「肌の老化」の8割は太陽光が原因。「光老化(ひかりろうか)」とその対策法
太陽の光は私たちの生活にとって無くてはならないもの。たっぷりの日差しを浴びるのは気持ちが良いだけでなく、体内のビタミンDを生成して骨を強くするなどの健康効果も期待できます。
しかし、その一方、日光は肌に有害で、ダメージを及ぼすのも事実。一度に大量の紫外線を浴びる日焼け(サンバーン)は太陽光による火傷(やけど)であり、赤みや痛み、熱感や皮むけなどの症状が出るため、屋外レジャーやアウトドアの時にはしっかりと紫外線対策をしているという方は多いと思います。
しかし、毎日の生活においてはどうでしょう?普段から同じようにしっかりと紫外線対策ができているという方はまだまだ少ないのではないでしょうか?
実は、油断してはいけないのがこのような「日常的に浴びている太陽の光」。夏の晴れた日だけではなく、秋冬の曇りの日でも紫外線は常に降り注いでいます。毎日、無意識のうちに少しずつ浴びてしまっている太陽光は、シミやシワ、たるみなど「肌の老化」の大きな原因になります。
このような太陽光による肌の老化は「光老化(ひかりろうか)」と呼ばれ、長期間にわたり太陽光を浴び続けることで起こるれっきとした皮膚の障害。すぐに症状は出なくとも、長い時間、蓄積されることで、肌への大きなダメージになってしまうのです。
光老化は、年齢を重ねることで起こる自然の老化現象とは質が違うものですが、加齢による肌の老化にもさらに拍車をかけてしまうため、日頃から意識してしっかりと対策を行うことが大切。
そこで今回は、光老化についての認知度を上げるべく「光老化啓発プロジェクト」を立ち上げた発起人のお一人である東京女子医科大学名誉教授の川島 眞(かわしま まこと)先生に「光老化」や、その予防法について分かりやすく解説していただきました。
1.日光の影響で起こる皮膚の障害「光老化(ひかりろうか)」とは?
肌の老化は、太陽光線による「光老化(ひかりろうか)」が8割を占めており、年間を通した対策が重要です。
「光老化」とは、太陽光線を長期間、無防備に浴び続けることにより、皮膚にシミ、シワ、たるみなどの老化現象が起こることで、さらには皮膚がんを生じることもあります。
そのため太陽光線の当たらないお尻や内ももでは、年齢に関係なくシミ・しわはほとんどできません。
女性だけではなく、男性にも気を付けてほしい「光老化」についてそのメカニズムから対策まで解説いたします。
太陽光線の種類と波長の長さ
太陽光線は、波長の短い方から紫外線(UV)、可視光線、赤外線の3つに分かれます。
光老化に最も影響する紫外線にはUVC、UVB、UVAがあります。 しかし、UVCは波長が短いため上空のオゾン層に遮られて、地上にはほとんど届きません。
(出典)光老化 「光老化」啓発プロジェクト委員会
光老化を啓発するために作られたこちらのサイトでは、光老化について分かりやすく解説されています。
皮膚の構造は外側から表皮・真皮・皮下組織となっています。太陽光線は波長が長いほど肌の奥深くまで届くという性質があるためUVBは表皮に、UVAは真皮に、更にそれよりも波長の長い近赤外線は皮下組織まで届きます。
2.波長の長さで異なるダメージが!「光老化」で起こる症状とは?
光老化によるシミ、シワ、たるみ
紫外線(UVB、UVA)により、肌は大きなダメージを受けます。それがシミやシワ、たるみの発生の原因となります。
UVBが及ぼす肌への影響
UVBは、表皮にダメージを与えるため、皮膚がヒリヒリしたり、赤くなります。これはUVBを防御するための即時型の反応によるものです。
UVBによる表皮へのダメージが蓄積すると、シミの発生に繋がります。
UVBの影響で色素細胞(メラノサイト)は紫外線を吸収する黒っぽい色素であるメラニン*1を作り、周囲の表皮細胞に渡して肌を守ろうとします。ところが、過剰に日焼けをするとメラニンが大量に作られ、表皮細胞内にたまりシミの原因となります。
また、UVBは皮膚がんの発生*2にも関連しているので十分な対策が必要です。
*1 メラノサイトで作られるメラニンは、紫外線や活性酸素によるダメージを引き受け、肌細胞を守る働きがあります。
*2 肌細胞のDNAは、紫外線によって傷ついても自身で修復する機能を持っていまが、繰り返し傷つけられているうちに、傷の直し間違いが起こり、ガンの発生に関わる遺伝子で突然変異を起こすと、その細胞は増殖してガン化します。
UVAが及ぼす肌への影響
UVAは真皮にダメージを与え、シワの原因となります。
UVAが届く真皮では膠原線維(コラーゲン*3)と弾性線維(エラスチン*4)が張りめぐらされ、肌はピンと張り、弾力が保たれています。しかし、UVAを浴び続けると、これらが変成(形が変わること)して本来の構造が損なわれ、シワが発生します。
*3 真皮、靱帯、骨、軟骨などを構成する繊維状のたんぱく質で、肌のハリや弾力を保つ働きがあります。
*4 コラーゲンの線維をつなぎ止めるようにして支える役割を持つ繊維状のたんぱく質です。
さらに要注意!近赤外線(NIR)が及ぼす肌への影響
また、シワの原因として近赤外線も挙げられます。近年、近赤外線も肌へ影響を及ぼすことが明らかになりました。
近赤外線が皮膚の土台となっている皮下組織にダメージを与えることで、シワ、たるみの原因となることがわかっています。
3.紫外線カットがカギ!「光老化」を防ぐ対策とは?
