40歳過ぎたら「大腸内視鏡検査」で大腸がん予防!痛くない挿入法・下剤・食事・注意点
「がん」というと、どんなイメージを持っていますか?
最近では、多くの芸能人や著名人による”がん告白”を耳にするケースも増えていることもあり、「意外と、なる人が多い」「発症したら致命的」「怖い」といったネガティブなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか?
しかし、「がん」は「がん」でも、「大腸がん」は早期に発見・治療したら、そのほとんどが治せる可能性があるということをご存知でしょうか?
この大腸がんの早期発見・治療に有効なのが、「大腸内視鏡検査」なのです。
今回は、そんな「大腸内視鏡検査」について、検査の内容・挿入法の違い(ループ法・無送気軸保持直線的挿入法/ストレート法・水浸法)・検査の流れや費用について、説明します。
また、腸管洗浄剤(下剤)の種類別メリット・デメリット・検査前後の過ごし方・安心して検査を受けるためのポイントについてもご紹介します。
(参考)最新がん統計|国立がん研究センター
こちらのページでは、がんによる部位別死亡率順位など最新のがん統計を確認することができます。
1.40歳過ぎたら……大腸内視鏡検査のススメ
国立がん研究センターの最新がん統計によると、女性のがん死亡率の1位はなんと「大腸がん」、男性も第3位にランクインするほど、大腸がんは「命を落とす人が多い」疾患なのです。
それでも5年相対生存率は約70%。
「大腸がん」は、治療で命が救える「がん」と呼ばれています。
まずは、大腸について一度確認してみましょう。
消化の最終段階「大腸」とは?
(出典)大腸の構造|フリーメディカルイラスト図鑑
大腸とは、直腸と結腸(S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸)から構成されています。
消化の最終段階として、水分などを吸収して便を作る働きをしており、その長さは約1.5mで太く、細長い小腸(約6m)の周りを捻じれながら囲んでいます。
こんな人にオススメ!大腸内視鏡検査が必要な人
- 排便時に出血がある、便に血が混じっている人
- 検診の便潜血反応が、1回でも陽性となった人
- 貧血を指摘された、急激な体重減少がある人
- おなかの調子が悪い人(腹痛、腹部膨満感など)
- 便秘や下痢・便が細いなど便通異常のある人(特に、下痢が4週間以上続く場合)
- 過去に大腸ポリープがあった人
- 2親等以内の親族(祖父母、両親、兄弟姉妹)が大腸がんになった人
- 40歳以上の方で大腸内視鏡検査を受けたことがない方
大腸ポリープや大腸がんも早期の場合、症状がありません。
症状が出てきたときには、大腸がんが進行して、腫瘍が大きくなっている可能性が高いのです。
腫瘍によって腸内が狭くなると、固形便が通過できず、液状や泥状の便しか出なくなるので、下痢が4週間以上続いている場合には、早急に検査をした方が良いでしょう。
そして、排便時に出血があった場合にも「痔」と思い込み放置してしまうケースも多くみられますが、大腸がんである可能性も否定できないのです。
また、国立がん研究センターのがん統計によると、「大腸がんは、40歳を過ぎると罹患率が増える」ことが報告されています。
そういったことからも、40歳を過ぎたら一度「大腸内視鏡検査」を受けてみることをおすすめします!
※ただし、妊娠中の場合には、鎮痛剤が使えない・わずかながら胎児へのリスクがあることから、大腸内視鏡は受けられないとしている病院が多くあります。どうしても受けたい場合には、まずはかかりつけの産婦人科医に相談しましょう。
(参考)年齢階級率罹患率(全国推計値)2013年 男女計 大腸|国立がん研究センターがん対策情報センター
こちらのページでは、年齢別の大腸がん(直腸・結腸)に対する罹患率の全国推計値を確認することができます。リストを変更すれば、脂肪率も確認できます。
■健康診断や人間ドックで「便潜血検査」を受けていても、大腸内視鏡検査を受けた方がいい理由
健康診断や人間ドックを受けると、基本プランに「検便」が含まれていることが多いですよね。
あの検便は、正式には”便潜血検査(便ヘモ)”と呼ばれ、「大腸がんの早期スクリーニング」として、行われています。
最近では大腸がん発見の精度向上のため、2日分の便で検査(2本法)をすることが増えています。
大腸がんの多くは出血を伴うことが多いため、この検査では、便中に混入した目に見えないような微量の出血の有無を調べています。
しかし、大腸ポリープの約70%、早期大腸がんの約50%、進行大腸がんの場合でも約10%は、便潜血反応が”陰性”となると報告されています。
そのため、「便潜血検査」は、あくまでも指標の一つと捉え、「便潜血検査」陽性の場合はもちろん、陰性の場合でもしっかりと検査をするには、「大腸内視鏡検査」で実際の大腸を確認しておくことが大切です。
観察だけでなく、採取や切除も!大腸内視鏡検査とは、どんな検査?
