり、迷子になりうろうろと歩き回ることもあります。
この時期はまだ体力があり自由に動くことが出来るため、勝手に外を徘徊、迷子になって警察に「保護」されることが多いのもこの時期です。
分からない事、出来ないことが増えていく自分の状況に強いストレスを感じ、心のケアも必要になってきます。
周囲の介護者にとっては一番大変な時期であるとも言われています。

◆高度認知症

この時期になると、脳内の大脳皮質の機能の大部分が失われ、運動機能にも障害が現れ、歩く、座るといった動きが出来なくなってきます。
家族など身近な人の顔が分からず、話しかけても無表情で反応しなくなるため、コミュニケーションが取れなくなってきます。
さらに食べ方が分からなくなる他、飲み込む力(嚥下能力)もなくなってくるので食事をとることが難しくなります。
食事がとれないうえ、寝たきりになる事でさらに体力は落ち、症状は進んでいきます。

アルツハイマー型認知症の進行スピード
アルツハイマー型認知症の進行スピード

(参考)認知症の症状と種類 押さえておきたい基礎知識 | 認知症オンライン
※こちらのサイトでは認知症の症状と段階別の進行状況について詳しく説明されています。

さらに認知症からみられる周辺症状(BPSD)が起きる場合も!

主な中核症状の特徴は上記のようなものですが、患者さんによってはさらに「周辺症状」といわれる認知症特有の行動が見られる場合もあります。

BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれており、患者さんのもともと持っている性格や生活している環境などが大きく影響を及ぼします。

BPSDは、身体はまだ自由に動きながらも意識の混乱が激しい「初期の終わりから中等度にかけて一番多く見られますが、症状が進行する高度になると減っていきます。

主な周辺症状「BPSD」は以下のようなものがあります。

  • 徘徊(何かを探している場合が多い)
  • 幻覚・錯覚(実際にはないものをあると思い込んでしまう)
  • もの盗られ妄想(財布などの置き場を忘れてしまうため、誰かにとられたと思い込む)
  • せん妄(痛み、疲れ、便秘などの体調不良のため、錯乱、混乱状態になる)
  • 弄便(ろうべん:おむつに失禁してしまった時、その不快感を介護者に伝えられず、便を触る)
  • うつ(考える力が低下したり、意欲が低下することでうつに似た症状が現れる)
  • 暴言・暴力(これまで理性で抑えていた不安や苛立ちがコントロールできず、暴言、暴力をふるう)

BPSDは患者さんによっていくつも重複しておきることがあるため、介護者は対応が難しくなりますが、必ずそれらの行動には理由があるので、理解し、対応することで症状がおさまることがあります。

発症してしまうと完治は難しいアルツハイマー型認知症は、早期に治療をはじめ、進行を遅らせることが重要です。
薬物療法で認知症の発症原因の「アミロイドβ」と言われるたんぱく質が脳に蓄積するのを抑えるとともに、食事療法運動療法のほか、音楽療法作業療法などさまざまなリハビリ療法を取り入れ、脳機能の改善・維持を目指します。
これまで通りの生活が少しでも長く維持できるように、トータルで治療を行っていくことが大切です。

(参考)認知症ねっと 認知症の中核症状と周辺症状(BPSD)
※認知症を発症すると現れる症状について詳しく説明されているページです。

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