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2018年8月29日更新

不眠や日中の眠気、睡眠中の寝ぼけ行動を引き起こす「睡眠障害」の種類と症状、治療体験談

日本人の大人5人に1人が抱えている睡眠の悩み。不眠だけでなく、日中の眠気に悩まされるものや睡眠中の寝ぼけ行動など、睡眠障害には様々な疾患があります。うつや生活習慣病などの引き金にもなる睡眠障害の原因や症状、体験談などをまとめました。
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あなたは、毎晩ぐっすりと眠れていますか?

人は人生の3分の1を眠って過ごします。質の良い睡眠は、食事や運動と並び健康を維持するためにもなくてはならないもの。しっかり熟睡できて目覚めた朝は、体調も良く、気分もスッキリしますよね。

しかし、現代人は、仕事や勉強、子育て、介護などに日々追われ、十分な睡眠時間が確保できない人も多いのが現状。特に日本人は、欧米諸国に比べ、睡眠時間が少ない傾向にあります。

さらに近年は、不眠をはじめとする睡眠トラブルに悩む人も増加。厚生労働省の調査によると成人の5人に1人が睡眠に関わる何らかの問題を抱えているというデータがあります。

「たかが寝不足」と思ってしまいがちですが、睡眠にまつわるさまざまなトラブル「睡眠障害」は、昼間の眠気につながるだけでなく、生活習慣病や自律神経失調症、うつなどのメンタル系の病気のきっかけになることも。

放置して症状が慢性化すると治りにくくなることもあるため、睡眠に異変が現れた時は出来るだけ早く生活を見直し、医師に相談することが大切です。

今回は主な睡眠障害の種類とその内容(原因、症状、治療)について、体験談を交えながらご紹介していきたいと思います。

(参考)厚生労働省みんなのメンタルヘルス 睡眠障害
(参考)厚生労働省 平成26年版厚生労働白書~健康・予防元年~ 睡眠時間の国際比較 

1.眠りにまつわる様々なトラブル「睡眠障害」とは?

人はなぜ眠るの?睡眠の役割

睡眠は、単に活動を休んでいるだけの時間ではなく、ヒトの生命を維持するため脳が行っている活動であり、生理的に必要不可欠なもの。

日中、フル活動した脳の疲れをとり、「心身の疲労回復」「記憶を定着させる」「免疫機能の強化」などの重要な働きがあります。

私たちは睡眠不足になると、元気がなくなる、ぼーっとする、イライラするなどの状態に陥り、日常生活に大きな支障をきたします。

集中力が落ちて仕事や勉強ではミスが増えるなど、患者さんの生活の質(Quality of Life)は大きく下がり、場合によっては命に関わる大きな事故につながる可能性もあります。

また、睡眠の量や質の低下は生活習慣病を招くほか、最近では死亡との関連性を示す報告もされています。

(参考)日本における睡眠障害の頻度と健康影響 土井由利子

「睡眠障害」とはどういう状態を指すの?

睡眠障害とは、一つの病名を指すのではなく、「睡眠に関連した疾患」の総称です。

「睡眠に何らかの問題が起き、日常生活に支障をきたす状態が一ヶ月以上続く時」には、何らかの睡眠障害にかかっていると考えられます。

睡眠障害の内容はとても幅広く、「睡眠の質と量に問題があるもの」「睡眠リズムのズレ」に加えて「睡眠中の寝ぼけ行動」なども含まれ、生活習慣やストレス、病気や薬によるものなど発症の原因もさまざま。

そのため、睡眠障害の治療は、それぞれの原因を見極めることが最も重要で、それぞれの症状に合わせた治療を行っていくことになります。

睡眠外来も年々増加。睡眠の異常を感じたら一度受診を!

