認知症の進行抑制薬「アリセプト/レミニール/リバスタッチ」の効果・副作用
アルツハイマー型認知症は、知らぬ間に発症し、月日をかけて、徐々に判断力・記憶力などが低下していく症候群ですが、適切な治療によって症状の進行を遅らせることは可能です。
ただし、薬は、家族が管理することが重要です!
神経活動を高め、認知症状を抑える「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」
アルツハイマー型認知症の抗認知症薬として、国内外で標準的に使用されています。
日本では、「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」に分類される薬として、2016年現在「①ドネぺジル塩酸塩(アリセプト)」「②ガランタミン(商品名:レミニール)」「③リバスチグミン(リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ)」の3つの薬が認可されています。
<3つの薬に共通する効果>
- 重要な神経伝達物質である「アセチルコリン」の神経活動を高めて、認知症症状を抑える作用。
有効率は、約20~30%。
<3つの薬に共通する注意点・副作用>
- 持病がある場合(心疾患・消化器系・肝臓系・腎臓系)は、服用注意。必ず過去の病気も含めて、治療中の他の病気と一緒に主治医に相談が必要です。
- 副作用など現れた場合でも、自己判断で中止せず、必ず医師にご相談ください。より悪化する可能性もあります。
- 同じ「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」に分類される薬同士の併用は、できません!
名称(商品名) | アルツハイマー型認知症 適応 | 薬の形態 | 回数
(1日あたり) |
||
---|---|---|---|---|---|
軽度 | 中等度 | 重度 | |||
ドネペジル塩酸塩(アリセプト) | ○ | ○ | ○ | 内服 | 1回 |
ガランタミン(商品名:レミニール) | ○ | ○ | 内服 | 2回 | |
リバスチグミン(商品名:リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ) | ○ | ○ | 貼付薬 | 1回 |
(参考)認知症薬の種類と特長|認知症ねっと
こちらのページでは、医師により認知症の薬について、説明されています。
■攻撃性・徘徊も抑える認知症治療薬「メマリー」については、以下の記事で詳しく説明しています。
「アリセプト」と併用OK。攻撃性・徘徊も抑える認知症治療薬「メマリー」の効果・副作用
1.ドネペジル塩酸塩(商品名:アリセプト)の特長・効果・使用方法・副作用
1999年に日本で最初に認可されたアルツハイマー型認知症に対する抗認知症薬です。
国内外ともに広く使用されています。最近では、ジェネリック薬品も出ています。
軽度から高度のアルツハイマー型認知症の適応があり、高度においては唯一の抗認知症薬です。
■アリセプト その他の効果
無関心や自発性が無くなっている場合や抗うつ状態の改善
■アリセプトの種類
- 口腔内崩壊錠(OD錠)……最も処方され、水なしでも飲める。
嚥下機能低下の場合でも服用可能。 - ゼリー剤
一口サイズのゼリー状製剤。はちみつれもん風味。嚥下機能低下の場合でも可能。 - ドライシロップ
粉末を水に溶かして、シロップとして飲むことが可能。粉末のまま飲むことも可能。
■アリセプトの使用方法・服用タイミング
<使用方法>
- 3mg(1日1回)からスタートして、身体に薬による神経伝達物質の変化に慣れさせ、副作用があるかどうかを確認。
- 服用開始から1、2週間後に5mg(1日1回)に増量。
- 高度のアルツハイマー型認知症の場合には、4週間以上5mgを服用した後、10mgに増量。
<服用タイミング>
- 脳の活性化を促す薬なので、昼夜のリズムを整える目的として、「朝」に処方されることが多い。
- 飲む時間帯による血中濃度への影響は、小さい。
■アリセプトの注意点・副作用
- いつも飲む時間より12時間経っていたら、翌日の服用タイミングから再開。
- 下痢や吐き気など消化器症状
→服用開始初期や薬の増量後などに起こり易いが、数日から1週間程度で収まることが多いようです。 - 眠気や吐き気、興奮・イライラ感などの精神神経症状
→身体が薬に慣れてくると、自然に落ち着いてくる。
介護者に大きく負担がかかっている場合には、医師に相談してみるとよいでしょう。 - 心臓病の持病がある場合には、徐脈や不整脈に注意。
2.ガランタミン(商品名:レミニール)の特長・使用方法・副作用
2011年に認可された認知症症状を抑える薬です。しかし、海外では2000年頃より発売されていたので、特別に新しく開発された薬では、ありません。。
アルツハイマー型認知症に対しては、軽度および中等度の方に適応されます。
