中高年女性は発症リスクが高い!原因不明の膝の痛みは変形性膝関節症かも。
変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)とはどんな疾患?
「変形性膝関節症」はその名の通り、膝関節の骨や軟骨の変形が原因で起こる疾患です。
痛みや腫れの他、熱感や膝に水がたまるなどの症状が起こり、症状が進行すると「歩く」「座る」といった日常生活に支障をきたします。
「特別なケガをしたわけでもないのに膝に痛みがある」、「いつから痛みが出始めたのかはっきりと分からない」というような時はこの「変形性膝関節症」の可能性があります。
厚生労働省の調べによると日本国内には自覚症状がある患者さんだけでも約1000万人、特に痛みなどを感じていない潜在的なケースを含むと約3000万人の患者さんがいると推定されています。
(参考)厚生労働省 介護予防の推進に向けた運動器疾患対策について報告書
変形性膝関節症が起きるメカニズム。なぜ膝が痛くなるの?
膝が痛くなるのは自然な老化現象の1つです。
加齢による老化や肥満、膝の負担のかかる職業や生活習慣などが積み重なり、長年足を使い続けることで膝は少しずつ傷んでいきます。
膝にはももの大腿骨(だいたいこつ)とすねの脛骨(けいこつ)をつないでいる関節があり、その関節内には骨と骨のクッションの働きをしている「関節軟骨」があります。
関節軟骨は老化することで少しずつすり減っていきますが、その際に出る細かい軟骨のカスが関節にある滑膜(かつまく)という組織を刺激し、炎症が起こり、痛みや腫れといった症状が現れます。
また、その刺激によって分泌される「関節液」という液体が多くなると、膝の周りがブヨブヨと膨らんだり、不快感がおこります。
これが俗にいう「膝に水がたまる」という症状です。
(引用)『ひざの痛み』全解説
※こちらは膝の構造や痛み、予防まで詳しく解説されているサイトです。
中高年の女性に多い疾患。その発症は男性の4倍も!
変形性膝関節症は、40代くらいから徐々に発症し始めますが、50代を過ぎると患者数が増加します。
男女ともに発症する疾患ですが、特に女性の発症が多いことが特徴です。
女性は閉経することで急激に筋力が低下し、膝にかかる負担がより大きくなるためであると考えられています。
年齢が上がるほどだんだんその割合は高くなっていき、高齢者になると男性の4倍にも上ります。
初期は、軽い痛みで、すぐに治ってしまうことも多いため、患者さん本人も膝の疾患を疑うことなく、様子を見ているうちに悪化させてしまうケースが多く見られます。
(参考)日本整形外科学会
※こちらのページでは変形性膝関節炎について詳しい情報を見ることが出来ます。
【体験談】動き初めに感じる右ひざの違和感。レントゲンの結果、「変形性膝関節症」と診断。
50歳になろうとしている頃、右膝に違和感が。それは動き始めるときに頻繁に感じるようになりました。
だんだんひどくなって、ついには自転車をこぐこともできなくなってしまいました。
それにともない腫れてきてしまい病院へ。レントゲンの結果、変形性膝関節症で、すぐに膝にたまった水を抜きました。これが信じられないくらい痛かった~。
【体験談】起床後の膝のガクガク。放置しているうちに激痛とひざの腫れが。
50歳過ぎた頃から、右膝に違和感を感じていましたが、痛い訳でもなく、生活に支障もなかったので放置していました。
いつのころだったか、朝、起きて、階段で降りようとしたところ膝がガクガクとなりました。
でも痛くなかったので疲れているのかなと勝手に判断していたんです。。。ところが、そのガクガクの頻度が多くなり、まずいなと思っていましたが、またまた、放置したままでした。
この時点で病院に行けばよかったのですが、痛みがなかったので、病院に行く気もなくやり過ごしていました。
そのうち治るだろうと甘い考えでした。ある日、歩くのが困難になるほど激痛が走りました。
それでも、市販の湿布薬を貼り、誤魔化していました。
階段を降る、膝を曲げる、膝を床につけるという行為が一番痛かったです。
そうこうしているうちに、膝が腫れてきました。
水が溜まったようです。慌てて病院に駆け込むと、老化による変形性膝関節症と診断されました。
体験談のお二方とも、右膝に感じた違和感から始まり、最初から激しい痛みが起きたわけではありませんでした。
お二人のようにしばらく様子を見ているうちに症状が進行し、激痛や腫れといった症状が出て初めて受診し、変形性膝関節症と診断されるケースが少なくありません。
進行によって痛みのレベルが変わっていく。
老化現象の一つである変形性膝関節症は、残念ながら一度発症すると元通りに治ることはありません。
そのまま放置していると、症状は少しずつ進行していきますが、その進行状況は大きく分けると3つの段階に分けることが出来ます。
痛みの感じ方には個人差があり、レントゲンではそれほど変形していなくても強い痛みがあったり、反対に変形が見られても痛みがない方もいらっしゃいますが、それぞれの進行時期に、多くの方が以下のような症状を自覚しています。
第一段階:時々起こる痛み。見た目には異常なし。
- 膝に力を入れた時に動かしにくさや違和感がある。
