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2017年3月3日更新

体験談:変形性膝関節症で2回の手術(人工関節置換術・骨切り術)を経験!

変形性膝関節症は進行性の疾患で手術が必要になる事も。手術を行うきっかけやタイミング、手術の方法はどうやって決める?実際に人工関節置換術と骨切り術の二つの手術を受けた、60代女性の三上さん(仮称)にお話を伺いました。
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私たちが普段、何気なく行っている「歩く」という動作。

意識することはあまりありませんが、実は膝や股などの「関節」が重要な働きをすることでスムーズに行うことが出来ています。

「変形性膝関節症」はその歩行に欠かせない膝関節の軟骨がすり減り、炎症を起こす疾患です。

膝関節の痛みや違和感を引き起こし、進行すると歩行に障害が出て仕事や家事など日常生活に支障をきたすようになります。

発症すると完治することはないため、薬物療法などでは症状が抑えられなくなると、時期を見て「手術」という選択が必要になります。

しかし、変形性膝関節症の手術は、進行具合やライフスタイルによって選択する方法が異なるほか、術後はリハビリのための長期入院が必要になるため、なかなか手術に踏み切れないという患者さんが多いのが現状です。

そこでカルーマガジン編集部では、変形性膝関節症を発症し、2回の手術を受けられた、60代女性の三上さん(仮称)という方ににインタビューをお願いしました。

50代で変形性膝関節症を発症した三上さんは、「人工関節置換術(じんこうかんせつちかんじゅつ)」「高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)」という、左右それぞれ別の膝関節の手術治療を受けていらっしゃいます。

今回は、それぞれの手術を決めたきっかけや選択法、2つの手術の比較など、変形性膝関節症の「手術」にまつわるお話を中心に伺いました。

実際に手術を体験された方にしか分からない、貴重なお話がいっぱいです。

過去に投稿いただいた「病院口コミ検索Caloo」の病気体験レポートと併せてじっくりお読みください!
変形性膝関節症で骨切り術を行いました。予定より入院が長期に。

まずは変形性膝関節症の発症について伺ってみました!

Q1.膝に不調や違和感が現れたのはいつくらいからですか?最初はどのような症状から始まりましたか?

正確な年齢はもう忘れてしまいましたが、50代の中ごろから膝を曲げ伸ばしすると関節がゴキゴキと音がし始めました。

しゃがむのがつらくなり、和式のトイレを利用するのが厳しくなってきました。

それでも正座は短時間であれば可能でした。

Q2.仕事やスポーツなど、ご自身で何か変形性膝関節症の発症のきっかけになったと思われることはありましたか?

特にスポーツなどはしていませんでしたが、その頃に長年続けていた商売に失敗し、バイキング式の焼肉店で朝も夜も働くようになりました。

凄く忙しい店で、立ち仕事・頻繁に小走りで店中を歩き回るなど重労働であったせいで、かなり膝に負担がかかったのではないかと思います。

今振り返ると、何もない場所で躓いて転びそうになったり、よく転んで怪我をする事が多かったと思います。

一度目の手術。左膝の「人工関節置換術」のこと。

◆人工関節置換術とは……。

患者さん自身の関節(骨)を使った手術が行えない場合に、代わりに人工の膝関節を入れる手術のことです。

高齢の患者さんや、軟骨の減りが激しく、症状が進行した患者さんに行われることが多い手術です。

詳しくは以下の記事をご参照ください。
関節温存か人工関節か。変形性膝関節症3つの手術方法とその選び方・体験談 

Q3.左膝の人工関節置換術を決心されたきっかけは何ですか?また、人工関節を選ばれた理由を教えてください。

手術の何年か前より、ますます膝の状態が悪くなり正座が全くできなくなりました。

膝関節の内側の軟骨が摩耗により減ってきて、歩くと勿論、立っていても痛みがあり、何より膝がO脚になり見た目がとても悪くなってきました。

整形外科での治療は、膝関節に直接ヒアルロン酸の注射をしたり、筋肉を強化するリハビリをやったりと、かなり長期間施術しましたが、結局、対症療法に過ぎませんでした。

一旦減ってしまった軟骨は再生せず、根本的に治癒する事は期待できないということで、知人よりとても腕がよいと評判の整形外科の医師を紹介され、診断の上、人工関節置換術がもっとふさわしいという事で決意しました。

