膀胱炎は市販薬で治る?悪化すると腎盂腎炎で入院も。病院の検査・薬の種類
1.膀胱炎の完治には受診が必要!放置すると「腎盂炎」になることも。
自己判断は危険。市販薬は応急的にのみ使うこと!
頻尿や排尿時の痛み、腹痛や尿の濁りといった症状が現れる急性膀胱炎。
その分かりやすい症状から患者さん本人でも「膀胱炎だろうな」という判断をすることは比較的容易です。
仕事や家事など忙しくしていると、なかなか医療機関を受診する時間が取れず、市販薬を飲んで済ませてしまう方も少なくありません。
膀胱炎の市販薬の働きは「薬の利尿作用で細菌を排出しながら、膀胱の炎症を抑える」というもの。
確かにごく初期の軽いものであれば、水分を多めにとって市販薬を飲むことで治る場合もあります。
けれど、市販薬は根本的に原因である細菌を殺す抗生物質(抗菌剤)ではないため、あくまでも応急処置です。
継続して服用するためには作られておらず、市販薬を服用している間にもさらに細菌が増殖し続ける危険性があり、さらに深刻な症状に悪化してしまうこともあります。
膀胱炎の市販薬が効かないことも。実は「腎盂腎炎(じんうじんえん)」だった、という場合も!
これからご紹介するのは膀胱炎治療を先延ばしにしてしまった結果、症状をこじらせてしまった方の体験談です。
【体験談1】膀胱炎を自分でなおそうと市販薬で対応したが回復せず。症状悪化で4日目には背中の痛みも。
排尿痛、血尿、頻尿でおかしいなと思いました。
でも、前にもこんな症状で病院にかかったことがあったので、今回は市販の薬で様子をみることにしました。
ネットで膀胱炎を検索したところ自力で治している人も少なくないようで、水分を1日3リットルのんで、バイ菌を排出すると良いと知りました。
しかし、市販の薬は、5日間分でしたが、4日分飲んだころから背中の痛みが酷くなり、これはヤバイかなと思うようになりました。
こちらも、前に膀胱炎になった時にほおっておいたら悪化して、腎う腎炎になってしまったので、その時の痛みに似た感覚だなと認識しました。それから、様子を見ていましたが、背中の鈍痛。背中を軽く叩くと響く痛み、夜になると高熱、吐き気、倦怠感でのたうち回るような痛みに変わってしまいました。祝日の夜のことだったので、金銭的にももったいないと考え月曜日に受診しようと思っていましたが、痛みに耐えられず夜中、車を運転して緊急で駆け込みました。結局担当医がいないのと1回分しか薬もらえなくてそのまま激痛のまま帰宅しましたが、痛み止めもあったので、朝までもちました。
私のように自己判断しないで病院に行くことをオススメ致します。結局、膀胱炎から腎う腎炎か、膀胱炎からの結石かわからないままでしたが、とにかく痛みは異常なので、自己判断は控えてください。
【体験談2】膀胱炎を放置していたら高熱と激しい腹痛が。急性腎盂腎炎で入院が必要に…。
最初は膀胱炎でした。でも、水分をしっかりとっていれば大丈夫だろうとたかをくくっていたのが間違いで、排尿時の痛みはもちろんいつになってもいっこうに引くことなく、そのうちに右わき腹が痛みだしました。ここでも腰痛かなあと思っていたのさらなる間違い。
スーパーで買い物した帰り、とうとう腰がつらくて自宅まで5分~10分なのにベンチで休むことに。それはまだ良いほうで、そこから数日後、とうとう熱発。
外出先で友人にロキソニンを薬局で買ってきてもらわねばならないくらい、激しい脇腹の痛みと頭痛と高熱。 一時的には効くものの、数時間後にはまた高熱で震えはくるわ、痛みはひどいわで、やっと膀胱炎の症状があってから2週間も経ち、出勤しても仕事にならなくなりそもそも婦人科で診療していたけいゆう病院になかば朦朧として行きました。外来でベンチに座っていることもできず、看護師さんに言って診療までベッドに横にならせてもらったほど。急性腎盂腎炎とあっさり診断がでて、医師からは入院と言われました。