症状の幅が広い睡眠障害の場合、内科精神科心療内科のほか、時には呼吸器内科耳鼻咽喉科への受診が必要になる場合もあります。

自分ではどの科にかかって良いのか迷ってしまう時は、まずはかかりつけ医に相談し、該当する医療機関を紹介してもらうと良いでしょう。

また、最近は「睡眠障害外来」を開設している医療機関や、「スリープクリニック」など睡眠のトラブルを専門に診るクリニックも増えてきています。

このような睡眠医療に特化した専門外来では、睡眠障害治療の実績が豊富な「睡眠医療認定医」が在籍。睡眠に関連する幅広い症例をトータルに診てもらうことが可能ですので、ご自宅近くの専門外来を探して受診してみるのもおススメです。

次の章からは、代表的な睡眠障害6種類をそれぞれピックアップしていきます。

全国の睡眠医療認定医のいる病院・クリニックを病院口コミ検索「Caloo」で探す

2.睡眠障害の種類① 不眠症とは?

布団に入っても目が冴えて思うように眠れず、日中の眠気や倦怠感、頭痛などの体調不良が起こる「不眠症」。多くの人が悩む睡眠障害の代表ともいえる病気です。年齢が上がるにつれ、発症のリスクが高くなり、男性よりも女性の患者さんが多いのが特徴です。

診断の目安は、「週2回以上の不眠症状が1ヶ月以上続いている状態」。日常生活に支障があり、患者さん自身もストレスを感じているような場合、不眠症と診断されます。

寝たくても眠れないという状態は患者さんにとって、とても大きなストレス。「何とかして眠らなければ」と、必要以上に睡眠を意識してしまうことでますます目が冴え、さらに眠れなくなるという悪循環に陥ることもあります。(睡眠恐怖)

患者さんによって違う!不眠症の4つのタイプ

一言で「不眠症」といっても、患者さん一人一人によって症状は異なり、以下のように大きく4つのパターンに分けて考えられます。

現れる症状の強さや程度も患者さんによってまちまち。一つだけでなく、複数の症状に悩まされることもあります。

  1. 入眠障害……布団に入ってもなかなか寝付けない
  2. 中途覚醒……睡眠中にたびたび目が覚める
  3. 早朝覚醒……早朝に目が覚めてしまい、そのあと眠れなくなる
  4. 熟睡障害……浅い眠りで熟眠感がなく、夜間、たびたび目を覚ます

不眠症4タイプ

(図)不眠症の4タイプ Calooマガジン編集部

病気、ストレス、環境など……。不眠症を引き起こす原因は?

不眠症は、脳内の睡眠を調節する機能がうまく働かなくなることで発症します。

発症のきっかけは人によっても異なりますが、主な原因は以下の5つ。必ずしも一つとは限らず、いくつかが複雑に合わさっていることもあります。睡眠はとてもデリケートなものであり、メンタルの影響を受けやすいため、特に神経質で心配性なタイプの人ほど不眠に陥りやすい傾向にあります。

  1. 病気や薬の副作用によるもの
  2. 精神的なストレス
  3. 嗜好品(カフェインやニコチンなど)の過剰摂取
  4. 生活リズムの乱れ(時差や夜勤など)
  5. 眠る環境(音や光、温度)

【体験談①】夜は目が冴えて眠れないのに、朝になると猛烈な眠気が……。

社会人になってからは、夜中によく目覚めてしまうことが多くなりました。
徐々に目覚める頻度が上がっていきましたし、それにつれて、今度は布団に入っても眠れなくなりました。
それでも、次の日は仕事なので寝ないといけないと思って目をつぶりますが、早く寝ないといけないと思えば思うほど、どんどん目が冴えてしまいました。
一度起きて、本を読む等しましたがそれでもダメでしたし、眠れなさすぎて徹夜になる事も多かったです。
しかし、朝になると今度は急に凄まじい眠気が襲ってきてしまいます。

(出典)不眠症はとても辛いです ゆっち(30歳代・女性)

 睡眠薬の服用がメイン。不眠症の治療方法は?