大腸内視鏡検査は、”大腸カメラ”とも呼ばれ、肛門から直径1cm程度の内視鏡カメラ(CCDカメラ)を挿入して、大腸内を直接観察できる検査です。
さらに、見るだけでなく、その場で組織を取ることや病変の切除も可能です。
早期発見&原因追及も可能!大腸内視鏡検査で見つけられる病気とは?
大腸内視鏡検査では、肛門から入れた内視鏡カメラによって、病変の形や大きさ・血管の模様から病変の深さなど診断することができます。
その結果、大腸粘膜に異常を起こす様々な病気を見つけられます。
症状が出にくい大腸ポリープや大腸がんなどの早期発見に繋がります。
また、下痢や血便など気になる症状がある場合には、その症状の原因を探す一つの手段でもあるのです。
なお、大腸に異常を起こす病気は、その形状から「腫瘍」と「炎症」に分けられます。
■腫瘍性疾患の種類
腫瘍とは、「できもの」のこと。
文字通り、腸の中で出っ張っていることが多くなっています。(隆起性病変)
しかし、中には逆に陥没しているもの(陥凹性病変)や平らなものもあります。
代表的なものは……
- 大腸ポリープ
- いぼみたいに、出っ張っている。
- 特に、大腸ポリープの8割を占める5mm以上となった「腫瘍性ポリープ(腺腫性ポリープ)」は、将来大腸がんになる可能性がある。
- 腺腫(ポリープ)のうちに取っておくことで、大腸がんを予防することが可能となる。
- 【発生率】:年齢とともに増加。40歳では10~30%、50歳になると30~50%。
- 大腸がん
- 腺腫(良性腫瘍・ポリープ)が悪性化したもの。
- 進行すると、腸内が腫瘍で狭くなって、便が通過できない程になることも。
- がんの中では、進行が遅く、早期発見や治療で治る可能性があるがん。
- 発生率:年齢とともに増加。40歳では男性:約23%、女性:約20%、50歳になると、男性:約80%、女性:約59%。(人口10万人対)
(参考)大腸がん罹患率|がん情報サービス
こちらのページでは、国立がん研究センターによるがん統計 年齢階級別大腸がん罹患率(男女別)データが確認できます。
■炎症性疾患の種類
大腸内視鏡検査で発見することができる炎症性の疾患としては「炎症性腸疾患(IBD)」が有名です。
下痢や血便、けいれん性の腹痛などが現れることがほとんどです。
- 潰瘍性大腸炎
- 肛門から連続して炎症が起き、潰瘍やびらん(荒れている状態)が拡がっている。
- 原因が特定されておらず、厚生労働省の難病指定を受けている。
- 「発病から長期間経過すると、大腸がんリスクが高まる」とする海外データもある。
- 患者数:約17万人で、発症ピーク:男性:20代前半、女性:20代後半。ただし、赤ちゃんから高齢者までどの年代でも発症する。
- クローン病
- 肛門から口方向に消化管に非連続性(病変と病変の間に正常部分が存在)の炎症が起き、潰瘍やびらん(荒れている状態)ができる。
- 原因が特定されておらず、厚生労働省の難病指定を受けている。
- 患者数:約4万人で、発症ピークは、男性:20代前半、女性:10代後半。10代~20代の若者が発症しやすく、男女比は2:1。
(参考)IBD基本情報|ヤンセンファーマ株式会社
こちらのページでは、炎症性腸疾患(IBD)である(潰瘍性大腸炎・クローン病)について、病気の説明のほか、仕事・スポーツ・旅行のことなどを紹介するIBD患者さん応援サイトです。
■大腸内視鏡検査中に、もし何か見つかったら?
大腸内視鏡検査時に、ポリープや早期で浅い大腸がんが見つかった場合、その場で切除も行える病院もあります。
ただし、内視鏡治療でも”手術”になるため、本人の同意が必要です。
そのため、軽い鎮静剤の使用で意思疎通ができればOKですが、強い鎮静剤を使用して意識がない場合には、その場での切除はNGなので注意が必要です!
