薬物療法に代わる、うつ病の新しい治療法「磁気刺激治療(TMS)」
うつ病は薬の服用が一般的な治療ですが、副作用や長期間の薬の服用などを心配する方も多いのが現状です。副作用もほとんどなく、短期間で改善する新たなうつ病治療が日本でも導入されていますので、ご紹介いたします。
特に投薬治療を一定期間続けて効果がみられない、もしくは副作用により投薬治療を継続することが難しい方に効果が期待できる新たなうつ病治療です。
うつは「心の病気」ではなく、「脳の病気」と考えられています。
ストレスが積み重なると脳の働きが低下し、うつ病を引き起こす原因になります。
うつ症状を発症している脳は、血流や代謝が低下している可能性があります。
脳内にある人間の意欲に関わる領域「DLPFC背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)」が機能低下し、感情に関わる領域「扁桃体(へんとうたい)」の過剰活動が抑えられなくなっていると考えられます。
そこでさまざまな精神的な症状が現れるのです。
主にうつ病や双極性障害(躁うつ病)に有効ですが、適応につきましては、ご状態によりますので、詳しくは医師へご相談ください。
磁気刺激治療(TMS)とは
磁気刺激治療(TMS)は、脳に磁気をあてることで、脳の働きを回復させる新しい治療法です。
磁気刺激治療は「DLPFC背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)」に磁気刺激を与え、さらに深部にある感情をつかさどる「扁桃体(へんとうたい)」に二次的な刺激が加わり、脳の活動を回復させます。
※治療の効果には個人差があります。
磁気刺激治療(TMS)の治療期間と費用
症状にもよりますが、うつ病の場合の治療回数は通常30回〜40回で終了となり、治療期間はおおよそ3〜6ヶ月となります。治療回数や期間は、医師と相談しながら決めます。例えば30回の場合の治療費用は、55万200円(税抜)です。
※症状によっては、上記に当てはまらないケースもございます。
磁気刺激治療(TMS)の特徴
磁気刺激治療(TMS)は下記に上げるような5つの主な特徴があります。
①うつ病の約8割が軽症化
②うつ病の原因とされる脳の機能を改善
③薬に依存しない新たな治療法
④副作用がほとんどない
⑤1回の治療時間はわずか20分
特に副作用がほとんどないので、体に負担をかけない治療として注目されています。
磁気刺激治療(TMS)の長所と短所をまとめてみました。
長所 | 短所 |
---|---|
抗うつ薬にみられる副作用がない | 現在国内では、健康保険を利用できない(自費診療) |
再発率が少ない | 効果がでるまでに時間がかかる |
認知機能の改善が期待できる | 通院が必要である |
薬物治療で改善しない患者さんにも効果が期待できる | 人によっては磁気刺激時に多少痛みを伴うことがある |
電気痙攣療法のような、静脈麻酔や筋弛緩薬などを必要としない |
磁気刺激治療(TMS)の安全性や治療実績について
磁気刺激治療(TMS)は、2002年にカナダで承認され、その後FDA(アメリカ食品医薬品局)でうつ病治療の医療器具として認可を受けており、既にうつ病治療に効果を上げています。既にアメリカでは、多くの病院でTMSによる治療を受けることが可能で、6〜7割以上の患者様に効果があったという結果も出ています。
当院における治療結果では磁気刺激治療(TMS)を受けて約8割の方に大きな改善がみられ、約2人に1人が寛解しています。また、治療終了後12週時点で再発(HAM-Dで20点以上)と判定された方は、2%です。
磁気刺激治療(TMS)の禁忌事項
頭部に金属を有している方など、詳しくは医師にご相談ください。
磁気刺激治療(TMS)のまとめ
■TMSは基本的に安全な治療法であり、薬と違って副作用が少ない。しかし、効果がでるまでには、複数回以上の治療が必要。
■米国のFDA、ヨーロッパ、カナダで認められている。厚生労働省は保険診療への検討を行っています。(2018年6月現在)
■当院における治療結果では、うつ病の方が30回治療で 81%の人が改善 55%の人が寛解(※HAM-Dで評価)
※カウンセラーが質問し、患者さんが答えたり、カウンセラーが患者さんの状態を評価したりしたものを点数化し合計点数をだす。
■「脳の機能を調整する」・「脳を活性化させる」という抗うつ剤の神経伝達物質とは違ったアプローチで、これまで抗うつ剤に反応しなかった難治性・治療抵抗性のうつ病に対しての効果が期待されます。
■磁気刺激治療(TMS)は、薬物療法に効果が出ないうつ病の患者さんにとって効果が期待できる治療法で、抗うつ剤による副作用で十分な投与量を服薬できない患者さんにとっても有効です。
■薬を中断・減薬したときに起こる離脱症状は、磁気刺激治療(TMS)では起こることはほぼありません。
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