1. あのウォルト・ディズニーもうつ病を克服していた。
ミッキーマウスの生みの親で「白雪姫」や「ダンボ」などの名作アニメの作者として、いまも世界中から愛されるウォルト・ディズニーは、うつ病で苦しんだことがありました。
うつ病の原因は、過労と奥様の流産だったようです。
わざわざ新居を用意し、お子様の誕生を待ちわびていたディズニーは、強い衝撃を受けたようです。
そんな中、ディズニーが心身のバランスを取り戻すために始めたのが、乗馬でした。それは、ディズニーの良き気晴らしとなり、彼の健康を支える上で役に立ったようです。
また、うつがひどくなったときに、彼がしばしば使った克服方法は、旅行だったそうです。
うつになる度に、彼は、妻とともに、ハワイやフロリダやカリブ海に出かけて、少し長めの休暇を過ごしたそうです。燦々と降り注ぐ太陽や休養が、うつ病から克服に役立ったようです。
2. 新渡戸稲造もマックス・ウェバーもうつ病を克服していた。
新渡戸稲造は、三十五歳のときに、うつになり、黒板に文字を書くことすら満足にできなくなったそうです。
そのとき、札幌農学校の教授をはじめ要職をいくるも抱えていたが、そのすべてを辞して、二年余りの療養生活を送ったそうです。
社会学者のマックス・ウェバーは、三十三歳の時に、うつになり、それから回復に至るまで、七年間にわたる闘病生活を経験したそうです。
満足な薬物療法もなかった時代ではありましたが、二人は完全に克服し、その後、華々しい活躍をすることになります。
薬物療法が発達した今日においても、ある程度症状の進んだうつ病になると、回復には、年単位の時間がかかり、周囲の事情を優先して、無理をすればするほど、結局克服に長期化することが多いようです。
うつ病から克服する上で、最も重要なことは、漁らずに十分な休養期間をとることであると言えます。
3. うつ病の克服方法
1. 薬物療法
抗うつ薬には、それぞれの効果を発揮するための作用機序がある。多くの抗うつ薬は、一つだけでなく、複数の作用点を併せ持つ。代表的な作業機序とよく利用される薬品名を以下にまとめています。
自分で状態を診断し、服薬を中止したり、薬の量を調整することは大変危険で、うつ病からの克服が遅れる原因にもなります。専門の医師の指示に従いましょう。
1. SSRI
セロトニンの再吸収を行うセロトニン・トランスポーターを選択的に阻害することで、樹状突起でのセロトニンの濃度を上げ、この領域に多く存在するセロトニン自己受容体のダウン・レギュレーションを起こす。その結果、ブレーキが外され、セロトニンの放出が促進される。
副作用としては、吐き気、食欲低下などの消化器症状が服用初期に現れやすい。それ以外には、眠気や性欲への影響も見られやすい。まれに攻撃性や興奮が出現することもある。重篤な副作用としては、高熱や発汗、焦燥感などを示すセロトニン症候群がある。
急に中止すると、めまい、頭痛、気分不良などの離脱症状を生じるため、段階的な減量が必要である。
2. SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
セロトニン・トランスポーター(SERT)とともに、ノルアドレナリン・トランスポーター(NET)を阻害し、再吸収を抑えることでセロトニンとノルアドレナリンの働きを強める。
副作用としては、SSRIで見られるもの以外に、不交感神経を抑制することによる便秘や口の渇き、排尿困難、かすみ目、ノルアドレナリン系が活発になることによる頻脈などが多い。
日本では、ミルナシプランとデュラキセチンが認可されている。
3. 三環系抗うつ薬
セロトニン・トランスポーター、ノルアドレナリン・トランスポーターの阻害作用が強力であるが、副作用として、副交感神経遮断作用が強いため、便秘や口の渇き、かすみ目、眠気が強く出やすい。
アミトリプチン、イミプラミン、クロミプラミンなどがある。
4. 四環系抗うつ薬
三環系抗うつ薬を改良して作られたもので、抗コリン作用などの副作用が軽度であるが、作用も弱い傾向がある。
ミアンセリン、マプロチリンなどがある。
5. NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
