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2016年8月4日更新

子宮筋腫の手術②健康保険適用も。切らずに治す手術とは!?進化する子宮筋腫最新治療

子宮筋腫の治療法として、「子宮全摘術」「子宮筋腫核摘出術」以外にも「切らない治療法」の研究が進んでいます。この記事では「子宮動脈塞栓術(UAE)」「MRIガイド下集束超音波治療(FUS)」「マイクロ波子宮内膜アブレーション」を紹介します。
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1.進化する子宮筋腫の治療法。選択肢は広がっている!

子宮筋腫手術の変遷。現在の治療スタンダードとは?

子宮筋腫の症状が悪化してしまった時、以前ならば子宮を全摘する「子宮全摘術」を行うというのが一般的でした。

下腹部の痛みや大量の出血が続き、日常生活に支障をきたすようになると、貧血症状が進み心臓などにも影響を及ぼすため、患者さん本人の希望よりも、まずは症状の改善を最優先に「全摘術」を行うことが当たり前とされてきました。

今でも子宮全摘術は再発や、辛い生理の症状を無くすために、大変有効な手術方法の1つではありますが、中には妊娠・出産をあきらめなければならなかったり、女性のシンボルである子宮を取る事に喪失感を感じる方もいらっしゃったりと、患者さんにとって辛い選択となる場合も少なくありませんでした。

その後、腹腔鏡や子宮鏡といった内視鏡を使用する「子宮筋腫核摘出術」が登場し、子宮機能を温存することが可能になりました。

内視鏡を使っての手術は開腹術に比べ、傷が小さいため、痛みが少なく、術後の回復も早いなど多くのメリットがあります。

筋腫だけを取り除くこの手術法の普及で、子宮筋腫が原因と思われる不妊の場合にも、妊娠の希望を持つことが出来るようになりました。(※他の不妊の原因がある場合など、すべての方に適合するとは限りません。)

現在ではこの「子宮全摘術」「子宮筋腫核摘出術」が子宮筋腫手術のスタンダードな2本柱として確立されていますが、さらにここ数年、従来にはなかった方法での治療が登場しています。

進化する子宮筋腫の最新治療法。患者さんの体への負担が少ない方法を目指して。

子宮筋腫の治療は日々、進歩しており、これまでにはなかった「切らない治療法」が研究開発されています。

これからご紹介する低侵襲(患者さんの身体的負担が少ない)の治療法は、まだ治療が開始されてから日が浅いため、実績が少なく実施している病院も限られています。

そのため子宮筋腫の手術が必要になった時、主治医の先生からこれらの治療法を勧められるということは少なく、患者さん本人がインターネットでいろいろな治療法を探すうちにこれらの治療法を知り、実施病院を受診し、手術を受けているというのが現状です。

しかし、なかにはここ数年の間に有用性が認められ、健康保険が適用になったものもあり、今後、ますます普及が進むものとして期待されています。

患者さんにとっては、治療の選択肢が増えるということはとてもうれしいことです。

2.最新治療法①:子宮への栄養を絶って筋腫を壊死させる「子宮動脈塞栓術(UAE)」

子宮動脈塞栓術(UAE)治療の目的・特徴

子宮内にできた筋腫は、閉経するまでの間、子宮動脈から栄養を摂りながら大きくなっていきます。

この子宮動脈を人為的に詰まらせることにより、子宮への栄養を絶ち、徐々に筋腫を壊死させるのがこの治療法のねらいです。

「子宮動脈塞栓術」(以下、UAEと略します)は子宮温存手術の中でも適応が広く、筋腫がいくつもあっても効果が期待できるのが特徴です。

日本ではまだあまり知られていない治療ですが、治療の開始から20年ほど経過しており、欧米では子宮筋腫のメジャーな治療法として確立しています。

UAEは血管内で行う治療。その手術方法とは?

