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2018年5月25日更新

治らない鼻水・鼻づまりは慢性副鼻腔炎(蓄膿症)かも?症状・治療・薬・体験談

なかなか治らない鼻水や鼻づまりが3ヶ月以上続く場合は慢性副鼻腔炎かもしれません。症状が進行すると鼻の中にポリープができ、手術が必要になる場合もあるため、早期に治療を始めることが肝心です。慢性副鼻腔炎の原因や症状、治療法についてまとめました。
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急性副鼻腔炎(きゅうせいふくびくうえん)が治りきらず、鼻水・鼻づまりなどの不快な症状が3ヶ月以上続く「慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)」

副鼻腔炎は「蓄膿症(ちくのうしょう)」とも呼ばれ、日本国内に100~200万人の患者がいるメジャーな疾患の一つですが、そのうち、症状の進行した慢性副鼻腔炎の患者数は約20万人と言われています。

慢性副鼻腔炎は、いわゆる「青っぱな」といわれる黄色や黄緑の色が付いたドロッとした粘りのある鼻水が特徴で、「嗅覚障害」「頭痛」などの症状を伴うこともあります。

戦前や戦後、栄養不足や不衛生からくる細菌感染が原因で小学生に多く見られた疾患ですが、栄養や衛生状態が良くなった今ではその状況も変わり、近年はアレルギーに関連のある慢性副鼻腔炎が増加しています。

慢性副鼻腔炎は、進行しても命にかかわるような病気ではないため、「風邪をこじらせたかな?」程度に考え、ついつい治療を後回しにしてしまいがち。

しかし、慢性的な鼻水や鼻づまりは「集中力や注意力の欠如」につながるため、勉強や仕事のパフォーマンスを落とし、生活の質(Quality of Life)も大きく下げてしまいます。

また、再発を繰り返すことで症状が進行すると、長期間にわたる通院や手術などのより高度な治療が必要になる場合もあるため、こじらせる前に耳鼻科で治療を行う必要があります。

今回は慢性副鼻腔炎の原因や症状、治療法について詳しくご紹介します。

※急性副鼻腔炎の原因や症状、治療法については以下の記事で詳しく説明していますので、こちらも併せてご覧ください。
長引く鼻水、鼻づまりは要注意!急性副鼻腔炎の原因・症状・治療法・体験談

1.こんな症状は慢性副鼻腔炎(蓄膿症)かも!

鼻水や鼻づまりは長期間続くうちに、いつのまにか自分でもその症状に慣れ、当たり前になってしまっている場合も少なくありません。

「そういえば、よく鼻をかんでいる」「なんとなくいつも鼻声」など心当たりのある方は、もしかしたら副鼻腔炎の慢性化が原因かもしれません。まずは、慢性副鼻腔炎の可能性があるか症状をチェックしてみましょう。

慢性副鼻腔炎セルフチェック

  1. 長い間、鼻水・鼻づまりが続いている
  2. ドロッとした粘性のある黄色や黄緑色の鼻水が出る
  3. 鼻をかんでも鼻水が鼻の奥にたまったまま出てこない
  4. 口呼吸のため、いつも口の中が乾燥している
  5. 鼻水が喉に落ちてくるため、咳や痰が多い
  6. 鼻づまりで頭重感や頭痛が続いている
  7. 頬や歯、眉間など、顔に原因不明の痛みがある
  8. 口臭が気になる
  9. 睡眠時、いびきをかく
  10. 鼻づまりで熟睡できないために、慢性的な睡眠不足
  11. 食事の味やにおいがよく分からない
  12. 鼻水・鼻づまりのせいで、勉強や仕事に集中できない

慢性副鼻腔炎は、突然症状が起こるわけではないため、いつ発症したかが分かりにくい疾患です。発症に気付かないまま、つらい症状を何年も我慢している場合もあるので、上のセルフチェックで該当する項目が多い方は耳鼻科を受診することをおすすめします。

特に小さなお子さんは、違和感があっても自分から症状を訴えることは少ないもの。日頃から周りの大人が注意深く観察し、症状に気付いてあげる必要があります。

※セルフチェックはあくまでも目安です。正確な診断には耳鼻科を受診するようにしてください。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)とは?副鼻腔の構造と発症のメカニズム