(編集部補足)
変形性膝関節症の治療はすぐに手術になるわけではなく、まず薬物療法や運動療法といった保存療法から始めます。
膝に関節の動きを滑らかにするヒアルロン酸を直接注射する方法や、膝周りの筋肉を付ける筋トレ、可動域を広げるストレッチなどを行います。
どちらも進行を抑えるためには効果的なものですが、根本的に治癒させる事はできません。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
変形性膝関節症の検査と薬物治療。内服薬、注射、外用薬で痛みを和らげる。 

Q4.人工関節置換術の術後の経過を教えてください。

全身麻酔で手術を行いました。

術後は仰向けの姿勢を保たなければならず、術後の患部の痛みは言うまでもなく寝返り等できる状態でもないので、腰が我慢できないほど痛くなり、手術をした脚全体は形容しがたい「ダルさ」「痛さ」「苦しさ」でした。

術後のリハビリは最も重要な治療ですが、男性でも大声で叫んでしまうほど辛いです。

約3週間ほどでリハビリの痛みはだんだん楽になり、45日位で退院のめどが付きますが、その後のリハビリがとても大切なので、大半の人は紹介状を書いてもらい、他の病院に転院し1~1.5カ月程リハビリ入院を していました。

Q5.実際に人工関節置換術の手術を受けられてみていかがでしたか?

歩行時の痛みはほぼ解消し、曲がっていた膝も綺麗なまっすぐな形になりガラスのウインドーに写る歩く姿を見て、とても嬉しかったです。

ただ、人工関節の手術は膝の靭帯の一本が切断されてしまうという難点があり、膝全体にずっと重苦しい感覚の違和感が残ってしまいます。

しかし、痛みではないので慣れてしまいます。

人工関節置換術(膝)

(写真引用)兵庫県立リハビリテーション中央病院
※写真はイメージです。こちらの人工関節センターでは人工関節置換術など専門的な治療を行っています。

二度目の手術。右膝の「高位脛骨骨切り術」のこと。

◆高位脛骨骨切り術とは……。

患者さん自身の関節(骨)を温存して行う自骨手術です。

膝下の骨に切れ目を入れてくさび型に切り取り、プレートで固定する方法や、切れ目の間に人工骨を入れる方法があります。

比較的、早期で骨の変形がそれほど見られず、骨密度や骨の質がしっかりしている若年の患者さんを中心に行われます。

骨がしっかりとくっついた後は動きの制限が少ないため、スポーツなどの趣味がある方に向いている手術法ですが、骨がしっかりとつくには時間がかかるため、人工関節よりも長く痛みが残る場合や、リハビリに時間がかかることがあります。

詳しくは以下の記事をご参照ください。
関節温存か人工関節か。変形性膝関節症3つの手術方法とその選び方・体験談

Q6.一年半後に受けられた右膝の手術を決心されたきっかけを教えてください。左膝とは違う「骨切り術」された理由は何ですか?

左の人工関節の手術をした当時は、右側は余り悪化しておらず、手術の必要が無い状態でした。

しかし、術後左足をかばっていた時期にかなり右足に負担がかかったせいか、少し症状が進んでしまったようです。

絶対手術しなければならない程の状態ではなかったのですが、このまま年を重ねていくとだんだん症状が進むことは明白であるし、どうせならあまり高齢化してからより少しでも若いうち(64歳)に手術して、残りの人生を活動的に楽しく過ごしたいと思い決心しました。

右は膝の関節の曲りも良く、ひどい状態ではないので膝を 全廃する関節置換術ではなく、膝を温存し腓骨(ひこつ)を一旦切断し、自分の身体から骨を少し削り切断した箇所にくさびの様に足して、膝をまっすぐにする骨切り術を選びました。

一般的に人工関節にするより、症状が軽めの人に行う術法らしいです。

術後の経過も人工関節よりは短期間で回復し退院できるという説明でした。

オープン法(骨切り術)

(写真引用)ひざの痛みと治療方法
※写真はイメージです。こちらのサイトでは高位脛骨骨切り術の詳しい情報や画像が載っています。

(編集部補足)
三上さんのケースではご自身の骨を使用されたとのことですが、現在では、2~3年ほどで自骨と置き換わる「人工骨」が使われる場合も増えています。

Q7.人工関節置換術に比べると骨切り術の方が術後の痛みが長く続いたとのことですが、術後の経過を教えていただけますか?

