痛み方・痛む場所に違い。「関節炎」と「脊椎関節炎」の原因・症状・治療法
1.手足の関節炎を引き起こす病気は多数ある。痛む場所・痛み方に違いが!
関節炎とは、関節に炎症(痛み・腫れ・赤み・可動域制限など)が現れる病気の総称です。
関節炎が起こる病気(原因)には、実はいろいろ種類があります。
痛み方一つ取っても、「腫れてズキズキ/動かすと痛い/何もしなくても痛い」など諸々あり、痛む場所も「ある関節だけ痛い/複数の関節が痛い/左右対称の関節で痛い/非対称の関節で痛い」……など様々あります。
また、症状も局部症状(腫れ・痛み・赤み・可動域制限など)だけでなく、全身症状(発熱・全身の倦怠感・体重減少など)もあります。
よく聞く「関節が痛い」……手足の関節炎
一般的に「関節が痛い」というと、”リウマチ”を思い浮かべる人が、多いかもしれません。
よく聞く”リウマチ”とは、手足の関節に炎症が起こる「関節リウマチ」を意味して使われることが多く、女性に多い関節炎の一つです。
(引用)骨・骨格系|船戸和弥のホームページ
こちらのページでは、骨の構造など骨に関して詳細な解説がされています。
分類の仕方や個人差によって幅がありますが、人間の骨は、約200個以上もあります。
骨格図全体を見ると分かりますが、関節(骨と骨のつなぎ目)は、手足に集中しています。
人間は進化する過程で、他の動物よりも多くの関節を動かせるようになりました。
人間の手の指の関節は”何かを持つ・つまむ”という役割、膝関節は”体重を支える”という役割を担っている一方で、それだけ負担も大きく、炎症を起こすリスクが高いのです。
手足の関節炎の原因には、骨折など外傷以外にも、変形性関節症・腱鞘炎など使い過ぎによるもの、何らかの病気によって引き起こされているものがあります。
今回は、病気によって引き起こされている手足の関節炎の中でも、代表的な病気をいくつか見てみましょう。
①関節リウマチ-手足の関節が腫れてジンジン痛い・朝が一番動かしにくい
関節炎の中で一番名前が知られている関節炎です。
男女の発病率は1:4と女性に多く、30代40代50代での発病が多いですが、稀に10代での発病もあります。(若年性リウマチ)
■関節リウマチの原因
- 自己免疫疾患である膠原病の一つです。
- 免疫異常が起こる理由は、まだ明確になっていません。
ただし、ストレス・女性ホルモン・感染症・遺伝・化学物質など複数が絡み合って、きっかけになっていると考えられています。
≪自己免疫疾患とは?≫
外から侵入したウイルスなどを攻撃して、本来は体を守るための”免疫”が、自分自身の細胞を異物と認識し、自己抗体やリンパ球を作り攻撃することで起こる病気。それにより、全身または一部の臓器に様々な炎症・障害が現れる。
■関節リウマチの症状
- 朝、手指にこわばり(関節が硬く腫れているように感じ、動かしにくい状態)が見られることが、特徴です。
→リウマチの初期症状に多い。 - 左右対称の関節の痛み(ズキズキ/チクチク)・しびれ・腫れ・赤くなる・熱感(炎症のある部分が熱っぽく感じる)が現れます。
→最初から同時に左右対称の関節で痛みが出るのではなく、次第に炎症が左右対称となっていきます。さらに関節リウマチが進むと、次第に手足の指の関節が変形し始め、動かしにくくなり日常生活に支障を来すようになります。 - 関節炎の局部症状以外にも、口内炎・微熱が続く・体がだるい・食欲低下など、全身にも症状が現れることがあります。
■関節リウマチの治療法
- 抗リウマチ薬(メトトレキサート他)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID-ロキソニン他)、生物学的製剤など薬物療法。
- リウマチ運動などリハビリテーション療法。
- 安静・運動・食事など気を付けながら生活する基礎療法。
【体験談】「関節リウマチ」の母を見ていたから、自分も「関節リウマチ」症状と気付いて早めに受診できた。
パソコンのキーボードを叩いているときに、なんとなく右手の小指の関節が曲げにくいと感じていました。そのうちしこりのようになって、特に朝起きた時の手のこわばりが強くなって、同時に体が何となく熱っぽく疲れを感じていました。
「もしかして関節リウマチかも」と思いました。なぜなら、私の母も関節リウマチにかかっていたからです。その症状を間近で見ていたので、すぐにネットで検索して近くの「リウマチ科」のある病院を探し受診しました。