不眠症の改善には、まず不眠の原因を取り除くことが先決。軽症であれば睡眠を妨げる生活習慣や寝室の環境を見直すだけで改善するケースもあります。

症状が進行し、生活の見直しだけでは改善しない場合には、睡眠薬を中心とする薬物療法を行います。睡眠薬は、依存性副作用が心配という方も多いと思いますが、現在使用されている睡眠薬は副作用も少なく、自然に近い眠りが得られるように改良されているもの。医師の指導のもと適正に使用すれば、それほど心配することはありません。

睡眠薬の種類には、「脳の活動を抑えるもの」「睡眠のリズムを整えるもの」など、それぞれ作用が違うものがあり、患者さんの不眠のタイプに適したものを使用します。

さらに、睡眠恐怖に陥り、睡眠に対して偏った思い込みを持ってしまっているような患者さんには、正しい認識に置き換えるための「認知行動療法」を行うこともあります。

最近はドラッグストアなどで市販の「睡眠導入剤」も手軽に手に入るようになりましたが、これらはあくまでも一時的なもの。一週間程度使用しても改善されない時には、使用を中止し、医療機関で専門的な治療を受けましょう。

※不眠症の薬物療法については以下の記事で詳しく説明しています。
不眠症の市販薬が効かない?知っておきたい処方薬との違い、薬の種類 

3.睡眠障害の種類② 過眠症とは?

「過眠症」は、夜間に十分な睡眠をとっているにも関わらず、日中、強い眠気に悩まされる疾患で、10代~青年期の比較的若年層に発症が多く見られます。

睡眠がとれているならば問題がないと思われがちですが、「朝、起きたい時間に起きられない」「日中、居眠りを繰り返す」など過眠症によってもたらされる社会的な影響はとても深刻なもの。

周囲の人の理解を得るのも難しく、「サボり」「やる気がない」などと思われて患者さんが辛い思いをすることもあります。

また、高所で作業する必要がある仕事やドライバーなど、職業によっては大きな事故につながることもあります。

過眠症の種類にはどんなものがある?

過眠症のなかにもいくつかの種類があり、それぞれ症状には特徴があります。代表的な過眠症をご紹介します。

①ナルコレプシー

日中異常な眠気を感じ、居眠りを繰り返す病気で、別名「居眠り病」とも呼ばれています。

強い眠気は10~20分程度眠ると一時的にスッキリしますが、しばらくするとまた眠気がぶり返します。

通常なら絶対に眠くなることがないような重要なテストや会議などの場面でも関係なく眠り込んでしまう「睡眠発作」が起きるのも特徴です。

そのほか患者さんによっては、「笑う」「怒る」などの強い感情が湧いたときに腰や膝、時に全身の力が抜けてしまう「情動脱力発作(カタプレキシー)」や、寝入りばなに幻覚が見える「入眠時幻覚」、寝入りばなに金縛りのように身体が動かなくなる「睡眠麻痺」の症状が見られることもあります。

※ナルコレプシーについては以下の記事で詳しく説明しています。
仕事中の居眠り、慢性的な眠気は「ナルコレプシー」かも?症状、原因、体験談

②突発性過眠症

ナルコレプシーと同じように日中の強い眠気が特徴ですが、居眠りは長時間(1時間以上)に及びます。
眠ったあともスッキリとした爽快感はなく、目覚めが悪く寝ぼけなどの症状があり、一日の合計睡眠時間は11時間以上になることもあります。

③反復性過眠症

強い眠気が数日~5週間程度続く疾患です。傾眠記(けいみんき)と言われるこの間は、昼夜を問わず15時間以上眠り続け、大きな声をかけたりゆすったりすると一旦目を覚ますものの、ぼんやりとしていて、またそのまま眠り込んでしまうという状態が続きます。