- 立ち上がる時や歩き始めた時に痛みを感じることがあるが、少し休むと痛みはなくなる。
- 朝だけ症状が現れるということも多く、レントゲン検査ではまだはっきりと症状を認めることは出来ない。
第二段階:正座など特定の動きが辛い。膝に水がたまり、むくんでいる。
- 正座やしゃがむといった膝に負担がかかると痛みを感じる。階段の昇り降り(特に降りる時)が辛くなる。
- 膝がまっすぐに伸びない、曲がらない、膝を動かす時にミシミシ、ギシギシと音が出るような感覚がある。
- 膝に水が溜まり、ひざ周辺を押すとブヨブヨとしており、だるさやむくみを感じる。
- レントゲンを撮ると膝関節の骨と骨のすき間が狭くなり、軟骨が減ってきていることが分かる。
(補足)レントゲン写真には関節軟骨は写りませんが、膝の骨をつなぐ「すき間」が狭くなることで関節軟骨が減っていることを確認することが出来ます。
第三段階:安静にしてもなくならない痛み。見た目にも変形が認められる。
- 安静時や足を動かしていない時でも痛みが続く。
- 外見的にも膝の変形が認められ、レントゲン写真では膝関節の骨と骨のすき間はほとんど見られない。
- 痛みのために仕事を続けられなくなったり、外に出ることが辛くなることで、抑うつ状態になったり、高齢者の場合は認知症といった深刻な状況におちいることもある。
(参考)リハビリ.net 変形性膝関節症の症状
※変形性膝関節症の症状について詳しく解説しているページです。
膝の酷使がリスクを高める!遺伝、病気やケガが原因となる事も。
膝の老化は加齢によるものだけではなく、肥満、足の形、職業など膝の使い過ぎや負担のかかる動きなど様々な要因が関係しています。
太り過ぎは常に重い体重が膝にかかりますし、O脚など骨の形に問題がある場合も、体重を均等に受け止められず、膝に負担が集中してしまいます。
また、ハイヒールなど足に無理がかかる靴を日常的に履いている人、肉体労働者、激しいスポーツを行っている人もそれだけ膝を酷使しているので、年齢が上がった時に発症のリスクが高くなります。
さらに、発症には遺伝子的な要素もあると考えられており、家族に変形性関節症の患者さんがいる場合、発症率が上がるという報告もされています。
このようにはっきりとした1つのきっかけがあるのではなく、いくつもの要因が複雑に混ざり合ってじわじわと発症するケースが多く、これらは「一次性変形性膝関節症」と呼ばれています。
それに対し、足のケガや病気など、明らかな「きっかけ」があって発症する場合もあります。
過去に足の骨折や捻挫、靭帯(じんたい)を切ったり、半月板、関節軟骨の故障があった時にきちんと完治していないと、いつまでも膝は不安定な状態が続き、二次的に関節軟骨が傷んで変形性膝関節症を引き起こすことがあります。
また、変形性膝関節症と同じように関節が腫れて痛む「慢性関節リウマチ」が引き金になる事もあります。
自己免疫疾患(体内の免疫システムに異常が起こり、正常な自分の組織を攻撃してしまう疾患)の1つである関節リウマチも関節の骨が変形する疾患ですが、二次的に変形性膝関節症を引き起こす事があります。
このように特定の病気やケガなど発症原因が特定できるものは「二次性変形性膝関節症」といいます。
(参考)e治験.com 変形性膝関節症
※こちらは変形性膝関節症の症状、原因、検査などについて詳しい情報が載っています。
疑わしい時は整形外科へ!早期治療で症状の進行を遅らせることは可能!
診察では歩き方や膝の可動域を見たり、変形や腫れの有無の確認の他、レントゲンや関節液検査(膝の関節液を抜き取って状態を調べる)など詳しい検査をして診断をします。
変形性膝関節症は、残念ながら完治することはありませんが、早めに受診して治療やリハビリを受けることで、進行を遅らせることは可能です。
病院での治療は、内服薬や外用薬、関節軟骨を保護し、進行を抑える効果があるヒアルロン酸注射などの薬物療法を行う他、温熱療法(患部を温める)、運動リハビリや生活指導など様々な角度からトータルに行います。
少し膝が痛い程度ではなかなか病院に行こうと思うことは少ないですが、放置するとさらに進行していってしまいます。
膝の違和感や痛みがしばらく続くようならば一度受診して専門医の先生に見ていただくようにしましょう。
足は「歩く」「座る」など体のすべての動きの元になる重要な部位で、ここが自由に動かなくなると、途端に生活に支障をきたします。
趣味ができなくなったり、時には仕事も辞めざるを得なくなったり、自由な行動に制限をもたらし、患者さんQOL(Quality of life)は著しく下がってしまいます。
高齢者の場合、食事、排泄、入浴といった日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)がスムーズに行えなくなることは、寝たきりにつながる場合もあります。
人は誰でも年をとります。変形性膝関節症は年齢が上がるにつれ、発症のリスクも年々高まるということを認識して、少しでも「おかしいな!?」と思ったら早めの受診を心がけるようにしましょう。
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