先生から「早期に受診してもらってよかった。関節リウマチは完治することはないけれど、今は効果のある薬が開発されているから普通の生活ができますよ」と言ってもらいました。
②細菌性関節炎-膝関節・股関節・肩が赤く腫れあがって激痛
「化膿性関節炎」とも呼ばれる感染症の一つ。
感染は子どもと高齢者に多く、感染によって関節内に膿が溜まる病気です。
また、膿が溜まったままだと、軟骨の劣化や骨の破壊が引き起こされ、関節障害が残ることがあるので、早期治療開始が必要です。
■細菌性関節炎の原因
- 黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌(溶連菌咽頭炎の原因)、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)など細菌による感染が原因です。
■細菌性関節炎の症状
- 関節の激しい痛み・腫れ・赤くなる・熱感・可動域制限・悪寒・食欲不振などが、急速に現れます。
- 色んな関節に起こる可能性がありますが、大人は膝関節での発生が多く、子供は股関節や肩に発症することが多いです。おむつ交換の時に激しく泣く、強い痛みがあるので少しも関節を動かそうとしないなどのケースは、乳幼児の股関節に発症した細菌性関節炎を疑う手掛かりになります。
■細菌性関節炎の治療法
- 抗生物質の点滴や膿の吸引または切開手術を行います。
- 急性期症状が落ち着いたら、リハビリテーション療法で関節機能を保つ必要があります。
(参考)化膿性関節炎|みやけ内科・循環器科
こちらのページでは、細菌の関節への侵入経路についても、丁寧に解説されています。
③痛風-40歳前後の男性に多い・足の指がパンパンに腫れて激痛
高カロリーな食材をよく摂っているとなりやすいことから、昔は”ぜいたく病”とも呼ばれていた痛風。
患者さんの90%は男性で、働き盛りの40歳前後に発症することが多い病気です。
■痛風の原因
- ビールや魚卵、ハム・ベーコンなどプリン体を多く含む食材をよく摂っているとなりやすい「高尿酸血症」(血中の尿酸値が高い状態)が原因となり、尿酸ナトリウム結晶が体内に溜まることで、発症します。
■痛風の症状
- ある日突然、足の関節(特に親指が多い)が赤く腫れて熱っぽく、耐え難いほどの痛み(痛風発作)が現れます。
- 発作の前兆として、チクチク・熱感を感じることがあります。
- 3~4日で落ち着いてきて、1週間~10日程度経つと自然に治ります。
- 自然に治っていきますが、放置すると発作を繰り返し、段々と発作間隔が短なり、慢性関節炎になります。
→進行すると、軟骨の劣化や骨の破壊が引き起こされ、関節の変形や機能障害が残ることがあります。
■痛風の治療法
- 関節炎の症状が出ている急性期の場合、安静にして、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID-ロキソニン他)で痛みを抑えます。
- 発作が治まっている時は、生活習慣の改善をしつつ、尿酸産生阻害薬(アロプリノール)などで尿酸値コントロールを行います。
2.腰・背中の関節炎はレントゲンや血液検査では診断がつかないことも。10代・20代での発症が多い「脊椎関節炎」
「腰が痛い」……関節炎は手足以外でも!脊椎(背骨)周辺の関節炎
関節リウマチや痛風は、主に手や足の関節に炎症が現れました。
しかし、関節炎が起こるのは、手や足の関節だけでありません。
”体軸関節”と呼ばれる体の軸となるような関節……主に脊椎(背骨)や仙腸関節(背骨を支える骨盤にある仙骨と腸骨の間の関節)に痛みやしびれなど炎症が現れる病気である「脊椎関節炎」もあります。
脊椎関節炎に分類される病気には、いくつかあります。
これまで「脊椎関節炎」に分類される病気が疑われる場合には、X線検査や血液検査が行われてきましたが、病気の進行段階が初期の場合には、”特に異常なし”と診断されることも多く、早期の発見・治療が難しい病気です。
日本においては、脊椎関節炎の発症数が低いため、あまり知れ渡っていません。
(例)脊椎関節炎の代表的な病気「強直性脊椎炎」の有病率……成人の約0.005%以下。
しかし、ここ10年で「脊椎関節炎」に含まれる病気共通の診断(分類)基準が出来、少しずつですが早期発見に前進し始めています。
長年の原因不明の腰・背中の痛みは、もしかしたら「脊椎関節炎」かもしれません。
(参考)脊椎関節炎|順天堂大学医学部附属順天堂医院 膠原病・リウマチ内科