このような症状は時間とともに自然と治まり、症状がない時は正常な生活を送ることができますが、年に数回傾眠記が繰り返されます。

なぜ眠気を感じる?過眠症の原因

なぜ過眠症になるのかは、まだはっきりと解明されてはいませんが、脳の中の覚醒状態を保つ機能に異常が起きている可能性や、何らかの理由で夜間の睡眠障害が起きていると考えられています。

患者さん自身も体質だと思いこんでしまい、つらい思いを我慢していることもありますが、過眠症はれっきとした睡眠の病気。適切な治療を行うことである程度は眠気をコントロールすることは可能です。特別、原因がないのに、日中眠くて仕方ないという方は一度受診することをおススメします。

【体験談②】自分では気づかない強烈な眠気。試合のスコアを書いている最中に眠っていた!

高校の部活中でした。
公式戦でスコアを書いているとき、監督から『お前、寝てるぞ』と言われて初めて自分が寝ていることに気がつきました。
たしかに、授業中に居眠りすることはしょっちゅうだったし、家でも寝ていることも多かったけれど
試合中に眠り込んでしまって、寝ていることに気がつかないことは初めてでした。
それから友達や親、先生にわたしは寝ていますか?と尋ねるといつも眠っていると言われ、自らが意識して寝ていることより、気がつかずに寝ていることのほうが多いことがわかりました。
気がつかずに寝ているのと同時に、どうしようもないくらい強い眠気に襲われることにも気がつきました。

(出典)突然眠り込む突発性過眠症。自分では居眠りしている感覚がない。 なかのたろう(20歳代・女性)

日中の眠気コントロールがカギ!過眠症の治療とは?

過眠症の治療は、夜間の睡眠のとり方に問題がないかを見直し、規則正しい生活を心がけることから始めます。

日中襲ってくる眠気のコントロールには、中枢神経刺激薬を使った薬物療法を行います。中枢神経刺激薬とは、精神賦活剤(せいしんふかつざい)とも言われ、脳神経を覚醒させてしっかりと目覚めさせる作用のお薬です。
また、ナルコレプシーの場合には計画的な昼寝が、症状のコントロールに役立ちます。

(参考)過眠症の杜 
※過眠症についてのさまざまな情報を紹介しているサイトです。

4.睡眠障害の種類③ 概日リズム睡眠障害とは?

「夜になると眠くなり、朝になると目が覚める」という私たちが自然に行っている生活サイクルは、ヒトの脳に備わっている「体内時計(概日リズム、サーカディアンリズム)」によってコントロールされています。

ところが、実際にはヒトの体内時計は24時間より少し長め。通常ならば毎日少しずつずれて行ってしまうはずですが、朝、太陽の光を浴びることで私たちは体内時計をリセットしています。

概日リズム睡眠障害は、この体内時計のズレがリセットできず、昼夜のサイクルと合わせることができなくなる病気。

一日の睡眠時間は平均しているものの、寝るべき時間に眠れず、起きていなければならない時間に眠気が起こるため、集中力の低下や全身の倦怠感などの体調不良に悩まされ、 社会生活にも支障をきたします。体内時計リズム

(図)体内時計リズムのしくみ Calooマガジン編集部

概日リズム睡眠障害のタイプと原因

概日リズム睡眠障害の中にもいくつものパターンがあり、患者さんによって症状は違います。

①交代勤務による睡眠障害

夜勤と日勤が交互にある職業は勤務時間が不規則になるため、体内時計リズムが一定に定まらず、夜間の不眠や日中の眠気、だるさ、集中力の欠如、食欲不振などの症状が現れます。

②睡眠相後退症候群(すいみんそうこうたいしょうこうぐん)

概日リズム睡眠障害の中でも、最も頻度が高い「睡眠相後退症候群」は、体内時計の慢性的な遅れが原因で、寝付く時間が深夜から明け方近くになってしまうタイプです。
受験勉強や夏休みなどの長期休暇で生活が夜型になることで起こることも多いため、10~20代の若い世代に発症が多いのが特徴。
本人が努力しても矯正できず、遅刻などを繰り返してしまうため、学校中退や退職などに追い込まれてしまうこともあります。