右足付け根にある動脈からカテーテルと言われる細い管(1.3mm程度)を挿入し、左右にある子宮動脈に到達させます。

そこへエンボスフィアと言われる1mmくらいの粒状の塞栓物質を入れ、血流にのって子宮動脈を塞栓させ、血流が止まれば完了となります。

手術時間は30分~1時間程度で、その後、2~3時間程度安静が必要ですが、24時間以内には歩行が可能になります。

手術の傷はカテーテル挿入時の1ヶ所のみのため、術後の回復も早く2日後には退院が可能です。

UAE治療のデメリット

効果には個人差があり、まれに再発する場合があります。

45歳以上の場合、術後そのまま閉経してしまう可能性があります。

治療は放射線被爆を伴うため、なるべく短時間で終了させる必要があり、執刀医の先生の技量が問われる治療法です。

また、術後、感染症をおこすと子宮を全摘する可能性がありますが、実際の確率は高くありません。

偽閉経療法(ホルモン療法)中は手術が難しく、効果が落ちるため行えないので、治療後、2~3ヶ月期間を空けてからUAEを行います。

手術を受けた8割の患者さんが効果を実感。妊娠も可能!

この手術法はいきなり筋腫を取り除く手術とは違い、栄養を絶たれた筋腫がじわじわと小さくなるものですが、手術を受けられた患者さんの8割に効果があり、1ヶ月後の検査時には一回り程度、2年後までに20%程度にまで筋腫が小さくなる効果があると言われています。

その後は3ヶ月後、半年、1年後と定期的な経過観察で筋腫が小さくなっているか結果を確認します。

子宮はそのまま残っているので、妊娠も可能です。

お笑い芸人「森三中」の大島美幸さんもこの手術を受けられ、その後、無事お子さんを出産されています。

有用性が認められ、2014年健康保険適用に。

自由診療で行われていたUAEは、高額な費用がかかるため、これまであまり普及はしていませんでしたが、塞栓物質のエンボスフィアが2014年に健康保険の適用になりました。

これにより大幅に費用を抑えることができるようになり、3割負担の場合、手術の費用は15~18万程度の手術費用で済むようになったため、これから治療を希望する患者さんの増加が見込まれています。

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(参考)医療法人社団恵仁会調布keijinkaiクリニック
※東京都調布市にあるクリニックのサイトです。UAEについて分かりやすい説明が載っています。

3.最新治療法②:切らないで治す「MRIガイド下集束超音波治療(FUS)」

MRIガイド下集束超音波治療(FUS)の方法・目的とは。

MRIガイド下集束超音波治療(以下、FUSと略します)は、MRI(磁気共鳴画像検査)で筋腫を撮影しながら、200以上の細い超音波を一点に集め、変換した熱エネルギーを筋腫に照射する治療法です。

超音波は人体に無害で、筋腫の細胞にのみ熱を発生させるので、皮膚を切る必要もなく、麻酔薬等の薬剤も使用しないため、大きな副作用はほとんどありません。

治療はMRIにうつぶせになった状態で3~4時間、超音波を照射し続けます。

治療中はじっとしている必要がありますが、会話をしたり、ヘッドフォンで好きな音楽を聞いたりすることもできます。

身体に負担の少ない低侵襲な治療法なので、日帰りで手術を行うこともでき、翌日からは通常の生活を送ることが出来るのが最大のメリットです。

カナダやアメリカで研究開発されたFUSは2004年に承認され、それ以降、日本でも治療が始められ、徐々に広がりつつあります。

その歴史は10年ほどとまだ浅く、実績もこれから増加が期待されています。

持病があったり、筋腫のサイズや場所によってはFUSが行えないケースも。

MRIを使用するため、心臓のペースメーカー人工内耳などの金属が埋め込まれているとこの治療法は行えません。

また、造影剤のアレルギーがあったり、気管支喘息のある方も造影剤の検査ができないため行えません。

筋腫が4つ以上あったり、10㎝以上の大きな筋腫がある場合、背中に近い場所ある筋腫も、原則、適応外となります。

ただし、大きい筋腫に対しては、FUSを行う前に、薬剤によるホルモン療法で、小さくしてから手術を行うケースがあります。

また、下腹部に手術の痕や傷がある時も場所によっては適応外となる事があります。

FUS治療のデメリット

全体の3%程度と、確率は低いですが、治療後、腹痛、吐き気、軽いやけど、皮膚の赤み、一過性の坐骨神経に沿った痛みやしびれなどの副作用が現れることがあります。

筋腫を超音波で焼灼して小さくするこの治療は、完全に筋腫を取り除く根治治療ではありません。

子宮自体は残したままの状態なので、再発の可能性もゼロではありません。

また、治療の開始からまだ日が浅く実績も少ないため、健康保険の適用はありません。

自由診療で金額は医療機関によって違いますが、目安は50万円程度と高額になります。

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(参考)医療法人社団明芳会板橋中央総合病院
※FUS治療を行っている板橋中央総合病院のサイトです。FUSについて分かりやすい説明が載っています。