ひたすら点滴をいれ、排尿させ、抗生剤も入れての治療。3日は熱が上がったり下がったり。食事はまともに入らず、激しい頭痛はおしよせるし、辛かったです。
すっかり良くなって退院は1週間後でした。泌尿器科にかかったのはこれが初めてでしたが、もうかかりたくないので、今では膀胱炎にならないように生活をあらため水分補給もしっかり行っています。
退院後は抗生物質を5日分だけ飲んだだけでした。
上記のどちらの方も、ご自分が膀胱炎だろうなということは気付いていたものの、受診を先延ばしにしているうちに症状を悪化させてしまいました。
「これまでにも似たような症状になったことがあるから」という思い込みやそのうち治るだろうという甘い判断が症状をこじらせ、膀胱炎よりも重症の「腎盂腎炎(じんうじんえん)」の発症につながってしまいました。
腎盂腎炎ってどんな病気?膀胱炎との区別は発熱があるかどうかがポイントに。
細菌が尿管をさかのぼり、腎臓の中の尿を溜める「腎盂(じんう)」という場所に入り込んでしまい、炎症を起こすのが「腎盂腎炎」です。
腎盂腎炎はだるさ、寒気、震え、背中や腰の痛み、下腹部痛、38℃以上の高熱が出るのが特徴ですが、膀胱炎をこじらせて発症している場合は、さらに排尿痛、頻尿、血尿といった尿の異常も続くことになります。
ひどくなると40℃を超える高熱が続いたり、最悪、血液にのって身体全体に細菌が回ってしまう「敗血症」を引き起こしたりと命にかかわることもある病気です。
腎盂腎炎の発症にはいくつかの原因がありますが、膀胱炎をこじらせて発症するケースが非常に多くみられるので、膀胱炎発症時は早期の治療が肝心となります。
腎盂腎炎の場合、治療の開始が早く、まだ症状が軽い場合は外来治療が可能な時もありますが、基本的には入院治療が必要となります。
抗菌剤の点滴投与などが必要となり、上記の【体験談2】の方も入院を余儀なくされました。
「このくらいまだ大丈夫かな?」と思っても、細菌の増殖や症状の進行具合などは目には見えないため、専門家ではない私たちにはなかなか判断がつきません。
このような重篤な事態を避けるためにも、市販薬を1~2日ほど飲んでみて効果が感じられない、または悪化していると思われる時は、市販薬はすぐに中止し、なるべく早く医療機関を受診し、検査を行うなどして正確な病気の状態を知ることが大切です。
(参考)東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 腎泌尿器外科学教室
※こちらのページでは腎盂腎炎の症状や原因、検査や治療法についてQ&A方式で分かりやすく説明されています。
2.病院で行う膀胱炎の検査とはどんなもの?
何科にかかるのが正しいの?膀胱炎は泌尿器科、内科、婦人科も対応可能。
膀胱炎は泌尿器科が専門となりますが、なかなか馴染みがないので行きにくいもの。
内科でも一般的な尿検査や治療は出来るので、かかりつけ医がある場合はまずそちらを受診するのも良いでしょう。
女性の場合は婦人科でも診察をしてもらうことは出来ます。まずは受診のハードルを下げるためにも、ご自分が相談しやすいところに行ってみることが大切です。
しかし、使っている処方された抗菌剤が効かない場合や、膀胱炎の症状が何度も繰り返し起きる時など複雑な場合は、過活動膀胱や夜間頻尿の可能性や、その他の尿路感染症の病気が隠れている恐れもあるため、泌尿器科で精密検査をする必要が出てくることもあります。
まずは内科や婦人科で基本的な検査、抗菌剤による投薬治療を行ってみて、改善が見られない場合にはかかりつけ医師に泌尿器科を紹介してもらい、受診するというのがおすすめです。
膀胱炎は簡単な問診・尿検査で判定できる!