③睡眠相前進症候群(すいみんそうぜんしんしょうこうぐん)

「睡眠相前進症候群」は、体内時計が慢性的に進んでいるために睡眠が前倒しされ、早寝になるタイプです。
夕方から眠気を感じ、夜早い時間(午後7時くらい)には寝てしまい、深夜(午前3時くらい)に目が覚めます。中高齢者に多い症状で、年齢が上がるにつれて患者数が増加します。

④非24時間睡眠覚醒症候群

体内時計のズレがリセットされずに進んでいってしまうタイプで、眠りにつく時間と、目覚める時間が毎日1~2時間ずつずれ、2週間くらいで睡眠と覚醒のリズムが逆転します。
昼夜逆転などの不規則な生活を続けている時などに起こりやすい症状です。

⑤不規則型睡眠覚醒パターン

睡眠と覚醒が、昼夜構わず不規則に現れるタイプです。体内時計のリセットする作用が弱まってしまうことが原因と考えられており、病気で寝込んでいる方や社会的な生活リズムに縛られることが少ない方などに多く見られます。

生体リズムのズレを修正。概日リズム睡眠障害の治療とは?

まずは乱れてしまっている体内時計のリセットをすることが肝心。
睡眠のとり方を見直すとともに、入眠促進剤睡眠リズムを調整する薬(メラトニン受容体作動薬)*1などを使用して睡眠時間を矯正します。
高照度の光(2500ルクス~1万ルクス)を使い、生体リズムを調整する「高照度光療法」を行うこともあります。
患者さん自身の自覚も大切であるため、睡眠記録表(睡眠日誌)を付けることはとても効果的です。

*1 体内時計や睡眠に深くかかわる「メラトニン」というホルモンの受容体に作用し、自然に近い睡眠を誘導して不眠症を改善する薬

※概日リズム(サーカディアンリズム)については以下の記事で詳しく説明しています。
薬に頼らず不眠症を改善!生活を見直し、食事や運動で体内リズムを整える方法 

5.睡眠障害の種類④ 睡眠関連呼吸器障害とは?

睡眠関連呼吸器障害は、睡眠時に身体に起こる呼吸器症状が原因で、深い睡眠がとれなくなってしまう睡眠障害。代表的なものに「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」があります。

特徴は大きないびきと呼吸停止。「睡眠時無呼吸症候群」の症状とは?

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中にたびたび呼吸が止まってしまう疾患で、大きないびきや窒息感、あえぎ呼吸などの症状もみられます。40~50歳代の男性や閉経後の女性の患者さんが多く、日本では成人男性の約3~7%、女性の約2~5%が発症していると考えられています。

睡眠中に10秒以上呼吸が停止する「無呼吸」の状態が、1時間に5回以上あるかが診断の目安になります。

呼吸停止を繰り返すことで眠りが分断されて熟睡できず、日中の強い眠気集中力の低下頭痛だるさなどの不調が起こります。

また、呼吸停止による酸欠状態が続くと高血圧動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な疾患や糖尿病などの生活習慣病の悪化を招くほか、突然死のリスクも高まります。*2

*2 成人の睡眠時無呼吸症候群の場合、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性は約3~4倍。重症例では心血管系疾患発症の危険性が約5倍になります。

【体験談③】寝ても疲れが取れない。職場での居眠りで上司に検査を勧められるほどのいびきは睡眠時無呼吸症候群が原因だった!