副鼻腔とは、鼻腔の周りにある上顎洞(じょうがくどう)・篩骨洞(しこつどう)・前頭洞(ぜんとうどう)・蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)という空間を総称したもの。左右対称に4対の空洞になっており、慢性副鼻腔炎とは、これら副鼻腔のどこかで慢性的な炎症が起きている状態です。

4つの副鼻腔

(画像引用)副鼻腔炎(蓄膿症)の症状と治療 医療法人梅華会グループ
※こちらのサイトでは、副鼻腔炎について分かりやすい説明を見ることができます。

慢性副鼻腔炎の前段階である急性副鼻腔炎は、その多くが風邪などによるウイルスや細菌感染をきっかけに発症します。

通常、適切な治療を行えば1~2週間で完治しますが、発熱などの急性症状が落ち着いた後も、鼻水や鼻づまりなどの症状がいつまでも残ってしまう場合があります。

この症状がズルズル3ヶ月以上続くと、慢性副鼻腔炎に移行したと考えられます。中には急性副鼻腔炎を何度も再発を繰り返しているうちに慢性化してしまうケースもあります。

ねばりの強い鼻水(膿)が分泌されると、副鼻腔内にある繊毛(せんもう:副鼻腔の表面にある細毛で、細菌などの異物を排出する働きがある)の働きが悪くなり、白血球(細菌など外界からの異物の侵入を防御する役割を持つ)が増えて炎症が起きます。

鼻水がきちんと排出できない状態が続くと、今度は溜まった鼻水が刺激となって炎症を悪化させ、鼻水がさらに増える、という負のスパイラルにはまってしまっている状態が慢性副鼻腔炎です。

蓄膿症(ちくのうしょう)と副鼻腔炎の違いとは?

結論から言ってしまうと、蓄膿症と副鼻腔炎は同じ疾患で、その多くは慢性副鼻腔炎を指します。

かつてよく使われていた「蓄膿症」という言葉は、もともと正式な医学の用語ではなく、その名の通り「鼻に膿が溜まる病気」という意味で俗称として使用されていました。

しかし、最近では、画像検査の進化により、副鼻腔の炎症があっても膿が溜まらない副鼻腔炎も存在することが分かってきたため、「慢性副鼻腔炎」という疾患名で呼ばれるようになっています。

(参考)つるはら耳鼻科 ちくのう症(蓄膿症)
※こちらのページでは慢性副鼻腔炎について分かりやすい解説を見ることができます。
(参考)医療法人社団 泰晴会 ひろい耳鼻咽喉科クリニック
※こちらのページでは慢性副鼻腔炎について分かりやすい解説を見ることができます。

2.慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の症状とは?

副鼻腔炎が慢性化するとどのような症状が現れるのでしょうか?代表的な症状を見ていきましょう。

慢性副鼻腔炎で現れる主な症状

①鼻汁(びじゅう:鼻水)

透明ではなく、ドロッとした粘性のある黄色もしくは黄緑の鼻水が出るのが大きな特徴です。

「黄色い鼻水=ウイルスや細菌によるもの」と思われがちですが、実は、鼻水が長く続くうちに、粘膜のはがれたものや白血球が鼻水に混じるようになると、黄色や黄緑といった色のついた鼻水に変わっていきます。

②鼻閉(びへい:鼻づまり)

炎症を起こして鼻の粘膜が腫れ、鼻腔と副鼻腔をつなぐ細い道(自然口といいます)が塞がってしまうと、鼻がつまって通らなくなります。また、粘りのある鼻水が鼻腔に溜まって鼻づまりを起こすこともあります。

鼻づまりになると、内部に溜まった鼻水(膿)が排出できなくなるので、鼻の内部の換気も十分に行うことができません。

そのため、鼻水が嫌な臭いを発し、口臭の原因になるほか、「においを」感じる神経細胞にも空気が届かなくなるため、食事の味やにおいが正確に分からなくなる「嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)」を起こすことがあります。

