妊娠初期は流産の危険性も。妊婦さん・授乳ママがおたふく風邪になったら薬は飲める?赤ちゃんへの影響は?
1.大人は重症化の心配もあるおたふく風邪。妊婦さんは特に注意が必要!
おたふく風邪は感染力の強いウイルス性の感染症です。
発熱や耳の下(耳下腺)の腫れなど辛い症状が出るのが特徴です。
最近では季節に関係なく流行るようになってきていて、なかなか予防が難しい病気です。
おたふく風邪の詳しい症状については以下の記事で詳しく説明しています。
2016年夏大流行!感染力が強い「おたふく風邪」の症状・経過・感染経路
妊婦さんの発症は少ない!?日本人はすでに抗体を持っている人が多い。
おたふく風邪は、子供の頃にすでに感染していたり、予防ワクチンを受けている人が多く、小学生以上の抗体保有率は80%以上と言われています。
そのため妊娠中に発症することも珍しく、1,000人~10,000人に1人程度と決して多くはありません。
ですが大人になってからのおたふく風邪は重症化することが多いため、おたふく風邪の抗体を持っていない妊婦さんは、感染しないように十分に気を付けなければなりません。
(参考)産婦人科の基礎知識 妊娠とおたふくかぜ(ムンプス)
※こちらは現役の産婦人科の先生が運営するサイトです。おたふく風邪の妊婦さんへの影響について分かりやすく書かれています。
2.妊娠中におたふく風邪を発症するとどうなるの?胎児への影響は?
万一、おたふく風邪に感染し、発症してしまった場合、まず気になるのがお腹の赤ちゃんへの影響です。
おたふく風邪は、妊娠中に発症しても、先天性の奇形などの障害になる事はまずありません。
しかし、妊娠初期(3ヵ月まで)にかかると、流産の可能性が30%程度高くなると言われています。
妊娠初期は受精卵が着床する不安定な時期です。
おたふく風邪に限ったことではありませんが、この時期に細菌やウイルスに感染したり、薬を服用すると、その作用が強く出てしまい、流産につながることがあります。
また、妊娠後期や臨月に入ってから発症をすると、早産の可能性があると言われていますが、実際の確率はそんなに高くはないようです。
(参考)国立感染症研究所 おたふくかぜワクチンに関するファクトシート
(参考)産婦人科の基礎知識 妊娠とおたふくかぜ(ムンプス)
発熱・顔の腫れ……妊婦さんは対症治療が出来ないことも!
おたふく風邪には特効薬がないので、発症してしまうと、辛い症状を和らげる対症療法を行いながら、自然に回復を待つしかありません。
一般的に発症から熱が下がるまで平均3日程度、完全に顔の腫れや痛みが引くまでは1週間~10日ほどかかります。
その間、通常であれば辛い痛みや熱を下げるための解熱鎮痛薬が使われますが、妊娠中は自由にお薬が使えないので、安静にして自然に回復してくるのを待つしかありません。
症状には個人差があり、軽い場合だと多少の発熱と顔の腫れ程度で済むこともありますが、なかには、40℃を超える熱が続いたり、嘔吐や頭痛などの症状が出て、無菌性髄膜炎などの合併症を引き起こすような重症化するケースもあり、注意が必要です。
3.おたふく風邪発症してしまった時の過ごし方。
まずは安静が一番で、重症化を防ぐことを最優先に考えなければなりません。
ゆっくりと休んで体力をつけることが免疫を高め、症状の回復に役立ちます。
重症化を防ぎ、おたふく風邪の辛い症状を和らげるために、以下のようなことに気を付けましょう。
◆水分をしっかりと摂る。
高熱が続くと脱水症状になりやすくなります。
脱水症状は重症化にもつながるので、しっかりと水分を摂ることを心がけましょう。
冷たいものや酸っぱいジュースなどは耳下腺の痛みがひどくなります。
常温の麦茶や白湯にし、痛みで飲み込めないときはストローなどを活用しましょう。
◆顔の周りの痛むところやリンパ腺を冷やす。
耳下腺の腫れは冷やすことで痛みが麻痺するので楽になります。
高熱で辛い時も首の後ろやわきの下などのリンパ腺を冷やすと熱が下がりやすくなります。
◆入浴は避ける。
お風呂に入ると血行が良くなるので痛みが強くなります。
症状のピーク時は無理に湯船に入らず、固く絞ったタオルで体を拭く程度にしましょう。
◆部屋の換気をする。
感染時は、家族間の感染拡大を防ぎ、しっかり休養をとるためにも家族と部屋は分けることが大切です。
室内のウイルスを減らすため、こまめに部屋の換気をし、定期的に新鮮な空気を入れるようにしましょう。
お腹の赤ちゃんの栄養状態は?数日であれば無理に栄養を摂らなくても大丈夫。
妊娠中はおなかの赤ちゃんの栄養も気になるところですが、口を開けるのも辛いような症状のピーク時は無理に食事を摂らなくても大丈夫です。
少し症状が落ち着いたら、米粒がなくなるくらいに柔らかくしたおかゆやプリン、ゼリーなどを摂ってみましょう。
酸っぱいものや噛まなければ食べられない物は耳下腺の刺激になってしまい、痛みが増すので避けるようにしましょう。
それでも悪化(重症化)してしまったら。早めに受診し、合併症に注意を!