四環系抗うつ薬の一つで、ノルアドレナリン神経細胞の自己受容体でもあり、この自己受容体をブロックして働かなくしてしまうと、ブレーキが外れた状態になり、ノルアドレナリンの放出が促進される。
副作用としては、眠気、口の渇き、倦怠感、便秘などがある。吐き気や性機能障害は少ない。
日本で利用されているものとしては、ミルタザピンがある。
6. スルピリド、非定型抗精神病薬
もともと胃潰瘍の薬として開発されたが、その後、抗うつ作用があることがわかった。
弱いドーパミンD2遮断作用を持ち、考えすぎたり、神経過敏になったりする傾向を緩和し、意欲を高める。
7. 漢方薬
うつには、しばしば漢方薬が有効と言われている。西洋薬が合わない場合は、試してみる価値はある。
2. 薬物療法以外
軽症の場合は、薬物療法以外の治療法が有効であることもあります。
一方、長期にわたり、症状が持続している慢性うつ病においては、一つの治療法だけでなく、薬物療法と対人関係療法や認知行動療法などを組み合わせることが推奨されています。
1. 認知行動療法
思考の記録をとり、「否定的自動思考」や不適切な推論である「論理的誤謬」を同定し、悪いパターンを自覚していきます。
認知面だけを取り扱うのではなく、行動を変えるという課題を実際に行い、実行機能や認知機能の問題を見つけ出し、改善をはかったりします。
2. 対人関係療法
うつ病を対人関係の中で生じる障害として捉え、対人関係での囚われや葛藤に焦点を絞って、それが身につく対人関係パターンから生じていることをあぶり出し、修正や再構築をはかっていきます。
3. 電気けいれん療法
前頭部に直流電流を通電し、人工的にけいれん発作を誘発する治療法です。最初は、統合失調症の治療に使われていたが、その後、うつ病にもっと効果があることをわかり、薬物療法が効かない症例などで用いられます。
4. みんなのうつ病克服体験談
休みの日に、近くの精神科のある病院へ行き、カウンセリングを受けました。病院の先生は、私の仕事の事、同僚の事等親身に聞いてくれました。最初は、「自分は何をやっても駄目なので…」と言った感じだったのですが、先生に、「貴方は良く頑張っている。駄目なのは悪口を言う人たちの方だよ」と言ってくれた言葉が今でも覚えています。
カウンセリング中に、涙を流してしまう事もありましたが、先生はそれも受け入れてくれました。今も病院へ通っていますが、自殺をしようとは思わなくなりました。先生には感謝しています。
精神科に初めて行ったのはしばらく後です。26歳の時に、何かでこだしろクリニックのことを聞きました。当初は精神科に行くのは怖かったですが、いざ精神科の病院に入ってみると、患者さんのほとんどがどこが悪いのかわからないくらい、普通の人達に見えました。それから先生に心の病気のことや社会不安障害のことなどを聞きました。先生の話を聞いて、自分は頭がおかしくなった訳じゃないんだ、病気なら治る可能性があるんだとすごく安心したのを今でも覚えています。
それから10年経って今の僕があります。1年くらい前に禁煙が切っ掛けで軽い鬱病になったりもしましたが、その症状も落ち着き、元気に生きています。もう人混みも全然苦ではありません。今の僕があるのは、大崎市民病院の方々とこだしろクリニックの方々、病気と知っていても雇ってくれた会社の方々、そして母のおかげだと思います。普段は言えないので、ついでにありがとうと感謝の言葉を記させて頂きます。
薬は「治すためのもの」ではなく「症状を緩和させるもの」と割り切って服用していく意識転換は良いかもしれないと思っています。薬で治ると信じていると、症状が改善しなかったり、効果を実感できなかったりすると、それがストレスになってしまう可能性が高いと思いますので。
私が日常生活に支障が無いレベルまで行くためにした方法は以下の通りです。
○成るべく毎日同じ時間に起きるようにする。
その後、二度寝しても良いですから、とにかく一度は毎日同じ時間に起きるようにして、体内時計を調整していく
○散歩をするなど、外に出て身体を動かすことを増やす
どうしても精神的に辛いときは無理をする必要はありません。ちょっとでも動けそうなら、家の中で動くのではなく、外に出てみること、太陽の光を浴びる機会を増やす
○少しでも興味を持った、やってみたいと思ったことは実行する
