腫れ始め前後5日が感染力ピーク!おたふく風邪の感染期間・予防法・体験談
1.2016年に続き2017年も流行に注意。感染力の強い「おたふく風邪」の原因と症状
おたふく風邪(医学的には、流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん))は、子どもの頃にかかる伝染病の一つとして知られています。
2016年は、過去10年で2010-2011年に次ぎ、おたふく風邪が大流行した年でした。
国立感染症研究所によると、2017年1月以降も流行が収束せず、過去5年間の平均を上回る報告数で推移していましたが、2017年6月時点では平年並みの数字に落ち着いています。
ただし、特定の地域で、おたふく風邪が大流行する可能性はありますので、引き続き注意が必要です。
- ≪流行性耳下腺炎注意報・警報とは?≫
- 厚生労働省の感染症発生動向調査により把握した定点医療機関を受診した流行性耳下腺炎の患者数が、国立感染症研究所において設定した注意報・警報レベルの基準値に達したときに発令し、大きな流行の発生や継続が疑われることを指します。
注意報……定点医療機関あたり「3」を超えたとき
警報開始レベル……定点医療機関あたり「6」を超えたとき
警報終息レベル……定点医療機関あたり「2」を下回ったとき
おたふく風邪の原因は、感染力の強いムンプスウイルス。
おたふく風邪は、「ムンプスウイルス」と呼ばれるウイルスに感染することが原因で発症するため、別名「ムンプス」とも呼ばれています。
これは、ひどい耳下腺炎を起こした患者がボソボソ話すさま(mumbling speech)から「ムンプス」と呼ばれているという説もあります。
おたふく風邪といったら、その名前の通り”おたふくのお面のように耳の下から腫れる”という特徴的な症状があるので、発症すると比較的一般人にもわかりやすいウイルス感染症です。
ただし、病原性が弱い”不顕性感染(ふけんせいかんせん)”と呼ばれるタイプも3割ほど起こるため、感染したにも関わらず症状を発症しないため、無自覚のまま、感染源になってしまうケースも多く、保育園や幼稚園などで広がりやすい伝染病です。
さらに、おたふく風邪は自然感染での合併症の発症が多い病気です。起こる合併症の中でも、無菌性髄膜炎は予後良好の場合が多いのですが、明らかなおたふく風邪の症状が出ている人の約10%に発症すると言われています。
おたふく風邪の2大症状
- 38度以上の高熱(ただし、発熱が出ないケースもあり)
- 耳下腺(耳の付け根から頬・顎までの部分)の腫れ
初期症状では、首が痛くなったり、頭痛や食欲が落ちる、飲み込むと痛くなったり、(幼児の場合)機嫌が悪くなったり、と風邪に似た症状が出るようです。
(体験談)耳を痛がり、機嫌が悪かったので受診したら、おたふく風邪だった。
ある日、耳が痛がるようになり機嫌が悪くグズグズしていました。
耳鼻科を受診させてみようかと思った矢先に、なんとなく息子の体が熱いような気がしましたので熱を計ったところ、
37.5℃の発熱がありました。
受診の結果、おたふく風邪と判明しました。痛がる耳の下はだんだん腫れがよくわかるように大きくなっていき、それから2日後くらいに、もう片方も腫れてきました。
熱は耳を痛がるようになってから3日目くらいがピークで、ピーク時は39℃くらいまで熱がでました。
痛みや熱が引いてくると、みるみる元気一杯に自宅で過ごしていましたが、完治をして保育園に登園できるようになるまで1週間かかりました。(引用元):耳の痛みから始まった、おたふく風邪
■おたふく風邪の詳しい症状については、次の記事で詳しく説明しています。
2016年夏大流行!感染力が強い「おたふく風邪」の症状・経過・感染経路
2.いつまで感染る?おたふく風邪の感染経路と感染要注意期間は?