脊椎関節炎が現れる病気の共通した症状・特徴
- 脊椎(背骨)や仙腸関節(背骨を支える骨盤にある仙骨と腸骨の間の関節)など体軸関節の炎症(体軸性関節炎)
- 股関節・肩など腱・靭帯が骨に付着する部分の炎症(付着部炎)
- 対称ではない手足などの関節(末梢)の炎症
- ソーセージのように手足の指が腫れる。
- 目にぶどう膜炎(合併症)
- 血液検査を行うも、リウマトイド因子(関節リウマチ患者の約80%は陽性となるリウマチ反応・抗CCP抗体含む)の陰性や急性炎症反応であるCRPに異常が見られない。
→このことから、「血清反応陰性脊椎関節症」とも呼ばれています。 - ヒト白血球抗原(HLA)のうち、HLA-B27陽性
→日本人の約0.2~0.3%が保有していると推定されているHLA-B27型が陽性であることが多いため、「HLA-B27関連脊椎関節炎」とも呼ばれています。
この脊椎関節炎に分類される病気には、大きく分けて5種類あります。
(強直性脊椎炎・乾癬性関節炎・反応性関節炎・腸炎関連関節炎・分類不能の脊椎関節炎)
では、脊椎関節炎の代表的な病気である「強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)」について、詳しく見てみてみましょう。
「強直性脊椎炎」の原因・症状・治療法
この強直性脊椎炎は、2016年現在「難病指定」を受けています。
(参考)強直性脊椎炎|難病情報センター
■強直性脊椎炎の原因
はっきりとした原因は、未だ解明されていません。
しかし、HLA-B27陽性が疾患に何らかの関与をしていると考えられています。
■強直性脊椎炎の症状・特徴
(引用)強直性脊椎炎の炎症が起きる場所|公益社団法人 日本整形外科学会
- 10~20代で発症することが多く、40歳以下での発症がほとんど。
- 脊椎や骨盤の関節に付いている腱や靭帯に炎症(痛み・こわばり・腫れなど)や倦怠感・発熱が出始めます。
- 安静にしていると痛み、運動するとよくなる症状が3か月以上続きます。
→初発症状は、「腰痛」・「背部痛」が多い。症状の波(強い痛みと痛みが全くない時など)が激しいことが特徴。
そのため、軽い椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症などの慢性腰痛と間違いやすく、症状の波があることから、心身症・自律神経失調症と診断されることもある病気です。 - 進行すると、脊椎や関節の動きが鈍くなり、20~30%の割合で腱や靭帯に石灰がついて骨のように硬くなり、動かなくなります。(=強直)
→屈伸しにくくなったり、上の物を取ったりすることが難しくなります。 - 場合によって、股・膝・足・肩関節などの末梢関節にも、同様な炎症が起きます。
■強直性脊椎炎の治療法
- 完全に治す治療法はまだありません。
- プールでのウォーキングなど運動療法(体の柔軟性の維持)。
- 非ステロイド性抗炎症薬を中心とした薬物療法。
脊椎関節炎の早期発見のため、新診断(分類)基準ではMRI所見も追加に。
強直性脊椎炎を含む、脊椎関節炎が進行していると、X線検査(レントゲン検査)でも靭帯が石灰化しているなど異常が認められることは多いのですが、病気の初期の場合には、骨の強直に伴った症状やX線での変化は認められないことが多くあります。
初発症状から確定診断にかかった期間は、平均して約10年!
(参考)わが国における強直性脊椎炎患者の実態|日本AS友の会
そのため、2009年に制定された新基準(分類)では、MRI検査が追加され、初期の仙腸関節の炎症が診断できやすくなりました。
(引用)脊椎病変を持つ「体軸性脊椎関節炎(axial SpA)」の分類基準 (2009年)|慶応義塾大学病院 KOMPAS
3.早期発見・早期治療開始が重要。関節に異常を感じたら、整形外科・リウマチ外来へ。
前述した通り、関節炎自体は、ほとんど今すぐ命に係わる病気ではありません。(合併症など一部例外もあり)
とはいえ、関節炎を引き起こしている病気は、様々あります。
原因となる病気によっては、治療開始が遅れると関節障害が残り、日常生活に支障を来してしまうこともあります。
関節が痛い・痺れる・腫れる・動かしにくいなど異常を感じたら、早めに整形外科やリウマチ外来で相談してみましょう。
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