膀胱炎は分かりやすい典型的な症状が多いため、診断しやすい疾患です。
まず病院に行くと、医師の問診や触診(下腹部を押して膀胱周辺の部位に圧痛があるかどうか確認)の他に尿検査を行います。
これは健康診断で行うものと同じお馴染みの方法です。トイレで紙コップ容器に採尿し、顕微鏡で尿の成分を確認するというもので結果も10分ほどで分かります。
尿の中に潜血がある場合、細菌が確認された場合は膀胱炎である可能性が高くなります。
さらに炎症がある時に数値の高くなる白血球が尿の成分の中で高くなっていれば、「急性膀胱炎」との診断がされます。
尿検査を受ける際の注意点ですが、出始めの尿には雑菌が混じっている場合があります。正しい結果を得るために中間尿を採るようにしましょう。
さらに細菌の種類を特定する検査をする場合もある!細菌によって抗生物質(抗菌剤)を変えるため。
膀胱炎と診断されると、原因菌を殺す抗生物質(以下、抗菌剤)が処方されることになります。
膀胱炎の原因となる細菌のほとんどが大腸菌によるものなので、大腸菌に効果のある抗菌剤がまず始めに処方されます。
ほとんどの患者さんはこの処方で改善が見られますが、しばらく服用しても症状が改善してこないケースがあります。
その場合、大腸菌ではない別の細菌の仕業によるものだと考えられ、細菌に適した抗生物質を処方するために、細菌を培養して原因細菌を特定する検査(尿細菌培養検査)が行われます。
尿細菌培養検査は結果が出るまでに3~4日程度かかり、結果が出た時点で細菌に効果の高い抗菌剤を選択し、投与していくことになります。
このような精密な検査は内科や婦人科では行っていない場合もあり、専門である泌尿器科で検査を行うことになります。
(参考)かねとう腎泌尿器科クリニック
※こちらは泌尿器の専門病院のホームページで、膀胱炎の検査や治療法、予防方法などについてわかりやすくまとめられています。
3.膀胱炎の薬物療法とは?膀胱炎の細菌により効果的な抗菌剤を選択。
抗菌剤による膀胱炎の薬物治療を行う上で、病院で処方される主な抗菌剤は以下の3種類です。
細菌の種類によって処方されますが、急性膀胱炎のほとんどが大腸菌を原因としたものが多いので、はじめは大腸菌に対して効果の高いニューキノロン系やセフェム系の処方をされることが多いようです。
≪膀胱炎治療に処方される主な抗菌剤3種≫
◆ニューキノロン系製剤
商品名:クラビット、バクシダール、シプロキサン、オゼックス、ジェニナック
膀胱炎の原因となる細菌の増殖に必要な酵素を阻害することで、細菌の増殖を抑える働きがあります。
特に大腸菌に効果があるため、膀胱炎と診断されると通常、この抗菌剤を初期処方されることが多いです。
殺菌力が強く、膀胱炎以外にも呼吸器や皮膚の感染症などにも抗菌剤として利用されています。
その抗菌作用の強さから、妊婦さんや授乳中の利用は安全性の確立がされておらず、15歳以下の子供にも使用しません。
患者さんによっては時にめまい、吐き気、腹痛、頭痛、下痢などの副作用が起こる場合があります。
◆セフェム系製剤
商品名:フロモックス、パンスポリン、メイアクト、ケフラール
大腸菌の他、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、グラム陽性菌、グラム陰性菌など多種の細菌に対して効果が期待できます。
セフェム系製剤は細菌の細胞壁の合成を阻害することで、細菌の増殖を抑える働きがあります。
ヒトの細胞には影響を与えないため、副作用も少ないと言われており、妊婦さんや授乳中の使用も可能です。
(メイアクトは安全性が確立されておらず、妊婦さんには使いません。)
重篤な副作用は少ないですが、人によっては下痢や吐き気、蕁麻疹、かゆみなどのアナフィラキシーショックなどが出ることがあるため、使い初めには十分な観察が必要です。
◆ペニシリン系製剤