ムンプスウイルスによるおたふく風邪は、今のところ「ヒト」から「ヒト」への感染が確認されている伝染病です。
感染経路① 飛沫感染
せきやくしゃみなど飛び散って、空気中の微粒子に付着した病原体を吸い込むことによって、感染する場合もあります。
空気感染とも呼ばれ、人ごみに行ったあとに体調を崩したなんて話もよくありますね。
感染経路② 接触感染
感染源に接触することによって感染することです。
- 直接感染
体液や血液などの感染源に触れた手で、目や口などの粘膜に触れることで感染する場合。 - 間接感染
病原体が付着したものに他の人が触れることで、ウイルスが体の中に入り込み感染する場合。
→感染している人が触れたドアノブやタオルなどに触れることでも感染することがあるため、注意が必要です。
おたふく風邪の感染サイクル:①潜伏期間 2―3週間
ムンプスウイルス感染→潜伏期間→発症→回復期/二次感染期間という過程をたどり、潜伏期間から二次感染期間まで約1か月間、他人へ感染させてしまう可能性があるため、注意が必要です。
ムンプスウイルスが体内に入ってから、おたふく風邪の症状を発症するまでの期間(ウイルスの活動期に入るまでの期間≒潜伏期間)は2~3週間で個人差はありますが、平均して18日と長い特徴があります。
おたふく風邪の感染サイクル:②発症 4―7日 ★感染要注意★
耳下腺の炎症による耳の下の腫れは、発症し始めてから24時間以内に現れてくるのが一般的です。
この耳の下の腫れは、症状が出始めてから2日目が最も腫れ、3日目には落ち着きます。
また、耳の下の腫れ始める前後5日間が感染力ピークで、感染リスクが一番高い時です。
耳の下の腫れが出始めたら、おたふく風邪の可能性が高いので、看病をする際にはマスクをするなどして、二次感染に一層注意しましょう。
おたふく風邪の感染サイクル:③回復期/二次感染期間 発症から10日間
おたふく風邪の2大症状が完治するには、発症から10日程度の治療期間が必要と言われています。
耳の腫れなど症状が落ち着いてくると、感染力も弱まってくる特徴があります。
ただし、腫れが落ち着いてきても、再び高熱や頭痛・嘔吐が出たりしてくる場合には、無菌性髄膜炎などの合併症を発症している可能性もありますので、早めに医療機関へ受診して下さい。
(参考)流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ):国立感染症研究所
こちらのページでは、おたふく風邪の疫学・ワクチンの副反応についても、解説されています。
3.おたふく風邪は、腫れが出てから最低5日間は登園・登校禁止。大人は重症化も。
おたふく風邪は、学校保健安全法により出席停止措置あり。
おたふく風邪の好発年齢は、保育園・幼稚園・小学校に通っている3~10才位で、集団生活により感染が広がっていきます。
また、おたふく風邪は、文部科学省が定める学校において予防すべき感染症(学校感染症)の第2種に指定されています。
そのため、耳の下や顎の下などの腫れが始まってから5日以降で、さらに全身状態が良好になるまでは、登園・登校は禁止されています。
ただし、病状により医師が感染の恐れがないと認めた場合は、この限りではありません。
重症化の可能性大!大人のおたふく風邪
一般的に子どもがかかる感染症のイメージの強い”おたふく風邪”ですが、免疫の持っていない大人は、もちろん感染します。
症状は、子どもと同じように39度くらいの高熱が出ます。しかし、大人の場合は、高熱がなかなか下がらないことがあるので注意が必要です。
また、耳の下の腫れも子どもよりも腫れ、食事が取れなくなるほどの痛みが出る場合もあります。
(体験談)親戚の子供からうつり、高熱よりも頬の痛みが激痛!2週間も仕事を休むことに。
30才の時にまさかのおたふく風邪にかかってしまいました。
感染経路は、お正月に親戚のこどもにあってその子がそのあとすぐにかかったそうです。
私もしばらくしてかかりました。それから高熱になり3日間ほどねこみました。
熱がつらいというよりも、頬の痛みが本当に激痛で辛かったです。
唾液が出ると激痛が走るのでお腹が空いても食べることができませんでした。
すりおろしたりんごを食べるだけでも痛くて涙が出ました。
大人になってかかるおたふく風邪がこんなにも大変なことだとは思っていませんでした。頬の晴れは首がなくなるくらいのもので、このままなおらなかったらどうしようと泣けてきました。
仕事も長い間休ませてもらいました。
完全に腫れが引くのに二週間ほどかかりました。
おたふく風邪の症状だけでなく、合併症も重症化しやすいのが、大人のおたふく風邪です。
- 髄膜炎
ムンプスウイルスが原因で起こる髄膜炎は、おたふく風邪発症の約10%程で、頭痛や嘔吐が見られます。ただし、経過は良好で後遺症が残ることはすくないようです。 - 難聴(ムンプス難聴)
おたふく風邪を発症した0.2%~1.1%の確率で、内耳にムンプスウイルスが感染し、ムンプス難聴を発症します。ほとんどが片耳ですが、難治性の難聴です。なお、耳の下の腫れや強さと、ムンプス難聴の発症は無関係で、不顕性感染でも発生する場合も。 - 睾丸炎
発症した15才以上の男性の3割程度に見られます。睾丸が腫れ、痛みが出ます。ほとんどが片側の炎症ですが、両側で重症化した場合、稀に無精子症になり男性不妊に繋がることもあります。 - 卵巣炎
成人女性の1割弱に見られる合併症です。下腹部に痛みが出ます。ほとんどが片側の卵巣のみの炎症なので、不妊に直結することは少ないと言われています。
■おたふく風邪の合併症については、次の記事で詳しく説明しています。
2016年夏大流行!感染力が強い「おたふく風邪」の症状・経過・感染経路
妊娠中のおたふく風邪感染、お腹の赤ちゃんへの影響は?