さらに、溜まった鼻水がのどの奥に落ち、刺激となって咳や痰が出やすくなる「後鼻漏(こうびろう)」という状態になりやすいというのも大きな特徴の一つです。

③頭痛や顔、奥歯の痛み

頭痛、頬や目の間など顔の痛み、時には奥歯に痛みが出る場合もあります。

これは、副鼻腔の空洞部分に膿が溜まることが原因。強い痛みが出るケースもありますが、鈍痛頭重感(頭がぼーっとして重たい)などと表現する患者さんもいらっしゃいます。

副鼻腔は顔全体の2/3を占めているため、「どの部分に膿が溜まるか」によって痛みが出る場所は患者さんによって異なります。

【体験談】顔の痛みの原因は副鼻腔に溜まった膿!治療の遅れで症状が慢性化

全身の倦怠感が抜けず、毎日熱っぽかったがとにかく倒れるわけにはいかなかったので、市販の風邪薬を飲んで休まずに出勤していた。

1か月近くその状態が続いた頃には、全身の倦怠感に加え頭部(顔面)の鈍痛に悩まされるようになった。

今おもえばそれは、副鼻腔の痛みから始まったのだけど、そのときはそんな知識はないので、頭痛、奥歯の痛み、そして眼球の奥の痛みのほうが強く感じられたために『首から上が痛くてたまらない』という状態だった。

そして数日後、もうバファリンではごまかしきれないほどの強烈な奥歯痛に耐えかねて、職場のそばの歯科へかけこんだ。

虫歯はあったものの、レントゲン写真を撮ると鼻の両脇・上頬のあたりに白いもやもやがあり、これは鼻の炎症でしょうということになった。

早めに耳鼻科を受診したほうがいいとの歯科医の助言をうけ翌日、仕事の合間に耳鼻科を受診したところ、急性副鼻腔炎とのことだった。

膿がかなりたまっており、眼球の奥の痛みをはじめ顔面の痛みはすべてその副鼻腔にたまった膿であることを知った。

おかげさまで、顔面のさまざまな痛みは嘘のように収まったがこのとき無理をして、病院へ行くのが遅れたために副鼻腔炎は、私にとって慢性的なものになってしまった。

(引用)歯の痛み、目の痛みの原因は副鼻腔炎だった。無理がたたって慢性に。senju1010(40歳代・女性)

上記の患者さんの顔の痛みも、副鼻腔に溜まった膿が原因でした。治療が遅れたことで慢性化し、5年たった今でも風邪を引くと症状が再発してしまうそうです。

④鼻茸(はなたけ:鼻ポリープ)

鼻茸(はなたけ)は、粘膜の一部が突起状に膨らんだもの(ポリープ)で、症状が進行した慢性副鼻腔炎に多く見られます。

炎症が長引いて鼻腔や副鼻腔の腫れた粘膜の上にさらに新しい炎症が起こることで発症します。

白っぽく、キノコのような形の突起物であることから「鼻茸(はなたけ)」と呼ばれており、別名「鼻ポリープ」とも言われます。

鼻茸が空気の通り道を塞ぐと、鼻づまりがひどくなるため、後鼻漏いびき、後鼻漏などの症状はさらに悪化します。

やっかいなことに、鼻茸は徐々に大きくなっていくこともあります。薬物療法で小さくすることはできますが、完全に取り除くには患部の粘膜ごと切除する手術が必要です。

鼻茸

(画像引用)副鼻腔炎(蓄膿症)の症状と治療 鼻ポリープ(鼻茸)について 医療法人梅華会グループ
※こちらのページには鼻茸について分かりやすい説明が載っています。

急性副鼻腔炎との違いはある?

そもそも「急性副鼻腔炎」の症状が慢性化したものが「慢性副鼻腔炎」であり、発症からの期間で区別されるので、自覚症状に大きな違いはありませんが、慢性副鼻腔炎は急性に比べると、症状が全体的に軽いという特徴があります。※慢性副鼻腔炎の急性増悪時(きゅうせいぞうあく:急に悪化すること)を除く。

慢性副鼻腔炎の患者さんの中には痛みや鼻症状などの自覚症状が全くないという方もおり、検査をして初めて気付くというケースもあります。

ただし、症状が軽いからといって慢性症状を放置してしまうと、中耳炎眼窩内感染症(がんかないかんせんしょう*1)のほか、髄膜炎などの重篤な脳の合併症を引き起こすこともあるため油断は禁物です。また、慢性副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎に比べると治療期間が長くなるケースが多いため、諦めずに根気強く治療を行っていく必要があります。