趣味となりそうなもの、したら楽しいと思えそうなことを沢山して、成るべく多く「生きていて楽しい」と思える状態を作れるようにする
○他人とコミュニケーションを取る
最初は近所の人に挨拶をする程度で良いと思います。又、もしも周りに話ができそうな相手が見付からない場合は、市役所の福祉課の方に行き、「生活支援センター」の場所や連絡先を聞いて、相談したら良いと思います。
これらのことを、少しずつで良いので焦らずゆっくりやっていけば、徐々に症状は改善に向かって行くと思います。
5. うつ病を克服する上での心構え
1. 焦らず、十分な休養をとることでうつ病を克服
うつ病を克服するためには、まず重要なことは、焦らずに十分に休養することです。
思い切って早めにたっぷりと休養することこそが、むしろ時間の節約になります。
「早く良くならねば」と焦るよりも、「長引きそうだ」と腹をくくり、のんびりした方が早く回復するということが現実に多いようです。
2. 運動でうつ病を克服
以前から、運動には、うつを改善する効果があることが知られ、近年も、うつ病の運動療法効果について、さらなる研究が進められているようです。
週に三日、三十分歩くだけで、抗うつ薬を投与されるに匹敵する改善効果があるだけでなく、抗うつ薬を投与されたケースよりも、再発する率が三分の一と少なかったという報告もあります。
運動は、ドーパミン系やセロトニン系の活動を高めるだけでなく、神経新生にかかわるBDNFの産生を活発にする効果が認められています。
3. 非日常や新奇な刺激を得てうつ病を克服
本当はやりたくないことをやっている場合に見られるうつ状態も、心をときめかす本来の刺激が失われ、活力や意欲の低下を引き起こしてることもあります。
その人を縛っている先入観や義務感を打ち破り、本当に望むことを思い切って行うことがうつからの脱却につながるようです。
4. 人と繋がり、孤立しないことでうつ病を克服
孤独にならないということも重要です。
現代社会においては、人とのつながりが希薄化し、人と苦労や時間を共有する関係は失われていく傾向にあるように思います。
それは、共感性に支えられた心の拠り所を失うことでもあり、ストレスに対する抵抗力や躓きから立ち直る力をなくしていくことにもつながります。
しかし、うつになれば、人に会うことが億劫になり、引きこもってしまいやすいということが問題を難しくします。
一人でも良いので、近況を共有できる人を持つことを強くお勧めします。
5. 太陽の光をたっぷり浴びることでうつ病を克服
うつの中には、日照時間や気温の変化の影響を強く受ける季節性感情障害が、かなりの割合を占めています。
とくに日照時間の変化は、多くの人の気分に影響します。
体内時計をリセットする上で重要なのは、最初に太陽の光を浴びる時刻と、太陽の光に触れる時間です。いつ朝が来て、昼がどれほどの長さであるかという二つの条件により、体内時計は調節されます。
できるだけ屋外で太陽の光を浴びたり、外光の射す明るい部屋で、一日を過ごすことをお勧めします。
6. 完璧主義にさようなら!でうつ病を克服
うつになりやすい人も、がんばりすぎて躁になりやすい人も、いずれにも多く見られる性格傾向は、いい加減にできないという完璧主義にあります。
完璧主義の人は、自分に完璧を求めるだけでなく、周囲にも完璧を求めてしまうため、気楽で気心の知れた人間関係を遠ざけてしまうことにもなります。
完璧にこだわる考え方を卒業し、五十点で満足できるように、心の持ち方を変えることが、ストレスを減らし、対人関係をスムーズにし、うつや躁を防ぐことにもつながります。
7. 縛られすぎない、自分にあったライフスタイルでうつ病を克服
うつになりやすい人は、何かに縛られたり、捉われたりしやすい人でもあります。
多くの人に見られるのは、義務感や責任感に強く縛られるという場合と、高すぎる理想やプライドにとらわれすぎているというケースです。
問題を複雑にしているのは、縛られていること自体が、精神面での安定に役立っていたちおう側面もあるということです。
変化して、自分本来のスタイルを獲得できるチャンスだと考え方を切り替えて、思い切ってやり方を変えることが、うつ病の克服への活路であるように考えています。
<出典> 岡田尊司(精神科医)「うつと気分障害」