発疹前が感染力ピーク!「りんご病(伝染性紅斑)」の症状・原因・体験談
2018年6月末、神奈川県川崎市・茅ヶ崎市に「りんご病」の流行警報(定点あたり報告数:2.0人以上)が発令されました。
「りんご病」というと、小さな子の頬がりんごのように真っ赤になることで有名ですが、どんな病気であるかを知っている方は少ないのではないでしょうか?
りんご病とは、正式には「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」と呼ばれるウイルス感染症です。
5歳~9歳くらいまでのお子さんを中心に感染し、冬から春・夏にかけて多くなり、6・7月頃が流行ピークとなります。
子どもの場合、軽い風邪のような症状と発疹だけで済み、こじれることは少ないので心配ありません。
そのことから、「子どもの頃に罹っておくと良い病気」とされています。
ただし、大人は関節炎(痛みが強くでる場合も)・頭痛が現れ、特に妊婦さんの感染は胎児へ重大な影響があるので、注意が必要な感染症でもあります。
今回は、りんご病(伝染性紅斑)の症状・原因・治療法のほか、大人の感染や学校など出席停止措置について、体験談や写真を交えて、ご紹介します。
1.ウイルス感染症「りんご病」の症状・原因
りんご病といったら、特徴的な頬の赤い発疹。
しかし、発疹が出て「りんご病」と気付いた時には、「もう感染力がない」という他の感染症と異なる特徴を持っています。
また、発疹の出る前に前駆症状として、軽い風邪症状が現れることがあります。
りんご病の症状:風邪症状→発疹(頬・手足・おしり)
- 前駆(前触れ)症状:軽い風邪症状(微熱・鼻水・倦怠感など)
→この段階では「風邪を引いたかな?」と思うくらいで、気づかない人がほとんど。無症状の場合も。
- 発疹(両頬→手足・おしり)
- 両頬:りんごのように赤く、蝶翼状(ちょうよくじょう:蝶の羽のよう)に広がる。
※アメリカでは「平手打ちされた跡のような頬」と表現されるように、ほんのり赤いというよりも、異常に赤くなることが多い。 - 手足:肩から肘、太ももに網目状・レース状・まだら模様の発疹が広がる。
- おしり:手足同様のまだら模様の発疹が出る。
- 両頬:りんごのように赤く、蝶翼状(ちょうよくじょう:蝶の羽のよう)に広がる。
- 軽い風邪症状
→前駆症状から引き続き、軽い風邪症状が現れることも。
(出典)りんご病の典型的な頬の発疹|伝染性紅斑とは-国立感染症研究所
こちらのページでは、伝染性紅斑(りんご病)について、症状・原因など詳しく解説されています。
頬がほてったり、少し痒くなったりすることもありますが、基本的に高熱は出ません。
ただし、大人の場合は、頭痛・関節炎(腰・膝など)が出ることがよくあります。
※大人の感染については、後述する「4.お子さんがいる”妊婦さん”は特に注意!大人のりんご病」にて詳しく説明しています。
【体験談】熱もなく、頬が痛々しい程”真っ赤”に!「りんご病」だった。
起きると、4歳の娘の片方のほっぺたがうっすら赤くなっていました。
熱もなく、その他に目立った症状もなかったので、ほんのすこしの赤みだったし、予定していた公園にでかけました。
5月で天気が良かったので、日中は汗ばむほどでした。
娘は帽子をかぶり、長袖、ショートパンツスタイルで公園で遊んでいました。
30分ほどたったころ、娘のもう片方のほっぺたも赤くなっていました。
日焼けや、赤ら顔とは違い、痛々しい赤みなので、何だろう?と思い、早めに切り上げ帰宅しました。
家に帰る車中では、腕や足にまで赤みが広がっていました。
娘は痛がったり、かゆがったりはしませんでしたが、見てる方はとても痛々しかったです。
次の日の朝、病院に連れて行きました。りんご病でした。
幼稚園には通園してもらっても構いません!と医者から説明がありました。こんなに真っ赤なのに大丈夫なのかと思いましたが、真っ赤になる前の感染力は強く、真っ赤になった頃には、感染力はないとのことです。