また、炎症性の疾患や大腸がんでも進行している場合などは、内視鏡治療の対象とはなりません。
さらに、ポリープでもサイズがとても大きい場合・数がたくさんある場合や心臓・肺・肝臓・腎臓障害に重大な障害がある場合にも、入院での切除が望ましいとされるため、当日切除ができないケースがあります。
何科で受けられる?予約制が多い「大腸内視鏡検査」
大腸内視鏡検査を受けてみよう!とせっかく思い立っても、「どこで受けられるの?」と迷ってしまう人も多いかもしれません。
大腸は消化器管なので、「消化器科(消化器内科・消化器外科)」が標榜されている病院であれば、一般的には大腸内視鏡検査を受けられます。
また、「大腸肛門科」「内視鏡(内)科」「光学医療診療科」などでも”内視鏡外来”として対応していることもあります。
さらに、大腸内視鏡検査を行う前に安全に検査を行うための配慮から既往症の確認など「事前の外来診察」が行われています。
この事前診察の時に、大腸内視鏡検査の予約を取る形にしている病院も多いので、人気病院の場合すぐに検査を行えない可能性があります。
大腸内視鏡検査を希望される場合には、日程に余裕をもって早めの問い合わせをされると良いでしょう。
2.ループ法?無送気法?水浸法?大腸内視鏡検査の挿入方法の違いと安全性
大腸内視鏡検査の挿入方法は、下記の通りいくつかの種類に分けられます。
①従来から行われていた「ループ法」
②近年採用する病院が増えている「無送気軸保持直線的挿入法(ストレート法)」
③少しの注水で痛みを抑える「水浸法」
(画像)大腸イメージ図
大腸とは、曲がりくねった臓器です。
肛門から入ってすぐの直腸と下行結腸(かこうけっちょう)は周りに固定されていますが、その間にあるS字型にカーブしている「S状結腸」は固定されていません。
「ループ法」と「無送気軸保持直線的挿入法(ストレート法)」・「水浸法」の違いは、「S状結腸を伸ばすか、伸ばさないか?」とされ、この差が”苦痛を感じる差”として考えられています。
①「ループ法」:空気を送って腸を伸ばしながら、内視鏡を進める方法
- 【内視鏡の進め方】
空気を挿入して、そんなS字カーブのS状結腸部分を伸ばして、内視鏡を押し進めていく方法です。 - 【痛み】
「腸が膨らんで苦しい」「内視鏡で腸が押されて痛い」というような苦痛が伴うので、強い鎮静剤を多量に使うことで苦痛軽減を図っている病院が多くあります。 - 【実施病院】
従来から行われている大腸内視鏡の基本的な挿入方法なので、現状はループ法を採用しているところが多い。 - 【安全性】
非常にまれですが、腸に穴が開いてしまう「腸穿孔」が起こってしまう場合もあります。
→日本消化器内視鏡学会によると、大腸内視鏡検査・治療による有害事象(偶発症)は、全国で0.011%(9,091人に1人の割合)となっています。 - 【もし検査中にポリープが見つかったら?】
ループ法の場合、痛み軽減のため強い鎮静剤を使うので、患者さんは意識のない状態となります。
そうなると、切除の同意を得ることは難しくなるため、その場で切除はできず、後日改めてポリープ切除を行う必要が出てきます。
(参考)大腸内視鏡検査と治療|一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
こちらのページでは、大腸内視鏡検査及び治療について、偶発症の割合を含め、詳しく解説されています。
②「無送気軸保持直線的挿入法(ストレート法)」:空気を送らず、腸を縮めながら進めるので痛みが少ない方法
無送気軸保持直線的挿入法(ストレート法)は、従来のループ法に比べ、痛みが少ないとされますが、習熟に相応の経験が必要なので、どこの病院でも簡単に受けられる検査法ではありません。
- 【内視鏡の進め方】
- 空気を入れずに腸を少しずつ縮めながら、内視鏡を進めていく手法。
- 腸がくねくねカーブしている部分も軸を保ちながら、まっすぐ内視鏡を進めていくことが可能。
- 【痛み】
空気を送らないから、腸が無理に伸びないので、腸に負担がかかりません。
→ループ法に比べ、「楽で痛みの少ない」検査が可能に。 - 【実施病院】
ループ法に代わって主流になりつつありますが、手技の取得には多くの経験や修練が必要なため、現在のところ実施している病院は限られています。 - 【安全性】