仕事が多忙だったため、休日は意識的に寝る時間を長めにとるようにしていました。ですが、疲れは取れないどころか些細な物音でもすぐに目が覚めてしまい、眠ることで余計に疲れてしまう。そんな日々が続いていました。

さらに職場でも急に意識がとんだかのように居眠りをはじめてしまうことも度々起こり、上司に怒られるどころか、精密検査を真顔で薦められたほどでした。(私のイビキが酷かったため、脳溢血の疑いを持っていたそうです)

そんなある日、テレビ番組で「睡眠時無呼吸症候群」についての特集が行われ、自分がそれに該当することがわかりました。

そこからインターネットでこの病気の治療を行ってくれる病院を探し、北野病院で診察と検査入院を受けたところ、睡眠時の呼吸はほとんどできていない状態で、脳波も起きている時とほぼ同じという、酷い状態でした。

(参考)昼間の異常な眠気。睡眠時無呼吸症候群の治療をしました。 やーまだ(40歳代・男性)

睡眠時無呼吸症候群の原因は?

睡眠時無呼吸症候群のほとんどは、空気の通り道である気道が閉塞することによって起こります。(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)
睡眠中には、のど(咽頭と喉頭)の骨格筋が緩みます。首まわりの脂肪が多い肥満の方は気道が塞がりやすいため、発症率が高くなります。肥満以外にも扁桃肥大、鼻炎などの鼻の病気、あごや首、舌の形状なども発症要因になります。
寝る前の睡眠薬アルコール摂取も、筋肉を緩ませる作用があるので控えるようにしましょう。

睡眠時無呼吸症候群の治療法

睡眠の深さや呼吸の状態、脳波などトータルに睡眠の状態を調べる「睡眠ポリグラフ検査(PSG)」などの検査を行い、睡眠時無呼吸症候群と診断されると治療が始まります。

まず、肥満の方は上気道周りの脂肪を減らすための減量が必要になります。睡眠中の姿勢の見直し(うつ伏せや横向きが良い)も大切です。

睡眠時無呼吸症候群特有の治療には、圧力を加えた空気を鼻から送り込むことによって、気道の閉塞を取り除くCPAP(シーパップ療法:経鼻的持続陽圧呼吸療法)があります。そのほか、下あごの位置を移動させるマウスピースの装着や、お子さんの場合は扁桃腺アデノイドをとる外科手術を行うこともあります。

※睡眠時無呼吸症候群については以下の記事で詳しく説明しています。
眠気・いびき以外に「突然死」のリスクも!?「睡眠時無呼吸症候群」の原因と症状

(参考)一般社団法人日本呼吸器学会 呼吸器の病気 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)

6.睡眠障害の種類⑤ 睡眠関連運動器障害とは?

睡眠関連運動器障害は、睡眠中におこる運動器(手足)の症状が原因で、深い睡眠がとれなくなってしまう睡眠障害です。

睡眠関連運動器障害の種類にはどんなものがある?

①むずむず脚症候群(レストレスレッグズ症候群)

就寝時、「足がむずむずする」「虫が這っているような気がする」などの不快な症状があり、寝付けなくなります。夕方から夜にかけて症状は強くなり、身体を動かすと少し改善しますが、安静にするとまた症状が出てきます。

【体験談④】足の中に虫がいる?今まで体験したことがない感覚で睡眠に支障が。

今年になってすぐ夕方にかけて夜、足がむずむずするようになりました。
足の中に虫がいるような今までに体験したことのないような感覚でした。

最初は3月に受ける試験に向けて神経質になっているのかな、という感じでしたが日に日にその感覚は増していき、夜、寝るときにも支障が出てくるようになりました。
ようやく通院している精神科の医師にそれを相談したところ、むずむず足症候群ということでした。

(出典)足の中に虫がいるような感覚。むずむず脚症候群 もろもろ(20歳代・女性)

※むずむず脚症候群については以下の記事で詳しく紹介しています。併せてご覧ください。
足の不快感、違和感で眠れない…むずむず脚症候群の症状・原因・治療法

②周期性四肢運動障害(睡眠時ミオクローヌス症候群)

睡眠中、自分の意思に関係なく手足が動くことで、睡眠が分断されてしまう睡眠障害です。むずむず脚症候群に合併して起こるケースが多く、手足がびくっと動くたびに目が覚めてしまうので熟睡できず、日中の眠気や体調不良に繋がります。

睡眠関連運動器障害の原因は?