娘は、真っ赤な顔が恥ずかしいと言うので、何日間か幼稚園はお休みしました。
赤みがひいたかなと思っても、日光に当たると赤みがぶり返すので、しばらくの間は日陰で遊ぶようにしたり、注意が必要です。
娘の場合は、赤みが完全にひくまでに、1週間以上かかりました。
子どもの感染は心配無用!りんご病の疫学と最新流行動向
りんご病の流行サイクルは約3~5年周期となっており、2018年現在の流行状況は下記の通りとなっています。
りんご病は、定点報告(全国3,000か所の指定小児科)が必要な疾患として、毎週集計されています。
(出典)伝染性紅斑(りんご病)の過去10年間との比較グラフ|国立感染症研究所
こちらのページでは、伝染性紅斑(りんご病)の定点当たり報告が確認出来ます。
※縦軸:定点当たり報告数(人)、横軸:週。2018年は赤線に赤丸。
クリックすると、画像が拡大します。
また、りんご病の好発年齢は、5~9歳で就学前後のお子さんに多くなっています。
とはいえ、免疫を持っていない大人も感染します。(家庭内感染率:15%~35%)
特に妊婦さんや重症の貧血の人は、感染に伴う重篤な合併症や異常が起こる場合もあるので、注意が必要です。
なお、りんご病は一度感染すると「終生免疫(しゅうせいめんえき:生涯にわたって免疫が作用する)」を獲得することができるため、原則的に再感染はしません。
感染した場合には、母子手帳に記載するページ(予防接種ページの次、”今までにかかった病気”欄)があるので、記録を残しておくと良いでしょう。
(参考)伝染性紅斑(リンゴ病)|佐世保中央病院
こちらのページでは、りんご病の症状や診断方法など詳しく説明されています。
発疹だけではない!りんご病の原因「ヒトパルボウイルスB19」
りんご病の原因菌は、「ヒトパルボウイルスB19」です。
この原因菌が明確になったのは1983年。まだ35年しか経っておらず、実は長い間不明とされていました。
この原因菌が明確となってから、りんご病でも特徴的な頬の発疹症状が出ない場合や不顕性感染(ふけんせいかんせん)*1もあること、特定の人が感染すると重症化や合併症状が現れるなど、多様なケースがあることも少しずつ分かってきました。
*1不顕性感染:細菌やウイルスなど病原体の感染を受けたにもかかわらず,感染症状を発症していない状態。ただし、病原体は排泄されるので、知らぬ間に感染源となる可能性も高い。
2.いつ感染る?りんご病の感染経路・感染期間
りんご病の感染経路-飛沫感染・接触感染
りんご病の感染経路は、「飛沫感染」と「接触感染」です。
ごく稀に、ウイルスの潜伏期間中に採取された輸血用血液による感染もあり得ます。
①飛沫感染(ひまつかんせん)とは?
感染者のくしゃみや咳、唾などの飛沫と一緒にウイルスが放出され、別の人がそのウイルスを口や鼻から吸い込んでしまうことで、感染します。
学校・幼稚園・保育園や習い事、プレイルーム、満員電車など人が多く集まる場所で感染することが多くなります。
②接触感染とは?
感染者に接触することで、感染します。
- 直接感染
感染者の体液や血液など感染源に触れた手で、目や鼻・口などの粘膜に触れることで感染する場合。 - 間接感染
病原体が付着したものに他の人が触れることで、病原体が体の中に入り込み感染する場合。
→感染している人が触れたドアノブやタオルなどに触れることでも感染することがあるため、注意が必要です。
りんご病の感染期間:潜伏期間(10~20日)→発症(感染力なし・1週間)
感染サイクル:①潜伏期間 10~20日 ★一番感染力強いが、気付けない。
りんご病は、感染~発症(発疹出現)までのいわゆる”潜伏期間”が10~20日あります。
また、発症(発疹出現)の7~10日前に微熱・倦怠感・頭痛・鼻水といった軽い風邪症状が現れることがあります。
感染後、約1週間~10日の潜伏期間中がウイルスの感染力が最も強い(=ウイルス血症を起こす)時期となります!