腸が癒着している場合でも、挿入時に内視鏡を押し込んだり、腸を無理やり伸ばしたりはしないので、ループ法に比べ、腸が傷ついて穴が開くような危険性が少ない検査法です。 - 【もし検査中にポリープが見つかったら?】
痛みが少ない検査方法なので、緊張を取る程度の軽い鎮静剤(麻酔)のみで行うことが一般的です。
軽い鎮静剤なので、検査中も患者さんは目覚めていることから、その場でポリープ切除の同意を確認できます。
そのため、検査と同時の日帰りポリープ切除術に対応している病院が多くなっています。
■無送気軸保持直線的挿入法(ストレート法)がおすすめの人
- 腸が長い人……女性に多い
- 腹部手術歴があり、腸の癒着がある(可能性がある)人
- 他院での大腸内視鏡検査で、強い痛みを感じた人や挿入が難しく中断した人
(参考)大腸内視鏡検査(大腸カメラ)|きたやま胃腸肛門クリニック
こちらのページでは、苦痛のない優しい大腸内視鏡検査として、無送気軸保持直線的挿入法(ストレート法)について、詳しく説明されています。
③「水浸法」:少量の水を入れながら内視鏡を挿入、無麻酔でも行える検査法
東京大学の後藤先生が開発された挿入法です。
ループ法を改良・工夫した方法で、内視鏡を進める際に少しだけ水を注入して、滑りを良くしながら挿入していきます。
- 【内視鏡の進め方】
空気の代わりに「少量の水を入れては、吸って」を繰り返しながら、内視鏡を進めていく手法。
水で内視鏡の滑りを良くし、浮力で重さが軽くなるため、軽い力でもスーッと入っていきます。 - 【痛み】
注水も約100ml~200mlと少量なので、腸が膨らみ過ぎたり、伸びたり、捻じれたりしないので痛みが少なく、麻酔不要で検査も可能。 - 【実施病院】
水浸法を取得している医師は、まだ50人程度。
今のところ、限られた病院でのみ行われている検査法。(全国で約30病院) - 【安全性】
挿入時に内視鏡を押し込んだり、腸を無理やり伸ばしたりはしないので、腸が傷ついて穴が開くような危険性が少ない検査法です。
開発した後藤医師によれば、水浸法は40,000件以上の実績に対し、腸穿孔(腸に穴が開く)事故は0件と報告しています。 - 【もし検査中にポリープが見つかったら?】
基本的には、無麻酔か不安・緊張を抑える程度の少量の鎮静剤(麻酔)で検査を行います。
患者さんのポリープ切除への同意を取ることが可能なので、一緒にポリープ切除も行っている病院が多くなっています。
■水浸法がおすすめの人
- 腹部手術歴があり、腸の癒着がある(可能性がある)人
- 他院での大腸内視鏡検査で、強い痛みを感じた人や挿入が難しく中断した人
3.大腸内視鏡検査の流れ・費用
大腸内視鏡検査の手順は、①事前診察②検査前処置③検査当日の3段階に分けられます。
大腸内視鏡検査の流れ:事前診察→検査前処置(下剤服用)→内視鏡検査
①事前診察
大腸内視鏡検査を安全に受けられるように、事前診察で既往症の確認が行われます。
病院によっては、感染症の有無や出血傾向を調べるために、採血検査を行うこともあります。
なお、心筋梗塞・脳梗塞など影響で血液をサラサラにするお薬(抗血栓薬)を服用中の場合には、あらかじめ申告する必要があります。
他にも、下記のような持病や経験があれば、事前に申し出ましょう。
- 麻酔で具合が悪くなったことがある。
- 心臓疾患がある。
- 糖尿病でインスリンを打っている。
- 高血圧治療の薬を飲んでいる。
- 緑内障である。
検査当日に発覚した場合、検査が受けられないこともありますので、事前診察の時には、お薬手帳を持参すると安心ですね。
※自己判断で投薬を中断しないようにしましょう。
②検査前処置(検査前日または当日)
大腸粘膜を見るため、大腸の中を空っぽにする必要があります。
そのため、検査前に腸管洗浄液(下剤)約2リットルを自宅または病院で、約2時間~3時間かけて服用します。
なお、検査当日だけでなく、前日夜も下剤(錠剤)を飲む場合もあります。
下剤服用後、数時間かけて何度か排便があり、便が透明で黄色の水のようになれば、腸がきれいになったサインとなり、準備完了です。
まだ腸の洗浄が不十分な場合には、下剤の追加や浣腸を行う場合もあります。
■下剤が飲めない場合には?