残念ながら発症原因についてはまだ分かっていないことも多いのですが、鉄不足や、遺伝神経の異常などが関係していると考えられています。

妊娠中や胃の切除後、鉄欠乏性貧血や慢性腎不全で透析を受けている方に多く見られるほか、パーキンソン病などの特定の疾患や、精神科の治療薬などで引き起こされることもあります。

睡眠関連運動器障害の治療法

確定診断は専門の医療機関での検査が必要です。特定の疾患などが原因で症状が起きている時には、その治療を優先的に行います。

「バランスの良い食事で積極的に鉄分を摂取する」「ウォーキングやストレッチなどの適度な運動を心がける」など、軽症であれば生活習慣の見直しで症状が改善することもあります。

それだけでは改善しない場合には薬物療法を行います。一般的な睡眠薬では効果が得られないため、てんかんの治療薬やパーキンソン病の治療薬が処方されます。

(参考)厚生労働省 e-ヘルスネット レストレスレッグス症候群/むずむず脚症候群

7.睡眠障害の種類⑥ 睡眠時随伴症(すいみんじずいはんしょう)とは?

寝ぼけ寝言眠りながら食べる歩くなど、睡眠中に起きる困った現象(行動)が起きる病気をまとめて「睡眠時随伴症」といいます。

睡眠時随伴症は、大きく分けて浅い睡眠状態であるレム睡眠時に起きるものと、深い睡眠状態であるノンレム睡眠時に起きるものがあります。睡眠時前半のノンレム睡眠時に現れる症状は小児~学童期の子供に多いのが特徴。睡眠時随伴症には主に以下のような種類があります。

①睡眠時遊行症(すいみんじゆうこうしょう:夢遊病)

ノンレム睡眠時に起きる睡眠障害で、小児~学童期の子供に多く見られます。寝ぼけたまま起き上がり、手足を動かす部屋の外に歩くなどの行動をとります。青年期になると自然に治ることが多いため、基本的に経過観察を行いますが、頻繁に症状が出る時や寝ぼけの程度が激しい時、長期化する時には抗不安薬などの薬物療法を行うことがあります。

②睡眠時驚愕症(すいみんじきょうがくしょう:夜驚症)

同じくノンレム睡眠時に起きる睡眠障害で、小児~学童期の子供に多く見られます。睡眠中、恐怖に引きつった顔で突然泣き叫ぶ大量の汗粗い呼吸などの症状が見られ、声掛けをするとますます興奮してパニック状態になることもあります。こちらも、青年期になると自然に治ることが多いため、基本的に経過観察を行いますが、頻繁に症状がある時や寝ぼけの程度が激しい時、長期化する時には抗不安薬などの薬物療法を行います。

【体験談⑤】睡眠中突然奇声を上げ、暴れ始める2歳児。3ヶ月毎晩続いた夜驚症。

2才3ヶ月でまったく知らない土地に引っ越ししてから、
1週間がたった頃。

突然、寝てから3時間後、奇声と共に暴れ始めた。

うわーーと大きな声で泣き始め、いやだーーとか、何か言葉を話してるがよく聞き取れない。
そして、どーして欲しいかもわからず、バタバタ足をさせて、泣きじゃくる。

悪夢を見ているのだろうと、電気をつけて廊下にでて起こすと、
更に暴れる。

とにかく、蹴る!手足を動かしバタバタしながら、大きな声で泣き叫ぶ!