年間を通した光老化対策の習慣を!
紫外線の照射量は、4~5月にかけて上昇し、真夏の7~8月がピークになります。日中では正午前(昼の0時)から照射量は上昇し、午後2時頃にピークに達します。しかし、紫外線の強い時期やその時間帯だけの対策だけでは不十分です。
秋・冬や曇りの日でも太陽光線は常に降り注いでいます。更に波長の長いUVAや近赤外線は、通常の窓ガラスを通過するといわれており、外出時のみではなく、室内でも十分な対策が重要となります。
光老化対策に有効な方法「サンスクリーン剤(日焼け止め)」
光老化対策にはまず、サンスクリーン剤(日焼け止め)の使用が重要で、実使用でSPF15以上、PA+以上の効果のあるサンスクリーン剤を日常的に使用することで肌の「光(ひかり)老化を予防できることが確認されています。
更に皮膚が薄い目の周りは太陽光の影響を受けやすいので紫外線カットができるレンズの眼鏡やサングラスの使用や、外出時には帽子や日傘の使用も有効です。
サンスクリーン剤の種類と使い方・選び方
サンスクリーン剤には、2種類あります。
紫外線を反射・散乱させる紫外線散乱剤と紫外線を吸収して皮膚への影響を軽減する紫外線吸収剤です。この2剤をうまく組み合わせることにより日焼け止めは作られています。
サンスクリーン剤に記載されているSPAやPAは、日焼け止めの効果の強さを表す指標です。
<SPF>
Sun Protection Factorの略で、UVBを遮断する効果を表しています。SPFは2~50まであり、数値が高くなるほど遮断効果が高いことを意味します。また、SPF50以上の効果があるものは、SPF50+と表示します。
<PA>
Protection Grade of UVAの略で、UVAを遮断する効果の目安を表しています。「+」から「++++」の4段階があり、+の数が多いほど遮断効果が高いことが意味します。
しかし、これらの指標の効果は、適した量を塗ることで効果を発揮します。適量は皮膚1平方センチメートル当たり2mgです。これはかなり多く感じられる量で、多くの人はその量の半分程度しか塗っていない傾向にあります。そのため、表示通りの効果を得るためには十分な量を塗布し、こまめに塗り直すことが大切です。
サンスクリーン剤は、使用するシーンに合わせてSPF、PAのレベルを選ぶようにしましょう。日常の活動であれば、SPF15~30、PA+~++を目安に、スポーツ、レジャーや炎天下での長時間の活動ではSPF30、PA+++以上を目安にします。
使用状況に応じたSPF、PAの選択数値は以下の図を目安とします。
(出典)光老化 「光老化」啓発プロジェクト委員会
4.3年後・5年後に差が付く!毎日のケアで光老化を防ぎ、いつまでも健康なお肌を。
悪化した場合には皮膚がんの可能性も!
すでにシミなどができている場合には、皮膚科で治療することもできます。シミの場合は、健康保険(公的医療保険)の適用外ですが、レーザー治療が有効です。イボの場合は、保険診療が認められる場合もあります。
また、見た目の問題だけでなく、シミの場合には「他のものより色が濃い」「形がいびつで痒みや痛みがある」、イボの場合には「急に大きくなる」「出血する」ような症状があった場合には皮膚がんが疑われることもありますので、その際には皮膚科を受診してください。
肌の老化の原因は、光老化が8割です。年間を通して日常的にサンスクリーン剤を使用し、めがねやサングラス、日傘なども併せて有効に活用した対策を行えば、3年後・5年後の肌が変わってきます。今からでもしっかりと光老化対策を行い、お肌の健康を守りましょう。
東京女子医科大学 名誉教授
光老化啓発プロジェクト委員会・委員長
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