病院によっては、胃カメラで内視鏡を通じて、下剤を腸に注入する方法が取れることがあります。
③検査
検査着に着替えて、検査用の紙パンツに着替えます。
鎮静剤を注射または点滴で行い、左側を下にして横になります。
内視鏡の挿入時間が早いのは、ループ法>無送気軸保持直線的挿入法(ストレート法)・水浸法の順。
ループ法挿入がうまい医師であれば、平均1~3分くらいで挿入できます。
しかし、無送気軸保持直線的挿入法(ストレート法)や水浸法は、腸に負担をかけないためにゆっくり挿入するので、平均3~5分かかるとされています。
大腸内視鏡検査にかかる時間は、約10分~20分間です。
途中でポリープ切除など行った場合には、もう少し少し時間がかかります。
④検査終了後
鎮静剤を使用している場合、検査終了後、30分~1時間くらい安静にする必要があります。
内視鏡検査結果の説明が行われ、その後帰宅となります。
※組織生検やポリープ切除を行った場合には、2週間後くらいに病理検査の結果説明のために来院が必要となります。
(参考)大腸内視鏡検査の流れ(予約・前日・当日)|きたやま胃腸肛門クリニック
こちらのページでは、大腸内視鏡検査の流れや注意事項などについて、詳しく説明されています。
腸管洗浄液(下剤)の種類とメリット・デメリット・飲み方
大腸の洗浄に使われる腸管洗浄液(下剤)には、いくつか種類があります。
主に使われている下記の下剤について、特徴や気になる味などまとめました。
- モビプレップ
- ニフレック
- マグコロールP
- ビジクリア
- ピコプレップ
(画像)大腸内視鏡検査で使われる主な下剤と特徴
※クリックすると、表が拡大します。
なお、下剤の服用によって、ごく稀に腸に穴が開く(腸管穿孔)・腸閉塞などが起こる可能性もあります。
お腹が痛い・気分が悪い・吐き気がする・顔が青ざめる・めまいがする・寒気がする・息苦しい・蕁麻疹が出たなどの症状が出た場合には、服用を中止し、速やかに検査予定の病院へ連絡しましょう。
①モビプレップ
水に溶かして飲みます。
【メリット】
薬剤の服用量が少ない。
ビタミンC配合(2リットルに20g)
【デメリット】
薬剤の半分の量の水分(水・お茶・麦茶・ウーロン茶・紅茶など糖分の入っていないもの)を服用しなければならない。
飲み方が少々難しい。
【飲み方】※一例です。実際の服用方法は、病院の指示に従ってください。
- パックに水を入れて、2,000mlにする。
- 1,000mlを1時間かけて飲む。
→コップ1杯(約180ml)を10分かけて飲む。 - 飲んだ薬の半分量の水分(500ml、糖分の入っていないもの)を取る。
【味】
梅風味
【この薬を選べない人】
腎臓疾患がある人
②ニフレック
水に溶かして飲みます。
【メリット】
服用方法が簡単。
腸管内の残渣(ざんさ:残りかす)が少ないので、正確な検査が期待できる。
体内に吸収されないので、体内の電解質バランスに影響が少ない
【デメリット】
独特の味で飲みにくい場合も。
2リットルと飲む量が多い。
【飲み方】※一例です。実際の服用方法は、病院の指示に従ってください。
- パックに水を入れて、2,000mlにする。
- 2,000mlを2時間かけて飲む。
→コップ1杯(約180ml)を10分かけて飲む。 - 最初の2~3杯は、15分以上かけてゆっくり飲む
【味】
レモン風味
③マグコロールP
水に溶かして飲みます。
【メリット】
服用方法が簡単。
スポーツ飲料のような味で飲みやすい。
【デメリット】
甘味があるので、飲みにくいと感じる場合も。
【飲み方】※一例です。実際の服用方法は、病院の指示に従ってください。
- パックに水を入れて、1,800mlにする。
- 1,800mlを約1時間30分かけて飲む。
→コップ1杯(約200ml)を10分かけて飲む。
【味】
スポーツ飲料風味
【この薬を選べない人】
腎臓疾患がある人
④ビジクリア
錠剤なので、水分と一緒に服用します。
【メリット】
薬のように飲める。
水以外にもお茶・麦茶・紅茶(糖分・ミルクなし)でもOK。
【デメリット】
錠剤が大きいので、飲みにくい場合も。(半錠に割ると飲みやすい)
沢山の錠剤(50錠)を飲む必要がある。
【飲み方】※一例です。実際の服用方法は、病院の指示に従ってください。
- 錠剤5錠をコップ1杯(約200ml)で15分かけて飲む。
- 上記を10回繰り返す。
→2,000mlの水分で、錠剤50錠を2時間30分で飲む。
【この薬を選べない人】
心臓疾患がある人
腎臓疾患がある人
年齢が65歳以上の高齢者
高血圧の治療を受けている人
⑤ピコプレップ
水に溶かして服用します。
【メリット】
検査前日夜と検査当日の2回に分けて飲める。
オレンジ味の薬剤で、しかも量が少ない(150ml×2回)。
薬剤後に飲む水分は、好きな水分(透明の液体なら何でもいい)を飲める。
【デメリット】
飲む総量としては一番多い。(検査前日:薬剤150ml+1,250ml、検査当日:薬剤150ml+750ml)
前日夜の飲む必要があるので、睡眠中に便意が起こり、睡眠を妨げる可能性がある。
【飲み方】※一例です。実際の服用方法は、病院の指示に従ってください。
- 検査前日夜:薬剤150mlを飲む。
- 透明な飲み物(お茶・麦茶・無糖紅茶など)1,250mlを2~3時間で飲む。
- 検査当日:薬剤150mlを飲む。
- 透明な飲み物(お茶・麦茶・無糖紅茶など)750mlを1~2時間で飲む。
【味】
オレンジ味
【この薬を選べない人】
腎臓疾患がある人
■下剤はどのくらいで効く?いつまで効いている?
