1. 仮面うつ病って?
「抑うつのないうつ病」「一見うつ病にみえないうつ病」」の状態を指す用語として用いられる用語です。
抑うつ気分がはっきりせず、医師に抑うつ気分以外の症状のみを伝える場合は少なくありません。
不眠、全身倦怠感、食欲低下、集中困難、頭痛等を訴えることが多く、うつ病の可能性が見過ごされることにつながる恐れがあります。
2. 新型うつ病(現代型うつ病)とは違うの?
新型うつ病と仮面うつ病とは異なります。
新型うつ病は、一部の精神科医、マスコミ等で広がった用語です。
うつ病の従来の定義にはあてはまらないものの、軽いうつ状態、無気力症状を訴える状態を指すことが多いようです。
まだ、明確な定義・診断方法は存在せず、精神科医療に関わる専門家の間で疾患だという認識は確立されていません。
そのように見られる状態にある方々の一部は、双極性障害を有する可能性があります。
また、自閉症スペクトラム障害をもつ方が、うつ病や双極性障害を併発した場合、新型うつ病と捉えられるような状態に至ることがあると考えられます。
3. 自律神経失調症とは違うの?
仮面うつ病と自律神経失調症では、治療方法が異なります。
仮面うつ病は、抗うつ剤を用いた治療になりますが、自律神経失調症は、自律神経の働きを調整するための自律神経調整剤が主な治療薬です。
仮面うつ病も自律神経失調症もその身体症状が似ているため、自己判断は大変難しいです。
異なった治療方法になるため、自己判断せずにまず病院にいくことをお勧めします。
4. みんなの仮面うつ病体験談
きっかけは様々ですが、やはり精神症状ではなく主に身体症状に異変がでるという特徴があります。
早めの診断、治療が克服のためには重要になります。
夫が、仮面うつ病になりました。
まだ、30代の若かった時です。
最初は、お腹が痛い、なんだかだるい、頭が痛い・・・などといった、身体症状(内科的症状)が出たのですが、内科でいろいろな検査をしたのですが、異常はありませんでした。
そこで、内科の先生から、「仮面うつ病」という病気があるから、一度、心療内科なり精神科を受診されたらどうですか?とアドバイスをいただきました。
確かに、気分が鬱々している、眠れない、などの症状がありました。
仮面うつ病とは、身体症状に隠れて、うつ病の発見が遅れてしまう病気です。
内科の先生の適切なアドバイスがあったから、夫は、適切な治療を受けられることができました。感謝しています。
抗鬱剤を飲み、数ヶ月で、うつ病の症状も、身体的な症状も消えました。
まだ、本調子ではなく、たまに身体的な症状を訴えることもありますが、その時は、心療内科を受診しています。
早めの診断、治療が必要な病気だと思いました。
引用元:気分障害よりも腹痛、だるい、頭痛などの身体症状が表面に出る仮面うつ病。
仮面うつ病の経緯: 会社のルーティンワーク以外に、短期プロジェクトのリーダーに指名されたことによる。個人情報の取り扱い、従業員のリクエスト対応、業者への要望伝達、経費を考慮してのプロジェクト進捗及び都度のレポート業務。とりわけ、従業員の個人情報取り扱いについてはかなり慎重に行い、また、従業員からの無理なリクエスト対応、要望、その他質疑応答を一人でしなければいけなかった。他のルーティンワークができる状況でもなく、残業が次第に多くなり、経費削減を謳う上司には残業時間のレポートを少なく書かされることもあった。そしてプロジェクト当日、手配しているはずのものができていない、業者からの逆クレーム、プロジェクトのルールを守らない従業員への注意勧告等で、全く気が休む時間がなかった。
プロジェクト準備から終了まで約半年間、だるさ、肩の痛み、朝の辛さが酷かった。プロジェクト終了後の出勤時、通勤電車に乗ったら吐き気がする、めまいがする、会社に行きたくない、首から肩にかけての激痛がでるようになり、精神科の看護師であった実母に相談した結果、精神科診療所に行くように勧められたのがきっかけだった。
最初の診療所では、毎時診療時間5分、処方箋はセバゾンとエチゾラム。一年間続いたが、担当医師との相性が合わないのでは、という実母のさらなるアドバイスがあり、今度は週末に自宅から通える診療所にした。通院してから1ヶ月ぐらいで、担当医師から休職を薦められる。職場の上司にも休職したほうがいいのでは、と言われた。個人的には、復職出来ないのでは、ということと、休職期間中の経済的な不安もあり、なかなか休職を取ることができなかった。二つ目の精神科クリニックの主治医に色々と相談し、結果的に3ヶ月間休職した。そして、退職をした。いまでもこのクリニックにお世話になっている。
引用元:仮面うつ病発症
5. 仮面うつ病以外にも、うつ病の細かい分類はあるの?
