もしかしたら性器ヘルペスかも!検査方法・治療薬の種類・市販薬はあるの?
市販薬がない性器ヘルペスは専門医の治療を受けることが大切。
性器やその周辺にプツプツと小さな水疱が現れ、痛みやかゆみを引き起こすウイルス性の性器ヘルペス。
患部が性器ということもあり、女性はもちろんのこと、男性でも受診をためらってしまう方がいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、性器ヘルペスのお薬は医師の処方が無ければ買えないことになっており、薬局などで手に入る市販薬というものはありません。
治療をしないと治るのに2~4週間もかかってしまう性器ヘルペスですが、病院で適切な治療を受ければ大幅に治療期間を短縮することができます。
また、感染するとウイルスは体内にとどまってしまい、再発を繰り返すこともあるので、症状が疑われる時はなるべく早く専門医を受診することが大切です。
性器ヘルペスの詳しい症状については以下の記事で詳しく説明しています。
男性も女性も発症の危険性が!性感染症「性器ヘルペス」の原因、症状とは?
膣カンジダ・膀胱炎・尿道炎などと間違えやすい。再発の性器ヘルペスの診断
性器ヘルペスは男性の場合は泌尿器科や性病科、女性の場合は婦人科に行くことが多いと思いますが、水疱などの皮膚症状があるので皮膚科でも診察を受けることができます。
受診するとまず医師による問診と診察(視診)が行われます。
初感染時は症状が特に激しくなるため、視診でもある程度診断することが出来ますが、再発の場合は水疱が少ししか現れないような軽いケースも多く、性器ヘルペスの「特徴的な症状」が分かりにくいこともあります。
特に女性の場合は強い痒みがある時は膣カンジダ、排尿痛などがある場合は膀胱炎と間違いやすく、男性の場合も尿道炎などを起こす他の性感染症の症状とも似ているため、問診と診察だけでは性器ヘルペスの診断が困難な場合も少なくありません。
(補足)膣カンジダは体内のカビ(カンジダ真菌)が原因で膣などに痒みなどの症状を引き起こす病気です。
【体験談】排尿時の痛みで受診したところ膀胱炎との診断が…。
ある日、排尿時に激しい痛みを伴ったのでクリニックを受診し膀胱炎と言われ薬をだされました。
ところが数日たっても症状は軽減されないどころか、陰部と肛門に水疱のようなものができ痛みを伴いました。
今度は女医さんのいる皮膚科を受診し、症状を話したあとに患部をみせ「性器ヘルペス」と診断されました。症状が重いので初めて感染したんでしょうとのこと。(性器ヘルペスは二回目から症状が軽くなり、一度感染すると疲れなどで発症するらしい。)
飲み薬と塗り薬が処方されました。
【体験談】身に覚えのない発症。性感染症とは思わず、膀胱炎だと思いこみ内科を受診。
性交渉により感染するといわれている性器ヘルペスですが、発症する前にそのような覚えがないので、まさか性病だとは思わず、膀胱炎で痛いのだと思っていました。以前に感染したものが、身体の中で暴れることなく潜んでいて、疲れたときなど免疫力が落ちたときに発症することもあるようです。
いつもの膀胱炎のような感じなので薬をと、かかりつけの内科医に処方してもらいましたが、痛みが尋常ではなく、熱もずっと下がらず、ついには起き上がることすらできず、何かおかしいと思い、自分の性器を見てみると、口内炎のようなものが大量に。。。かなりショックでした。産婦人科にいくと、よくこうなるまで耐えましたねと言われてしまうほど。あと少しで入院だったよとも言われました。
上記の方々も、当初、膀胱炎と診断されてしまったり、性行為の心当たりがないため(注1)ご本人が膀胱炎だと思いこみ、内科を受診してしまったり、というように分かりにくい症状のため診断に時間がかかり、その間、辛い症状を我慢しなければなりませんでした。
※(注1)過去にウイルスに感染していたが無症状で、免疫が低下したタイミングで初めて症状が現れる場合もあります。(非初感染初発といいます)
性器ヘルペスの検査とは?保険適用の迅速検査が可能に!
症状の軽い再発の場合であっても正確な診断をするため、病院では問診や診察と併せて検査を行うこともあります。
性器ヘルペスの検査には、これまでにも血液検査で抗体を調べる方法や抗原(原因となる物質)からウイルスを分離する方法などがありましたが、ウイルスの有無が分かりにくかったり、結果が出るのに時間がかかるものも多く、急性期の治療方針を決める上ではあまり実用的ではありませんでした。(過去の感染や発症、ウイルスの型を調べる場合には有効です)
しかし、2013年には性器ヘルペスの「迅速診断キット」が登場し、今では簡単に検査が行えるようになっています。
専用の滅菌綿棒で患部の水疱や粘膜をこすり取るだけで、10分~15分の短時間で判定が可能です。
患者さんの身体にとっても負担が少ないこの検査法は、保険適用されています。
検査費用も2,100円とそれほど高額ではないため、現在ではこの迅速診断が多く行われています。
(検査費用のみの金額です。実際は診療内容によって会計は異なります。)
(参考)アルフレッサファーマ株式会社 対外診断用医薬品 プライムチェックHSV(単純ヘルペス)
性器ヘルペスは神経のウイルス感染症。治療薬にはどんなものがある?
