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2016年9月6日更新

取組みが進む若き女性アスリートへ向けたヘルスケア。女性アスリートの三主徴とは。

女性アスリートのヘルスケアは近年産婦人科業界を中心に盛んになってきた取組みです。以前は体操や長距離の選手など、女性の特徴を軽視した指導が行われてきましたが、近年その風潮は変化しつつあります。若さに身を任せた練習のデメリットをお伝えします。
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1. 女性アスリートのヘルスケア、今から考えていかなければいけないこと

2020年の東京五輪に向けて、ある重大な課題の解決への取組みが産婦人科学会を中心になされています。

それは「女性アスリートを対象としたヘルスケア」の課題です。

近年、女性競技の拡大(2014年のスキージャンプなど)や女性のスポーツへの積極的な参加姿勢から、スポーツ界でも女性アスリートの活躍が目立っています。

実際、リオオリンピックで日本がメダルを獲得した41種目のうち、18競技が女子選手によるものです。

参照:日本代表選手団メダリスト・入賞者一覧-公益財団法人日本オリンピック委員会

ますます盛んになる女性アスリートの活躍に注目するのも良いですが、彼女たちのヘルスケアにどのように取り組んでいくかが医療業界とスポーツ業界が抱えている課題です。

2. 女性アスリートの三主徴、low energy availability(利用可能エネルギー不足)、無月経、骨粗鬆症

女性アスリートの健康管理上の問題点として、

  1. low energy availability(利用可能エネルギー不足)
  2. 無月経
  3. 骨粗鬆症

が挙げられます。

美しさや軽さを求めて。low energy availability(利用可能エネルギー不足)

①のlow energy availability(利用可能エネルギー不足)は、以前は摂食障害と表現されましたが、2007年から摂食障害に限らないものであると定義を変更されています。

女性アスリートは、より痩せた体型になってパフォーマンスの向上を図ったり、審美を気にしがちです。

利用可能エネルギー不足とは、運動によるエネルギー消費量に対し、エネルギー摂取量が不足している状態を指します。

この状態が続くと、ホルモン分泌の低下や骨代謝の低下が表れ、疲労骨折などの原因となってきます。

3か月以上生理が無い状態は、頑張っていない証ではなく頑張り過ぎた証

②の運動性無月経は、3か月以上月経がない「続発性無月経」のうち運動が原因のものです。

この状態になる要因として、①の利用可能エネルギー不足や、ストレス、体重や体脂肪の減少、ホルモン環境の変化など様々です。

女性ヘルスケア委員会の女性アスリートのヘルスケア小委員会によると、約4割の国内の女性アスリートが月経周期の異常を経験しているという報告もあります。

また、競技別にみると、体操や新体操、フィギュアスケートなど美しさを要求されるスポーツの他に、陸上長距離の選手が発症の割合が高いようです。

参照:2015年6月女性ヘルスケア委員会報告

また、無月経と疲労骨折と相関関係は存在します。

10代の女性アスリート200人以上にアンケートをとったところ、正常な月経周期の場合疲労骨折の経験は1割に留まったのに対し、無月経の場合、疲労骨折の割合は4割に上ります。

参照:女性アスリート指導者のためのハンドブック-国立スポーツ科学センター発行

マラソン選手の土佐礼子さんも、NHKの番組で12年間1度も生理が来なかったことを告白しています。その影響で疲労骨折を発症し、引退へ舵を切りました。

高齢者に見られる骨粗しょう症も、決して縁遠い問題ではない!

③の骨粗しょう症は、骨密度の低下や骨質の劣化により、骨がもろく壊れたり折れやすくなっている状態です。

無月経となることで、エストロゲンという女性ホルモンが分泌されなくなります。

すると、骨量の低下や骨質の劣化を招いてしまうのです。

元陸上長距離選手で、細かすぎる解説で話題の解説やジャーナリストの松野明美さんも、92年の引退後に検査をしたところ、足に7か所の疲労骨折と65歳レベルの骨密度と医師に言われショックを受けたそうです。

3. 若いからと無理をしない!未来ある女性アスリートが意識しなければならないこと

オリンピックや一流のスポーツ選手を目指す女性アスリートにとって、若いうちのトレーニング1分1秒が大切であることは間違いないでしょう。

しかし、長期的な視点で見た場合、その練習方法や練習量が果たして適切であるかどうかをチェックすることも重要です。

骨の問題

思春期女子の骨量は、11歳から14歳の間に骨密度の上昇率が最も大きく、20歳になる頃ピークを迎えます。

つまり、骨が形成される若い時期にカルシウムの十分な摂取や適切な月経のサイクルを満たし、適切な運動負荷を身体にかけることで、丈夫な骨にすることができます。

骨はスポーツに関わらず全ての運動や行動に関わる、人体の根幹をなす非常に重要な組織です。

ホルモンバランスの問題

女性ホルモンが分泌されない状態が続くと、骨以外にも影響が出てくる恐れがあります。

例えば、生殖器官です。

女性ホルモンの供給が絶えた状態が続くと、子宮や卵管が萎縮してしまいます。

無月経のまま放置すれば、将来的に排卵障害や不妊症を発症する可能性も出てきてしまいます。

この問題は、早期発見や早期治療で未然に防ぐことが出来ます。

骨密度や子宮も回復出来ることは、先ほどの土佐礼子選手が2人の子を持つ母になっていることからも分かるでしょう。

4. 女性アスリートを育てる指導者が意識しなければならないこと

先ほどの女性アスリートの三主徴は、女性アスリートを育てていくうえでとても大事な考え方ですが、特に男性の指導者にとって話題に触れづらい部分でもあります。

また、正常に月経が来ている女性でも、その前後に体調が優れずに競技のパフォーマンスが低下することがあります。

この変化は、一般にPMS(月経前症候群)PMDD(月経前不快気分障害)と呼ばれる症状ですが、女性に比べ男性の認知度が低いのが現状です。

一流のアスリートを目指す資質をもった人は、気持ちが強く多少の不調でも無理を何度でも続けてしまうことが考えられます。

そういった場合でも、指導者と選手と一対一にならず、専門家や周りのチームメイト、選手の親とも協力しながら、選手のベストコンディション作りをしていくことが大切です。

5. 女性アスリートを育てるために医療が取り組まなければならないこと

まず大切なのは、啓発活動だと思います。

スポーツに夢中になってしまって、本人が受診しない、あるいは受診を望まない場合を考えると、まずはその考えを改めていくことが第一歩であると思います。

もちろん、学校や指導者、親も一緒に改めて啓発活動に参加することが大切です。

しかし、医療の専門家として、スポーツの問題に切り込んでいくことで、女性アスリートの将来を守ることに繋がると思います。

次に、間口を広げて柔軟性と専門性の両方を兼ね備えた体制を整えることです。

例えば、女性アスリートの三主徴のうち、選手がどの診療科を受診すれば良いのかはっきりしていません。

疲労骨折ならば整形外科ですが、無月経の問題ならば産婦人科を受診するのが一般的でしょう。

しかし、スポーツに関する女性アスリートの健康上の問題は、必ずしも原因や適切な処置方法が限定されているわけではありません。

症状で判別するのではなく、スポーツ医学として複合し、各診療科が協力できる体制づくりが必要だと思います。

参照:女性アスリートの三主徴 – 日本スポーツ振興センター

参照:女性アスリートの健康問題-亀田メディカルセンター

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