*1 眼窩内感染症とは、目に起こる感染症のこと。副鼻腔は、目の近くに位置しており、炎症が目に及ぶと「目の痛み」「涙が止まらない」「目やに」といった症状が現れるほか、疲れ目や視力障害につながることもあります。

3.なぜ慢性化する?慢性副鼻腔炎を起こす主な要因

通常の急性副鼻腔炎は完治させることができるものなのに、なぜ、症状が長引いて慢性化するケースがあるのでしょうか?

慢性化につながるきっかけや主な原因にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

①風邪やインフルエンザなど感染の繰り返しによる炎症やポリープの形成

慢性化のもっとも多い原因は、たびたびウイルス(まれに細菌の場合も)に感染して風邪をひき、鼻やのどの炎症を繰り返すこと。

頻繁に鼻やのどの炎症を起こしているうちに、副鼻腔の炎症は慢性化していきます。

また、炎症を起こした部分の粘膜が膨らみ、鼻腔や副鼻腔内に鼻茸が形成されるとさらに症状は悪化します。

【体験談】学生の頃から繰り返していた風邪症状は慢性副鼻腔炎だった!

学生のころから3カ月に1回は必ず風邪症状が出て、内科を受診していました。熱っぽく、鼻水がでて喉が痛い。いつも同じような症状でうんざりしていました。

いつも内科を受診して簡単な診察と薬をもらって終わりだったのですが、5日分の薬を飲み切っても完全に症状はなくならないけど、さらに数日だらだらしんどいという状態でした。

あるとき、家族が通っていた耳鼻科に行ってみたらと進められ、次に風邪症状が出たときに行ってみることにしました。幼いころ以来の耳鼻科で少し抵抗はあったのですが、鼻の中を見てもらい、鼻水を吸引してもらっただけでかなり楽になりました。先生がいうのは、慢性的な副鼻腔炎だということでした。いつのまにか慢性副鼻腔炎になっていたのです。なんだかショックな反面、理由がはっきりしてすっきりした気分にもなりました。

私の場合は、喉の奥に鼻水が落ちていく傾向にあるのでのどの痛みも出ること、頭痛は膿が副鼻腔にたまることによる圧迫が原因であると言われました。なので一般的な鎮痛薬では効かないともわかりました。実はひどいときは1日3回鎮痛剤を飲む必要があるほど頭痛がひどかったので、理由がわかってほっとしました。

(引用)耳鼻咽喉科を受診して判明。風邪のような症状の原因は慢性副鼻腔炎。hanakappa(30歳代・女性)

上記の患者さんも、学生の頃から繰り返し風邪を引き、完全に治りきらない状態を繰り返すことで、慢性副鼻腔炎になってしまったと考えられます。

②アレルギー性鼻炎の合併による粘膜の腫れ

花粉症を始め、ダニやハウスダスト、ペットなどによるアレルギー性鼻炎を持っている患者さんは、普段から鼻腔や副鼻腔の粘膜が腫れていることも多く、常に自然口が詰まりやすくなっているため、慢性化のリスクも高くなります。

特にダニなどの通年性アレルギーの方や治療のために点鼻薬などを頻繁に使っている方は、炎症を起こした鼻の内部の粘膜が腫れて厚くなる肥厚性鼻炎(ひこうせいびえん)になっている方も少なくありません。

アレルギー性鼻炎患者の3~4割は副鼻腔炎を合併しているとも言われており、副鼻腔炎を合併すると、アレルギー性鼻炎症状も悪化するケースが多く見られます。

アレルギーの患者さんで、抗アレルギー薬だけを飲んでも不快な鼻の症状が良くならないという時は、副鼻腔炎を合併しているケースが考えられます。

(参考)はねだ内科クリニック 第5回 アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎
※アレルギー性鼻炎と慢性副鼻腔炎の関係について分かりやすく解説されています。