術前の説明では約30日間ほどで退院する事も可能であるという事でした 。

人工関節の時、術後、歩くリハビリの時の体重の荷重は約1か月ほどで全荷重になったと思います。

それまでは1/4荷重→1/2荷重→全荷重と、段階的に進んでいくのですが、骨切り術は術後2週間目で全荷重をして歩く、というリハビリプログラムでした。

しかし、私の場合は全荷重にして歩いてみたら、まるで脳に焼き火箸を突き刺されるような激痛でした。

余りの痛さにとても歩くことなどできず、やむを得ず特別なリハビリのプログラムを計画して貰い、一か月半位車いすでの移動が主でした。

どうしてこんなに回復が遅いのか不安でした。

先生が「特別にゆっくりゆっくり直していきましょう、治るまでは入院を続けていきましょう。」と言って下さり、結局4か月近く入院してしまいました。

入院している間はかなり回復し、日常生活にも支障が無くなり、安心して退院したのですが、家に帰り普通の生活を始めたら症状が悪くなり、杖を突いてようやく歩くほどになりました。

その後のリハビリ通院も一年くらい続けました。

時間の都合で手術をした病院ではなく、別の評判のいい整形外科にリハビリに通いましたが、そこの先生が「この手術は余り術後の経過がよくなく、評判が悪い手術だ」とおっしゃっていました。

(編集部補足)
術後の歩行リハビリではいきなり膝に全体重をかけるのではなく、平行棒や松葉杖などを使い、1/4、1/2というように少しずつ負荷を重くして段階的に馴らしていきます。

「人工関節置換術」と「高位脛骨骨切り術」2つの手術の比較。

Q9.術後の経過は個人差がありますが、人工関節置換術と骨切り術の両方受けられて、それぞれの手術の良かった点、大変だった点を教えてください。

【人工関節置換術】

自分の膝は全廃してしまうが、術後の回復は早いです。

今はその当時より、人工関節そのものも性能が良くなっています。

今後、ますます品質の良い物ができて来るらしいです。

膝部に違和感 は残りますが、痛みはほぼ無くなります。

今までは人工関節の寿命は10年ほどで、その後再手術して交換する必要があると言われていましたが、今後はずっと交換しなくても良いものも開発されると思います。

【骨切り術】

自分としては人工関節と比べると回復が非常に時間かかり、2年後には体の中に埋め込んだ骨を支える金具を抜去する手術が必要になります。

私は手術から2年経過してますが、今もなお痛みが残り、じっとしていても痛む時が多くあります。

今振り返ってみると人工関節の方がよかったかな・・と思っています。

気になる!手術費用や高額療養費制度のこと。

Q10.手術費用が高額なため、高額療養費制度が利用できますが、その申請方法などについて教えていただけますか?

術前に「限度額認定書」というものを役所で交付して貰い、入院時に会計に提出しておきました。

自動的に高額療養費に該当する費用のみの請求になり、何度も手続する必要が無く、とても助かりました。

その方の課税状態や、収入の額により限度額が算定できるので、予算が立てやすく、前もってお金の算段をしておくこともでき、安心できるかと思います。

(編集部補足)
高額療養費制度とは、手術や治療費用がひと月で一定額を超える時に、その超えた金額を返還される制度のことです。年齢(70歳)や加入者の所得によって負担額が異なります。
高額療養費制度については以下の記事で詳しく解説しています。
変形性股関節症「人工股関節置換術」で快適な毎日を!その手術方法と体験談

右膝の手術後、2年が経過した現在の膝の状態について。

Q11.現在の状態はいかがですか?何か膝の状態を保つために普段から気を付けていることはありますか?

人工関節の手術の後から、定期的に整形外科でのリハビリはかかさないようにしていますし、身体に負担がかからず、運動になるという目的で、スポーツクラブのプールでウォーキングアクアビクスなどを続けています。

人工関節術の後はとても状態も良く快適でした。

骨切り術後も定期的にリハビリは続けていますが、体の状態はむしろ術前の方が活動的に動けていたような気がします。

変形性膝関節症で悩んでいる方々へ。アドバイス&メッセージ

Q12.今現在、変形性膝関節症の辛い症状を抱えている方や手術を考えていらっしゃる方にメッセージをお願いいたします。

変形性膝関節症は根本的に治癒する事は難しいと言われています。

TVなどのヒアルロン酸やコンドロイチンなどサプリのコマーシャルで、今まで歩くことも困難な人が階段をトントンと軽々と上っていたり、正座も出来なかった人が綺麗な形で正座したりとか、魅力的な内容ですが、あまり期待はできないと思います。