3日以上たっても高い熱が下がらない時や、嘔吐などの症状場ある場合は、重症化の恐れがあります。
腫れや痛みがひどく、全く水分がとれないようなときは点滴を行う場合もあります。
そのまま悪化してしまうと、まれに無菌性髄膜炎などの合併症がおきることもあります。
まずは妊婦さんの体調の回復を最優先に考え、早めにかかりつけの産婦人科を受診しましょう。
高熱には解熱鎮痛薬アセトアミノフェン(カロナールなど)などの妊婦さんにも使えるお薬を処方されることもあります。
自己判断で家にある鎮痛剤などを飲んでしまわず、必ずお医者さんに処方していただいたお薬を使用するようにしましょう。
4.無用な心配を減らすために。まずは感染予防対策から!
発症してしまうと辛い症状を1週間以上も我慢しなければならないおたふく風邪。
妊娠中の体調はホルモンバランスの影響も受けやすく、普段とは違う状態です。
免疫力が低下し、思わぬところで感染してしまうことも。
そんな時に周りでおたふく風邪が流行りだしたりすると、とても心配になってしまうものです。
このような不安や心配を避けるためにも、将来的に妊娠を希望される場合は、早めに対策をしておきましょう!
自分が免疫を持ってるか知っていますか?抗体検査でチェックを!
子供の頃におたふく風邪を発症していれば、終生免疫が出来ているのでかかることはありませんが、過去に発症せず、予防ワクチンを接種をした場合は、年月が経過し、その効果が薄まっている場合があります。
そうなると身近なところでおたふく風邪の原因であるムンプスウイルスに接した時に、感染・発症してしまうことがあります。
また、小さい頃に罹ったような気がしていても、その記憶が曖昧で確認できなかったり、他の感染症と勘違いしているケースもあります。
流行し始めた時に「大丈夫かな……?」と慌てないためにも、一度、抗体の有無を確認しておくと安心です。
抗体の有無はかかりつけの内科や産婦人科などを受診し、血液検査で調べることが出来ます。
おたふく風邪の抗体がない(少ない)場合はワクチン接種を!
妊娠判明後はワクチンの接種はできません。
また、接種後3カ月程度は妊娠を避けなければなりません。
検査の結果で抗体がない、または少ないことが判明したら、妊娠前に余裕を持ってワクチンの接種をしておきましょう。
おたふく風邪の予防接種は、原因ウイルス(ムンプスウイルス)を弱毒化した生ワクチンを注射します。
大人の場合は接種は1回で済みますが、風疹や水疱瘡など他の生ワクチンの予防接種も受ける場合は1ヶ月程度、間隔を開ける必要があります。
生ワクチン同士のウイルスが互いに干渉しあって、期待されるワクチンの効果が出ないことがあるためです。
妊娠の希望がある場合は、早いうちから計画的に抗体検査やワクチンを行っていくようにしましょう。
パートナーや同居家族が抗体を持っていない場合も、流行が始まってからのワクチン接種では間に合わないので、早い時期にワクチンの接種をしてもらうようにしましょう。
おたふく風邪の予防接種については以下の記事で詳しく説明しています。
おたふく風邪は予防接種で防げる!効果や副作用は?接種の時期と回数・費用
5.授乳中のおたふく風邪発症。母乳感染はするの?
母乳はあげても大丈夫!
妊娠中と同じく、授乳中も母乳から赤ちゃんへ感染の影響が気になります。
授乳中におたふく風邪を発症した場合も、母乳感染することはないので、これまで通り母乳を上げることができます。
但し、おたふく風邪は飛沫・接触感染するため、気を付けないと赤ちゃんに感染することもあります。
母乳をあげたり、お世話をする際は必ず手洗いをし、くしゃみや咳などがかからないようにマスクをしましょう。
妊娠中と同じく基本的にお薬は控えるべきですが、カロナールなどの解熱鎮痛薬を処方されることがあります。
お母さんの体調が回復しないままでは赤ちゃんのお世話もできませんし、母乳の出にも影響が出ることがあります。
高熱が続くような症状のピーク時には、我慢せずに処方されたお薬を使いましょう。
なるべく授乳間隔を空け、影響を減らすためにも授乳直後にお薬を飲むのが良いでしょう。
(参考)おくすり110番 授乳とくすり
※こちらのページには授乳中に使用可能な薬や取り方などが詳しく説明されています。
授乳中におたふく風邪のワクチンを打つのは大丈夫?
授乳中であってもワクチンの接種はできます。
ワクチンのウイルスが乳汁の中に分泌され、一次的に赤ちゃんも抗体も陽性反応が出ることもあるようですが、特に症状が起きることもなく、時間とともに陰性に戻ります。
後にそのお子さんが予防ワクチンを受けたとしても、特に影響はありません。
(参考)NPO法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会FAQ
※こちらは母乳育児を支援する団体のサイトです。授乳中のワクチン摂取について分かりやすく説明されています。
6.心配し過ぎも逆効果!普段から感染を予防する生活習慣を心がけることが大切。
おたふく風邪に限りませんが、治療の出来ない妊娠中や授乳中の病気はとにかく避けたいものです。
普段から手洗い、うがいを心がけ、人ごみはなるべく避けるようにしましょう。
下の子を妊娠中に上の子がおたふく風邪を発症してしまった場合など、お子さんと接触しないというのはなかなか難しいと思います。
看病する時はマスクをしたり、必ず手を消毒するなどに気を付け、そういう時こそ栄養や睡眠をしっかりとって免疫力を下げないよう、自分の体調管理にも気を配りましょう。
もし、運悪くおたふく風邪に感染してしまったとしても1週間程度で回復することがほとんどです。
必要以上に恐れず、これ以上重症化させないようにお医者さんの指示に従い、じっくりと回復を待ちましょう。
妊娠中は体調がすぐれなかったり、何かと心配事も多く、ストレスも溜まりがちですが、赤ちゃんのためにもリラックスして過ごすことがおたふく風邪を撃退、予防することにもつながります。
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