妊婦さんがおたふく風邪に感染しても、お腹の赤ちゃんが先天奇形を持って生まれてくるというような影響は少ないとされています。
しかし、妊娠初期(特に妊娠11週頃まで)におたふく風邪に感染すると、流産の可能性が30%も上がる報告もあるので、特に、上の子が感染している場合には、マスク・手洗いを徹底して看病をするなど、二次感染への注意が必要です。
4.おたふく風邪は一度かかると免疫ができる!?おたふく風邪の治療法と予防法
おたふく風邪の免疫は、”終生免疫”。
おたふく風邪は一度感染すると、抗体が一生涯続くとされています。
子どものうちにかかる伝染病の一つとして有名な”おたふく風邪”ですので、小学生以上の抗体保有率は80%を超えていると言います。
とはいえ、親御さんに子どもの頃に感染したか聞いてみても「確か……なった気がする」なんて曖昧な回答をされることもあるかもしれません。
しかし、もし母親がおたふく風邪に感染したことない場合には、ムンプスウイルスの免疫ができていないため、母体から免疫が移行せず、新生児も感染する可能性があります。
子供の頃におたふく風邪に感染したか不明な場合で、ワクチン接種を受けていない場合には、病院で一度抗体検査をして、免疫があるかどうか確認するとよいでしょう。
- ≪終生免疫とは?≫
- 一度感染すると、一生免疫がつくため、二度は感染しないと言われている。ただし、ごく稀に再び感染する場合もある。
(参考)ムンプス:公益社団法人 日本薬学会
こちらのページでは、おたふく風邪の原因など概要について、説明されています。
おたふく風邪の治療法は、対症療法。
ムンプスウイルスには、特効薬はありません。
そのため、おたふく風邪の治療には、不快な症状を軽減するための”対症療法”となります。
発熱・痛みにアセトアミノフェン、イブプロフェンなどの解熱鎮痛剤が使われることがあります。
ただし、痛みが我慢できる場合には安静にしていても、大体1~2週間くらいで自然に完治するので、処方されない場合もあるようです。
おたふく風邪の予防法:①予防接種
前述のとおり、おたふく風邪は大人が感染すると症状が強く、睾丸炎、卵巣炎や膵炎などの合併症を発症することがあります。
また、潜伏期間が長いため、家族の誰かが発症した時には、免疫のない誰かが既に感染している可能性があります。
現在、おたふく風邪の予防接種は、任意接種のワクチンであり、最近では海外諸国と同じ2回接種が推奨されています。
また、予防接種での抗体獲得率は90%とされており、ワクチンを打つことで100%絶対におたふく風邪に感染しない訳ではありませんが、発症しても症状が軽く済んだり、感染しても症状が出ない不顕性感染で終わるなど、重症化しないとされています。
おたふく風邪の予防接種は、自治体によっては、助成の対象となっている場合もあります。
なお、好発年齢が3才~となっているので、幼稚園など集団生活に入る前に1回目を接種することをオススメします。
おたふく風邪の予防法:②うがい手洗い・消毒の徹底
おたふく風邪は、他のウイルス感染症と同様に、うがい・手洗いを徹底しましょう。
また、接触感染しますので、家族に感染者がいる場合には同じタオルを使わない、マスクをするなど二次感染に注意する必要があります。
さらに、おたふく風邪の病原菌であるムンプスウイルスは、アルコール、次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒すると不活性化が期待できます。
このように、おたふく風邪は、”子どもだけがかかる伝染病”ではありません。免疫がなければ大人もかかり、子どもよりも重症化や合併症の発症率が、比較的高いウイルス感染症です。
しかし、事前の予防接種で発症しても症状を軽く済ますことができたり、うがい・手洗い・マスク・消毒などで感染を予防することが可能です。
2016年は、5年ぶりに”大流行の兆し”があると発表されています。
感染リスクが高い時期を理解して、おたふく風邪の感染予防に努めましょう。
コメントを残す