整形外科で長期間注射を続けたりしていても、結局は一時しのぎのように思います。

膝の痛みで日常生活に支障が出て、暗い気持ちでずっと対症療法を続けていても、治療費と時間がもったいないような気がします。

信頼のおける医師に相談し 、あまり高齢にならないうちに人工関節の置換術をして、痛みから解放され明るく活動的に過ごした方が有意義だと思っています。

ただ、術前に「手術の良い面・悪い面」、「仕事をしている人ならどのくらいの期間仕事を休まなくてはならないのか」など、気になる事は良く質問した方がいいと思います。

しかし、病院は忙しくゆっくり先生から説明を受ける時間が取れないかもしれません。

待合室には同じような症状の患者さんがたくさんいるかと思います。その様な人と仲良くなり、待っている間に色々な情報を集めましょう。

口コミもとても役に立ちます。調べるのに時間をかけるという事は大事で、無駄な事ではないと思います。

自分の身体の事です。後でこんな筈ではなかったと後悔しない様に、納得できるまで聞いて、調べて、最良の方法で治療しましょう。

術後の痛みや、リハビリの痛みが怖いと思っているかもしれませんが、所詮残りの人生の期間から見ればほんの一時です。

勇気を出して一歩踏み出してください。私は自分の経験から、人工関節置換術の方をお勧めします。

≪編集後記≫

三上さんのインタビューはいかがだったでしょうか?

今回のインタビューでは、手術をして良かった点のみならず、手術後の痛みや不安だったことなどのマイナスな面も、敢えて正直にお答えいただきました。

三上さんの場合は、骨切り術よりも人工関節置換術の方が良かったと感じられたようです。

もちろん、患者さんによって感じ方はさまざまですし、症状によっては骨切り術の方が適している場合もありますが、両方の手術を経験されている三上さんならではの、お医者さんからも聞けない、リアルな感想を伺うことが出来ました。

身体にメスを入れる手術は必ずリスクがあり、どんな人でも怖いものです。

今回のインタビューから、正直、人工関節置換術と骨切り術のどちらの手術であっても術後は痛みが残ること、大変なリハビリは避けては通れないということが分かりました。

三上さんが経験されたような、術後の苦労なくしては快適な膝を取り戻すことは出来ないのです。

ましてや術後のリハビリが予定通りに進まなかったり、入院が長引いたりするかも……と思うと、不安な気持ちに苛まれることがあるかもしれません。

それでも実際に2つの手術を乗り越えてこられた三上さんの、「残りの人生の期間から見たら術後の痛みはほんの一時」「残りの人生を活動的に過ごしたいと思って決断した」という前向きな言葉は、手術をためらっている方の背中を押してくれる1つの「きっかけ」になることもあるのではないでしょうか?

今回のインタビューで印象的だったのは、人工関節置換術を受けられた後の「曲がっていた膝も綺麗なまっすぐな形になりガラスのウインドーに写る歩く姿を見て、とても嬉しかった」という言葉です。

女性にとって綺麗なまっすぐの脚になる事は、歩けるようになる喜びと同じくらい大きいものです。

気持ちが明るくなることで、おしゃれが楽しめたり、ますます活動的になることができたりと、前向きな人生を送ることにつながっていくと思うからです。

高齢化が進む日本では、旅行やテニス、ゴルフなど多趣味なアクティブシニアの方もますます増えています。

いつまでも動ける身体を維持するには、予防のためにご自身の身体をケアすることが何よりも大切ですが、必要な時には「手術」という選択肢も視野に入れておきたいですね。

ご多忙にもかかわらず、少しでも同じ変形性膝関節症でお悩みの方の為になるならば、と詳しくご自身の体験をお話しいただいた、三上さんに心より感謝申し上げます。

これからも三上さんが、元気な膝をキープして、ますますアクティブな毎日を送ることができますよう、編集部一同願っております。

どうもありがとうございました!

※手術の適応や経過、感想には個人差があり、どちらの手術がより良いというものではありません。実際の手術の選択に際しては、主治医の先生と良く相談の上、決定していただくようにお願いいたします。

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