男性の場合は、性器やその周辺の水疱や腫れ、女性の場合はそれに加えびらん(ただれ)などの皮膚症状が見られるため、皮膚や粘膜の疾患と思われる方も多いようですが、性器ヘルペスは皮膚疾患ではなく、神経のウイルス感染症です。
そのため、日本性感染症学会では抗ウイルス剤の内服による治療を推奨しています。(保険適用あり)
抗ウイルス剤と言ってもウイルスを死滅させるわけではなく、ウイルスの遺伝子に働きかけて増殖を抑えることにより、症状の悪化を抑える効果があります。
ウイルスが少ない発症早期に服用すると、効果的にウイルスの増殖を抑えられ、症状の悪化を防ぐことができます。
- アシクロビル(商品名:ゾビラックス錠200㎎)(1日5錠を5日間服用)
- バラシクロビル(商品名:バルトレックス錠500㎎)(1日2錠を5~10日間服用)
- ファムシクロビル(商品名:ファムビル錠250㎎)(1日3錠を5日間)
バルトレックスは体内に入るとアシクロビルに変換される為、ゾビラックスと同じ成分のお薬です。
それに対し、2013年に新しく保険適用されたファムビルは「ペンシクロビル」という別の成分のものなので、再発型ヘルペスで従来からあるバルトレックスなどでは効果が感じられない方にも試す価値があるお薬です。
今のところ、日本国内ではこれらの抗ウイルス剤に対する耐性ウイルス(耐性を持ち薬が効かないウイルス)は見つかっていません。
副作用も比較的少ない有効なお薬ですが、痛風やてんかん、喘息などの持病でお薬を飲んでいる患者さんは副作用が強く出ることもあるため、飲み合わせには注意が必要です。
診察の際には普段飲んでいるお薬の内容を必ず医師に伝えるようにしましょう。
(参考)おくすり110番ゾビラックス
(参考)おくすり110番バルトレックス
(参考)おくすり110番ファムビル
※こちらのページでは病院で出されるお薬についての詳しい情報を見ることが出来ます。
抗ウイルス剤を使った性器ヘルペスの治療法には3種類ある。
≪方法①≫初発時(感染して初めて症状が出ること)、発症直後から服用する。
通常、内服薬が処方されますが、特に重症の時には点滴などで抗ウイルス剤を投与する場合もあります。
≪方法②≫再発時、症状が起きる前の前駆症状(ぜんくしょうじょう)の状態で服用し、症状の悪化を防ぐ。
症状が現れ始めたと気づいた時からなるべく早く(48時間以内)に投与すると効果的です。
(補足)前駆症状とは症状の出始める予兆のこと。性器ヘルペスの再発の場合、多くの患者さんがピリピリ感、チクチク感、ムズムズ感など再発の予兆を感じています。
≪方法③≫再発を予防するための薬として使う。
ゾビラックスやバルトレックスは、再発を何回も繰り返すような場合、1年間程度継続的に抗ウイルス剤を飲み続ける「再発抑制療法」として使用される場合があります。
再発抑制療法としての使用も保険適用されており、再発を減らすことが出来るだけでなく、パートナーへの感染も8割近く抑えることができます。
但し、再発抑制療法を実施している病院は限られるので事前に確認してから受診するようにしましょう。
詳しくは以下の記事で詳しく説明しています。
「再発抑制療法」で頻度軽減!潜伏感染する「性器ヘルペス」の再発原因や症状
性器ヘルペスに塗り薬が処方されることも。口唇ヘルペスの市販薬は使っても良い?
病院でも再発の場合や症状がごく軽症の場合、他にお薬を飲んでいて内服薬が使えないような場合には以下のような抗ウイルス剤の軟膏が処方されることもあります。
- ゾビラックス軟膏5%
- アシクロビル軟膏5%
- ビダラビン(商品名:アラセナA軟膏3%)
外用薬のため、副作用はほとんどありません。1日1~4回患部に塗ります。
なるべく初期の症状の時に使用を開始するようにすると悪化を防ぐことが出来ます。
簡単に使えるため、持っていると再発時にも使えると思いがちですが、塗り薬は有効成分の濃度が落ちやすいため、過去に処方されたお薬をいつまでも使うのは避けましょう。
また、同じヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2)が原因の口唇ヘルペス(口の端にプツプツとした水疱ができる)の場合、再発の場合に限ってはアクチビア軟膏、ヘルぺシアクリーム、アラセナSなど、いくつかの市販薬(ぬり薬)が薬局で販売されています。
「同じヘルペスだから」と医師の診断を受けず、口唇ヘルペス用の市販薬を使ってしまう方もいるようですが、これらのお薬はあくまでも口唇ヘルペス用のお薬です。
症状を悪化させる可能性もありますので、自己判断はせず、外用薬であってもきちんと医師の診断を受けて処方してもらいましょう。
性器ヘルペスの場合は、症状が見えていないところにも小さな病変(病気によっておきる変化)がある場合もありますので、あくまでも基本は抗ウイルス剤の内服での治療となります。
※抗ウイルス剤内服薬、外用薬以外にも患者さんの症状により、痛みが強い時には鎮痛剤、ビタミンB12製剤(商品名:メチコバール)などが処方されることがあります。
ストレスも再発の原因になる!1人で悩まずに専門医に相談を。
デリケートゾーンの病気のため、男性でも女性でもなかなかオープンに相談することが難しい性器ヘルペスですが、不快な症状をいつまでも1人で我慢しているのは精神的にも辛いものです。
今の医学では性器ヘルペスを完治させることが出来ないため、悪化の心配やいつ再発するかという不安もなくなりません。
精神的なストレスも性器ヘルペスを再発させる大きな要因の1つです。
専門家である医師は、毎日同じような症状の患者さんをたくさん診ています。
「もしかしたら!?」と心配な場合は、やはり早めに専門医に相談してみることが最善の方法と言えるでしょう。
医師のアドバイスや薬の服用、さらにはご自身の体調管理で、ウイルスをうまくコントロールすることが不快な症状をなくし、快適な毎日につながるのです。
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