妊婦さんは要注意!?麻疹(はしか)と間違えやすい症状シリーズ①風疹
1. 麻疹(はしか)とよく似た病気の代表、風疹は別名「三日はしか」
はしかと風疹は、どちらも皮膚に発疹がでて、発熱する代表的な病気です。
小さい頃に、「身体に小さいブツブツが出来て高い熱が出た」という経験を持っている方は、果たしてそれははしかだったのか風疹だったのか覚えていますか?
小さい頃に、「はしかの予防接種を受けた」という経験を持っている方は、風疹の予防接種もきちんと受けていますか?
はしかと風疹では、原因となるウィルスも細かい症状の経過も、行政の対応も違ってきます。
違いをしっかり理解することで、適切な処置を受けるようにしましょう。
2. はしかと風疹の違い
①ウィルスの違い
風疹は、「風疹ウィルス」が原因で感染します。
感染経路は主に飛沫感染ですので、空気感染なども確認されている麻疹ウィルスと比べてある程度限定されています。
感染経路については、こちらの記事で詳しく書いています。
あなたの病気に狙いを決めて、感染経路ブロック!接触、空気、飛沫、昆虫など感染症の感染経路は様々
感染力ははしかに比べて強くないですが、それでもインフルエンザウィルスに比べると強いので注意して下さい。
感染力を示す指標に、基本再生産数(R0)と呼ばれる、免疫のない集団に一人感染者がいたら何人に感染するかという指標があります。
それによると、風疹は7~9人に対して、はしかは16~21人です。
感染症の感染力については、こちらの記事で詳しく書いています。
感染症の感染力を表す単位「R 0(基本再生産数)」と「集団免疫率」ってなんだ?
他にも、見た目や大きさに違いがあります。
風疹ウィルスは、麻疹ウィルスの約2分の1程度の大きさです。(風疹ウィルス:直径50~70nm、麻疹ウィルス:直径100〜250nm)
麻疹ウィルス
出典:麻疹-wikipedia
風疹ウィルス
出典:風疹-wikipedia
②症状の違い
潜伏期間の違い
潜伏期間とは、病原体に感染してから身体に症状が表れるまでの期間のことです。
風疹の場合、潜伏期間はおよそ14日から21日です。
はしかの場合、潜伏期間はおよそ10日です。
どちらも潜伏期間中は感染拡大のリスクが潜んでいます。
特に、風疹は不顕性感染と呼ばれるウィルスに感染しても症状が出ないままの状態である感染状態が15%~30%の確率で発生します。
感染に気付かないまま、拡大させてしまうことはなんとか避けたいものです。
発熱の違い
風疹は、一般的に微熱程度で、高熱になることはあまり見られません。ただ、大人が感染すると高熱が出る場合があります。
はしかは、2、3日の間39度以上の高熱が表れます。その後一旦収まったあとに、半日程度で再びぶり返します。
発疹の違い
風疹は、発熱と同時に全身にざらざらした発疹が出来ます。顔や首のあたりから出始めて、腕や足まで広がっていきます。その後3日程度で治まります。
はしかは、高熱や風邪のような症状、結膜炎の症状が表れ始める(カタル期)と、コプリック斑という奥歯の周りに、直径1mm程度の少し膨らんだ白色小斑点が表れます。
そして1回目の発熱と2回目の発熱の両方で、全身に発疹が表れます。
リンパ節の腫れの違い
風疹は、耳の後ろ(耳介)や首のあたり(頸部)のリンパ節が腫れて、痛みを伴います。
はしかは、リンパ腫が腫れることはありません。
母子感染した場合の違い
風疹は、免疫のない女性が妊娠初期に感染すると、生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群(CRS)と呼ばれる障害を引き起こすことがあります。
主な先天性風疹症候群の症状は、先天性心疾患、難聴、白内障です。
かつて、ニューヨーク・ヤンキースで松井秀喜選手とチームメートだった元メジャーリーガーのカーティス・プライド選手も、この先天性風疹症候群による難聴を患いながら、プレーを続けました。
はしかは、風疹ほど重い症状は引き起こしませんが、免疫のない女性が妊娠初期に感染すると、早産や流産のリスクが増加します。
こちらの記事も参考にしてください。
症状の回復の違い
風疹は、約3日です。三日はしかと呼ばれるゆえんでもあります。
はしかは、およそ2週間程度です。
しかし、熱や発疹がひいても、体内にはウィルスが残っている場合があるので、必ず安静にして、医師の診断を受けるようにしましょう。
③医療機関の対応の違い
風疹は、医師の保健所への届け出が義務付けられています。風疹に感染しているか判断するため、患者に対し、血液検査や尿検査が行われる場合があります。
また届け出は、はしかと異なり7日以内とされています。
はしかの行政や医療機関の対応については、こちらの記事で詳しく書いています。
尼崎市でも感染する麻疹(はしか)。はしかが流行したとき行政や医療機関は何をしているの?
ワクチンは、それぞれ別の単独ワクチンのほかに、混合ワクチン(MRワクチン)というはしかと風疹両方に対応したワクチンもあります。
3. まとめ
風疹と麻疹の違いは、全体的に症状は軽いですが、リンパの腫れが風疹特有の症状です。
しかし、潜伏期間も長く、感染力も決して侮れるものでは無いので、妊婦さんは風疹の感染には特に注意して下さい。
※第2弾「手足口病」の記事はコチラ