商品名:サワシリン、ビクシリン、パセトシン
グラム陽性菌への効果が高い抗菌剤です。
細菌の細胞壁の合成を阻害して細菌を育たなくする薬剤です。
人によっては下痢、吐き気、食欲不振やアナフィラキシーショックなどの副作用が起きる場合があります。
過去にはどんな抗菌剤であっても膀胱炎には効果的と言われていましたが、最近では処方された抗菌剤が効かないケースも増えてきており、このペニシリン系製剤に耐性を持つ細菌も増えてきています。
抗菌剤の他にも不快な症状をやわらげる対症療法が行われることも。
原因細菌を殺す抗菌剤の投与の他にも不快な症状を抑えるため、以下のような投薬が行われる場合があります。
- 抗菌剤による胃腸への負担を減らす→胃腸薬
- 腹痛や排尿痛などがある場合→鎮痛剤(ロキソニンなど)
- 頻尿の症状が辛い時膀胱の収縮を抑える→抗コリン薬
- むくみや排尿時の不快感を無くす→漢方薬(猪苓湯、五淋散、清心蓮子飲など。エキス剤は保険適用あり。)
患者さんの状態に合わせ、適宜上記の薬を使用します。ただし、薬物のアレルギーがあると使えない場合もありますので忘れずに申告するようにしましょう。
(参考)泌尿器科・内科・在宅診療 きつかわクリニック
※こちらの病院のサイトでは膀胱炎に使われる抗生剤などのお薬についてとても詳しく解説されています。
4.薬は正しく服用しよう!再発を予防するためにも抗菌剤は飲み切ることが大切。
服用期間はどれくらい?効果はすぐ出るの?
抗菌剤は通常、5日~1週間程度の服薬が必要ですが、飲み始めて1~2日で劇的に症状が和らぐことが多いようです。薬の効果を最大限に活かすために、以下のようなことに気を付けましょう。
≪薬の効果を高めるために気を付けたい事3カ条≫
①抗菌剤は必ず用法や用量、服用間隔を守る。
膀胱炎の薬は効果が割とすぐに出るために、症状がなくなってしまうと抗菌剤の服用を途中でやめてしまう方がいらっしゃいますが、処方された抗菌剤は必ず最後まで飲み切ることが大切です。
たとえ自覚症状がなくなり、不快な症状がおさまっていても細菌はまだ体内に残っているのです。
完全に細菌がいなくなるまでは薬を続け、身体の中の抗菌剤の濃度を常に一定に保つことが重要です。
中途半端な治療だと、残っていた細菌が再度増殖をはじめ、辛い症状がぶり返すだけでなく、抗菌剤に対して耐性を持ってしまう場合があります。そうなると、抗菌剤自体が効かなくなり、難治性の膀胱炎になる恐れがあります。
再発を予防し、辛い急性膀胱炎を完治させるためには、「薬をきっちりと飲み切る事」は絶対に守りましょう!
②疲れやストレスを溜めない。
睡眠不足や過労が溜まっていると、細菌に対する抵抗力が落ちているため、せっかくの薬の効果が十分発揮されない場合があります。
日頃から免疫力を落とさないために疲れやストレスを溜めないように気を付ける必要がありますが、治療の効果を高めるためにも、発症時には仕事や予定をセーブして体調の回復を最優先に考えましょう。
③水を沢山飲む。
1日の中でもこまめに水分補給し、薬を飲む時は、たっぷりの水と一緒に飲むようにしましょう。
薬と一緒にたくさんの水を飲むことは、症状の改善に役立ちます。
細菌の新たな増殖は抗菌剤で抑えることが出来ますが、すでに膀胱に溜まった細菌は尿と一緒に洗い流すことが有効です。
水分を意識して多くとり、排尿回数を増やすことで体内細菌を追い出し、薬の効果をさらに高めることが出来ます。
上記の3点を守ることで、薬の効果を最大限に活かし、一日も早い回復につなげましょう。
膀胱炎は再発も珍しくない病気です。慢性化してしまうと痛みを感じにくく、治すのもどんどん難しくなるので注意が必要です。
いつまでも辛い症状を繰り返さないためにも、しっかりと完治に向けた治療に取り組んでいきましょう!
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