4.最新治療法③:月経過多による貧血の改善に有効。マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)

マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)の目的

生理時、出血量が増えると、貧血になり、動悸や息切れといった症状が現れ、心臓にも影響を及ぼします。

マイクロ波子宮内膜アブレーション(以下MEAと略します)は子宮筋腫が原因で起きる月経過多(生理の出血量が多い)に有効な治療法です。

通常、出血量が多い時は低用量ピルを使って出血量を減らしたり、経療偽閉法で排卵を無くすというような薬物治療を行います。

しかし、低用量ピルでは思うような結果が得られなかったり、偽閉経療法は骨粗しょう症になるリスクがあり長期間の使用が出来ないため、薬物での治療が難しくなった時は、子宮全摘術を余儀なくされることがあります。

ですが、月経過多は閉経すれば治療がいらなくなるのに、子宮を取りだすのは抵抗があるという方も少なくありません。

そのような患者さんが、閉経までの数年間を辛い症状に悩まされることなく、快適に過ごすためにMEA治療は有効です。

MEA治療の方法は?

マイクロ波と言われる電磁波を子宮内膜に照射して壊死させ、出血量を減らすことを目的に行います。

直径4mm程のアプリケーターを子宮内に挿入し、その先端部からマイクロ波を照射し、周りの組織を加熱します。

子宮腔内全体を照射しても、数分~数十分で治療は完了し、入院も1泊2日と短く、すぐに通常の生活に戻ることが出来るのが最大のメリットです。

9割の患者さんは貧血症状が改善!

手術を受けた患者さんの9割は全く出血がなくなったり、1/10程度の出血量に減ったというデータがあります。

半数以上が無月経に近い状態となり、貧血の治療が必要なくなることもあります。

この治療を行っても、ホルモンを分泌する卵巣はダメージを受けていないため、手術後もホルモンの分泌は変化しません。

MEA治療のデメリット

妊娠・出産を希望する場合はこの治療は行えません。

筋腫で子宮が変形してしまっていて、アプリケーターが届かない時も適応外となります。

また、子宮はそのまま残っているので、まれに月経過多が再発する場合があります。

月経過多に伴って月経痛がある場合、出血が減っても、月経痛に対する効果は個人差があり、なかには痛みが改善されない場合もあります。

そのため症状が月経痛のみの場合には基本的にMEAは行いません。

MEA治療の費用はどれくらい?2012年、有効性が認められ保険適用に!

2012年4月に、健康保険が適用されるようになり、さらに治療を受けやすくなりました。

3割負担の場合の費用総額は10万円程度で、他の治療に比べると、リーズナブルなため、今後、治療希望する患者さんが増えることが見込まれます。

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(参考)医療法人 医誠会 医誠会病院
※こちらの病院で行っているMEA治療法の方法について分かりやすい説明を見ることが出来ます。

5.お医者さん任せはもう古い!患者さんが治療法を選ぶ時代

症状や進行具合は患者さんによって違います。

今回ご紹介した3つの治療法は、誰にでも適応するわけではありませんし、その効果にも個人差があります。

場合によっては従来の全摘術や内視鏡手術を行ったほうが良い場合もあります。

ですが、ここ最近、病気治療は「患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)を高める」ということがしきりと言われるようになりました。

従来までのようなただ病気を治すためだけの治療ではなく、「患者さん一人一人の希望を尊重し、病気になっても、これまでと変わらないような生活を送るための治療」へとシフトしてきています。

患者さんよって、年齢、ライフスタイル、ご本人の希望はそれぞれ違います。

治療方針をお医者さん任せにするのではなく、患者さん自身が様々な治療法を知ることで、自分に合った治療法が見つかることもあります。

また、諦めなければならないと思っていたことも、違う治療を行うことで叶う可能性が出てくるかもしれません。

子宮筋腫の治療は、新しい治療法の登場でますます選択肢が広がっています。

今や、それぞれの患者さんが子宮筋腫による辛い症状から解放され、快適に幸せな毎日を送るため、自分に合った治療を選択できる時代が来ているのです。

◆ 以下の記事も子宮筋腫の手術について詳しく説明しています。ぜひ参考にしてください。
子宮筋腫の手術①全摘か腹腔鏡か?ベストな選択肢は人それぞれ!手術時間、入院日数や健康保険適用は?

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