③鼻中隔(びちゅうかく)のゆがみ

鼻の穴を左右に分ける真ん中の壁「鼻中隔*2が、左右どちらかに極端に曲がっている状態を「鼻中隔湾曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)」といいます。

*2 鼻中隔は、軟骨と骨で形成されています。成長期、頭が大きくなるに従い、軟骨や骨も成長しますが、軟骨は、骨よりも成長スピードが速いため、骨との位置を合わせようとして軟骨が湾曲することがあります。

成人であれば誰でも多少のゆがみがあるのが普通で、生活に支障がなければ特に問題はありませんが、その曲がり具合が強いと片方の鼻の通りが悪くなり、鼻づまり、いびき、嗅覚障害、鼻の出血などの症状が起こりやすく、副鼻腔内の粘膜の炎症も慢性化しやすくなります。

鼻中隔湾曲症自体は物理的な問題であり、薬では治りません。そのため、程度によっては「鼻中隔湾曲症矯正手術*3」「粘膜下下鼻甲介骨切除術(ねんまくかかびこうかいこつせつじょじゅつ*4などの外科手術が必要になります。

*3 鼻中隔湾曲症治療の基本的な手術。鼻中隔湾曲部の骨を切除して鼻の通りを良くする目的で行います。
*4 鼻の中には下鼻甲介(かびこうかい)という突起があり、それによって鼻づまりが悪化している場合に切除して鼻の通りを良くする手術。

鼻中隔湾曲症

(画像引用)医療法人社団 泰晴会 ひろい耳鼻咽喉科クリニック
※こちらのページには、鼻中隔湾曲症の原因や症状、治療について詳しい情報が載っています。

(参考)医療法人社団 泰晴会 ひろい耳鼻咽喉科クリニック 鼻中隔湾曲症 
※こちらのページでは鼻中隔湾曲症についての説明を見ることができます。

④遺伝的要因

両親が副鼻腔炎を罹患していると、その子供も副鼻腔炎になりやすい傾向にあるため、遺伝的要因も強いと考えられています。

ある研究では、両親が副鼻腔炎を罹患している両親の場合、その子供の96.8%が副鼻腔炎を発症しているという結果が報告されています。(両親が罹患していないケースでは46.6%、片親が罹患しているケースは64.4%)

特に、副鼻腔炎の慢性化のきっかけにもなる「アレルギー性疾患がある家系」に副鼻腔炎の発症率が高いことから、慢性副鼻腔炎そのものの遺伝だけではなく、アレルギーの体質自体の遺伝が関係していると考えられています。

(参考)研究論文 小児期副鼻腔炎の発症と遺伝的素因
※東邦大学医学部耳鼻咽喉科学教室 中村 修先生によって執筆された小児の副鼻腔炎の遺伝性について書かれた論文です。

⑤原因不明の難治性新型副鼻腔炎「好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)」も増加

感染による副鼻腔の炎症が原因で発症するケースが多い慢性副鼻腔炎ですが、2000年頃からは「好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうふくびくうえん)という新しいタイプの慢性副鼻腔炎の発症も増えてきています。

鼻茸に「好酸球(こうさんきゅう)*5という免疫細胞の一種が非常に多く存在することがこの疾患の名前の由来で、従来型とは原因や発症のメカニズムが違うと考えられています。

*5 好酸球は白血球に含まれる成分であり、人の体を守る細胞の一種。寄生虫感染時に増殖し、寄生虫を攻撃するほか、アレルギーとの関連性が深く、アレルギー反応を起こす細胞とも言われています。ちなみに従来型の慢性副鼻腔炎は同じく白血球に含まれる成分でも好酸球ではなく、好中球(こうちゅうきゅう)という成分が多いのが特徴です。

鼻水や鼻づまりといった自覚症状は従来型と同じですが、新型の場合、早い段階から嗅覚障害が起こることや、両鼻の中に鼻茸がたくさんできて手術をしても再発をしやすいなどの違いがあります。

「気管支喘息」「アスピリン不耐症(あすぴりんふたいしょう)*6「薬物アレルギー」のある方などに多く発症しますが、なぜ発症するのかなど、はっきりとした原因はまだ分かっていないことが多く、治療法も確立されていない*7ことから、2015年7月に厚生労働省の難病の指定を受けています。