しかし、身近でりんご病が流行っているなど事前情報がない限り、前駆症状の風邪のような症状だけでは、りんご病の感染に気付くことは正直難しいという現実があります。
感染サイクル:②発症(発疹出現)~③回復期 1週間前後 ※感染力なし
最初に両頬の紅斑がみられ、1~2日後に四肢(手足)やおしりに網目状の紅斑が出現します。
(画像)りんご病の太もも部分の発疹
発疹は頬:約1週間、手足・お尻の発疹:4~5日で通常消えていきますが、2~3週間と持続するケースもあります。
また、紅斑が現れて診断がつく頃は、たいてい回復期に入っています。
ウイルス血症は終息しており、感染力はほぼ消失しているため、他人へうつす心配はありません。
一度消えた発疹が再び現れる場合も10~30%の割合でみられますが、再発ではなく”再燃”として、ウイルスの排出はないので、心配ありません。
また、典型的な症状が出ているりんご病は、自然に治っていくので、特に治療の必要はないとされています。
しかし、ごく稀に回復期に脳炎を合併することがあるので、けいれんや意識障害などある場合には、すぐに医療機関を受診しましょう
(参考)学校伝染病についてのお知らせ|一般社団法人 富士市医師会
こちらのページでは、伝染性紅斑(りんご病)の概要や感染期間・潜伏期間などについて、学校伝染病第3種の中で説明されています。
【体験談】頬の発疹の前に発熱。風邪ではなく「りんご病」だった。
伝染性紅斑、いわゆるりんご病です。
ほっぺたが赤くなるので有名ですが、実はほっぺたが赤くなるのは後半で、人に移す時期が終わってからです。
ほぼ風邪の様な症状で、熱などがありました。
普段風邪をひいても殆ど熱が出ない息子ですが、この時は38位まで短時間ですが出ました。
熱があったので、学校を休ませ、病院で受診し、風邪との診断、投薬を受けました。
その頃、地域でりんご病が流行っていたらしく、どこかで移ったと気がついたのは赤くなってからでした。学校の保健担当の先生にも電話で確認、ネットで調べましたが、上記のように熱があるときにうつるもので、赤くなってからはうつらないので問題ないという事でした。
子供にもきちんと説明し、納得して安心しましたが、後からじゃないとわからないというものは少し困りました
3.登校・登園は?プールやお風呂は?「りんご病」感染で気になること
りんご病が「ウイルス感染症」となると、「頬が赤い以外、元気そうだけど、学校は休ませないといけないの?」「プールやお風呂は入っていいの?」と、他人への感染リスクが気になりますよね。
発疹があっても元気ならOK!りんご病は、出席停止措置なし
りんご病は、発疹出たときにはもう感染力がないので、学校保健法による出席停止の対象にはなっていません。
発疹のみで全身状態がよければ、登校・登園はOKとされています。
ただし、通われている学校・幼稚園・保育園独自のルールがある場合もありますので、「治癒証明書」の提出などについては各自ご確認ください。
発疹時の長湯・炎天下はNG!りんご病とプール・お風呂
発疹出現時には感染力がないので、「プールやお風呂も入ってOK」とされています。
ただし、熱いお風呂に長く入ることはNGです。
発疹の赤みが強くなったり、かゆくなったりすることや長引くことがあるので、さっと短時間で入るようにしましょう。
また、激しい運動や直射日光に長く当たっていると、長湯と同じように赤みが長引くことがあるので、野外プールは避けた方が無難です。
(参考)小児の病気-伝染性紅斑(りんご病)|医療法人藤野クリニック
こちらのページでは、りんご病での入浴や運動など、家庭で気を付けたい事について、説明されています。
4.お子さんがいる”妊婦さん”は特に注意!大人のりんご病
子どものりんご病は、軽い症状だけで済むことがほとんどなので、免疫獲得のため「子どものうちに罹っておいた方が良い」とさえ言われています。
しかし、大人が感染すると、子供よりも重症化しやすく、合併症が出ることもあり、特に妊娠中の感染は胎児へ重大な影響があるので、身近で流行っている場合にはより一層の感染対策が必要です。
知らぬ間に母子感染!?妊娠中の「りんご病」感染
りんご病(伝染性紅斑)は、妊婦さんが注意したい感染症の一つです。
日本人妊婦の抗体保有率は、20~50%とされています。
妊婦さんがヒトパルボウイルスB19に感染すると、風疹と同様、胎盤を通過して胎児も感染し(約20%)、胎児のむくみと貧血(胎児水腫)を発症する(約4%)ことがあります。
妊娠初期でも胎児感染は起こり、そのまま感染が継続され、妊娠20~32週頃、非免疫性胎児水腫を発症することがあります。
胎児水腫が発症した場合には、胎児輸血*2が行われます。
*2胎児輸血:経臍静脈または胎児腹腔内への赤血球輸血。血液型不適合妊娠による重症の胎児貧血治療でも行われます。