- モビプレップ
腸がきれいになるまでの時間:約2.67±0.84時間。 - ニフレック
腸がきれいになるまでの時間:約3.19±1.02時間。 - マグコロールP
飲み始めて1時間後くらいから、排便が始まる。 - ピコプレップ
1回目投与後:最初の排便1.5±1.3時間。最後の排便:5.4±2.5時間。排便回数:4.4±2.7回。
(参考)モビプレップ審査報告書|独立行政法人医薬品医療機器総合機構
こちらは、モビプレップの新薬申請時資料です。P.17に臨床試験の結果(モビプレップとニフレックの比較したデータ)が公開されています。
保険適用OK!大腸内視鏡検査の費用相場
大腸内視鏡検査は、健康保険が適用されます。
- 検査だけの場合……3割負担:¥7,500前後
- 病理組織検査*1あり……3割負担:¥10,000~¥15,000前後
*1病理組織検査:組織を一部採取して、炎症やがん細胞が含まれていないかを調べる。 - 日帰り大腸ポリープ切除*2あり……3割負担:¥20,000~¥30,000前後
*2:大腸ポリープ切除:切除したポリープに病理組織検査を行って、がん細胞が含まれていないか完全に取り切れているかを調べる。
費用は、使用する下剤の種類や点滴の有無によっても異なります。
また、内視鏡検査前の事前診察代は、別途必要です。
4.大腸内視鏡検査前後の過ごし方・注意点
大腸内視鏡検査は、当日だけでなく前日や検査後の過ごし方も大切です。
いつもより少し気を配ることで、安全・スムーズに検査が受けられます。
前日・当日・検査後ごとに、特に気を付けたい事をピックアップしました。
【前日】3食とも「消化の良いもの」を!
これまで見てきた通り、大腸内視鏡検査では、まずは腸の中を綺麗にすることが大前提です。
さまざまな腸管洗浄剤(下剤)がありますが、どれも”腸の中を綺麗にする能力”はあります。
しかし、どんなに頑張って下剤を飲んでも、検査の時に「まだ残っていますね」と指摘される人がいます。
腸内がしっかり綺麗になっていなければ、再検査となってしまうことも……!
それならば、できるだけ綺麗にして検査に臨みたいですよね。
下剤で腸を綺麗に洗浄できるか?否か?のポイントは、「いかに消化に良いもの」を食べていたか?にあります。
便秘症の人は、検査2~3日前あたりから、消化の良いものを食べて調整すると良いでしょう。
なお、脱水傾向になりやすいので、検査前まで水分はしっかり摂りましょう。
■消化に良い食事例
風邪を引いた時に食べるものというイメージ。
腹八分目にしましょう。
- 米……白米・おかゆ
- うどん……うどん・にゅうめん・ひやむぎ・そうめん
→ねぎ・薬味・わかめはNG - パン……食パン・ロールパン
→雑穀やドライフルーツなど入っていないもの - はちみつ
→ジャム・バター・マーガリン・ママレードはNG - 鶏肉
- 白身魚・ちくわ・かまぼこ
- 卵・豆乳・豆腐
→牛乳・ヨーグルト・チーズはNG - コンソメスープ・水分(透明な液体:お水・お茶・ウーロン茶・スポーツ飲料など)
- ゼリー飲料
→透明で果実の入っていないもの
■消化に悪い食事例
食物繊維や脂っこいものは、NGです。
また、果実も種が多く、腸に残ってしまいます。
乳製品も腸壁に付着し、鮮明に画像が見られなくなるので、避けましょう。
- 麺類……そば・ラーメン
- 玄米……発芽玄米・雑穀米など
- こんにゃく・きのこ類・野菜・果物
- 海藻類
→海苔・わかめ・昆布・ひじきなどNG - 豆類
→ごま・ピーナッツはNG - ジャム・バター・マーガリン・ママレード
- 牛乳など乳製品・100%ジュース・アルコール
→アルコールは、出血のリスクに繋がるのでNG
「制約がありすぎて、何を食べていいか、よく分からない!」なんて時には、病院によって検査用の食事(低残渣食)が販売されていることがあります。(3食¥1,000~¥2,000くらい)
3食セットになっている低残渣食であれば、安心して食事を食べることができますね。
食事の準備が不安な方は、検査先の病院にてお尋ねください。
【当日】車・バイク・自転車の運転は?お風呂は?