日本国内の好酸球性副鼻腔炎の患者さんは約2万人いると言われており、そのほとんどが20歳以上の成人で、15歳以下の子供が発症することはまずありません。

*6 アスピリン不耐症は、解熱剤などに使われるアスピリンで喘息やショックを起こすこと。
*7 慢性副鼻腔炎治療のためのマクロライド療法(後述)も効果がなく、ステロイドの内服で症状が軽快することが分かっていますが、中止すると症状は再び悪化します。
好酸球性副鼻腔炎

好酸球性副鼻腔炎2

(画像引用)難病情報センター 好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)
※下の画像の白い水ぶくれのような袋が鼻茸。(上の画像は正常の場合)多数の鼻茸が鼻の中を充満するのが特徴です。

(参考)厚生労働省 平成27年7月1日施行の指定難病(告示番号111~306)
(参考)難病情報センター 好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)
(参考)金沢医科大学 教えて!ドクター 第29回 増える「新型」副鼻腔炎 
※感染などが原因の従来型の慢性副鼻腔炎と新型の好酸球副鼻腔炎の違いについて分かりやすく解説されています。

4.医療機関で行う慢性副鼻腔炎の治療とは?

慢性副鼻腔炎は、放置しているうちに症状が進行し、治療も難しくなるケースもあるので早期に治療を始めることが大切。実際に、医療機関ではどのような検査や治療が行われるのか見ていきましょう。

慢性副鼻腔炎診断のための検査法

慢性副鼻腔炎の診断は、症状の聞き取りを行う問診や、鼻鏡(びきょう)という器具を使って鼻の中の状態を確認する視診が基本。

同じ副鼻腔炎であっても、慢性か急性なのかによって治療法も異なってくるため、「いつから症状が起こっているのか」を確認することはとても重要です。

問診・視診と併せて確定診断のため行われているのが、「頭部レントゲン(X線)」です。正常であれば副鼻腔の空洞は黒く映りますが、炎症が起きて膿が溜まっている部分白くもやもやとして映るため、副鼻腔のどこに炎症が起きているのかを確認することができます。

頭部レントゲン副鼻腔炎

(画像引用)ちくのう症(蓄膿症)つるはら耳鼻科
※奈良県奈良市にある耳鼻科のサイトです。蓄膿症について分かりやすい解説を見ることができます。

病院によっては、「内視鏡検査」を行う場合もあります。ファイバースコープという先端にカメラがついている器具で鼻腔内の状態を鮮明な画像で映し出すので、鼻茸の状態なども確認することができます。

副鼻腔炎内視鏡画像

(画像引用)内視鏡検査 副鼻腔炎(蓄膿症)の症状と治療 検査について 医療法人梅華会グループ
※頬と鼻腔をつなぐ細い管に膿が溜まり、すき間から溢れている症例。こちらのページでは、副鼻腔炎で行われる検査についての情報を見ることができます。

その他、嗅覚障害を伴うケースや再発を繰り返すケース、むし歯や歯周病などが原因で起こる特殊なケースにはCTMRIなどのより詳しい画像検査を行うこともあります。

慢性副鼻腔炎に有効な「マクロライド療法」とは?

慢性副鼻腔炎の治療の基本は「薬物療法」と局所の治療を行う「局所療法」の二つ。

局所療法では、急性副鼻腔炎と同様、副鼻腔内に溜まった膿をきれいに吸引後、霧状にした薬剤を口と鼻から吸い込む「ネブライザー治療」を行います。

また、薬剤療法でも、粘りのある鼻水の解消に、鼻水をさらさらにして排出しやすくする去痰剤(商品名:ムコダイン、ムコソルバン)などが処方される点は、急性副鼻腔炎と共通です。

