「アリセプト」と併用OK。攻撃性・徘徊も抑える認知症治療薬「メマリー」の効果・副作用
1.記憶・学習能力の低下を抑える薬「NMDA受容体拮抗薬」とは?
「NMDA受容体拮抗薬」の作用機序・しくみ
2011年に国内認可承認された抗認知症薬であるメマリーは、「NMDA受容体拮抗薬」として、作用しています。
<アルツハイマー病で記憶障害が起こるまで>
- 脳内で異常なタンパク質が活発化し、記憶・学習に関わる神経伝達物質「グルタミン酸」が過剰放出される。
- 受け手の「NMDA受容体」も同様に活発化しているので、「カルシウムイオン」も過剰放出。
- 脳神経細胞の中に入り込んでしまう。
→この過度な刺激で、神経細胞を壊す=記憶障害が起こる
「NMDA受容体拮抗薬」は、この受け手である「NMDA受容体」に作用して、活発化しすぎる「NMDA受容体」を抑え、過剰なカルシウムイオンが神経細胞内への流入を防ぐことで、神経細胞が壊れていくのを防いで、記憶・学習機能の低下を守る薬です。
■他の認知症認可薬「アリセプト/レミニール/リバスタッチパッチ・イクセロンパッチ」については、以下の記事で詳しく説明しています。
認知症の進行抑制薬「アリセプト/レミニール/リバスタッチ」の効果・副作用
2.メマンチン塩酸塩 (商品名:メマリー)の特長・使用方法・副作用
2011年に国内認可承認された抗認知症薬で、「NMDA受容体拮抗薬」として作用します。
中等度から高度のアルツハイマー型認知症の適応があります。
名称(商品名) | アルツハイマー型認知症 適応 | 薬の形態 | 回数
(1日あたり) |
||
---|---|---|---|---|---|
軽度 | 中等度 | 重度 | |||
メマンチン塩酸塩(メマリー) | ○ | ○ | 内服 | 1回 |
(参考)認知症薬の種類と特長|認知症ねっと
こちらのページでは、医師による認知症薬の概要について説明されています。
この薬も国内認可の他の抗認知症薬(アリセプト、レミニール、イクセロンパッチ、リバスタッチ)同様、海外では2000年過ぎから発売されていた薬のため、実はさほど「新薬」でもない経緯があります。
既存の抗認知症薬「アセチルコリン分解酵素阻害剤(「①アリセプト」、「②レミニール」、「③イクセロンパッチ/リバスタッチ」)」とは作用機序が異なるため、「アリセプト」など1種類と併用使用が可能です。
<初期アルツハイマー型認知症-薬物療法の流れ>
- ドネペジル(アリセプト)で治療スタート
- 症状が中等度以降に進行した場合、医師の指示の元でメマンチン(メマリー)を併用
■メマリーの効果
イライラしてすぐ怒ったり、叩くなど攻撃性や徘徊・興奮したりする感情の不安定さを改善する効果
■メマリーの種類
- 口腔内崩壊錠(OD錠)……水なしでも飲める。
嚥下機能低下の場合でも服用可能。 - 錠剤
一般的な錠剤。飲み込む力が弱ってきている場合には、不向き。 - OD錠、錠剤ともに各3種類(5mg,10mg,20mg)。
■メマリーの使用方法・服用タイミング
<使用方法>
- 5mg(1日1回)からスタートして、身体に薬による神経伝達物質の変化に慣れさせ、副作用があるかどうかを確認。
- 服用開始から1週間毎に5mgずつ増量(1日1回)します。
- 4週間後に目標の維持量(最大20mg/日)にします。
※高度の腎障害がある場合、服用上限は1日10mgとなります。現在の持病だけでなく、既往症も必ず主治医に相談のこと!
<服用タイミング>
- 飲む時間帯による血中濃度への影響は、小さい。
■メマリーの注意点・副作用
- 気付いた時点で飲む。ただし、次の服用時間が近い場合、忘れた分は飲まずに、次の服用時間に1回分飲む。
※1度に2回分飲むのはNG! - めまい
→服用開始初期や薬の増量後などに起こり易い。特に20mgだと副作用が、起こり易い。
めまいが原因で、不意に転倒するなどに要注意。 - 頭痛や日中傾眠、食欲不振、便秘、血圧上昇。
- ごく稀に、けいれん・失神など起こる場合もあり。
必ず、服用開始後しばらくは様子観察をして、変化があった際には早めに医師に相談しましょう!
【みんなの体験談】中等度認知症、アリセプトとメマリーの併用服用1年。進行が抑えられ安堵。
もともと腎臓が悪くて、泌尿器科で、頻尿の薬をもらっていたんですが、その薬の副作用として、アルツハイマー型認知症の進行を早めてしまうことがあるらしく、うちの父親にも、その傾向が見られると言われました。
医療センターで、MRIを撮って検査してもらったところ、すでに脳が委縮していて、アルツハイマー型の認知症が始まっていると診断されてしまいました。家族としては、かなりショックでしたが、まだ初期の症状でした。それで、薬で進行を抑えていく治療法を勧められたので、近くのかかりつけ医で、アリセプトをもらうことになりました。
そのようにして、アリセプトを飲み始めてから、3年ほどになった頃に、ケアマネージャーさんに、認知症専門の病院を紹介してもらい、またMRIを撮って診断してもらったところ、中等度にまですすんでいるといわれました。
それで、そこの先生の診断で、薬を二種類に増やして、併用して飲んでみるようにと言われたので、メマリーも、アリセプトと合わせて飲むことになりました。このように、二種類を飲み始めて、今は一年ほどになりますが、先月検査をしてもらったところ、ほとんど去年と変わらず、認知症がひどくなっていなかったので、ほっとしました。
3.認知症の薬は、家族が管理!早期投与でより高い改善効果。
認知症に対する薬物療法の効果は、早い段階で始めれば、より高い改善効果があると言われています。
その効果を得るためには、きちんとお薬を飲むことが大事です。
飲み忘れや飲み過ぎの恐れなどがあるため、患者さん本人まかせではなく、ご家族など患者さんをサポートする方が、お薬を管理することが大切です。
また、薬物療法だけでなく、デイサービスなどを活用したり「非薬物療法」も併用して、患者さん本人だけでなく、サポートをするご家族にとっても、穏やかな生活を送れるようになることが望ましいですね。
(参考)認知症の薬|認知症ねっと
こちらのページでは、認知症の薬について、詳しく説明されています。
(参考)メマリー(メマンチン)の概要・効果・副作用まとめ|認知症ONLINE
こちらのページでは、メマリーについて、効果や副作用、薬価など詳しく説明されています。
コメントを残す