鎮静剤や鎮痛剤を使用した場合には、当日の運転はNGです。
また、お風呂は検査のみの場合にはOKですが、ポリープ切除を行った場合には、当日は禁止となっています。
ポリープ切除は一応手術ではあるので、傷跡が治るまでしばらくの間は大人しく生活したほうが良いでしょう。
■車・バイク・自転車の運転について
大腸内視鏡検査では、検査に伴う苦痛をより軽減するために、多くの病院で鎮静剤・鎮痛剤を使用しています。
軽い鎮静剤や鎮痛剤でも使用した場合には、判断力の低下から事故に繋がる恐れがあります。
検査日当日は、車・バイク・自転車の運転は避けましょう。
もし車を運転して来院した場合には、鎮静剤を用いた大腸内視鏡検査が受けられない場合がありますので、注意が必要です。
■お風呂やサウナは?
検査で観察のみだった場合には、検査後の制限はありません。
お風呂やサウナもOKですが、水分補給に注意しましょう。
(参考)大腸内視鏡検査(大腸カメラ)よくあるご質問|きたやま胃腸肛門クリニック
こちらのページの「よくあるご質問」の部分で、検査後の生活の制限について、解説されています。
■ポリープを切除した場合の運転・お風呂は?
ポリープ切除は、一般的にスネアと呼ばれる特殊なワイヤーでポリープの根元を締めて、高周波を流して切除します。(ポリペクトミー)
また、腫瘍が10ミリ以下と小さい場合には、熱を加えずに切除する方法(コールドスネアポリペクトミー)にて切除する場合もあります。
特に、電流を流して切除するポリペクトミー方式では、避けることのできない合併症として、後出血リスク(1~2%程度)があり、術後1週間は出血しやすい状態となります。
切除方法により安静度はかなり変わりますが、いずれも少しの間は大人しく過ごすようにして、いつもの生活よりも注意が必要です。
※あくまでも目安です。ポリープの大きさ・個数など個人の状態によって、実際の制限は異なります。医師の指示に従ってください。
・車……術後翌日まで禁止
・お風呂……術後当日はNG。翌日シャワーのみ、2日目以降は短時間の入浴なら可能な場合も。
お風呂に入って温まると、血流が良くなるため、ポリープ切除部位からの出血リスクが生じます。
なるべくならシャワーのみしておいた方がよいでしょう。
(参考)大腸内視鏡検査および治療を受けられる方へ|東京都がん検診センター
こちらのページでは、大腸内視鏡治療(大腸ポリープ切除)を行った際の注意点について、まとめられています。
(参考)大腸ポリープに対する Cold snare polypectomy の 有用性と安全性についての検討|日本消化器内視鏡学会雑誌 Vol. 58 (10), Oct. 2016
こちらのPDFでは、コールドスネアポリペクトミー切除法の有用性や後出血などの安全性について、電気を流しながら焼灼して切除する方法(ポリペクトミー)との比較検討した内容が確認できます。
【検査後】異常なし:2~3年おき、ポリープ切除あり:毎年の「定期検査」を!
大腸内視鏡検査を受けて、ポリープなど異常が見つからなかったからといって、「あ~良かった。」で終わりではありません。
大腸がん全体の治癒率は約70%、「早期であれば、ほとんど完治する!」とされていますが、大腸ポリープや早期の大腸がんは、進行するまで症状がないのが特徴です。
大腸がんを完治させるためには、この無症状のうちに早期発見・早期治療することがとても重要です。
そのためには、大腸内視鏡検査を受けて、異常が見つからなかった場合でも、2~3年おきに「大腸内視鏡検査」を受けましょう。
また、ポリープ切除を行った場合には、フォローアップとして、1年に1回「大腸内視鏡検査」を受けることをおススメします。
定期的な大腸内視鏡検査で、大腸がんを予防しましょう!
5.安心して「大腸内視鏡検査」を受けるための4大ポイント
「なんか痛そう」「なんか怖そう」「恥ずかしい」「辛かったから、二度としたくない」と敬遠されがちな大腸内視鏡検査。
しかし、熟練した医師が行えば、痛みなく楽に受けられる検査なのです。
とはいえ、どんな病院を選べば、「やって良かった!」と思える熟練した医師による大腸内視鏡検査が受けられるのでしょうか?
「大腸内視鏡検査」で失敗しないための病院選びのポイントをチェックしてみましょう!
①医師の腕=治療実績
「大腸内視鏡検査」が楽に痛みなく行えるか否かの分かれ目は、なんといっても「医師の腕」!
痛みを伴うことが多い「ループ法」でも、凄腕医師が行えば、「本当に痛くない!」と言われています。
そんな内視鏡操作の細かいさじ加減を行う「上手な手」は、どうやって見分ければよいのでしょうか?