同じく、アレルギー性鼻炎を併発している場合は、抗アレルギー薬を併用することもあります。

ネブライザー治療

(画像引用)副鼻腔炎(蓄膿症)の症状と治療 いろいろな治療法 医療法人梅華会グループ
※マスクを付け、細かい霧状の薬剤を口と鼻から吸い込みます。

慢性副鼻腔炎の治療において、急性副鼻腔炎と異なるのは、「マクロライド療法」という薬物療法を行うこと。

マクロライド療法とは、マクロライド系と呼ばれる抗生物質(商品名:クラリス、エリスロマイシンなど)を長期(1クール3ヶ月程度)にわたり少量ずつ服用する治療法です。

通常、抗生物質は、細菌を殺すために使用するものですが、 マクロライド療法では、「粘液(膿)の分泌を抑えて繊毛の働きを良くし、異物を排出する」「血球内の好中球の働きを抑えて炎症を抑える」という全く別の目的で使われます。

抗生物質の長期服用を心配に思われる方も多いと思いますが、使用するお薬は、抗菌目的で使用する量の半分程度と少量であり、投与期間も医師がコントロールしながら行うため、体への副作用や耐性菌出現の心配はほとんどありません。

マクロライド療法は、実施した患者さんの5~6割に症状の改善が見られる有効性の高い治療ですが、鼻茸が多数存在しているなど、難治性の副鼻腔炎で症状が改善しないケースには、外科手術が必要になります。

【体験談】3ヶ月のマクロライド療法で症状が改善し、手術を回避!

風邪をひいたあとにいつまでも鼻みずが出て、鼻がつまる。

風邪の時は水っぽい鼻水であまり粘り気は無かったが、段々と粘り気のある鼻汁になって、喉にひっかかる感じがするようになってきました。

2週間ほど市販の風邪薬を飲んでしのいでいましたが、一向に症状が改善しないので会社近くの耳鼻科に行くことに。

検査が終わると治療に入り、鼻や副鼻腔にたまった鼻汁をきれいに取ってもらいました。

これでけでもかなりスッキリして日頃の不快感が取れました。

更に、点鼻でマクロライド系抗菌薬を少量ずつ処方されました。

数カ月様子を見ながら、鼻汁の除去と薬物療法を続けました。

3ヶ月ほど通院し、鼻づまりや鼻水の症状が改善されたので治療は終わりました。

薬物治療で効果が出ないと手術だと言われていたので薬が効いて本当に良かったです

(引用)長引く風邪ではなく、レントゲンの結果、慢性副鼻腔炎でした。Caloouser57673(40歳代・男性)

(参考)おくすり110番 ムコダイン
(参考)おくすり110番 ムコソルバン
(参考)おくすり110番 クラリス
(参考)おくすり110番 エリスロマイシン 
※おくすり110番は医療機関で処方されるお薬の詳しい情報を見ることができるサイトです。

5.漢方薬や市販薬でも慢性副鼻腔炎は治せる?

慢性風鼻腔炎に効果がある漢方薬は?

上記でご紹介した治療のほかにも、医療機関では、慢性副鼻腔炎の治療に漢方薬を使用することもあります。

漢方薬は、とにかく即効性を求める西洋薬とは違い、時間をかけて患者さん自身の体質を改善し、不快な症状を和らげるのが目的です。

効き目は緩やかですが、副作用なども比較的少ないので、長期に継続することができるのがメリットです。

ただし、漢方ではそれぞれの人の体質(証)によって処方するお薬が変わるため、正しい証の見極めがとても重要になります。

①辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)

鼻の粘膜収縮作用によって鼻通りをよくし、鼻粘膜の線毛運動機能の改善作用があるため、鼻づまりや慢性鼻炎、慢性副鼻腔炎の治療に使用するお薬です。

辛夷清肺湯

(画像引用)ツムラ 辛夷清肺湯
※ツムラの辛夷清肺湯の効能を解説しているページです。

②葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)

長引く鼻水、鼻づまり、後鼻漏などの症状に使用するお薬です。比較的体力のある人に処方され、頭痛、頭重感などの症状を伴う場合により効果的です。

葛根湯加川芎辛夷
(画像引用)ツムラ 葛根湯加川芎辛夷
※ツムラの葛根湯加川芎辛夷の効能を解説しているページです。

③荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)

副鼻腔や外耳、中耳、扁桃などの症状に効果があります。体力が中等度以上の方の慢性鼻炎や慢性副鼻腔炎の治療に使用されます。

荊芥連翹湯
(画像引用)ツムラ 荊芥連翹湯
※ツムラの荊芥連翹湯の効能を開設しているページです。

市販薬で慢性副鼻腔炎は治せるの?