うつ病が認識されるようになってからの歴史は長く、その間に新しい概念がさまざまに提唱されたため、うつに関連する用語が多く存在します。
うつ病の定義は一義的には定められていません。
そのため、うつ病の分類もさまざまあり、種類の定義も複数存在しますが、ここでは代表的な分類を2つ紹介します。1つ目の分類は、従来から使用されてきた発症要因による分類です。
その次に、臨床や研究場面で世界的に広く用いられている診断による分類を紹介します。
分類1. うつ病を発症要因から分類
抑うつ症状を生じさせる要因に基いて、うつ病を分類する方法があります。
内因性 (性格環境因性) うつ病、心因性うつ病、身体性 (外因性) うつ病に分けられます。
外因性 (身体性) とは、脳や身体に病的な変化や理由が見える場合で、甲状腺機能低下症などの身体の病気、アルツハイマー型認知症などの脳の病気、あるいはお薬が精神疾患の原因だとわかる場合を指します。
内因性 (性格環境因性) とは、性格や環境がその精神疾患の発症に強く関係している場合を指します。
神経症と呼ばれることもありました。そして、うつ病の一般的な発症理由としては、内因性とされてきました。
これは、「心理的要因のみで起きると考えることは明らかに無理だが、脳の病的な変化も見つからない」という場合を指します。
分類2. 診断分類による分類
臨床や研究場面で国際的に広く用いられている分類には、DSMとICDがあります。
DSMとICDのどちらも、症状を詳細に記すことにより診断するための分類ですので、大枠の分類は似ています。
病因を詳しく追求するのではなく、診断基準にあてはまるかどうかで診断する方法です。
うつ病が初回のものと繰り返すものを分けている点、重症度で分ける点、精神病症状 (幻聴、幻覚など) を伴うかいなかで分ける点は共通しています。
①. 大うつ病性障害(大うつ病)
いわゆる一般的に考えられているうつ病のことをさします。
- 抑うつ気分
- 興味または喜びの著しい減退
- 著しい体重変化、著しい食欲の変化
- 不眠あるいは過眠
- 精神運動焦燥・制止 (他の人による判断)
- 疲労感、活力の消失
- 自分の価値がないように感じる、過剰あるいは不適切な罪悪感をもつ
- 思考力、集中力、決断力の低下
- 繰り返し起こる死についての思考, あるいは自殺念慮, 自殺企図, 自殺のはっきりとした計画
上記の9つの項目のうち「「抑うつ気分」または「興味または喜びの著しい減退」の少なくとも1つを含む、5つ以上の症状が、2週間以上の間にほとんど1日中、ほぼ毎日続く」状態とされています。
②. 双極性障害(躁うつ病)
躁状態においては、「気分が高揚し開放的で、頭の回転が良くなった感覚を覚え、思い立つと行動に移すのも早い」気分の状態を差し、「睡眠欲求が減少(寝てる時間が惜しい、寝なくても疲れない)する」などの特徴が見られます。
以下のような躁状態と抑うつ状態を繰り返すうつ病のことを双極性障害(躁うつ病)と言います。
A. 気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または怒りやすくなる。
また、異常かつ持続的に高まった活動や活力がみられる。このような普段とは異なる期間が、1週間以上、ほぼ毎日、Ⅰ日の大半において続く。
B. 活動または活力が高まった期間に、以下の7つの項目のうち3つ以上に当てはまる。
- 自尊心が大きくなる
- 睡眠欲求が低下する
- 普段より多く話す。または話し続けようとする切迫感を感じる。
- 注意散漫がみられる。
- 活動の増加。または、精神運動焦燥
- 困った結果を招くような活動 (衝動買いなど) に熱中する
6. そもそもなんで仮面うつ病になるの?
仮面うつ病は、仮面をかぶっているものの、根本は「うつ病」であり、内因性 (性格環境因性) うつ病であることがほとんどです。
先に説明したように、内因性 (性格環境因性) うつ病とは、性格や環境がその精神疾患の発症に強く関係している場合を指します。
- 完璧主義で自分ができていないことに目が向きがち
- 他者との衝突を避け自分のことは我慢しがち
- 組織の中でのルールを重んじるがゆえに苦しい
といった性格傾向を持つ方は、自分自身にとても厳しい傾向にあります。
そういった方が、仕事などからのストレスを抱えると、無意識的に精神的なダメージを回避し、その代わりに身体症状に異変が出ることがあると言われています。
7. 仮面うつ病の克服方法
仮面は被っていても、うつ病ではあるので、以下のような治療方法は同じと言えます。
- 心療内科、精神科への通院とお薬
- 休息
- カウンセリング
ただし、先の自律神経失調症との違いにおいても説明した通り、自己判断が難しい病ですので、まずはお医者さんに相談することをお勧めします。
<出典>
- 厚生労働省. 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳. 用語集
- 樋口輝彦 編(2009)「患者・家族からの質問に答えるためのうつ病診療Q&A」14, 18日本医事新報社
- 精神疾患の診断・統計マニュアル; Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders
- 疾病及び関連保健問題の国際統計分類; International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems
- アメリカ精神医学会 DSM-5®