また、妊娠後期の感染よりも妊娠初期の感染の方が、胎児死亡率は高くなるとされています。
2011年~2012年に行われた全国調査では、先天性ヒトパルボウイルスB19母子感染したうちの約70%が流産・死産となったという報告があります。
そして、母子感染した約半数が、母体にはりんご病(伝染性紅斑)の症状がない不顕性感染であり、また半数が家族(うち94%が子ども)にりんご病(伝染性紅斑)の症状が出ていたとする調査結果があります。
このことからも既にお子さんがいる妊婦さんは、お子さんや家族に風邪症状が現れた場合、うがい手洗いのほかマスクを着用するなど母子感染に十分注意が必要です。
(参考)ヒトパルボウイルスB19母子感染の実態|IASR 国立感染症研究所
こちらのページでは、ヒトパルボウイルスB19の母子感染について、全国調査の結果とともに詳しく説明されています。
(参考)胎児貧血|日本胎児治療グループ
こちらのページでは、胎児輸血の方法や予後など、詳しく説明されています。
関節炎で痛くてつらい、大人の「りんご病」
大人の場合、半数近くに不顕性感染がみられます。
また、子どもと違い、典型的な発疹が見られない場合(40%程度)や風疹のような発疹、紫斑など様々な発疹が現れることがあります。
さらに、発熱・頭痛・関節炎(女性に多い)や手足の膨張など全身症状が強く出ることも多く、典型的なりんご病ではない場合、判断が難しいことも。
関節炎による痛みで数日動けないようなケースもみられますが、腫れや痛みは通常1~2週間で治まります。
中には、数か月続く場合もみられます。
【体験談】子どもからうつった「りんご病」。声が出る程の体の痛みで、しんどかった!
子供がリンゴ病になり、ほっぺが真っ赤なのと体に斑点がありました。
治ったかと思っていたら、ある朝体がすごくダルく、しんどくて体のあちこちがピリピリと痛くて、ずっと寝てました。
熱は平熱より高めで、本当にしんどくって体が痛かったです。
それからしんどいダルイのは、2.3日でマシになったのですが、今度は体中に斑点が出て来て、体のあちこちがピリピリと痛い日が続きました。
ふとした時に、ピリピリと痛みが走るので、ついつい「イタタタ…」と声が出る程です。私は痛みには強い方なのですが、インフルエンザの時の関節痛のような感じがあちこちで起きました。そのうち、体が痛いのは治ったのですが、体の斑点は出てて、最後腕の斑点が無くなるのに、10日くらいかかりました。
夏場だったので、腕の斑点がとても目立って嫌でした。やはり子供の病気を大人になってするとしんどいってのは本当だということが、身をもって分かりました。
インフルエンザの時と変わらないくらいしんどかったです。薬がないぶん、こちらの方がしんどいかもしれません…もう二度と嫌です。まぁ免疫が出来たと思うのでもうならないと思いますが。
お子さんから感染したケースです。
こちらの方は薬がない分、インフルエンザの関節痛よりも「りんご病」での関節痛の方がしんどかったと仰っています。
■「りんご病」感染に気を付けたい人
妊婦さん以外にも、感染に気を付けたい人がいます。
- 慢性貧血症の人
- 急性の重い貧血を起こす場合があります。
→すぐにかかりつけ医による治療が必要です。 - 典型的な発疹が出ないことが多い。
- 急性の重い貧血を起こす場合があります。
- 免疫システムに問題がある人(白血病やがん・臓器移植を受けた人・先天性免疫不全の人など)
- 治療が必要な慢性貧血となる場合があります。
(参考)伝染性紅斑について|横浜市衛生研究所
こちらのページでは、伝染性紅斑(りんご病)の症状や感染に気を付けたい人などについて、詳しく説明されています。
5.りんご病の治療・予防法:自然回復と「うがい手洗い」
自然に治る!りんご病の治療法
りんご病の症状は軽いものがほとんどなので、特別な治療は必要ありません。
経過観察しながらの「自然回復」を待つこととなります。
また、原因菌であるヒトパルボウイルスB19には、有効な抗ウイルス薬はないため、特に気になる不快症状があれば「対症療法」が取られます。
発疹に伴って、皮膚のかゆみが強い場合には、内服の抗ヒスタミン薬が処方されることもあります。
りんご病の予防は「うがい・手洗いでウイルスを入れないこと」がポイント
これまで見てきた通り、りんご病が厄介なのは、感染ピークが特徴的な発疹よりも「前」ということ!
そのため、有効な2次感染予防策はありません。
とはいえ、手によってウイルスが運ばれることが多いので、日頃から「うがい・手洗い」をしっかり行っておくことが予防に効果的です。
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