臨床治験では、治療初期から服用を開始すると、進行してから服用するよりも、進行を抑える効果があったと報告されています。
■レミニール その他の効果
攻撃性や感情の不安定さ興奮、徘徊などの行動心理状態についても効果あり。
■レミニールの種類
- 口腔内崩壊錠(OD錠)
水なしでも飲め、嚥下機能低下の場合でも服用可能。 - 内用液
一回分ごとに1パックになっている液体。 - 錠剤
一般的な錠剤なので、嚥下機能が低下している場合には、向いていません。
しかし、他の持病ある場合などは、薬局で他の薬と一緒に1回分をまとめて、1つの袋に入れてもらうことが可能なため、飲み間違いなどを防ぐことができるので、介助者の負担が軽減できるメリットもあり。(※一纏めにしてもらう場合、有料の場合も)
■レミニールの使用方法・服用タイミング
<使用方法>
- 8mg(4mg×1日2回=8mg)からスタートして、副作用があるかどうかを確認する。
- 服用開始から4週間後に16mg(8mg×1日2回=16mg)に増量する。
- 4週間以上16mgを服用した後、症状に応じて24mgまで(12mg×1日2回=24mg)増量はできる。
<服用タイミング>
他の2種のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬に比べ、薬の効果持続時間が、約7時間と短い。
■レミニールの注意点・副作用
- 飲み忘れても、2回分を一度に飲まない!1時間以内であれば、すぐ服用。
ただし、いつも飲む時間より数時間以上経っていたら、飲まずに次回服用時間から再開。 - 下痢や吐き気など消化器症状
→服用開始初期や薬の増量後などに起こり易いが、数日から1週間程度で収まることが多い。
(参考)レミニール錠|おくすり110番
3.リバスチグミン(商品名:リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ)の特長・使用方法・副作用
2011年に認可され、前述した「アリセプト」や「レミニール」と同じく神経伝達物質である「アセチルコリン」を分解する酵素を抑制します。ただし、「アリセプト」とは違い、他の神経伝達物質「ブチルコリン」を分解する酵素も同様に抑えることから、認知機能の改善されたというデータもあるようです。
元々、1997年にカプセル剤で海外では発売されていましたが、副作用が問題となり日本では認可されず、貼り薬にしたことで効能を活かしつつ、副作用が抑えられるようになりました。
特に、アリセプトなどで副作用が出てしまった場合などに選択されることも。
リバスタッチパッチもイクセロンパッチも販売元が異なるため、商品名が2つありますが、どちらも同じ成分リバスチグミンです。軽度および中等度の方に適応されます。
■リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ その他の効果
日常生活動作(「書く」「話す」「買い物をする」など)に改善が見られます。
■リバスタッチパッチ/イクセロンパッチの種類
- 抗認知症薬で、唯一の貼り薬。嚥下機能低下患者に向いている。
- 4.5mg、9mg、13.5mg、18mgの4種類。有効成分の量に比例して、貼り薬の面積は大きくなります。
■リバスタッチパッチ/イクセロンパッチの使用方法・服用タイミング
<使用方法>
- 1日1回 背部、上腕部、胸部の健康な皮膚に、4.5mg→9mg→13.5mg→18mgと4週間ごとに用量を増やして、身体を徐々に慣らしていく。
→副作用の出方に違いがないことから、2015年より9mgの貼り薬からスタートして、4週間後に18mgの貼り薬に変更する増量方法も認められました。
<服用タイミング>
- 1日1枚貼り、一度に2枚貼らない。
- 貼るタイミングは同じ時間帯なら、いつでも良いが、お風呂に入ると剥がれ易くなるので、入浴時に貼り替えるのがオススメ。
■リバスタッチパッチ/イクセロンパッチの注意点・副作用
- 粘着面に有効成分が付着しているので、剥がした後は粘着面同士くっ付けて、きちんと捨てて下さい。
- 貼り忘れたり、張り替え忘れた場合には、気付いたらすぐに貼る。次の日からは、いつもの時間に貼って下さい。
(ただし、4日以上貼っていなかった場合には、主治医に要相談。再開する際に用量の変更となる場合もあり) - かゆみ・赤くなったり・かぶれたりする皮膚症状
→同じところに貼らずに、いくつかの場所をローテーションで貼ると良い。
あまりにも、かゆみや赤みなどが続く場合、軟膏を処方されることもあるようです。 - 嘔吐など消化器症状が出る場合があります。
(参考)リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ|おくすり110番
(参考)認知症の薬|認知症ねっと
こちらのページでは、認知症の薬について、詳しく説明されています。
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