これを、毎日だ。
私も眠れず、気が狂いそうになるくらい、しんどかった。

(出典)2歳の子どもが突然夜中に奇声!暴れる!3か月間つづいた夜驚症。 小春凪258(30歳代・女性)

③レム睡眠行動障害

「レム睡眠行動障害」レム睡眠時に見ている夢の内容に沿って、実際に寝言を言ったり、行動を行ってしまう現象で、50歳以上の男性に多く見られる睡眠障害です。

通常、レム睡眠時には筋肉の力が抜け、身体は金縛り状態で動かす事ができません。しかし、レム睡眠行動障害の場合、身体が自由に動くようになってしまっているため、夢の中で起きた行動をそのまま実際に行ってしまいます。

夢の内容は暴力的であったり、恐怖を感じる悪夢であることが多く、喧嘩や叫び声をあげる、逃げるなどの寝ぼけ行動が見られ、時には同室で寝ている人を殴るなど激しい行動が起きることもあります。

詳しい発症原因やメカニズムは不明で突発的な発症が多いですが、薬物中毒やパーキンソン病などの神経変性疾患*3の初期症状として起こるケースもあります。

治療は、レム睡眠行動障害の症状を抑えるため、抗てんかん薬の内服を行います。併せて、不測のケガを予防するため、ベッドを低くする寝室内に危険なものを置かないなどの環境を整える対策も必要です。

*3 脳や脊髄にある神経細胞の中で、認知や運動などに関わるある特定の神経細胞が少しずつ障害を受けて脱落してしまう疾患のこと。詳しい発症原因やメカニズムは分かっていません。 パーキンソン病は手足の震え、筋肉が固くなる、動きが遅くなる、身体のバランスが悪くなるなどの運動が上手く行えなくなる病気。運動障害以外にも睡眠障害や自律神経症状、うつや認知障害などを伴うことがあります。

(参考)Rapid eye movement (REM)睡眠行動障害の診断,告知,治療
(参考)パーキンソン病サポートネット パーキンソン病の症状

8.睡眠の重要性を理解し、質の良い睡眠を手に入れよう!

ここまで代表的な睡眠障害についてご紹介してきましたが、これらはほんの一部。(※文末に図あり)

実際には90種類以上の種類があるとも言われる睡眠障害は、それぞれの病気によって症状や治療法が異なり、未だ解明されていないことが多いのも現状です。

WHO(世界保健機関)は2018年6月、約30年ぶりに国際的な病気の診断分類「ICD」*4を改訂し、新たに「睡眠・覚醒障害」という分類を追加しました。これはWHOが睡眠障害を主要な病気の一つとして認めたということを意味しており、とても画期的なこと。今後ますます睡眠障害の研究が進んでいく事が期待されています。

子供から大人まで日々忙しい毎日を過ごしているストレスフルな現代、睡眠のトラブルに陥ることはもはや珍しいことではなくなりました。誰もがちょっとした「きっかけ」で何らかの睡眠障害に陥ってしまう可能性があります。

睡眠と健康の関係に注目した厚生労働省では、2014年、睡眠についての正しい知識を広めるために「健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~」を作成。指針の中で、生活習慣の改善や寝室環境の整備、定期的に睡眠の内容を見直すことなどを推奨しています。

質の良い睡眠は一日で手に入りません。私たち一人一人が睡眠の重要性を理解し、日頃からこつこつと地道な努力を重ねることが大切。今できることから始めていきましょう。

*4 ICDは、WHO(世界保健機関)で作成されている「病気の公式総合目録」のようなものであり、世界中で使用されている基準です。

<参考> 健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~

1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。

2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。

3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。

4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。

5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。

6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。

7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。

8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。

9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。

10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。

11.いつもと違う睡眠には、要注意。

12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

(出典)厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~ 
※こちらのページでは睡眠指針の詳しい解説を見ることができます。不眠解消に役立つ情報がたくさんありますので、ぜひ一度目を通してみて下さい。

睡眠障害種類

(図)主な睡眠障害の種類 Calooマガジン編集部 ※図をクリックすると拡大します

(参考)厚生労働省 国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11 )が公表されました 
(参考)日本睡眠学会 睡眠に関する基礎知識
(参考)国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 睡眠障害センター
(参考)厚生労働省 e-ヘルスネット 睡眠障害

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