- 検査を受ける医療機関……実施件数の多いところ
- 個人の実績
上記のように、実施件数が多いところは、それだけ患者さんが来るということ。
平均レベル以上のお任せできる検査は、受けられるでしょう。
さらに、もう少し詳しく確認したいのが、「医師個人の実績」です。
まさに「医師の腕」ですね。
痛みが少ないとされる新しい挿入法「無送気軸保持短縮法」の習得には、最低でも2,000件の大腸内視鏡経験が必要とされています。
これは、消化器内視鏡専門医の認定基準(100件)を大幅に上回る数字です。
最近の病院はホームページを持っていることが多いので、大腸内視鏡検査に関するページやの院長紹介ページで、簡単に実績を確認することができます。
このような内視鏡経験が豊富な医師に出会うことが、「痛くない・安心できる」大腸内視鏡検査への第一歩なのです。
(参考)Adenoma Detection Rate and Risk of Colorectal Cancer and Death|N Engl J Med 2014; 370:1298-1306(原文:英文)
こちらのページでは、2014年に発表された腺腫発見率と大腸癌・死亡のリスクに関するアメリカで行われた調査の報告データ(要約)が公開されています。
②消化器内視鏡専門医の資格
豊富な経験だけでなく、しっかりとした「知識」があってこその「医師の腕」です。
そんな豊富な経験と知識を持った消化器内視鏡医の目安となる資格が、日本消化器内視鏡学会による「消化器内視鏡専門医」なのです。
学会のセミナー・講習会の受講・論文提出などの知識面と実技面(胃カメラ・大腸内視鏡検査・内視鏡治療ともに基準件数あり)で一定条件を満たした医師のみが、「消化器内視鏡専門医」として認定されるのです。
また、消化器内視鏡専門医は、5年おきの更新が必要です。
(参考)日本消化器内視鏡学会専門医制度規則|日本消化器内視鏡学会
こちらのページでは、消化器内視鏡専門医の新規申請や更新に必要な要件を確認することができます。
③衛生面も重要!高水準消毒剤「過酢酸」での洗浄消毒
内視鏡検査では内視鏡が粘膜に直接触れますが、注射などと違って患者さんごとに使い捨てできない器具なので、特に感染症には十分注意が必要です。
感性症対策として、今やどの病院も消毒・洗浄を行っていますが、実は消毒にもレベルがあったのです。
なかでも高水準消毒剤として、厚生労働省に認可されているのが「過酢酸(かさくさん)」です。
強力な酸化力で、蛋白の変性、代謝酵素の不活性化、細胞膜の破壊などによって殺菌します。
また、過酢酸は分解しても有害物質を生じません。
内視鏡を介して感染を起こしやすい肝炎ウイルス・HIV・結核などの病原体に対して、短時間で高い殺菌効果と安全性を併せ持っている消毒剤なのです。
”未知のウイルスも含めて、感染制御されている”と考えられていることから、過酢酸にて消毒を行っている病院では、事前診察での感染症を調べるための採血は「不要」としています。
さらに、病院で汎用的に使用されている「強酸性電解水」は安価ですが、殺菌効果や安定性に疑問が残るとされているため、内視鏡メーカーとしては、消毒に強酸性電解水の使用を認めていません。
(参考)内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン(第2版)|一般社団法人 日本消化器内視鏡技師会
こちらのページでは、内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン(第2版)が確認できます。
④プライバシーに配慮した病院
大腸がんは早期発見・早期治療なら、ほとんどが完治するのに、なぜ女性のがん死亡率の第一位は、大腸がんなのでしょう?
その要因の一つと考えられているのが、「大腸内視鏡検査を受けないから」ということ。
男女問わず、「恥ずかしい」と思って、なかなか受ける勇気がでない人も多いのでしょう。
しかし実際は、検査着もお尻が見えないように工夫されていたり、更衣室はもちろん、検査室やリカバリールーム(回復室)も男女別や個室になっていたりと、最近は患者さん同士のプライバシーに配慮されている病院が増えてきています。
また、女性の内視鏡医も増えていますので、気になる女性は「女性医師」と指定して検査を受けると、よりリラックスできますね。
定期的な「大腸内視鏡検査」で、快腸生活を!
これまで見てきた通り、大腸内視鏡検査は皆さんが思っているよりも、最近は「つらいもの」ではなくなってきています。
何よりも、内視鏡検査・治療による「大腸がんの予防」という最大のメリットがあるのです。
40歳を過ぎたら、定期的に「大腸内視鏡検査」を受けましょう。
案ずるよりも生むがやすし!
大腸を定期的に観察して、早めに「大腸がんの芽」を摘み取っていくことが、快腸生活の秘訣なのです。
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