薬局やドラッグストアなどでは、いくつかの慢性副鼻腔炎用の市販薬も販売されています。

手軽に買うことができるので、忙しい方にはとても便利なものですが、実は、これらのお薬も生薬を配合した漢方薬がベースになっています。

眠気が出ることが多い一般的な鼻炎薬に比べ、漢方薬は眠くなる成分が含まれていないので勉強や仕事に支障が出ないのがメリット。

ただし、お医者さんで処方する漢方薬と同様、体質(証)によって合う・合わないがあるため、効果には個人差があります。

1ヶ月程度、継続して使用しても効果が見られない時は、お薬を見直してみる必要があります。

①小林製薬 チクナイン錠®

鼻づまり、慢性鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)を改善する。体力中等度以上で、濃い鼻汁が出て、ときに熱感を伴うもの。※辛夷清肺湯がベース

チクナイン

(画像引用)小林製薬 チクナイン
※小林製薬のチクナインについてのサイトです。

②クラシエ ベルエムピ®L錠

副鼻腔炎(蓄膿症)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきびを改善する。体力中等度以上で、皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているもの。※荊芥連翹湯がベース

ベルエムピ

(画像引用)クラシエ ベルエムピ®L錠
※クラシエのベルエムピ錠の情報を掲載しているページです。

③湧永製薬 フジビトール®

鼻づまり、蓄膿症(慢性副鼻腔炎)、慢性鼻炎を改善する。※葛根湯加川芎辛夷がベース

フジビトール

(画像引用)湧永製薬 フジビトール®
※湧永製薬のフジビトールの情報を掲載しているページです。

6.毎日の予防ケアで慢性化のリスクを減らす工夫を。

ここまで慢性副鼻腔炎の原因や症状、治療法についてご紹介してきました。

慢性副鼻腔炎を発症してしまった時には、速やかに治療を行うことが大切ですが、まずは風邪やアレルギーを予防して、慢性化の「きっかけ」自体を作らないことが先決。

日頃から、規則正しい生活で「バランスの良い食事を摂る」「過労やストレスを溜めない」などに気を付け、身体の免疫力を高めておきましょう。

アレルギー性鼻炎は、突然発症することもあります。花粉症のシーズンは、マスクやゴーグルであらかじめ防御し、花粉などのアレルゲンを寄せ付けないことも大切です。

また、鼻水が出ると、つい無意識でやってしまうのが、「鼻すすり」。頻繁な鼻すすりは鼻腔や副鼻腔への刺激となり、炎症の慢性化につながります。鼻水はそのままにせず、こまめに鼻をかんで鼻の中はいつも清潔に保つように心がけましょう。(副鼻腔だけでなく中耳炎の原因となる場合も)

鼻をかむ時は、「丁寧に片鼻ずつ、ゆっくりと押し出すように」がポイント。最後までしっかりと出し切るようにしましょう。

さらに、普段から鼻水が出やすいという人は、「鼻うがい」を習慣化するのもおすすめです。

「鼻うがい」とは、生理食塩水(血液・組織液と浸透圧の等しい約0.9%の食塩水)を直接、鼻腔内に入れて、雑菌を洗い流す方法。生理食塩水は自分でも作ることができますが、最近では専用の洗浄液と器具がセットになって手軽に行うことができる商品も出てきているので、これらの市販品を利用してみるのも良いでしょう。

以上のように、毎日の生活を見直して、予防のためのケアを行うことで慢性化のリスクを減らすことは可能です。

症状を長引かせないためにも、日頃から意識して十分な対策を行っておきましょう。

ハナノアシャワー 痛くない鼻うがい 使い方簡単タイプ (鼻洗浄器具+専用洗浄液300ml)ハナノアシャワー 痛くない鼻うがい 使い方簡単タイプ (鼻洗浄器具+専用洗浄液300ml)

(参考)耳鼻咽喉科 ほりクリニック 鼻のかみ方と鼻洗浄情報
※鼻のかみ方や滅菌精製水による鼻洗浄(鼻うがい)の方法も詳しく載っています。

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