人生を変える幸せの腰痛学校 ―心をワクワクさせるとカラダの痛みは消える
伊藤かよこ(いとうかよこ)|鍼灸師
1967年生まれ。大阪府出身。東京都在住。鍼灸師。
会社員時代に「椎間板ヘルニアによる腰下肢痛」を発症。その後2年にわたり、3度の入院と手術、数多くの代替療法を受けたが改善せず、最終的に自分の意識を変えることで自らの腰下肢痛を克服した経験を持つ。伊藤かよこオフィシャルサイト より一部抜粋
『人生を変える幸せの腰痛学校』の内容・見どころを教えてください
6名の腰痛患者に自分を重ね合わせて、「腰痛は安全だ」と理解してほしい
「物事はねぇ、とってもシンプルなんですよ。腰痛のことばかり考えていると治らない。いい気分で過ごすと改善する。なんとなくわかりませんか?」
(本文p59,主人公たちの通う「慢性腰痛改善プログラム」を主催する佐野医師の言葉より)
まず大きな特徴は、この本は「小説」である、ということですね。
“読書療法※”といって、本を読むことで病気や症状を緩和する療法があります。腰痛を読書療法で改善するための本はすでにありますが、「小説」というスタイルの本は、おそらく世界で初めてではないかと思います。
※読書療法とは……物の考え方やとらえ方に働きかけ気持ちを楽にしたり、行動をコントロールすることで治療を行う”認知行動療法”を、読書を通じて行うもの。
「読書療法」が有効であることは、日本ではまだほとんど知られていません。
しかし、腰痛と心理面との関係についていち早く着目された『腰痛は<怒り>である』の著者・長谷川淳史先生がこの本の「解説」で書かれている通り、アメリカの内科学会と疼痛学会が発表した最新の「腰痛診療ガイドライン」で「読書療法」は効果があると強く推奨されています。
私は24歳の時に腰下肢痛になり、それから約2年間、いろんな病院や治療院をまわって、最後は手術までしました。
それでも痛みが治らず、一生このままじゃないかと布団をかぶって泣いていたのですが、ある時ふと、腰痛が治らなくても、腰痛のままで幸せになってやると開き直る気持ちになったのです。
そして私は、痛みがあるままで仕事をはじめました。そのうちに痛みは消えてなくなりましたが、再発を怖れる気持ちから鍼灸の専門学校に通い、同時に心理学などを勉強しました。
その後、私は鍼灸カウンセリング治療院を開業し、心理面と身体面の両面からたくさんの患者さんに向き合ってきました。この本の中で書いたことは、私が治療者として患者さんと交わした多くの対話がベースになっています。
心理面というとストレスのことだと思われがちです。ストレスももちろん腰痛の原因のひとつですが、それと同時に腰に対する「思い」や「考え」が、腰痛の悪化や継続に関係していることがわかってきました。
「腰が悪い」と思っている人は、「私は腰が悪いから気をつけなくちゃ」といつも腰を警戒し、注意を向けてしまいがち。そして、注意を向ければ向けるほど、脳の痛みに関するネットワークはますます興奮し、痛みを強めてしまう可能性があるのです。
「腰痛は安全なんだ」ということをしっかりと理解すれば、注意を向けることが減ります。
私たちは、たまに風邪をひくことがありますよね。それと一緒で、ほとんどの腰痛は単なる疲労のサインなのです。四六時中「風邪をひいたらどうしよう」と考えている人はいません。なぜなら、風邪は自然に治ることを知っているから。腰痛も一緒です。腰痛は怖くないし、自然に治る。
でも治らない人が多いのは、腰に注意を向けることで、自らの腰痛を自分で長引かせているからです。
腰痛を治したければ腰に注意を向けないことがポイントなのですが、今まで病院や治療院で腰の治療を受けてきた人が、腰を治そうとしないでいいと言われてもそう簡単に理解できないのは当然のことです。
そこで私は、腰痛に対して安心できる知識を「物語」にして、「疑似体験」してもらうのが有効ではないかと考えました。
年齢、性別、家庭環境、職業、痛みの内容や診断名が異なる6人の登場人物の誰かしらに自分を重ね合わせて、それぞれの腰痛が治っていく過程を疑似体験していくうちに、その人自身の腰痛がよくなるといいなと思っています。
もうひとつ、私がこの腰痛改善のための本を小説にした理由は、腰痛で悩む多くの方が楽しみながら読んでもらえる本にしたかったからです。ただでさえ、つらく苦しい思いをしている腰痛の方が、少しでもいい気分になれるといいなとの思いでこの本を書きました。
この本はどんな人に読んで欲しいですか?
腰痛に悩む人はもちろん、医療関係者にも
まずは腰痛に悩んでいる人。そして腰痛以外の何か疾患を抱える人。
それから、医者や治療者などの医療関係者にも読んで欲しいですね。
慢性の腰痛には、心理社会的因子が強く影響していることがわかっています。ところが、日本の医者や治療者は、腰やからだしかみていない。その結果、日本の腰痛患者数は右肩上がりに増え続け、今や2800万人を超えるとも言われています。ぜひ医療関係者にも読んでいただき、腰痛に対するアプローチを見直して欲しいと強く願っています。
私はこれまで医師や治療者から言われたたくさんのアドバイスを思い出した。「骨盤がゆがんでいる」 「足の長さが違う」 「バランスが悪い」 そして、「いつも姿勢に気をつけるように」 「運動をかかさないように」 「重いものを持たないように」 「腰に負担をかけないように」……。
(本文p145,主人公の気持ちより)
Calooマガジン読者へのメッセージをお願いします。
からだに感謝し、愛することは、自分自身を大切にすることと同じ
自分のからだともっと仲良くしてほしいです。
腰が痛くなると、私たちは「弱い腰」「ダメな腰」「弱いからだ」と思いがちです。そして、そんな弱いからだを持つ自分自身のことも弱くてダメだと信じ込んでしまいます。
本にも書きましたが、自分のからだに備わった力を信頼し、からだに「いつもありがとう」と伝えてください。
からだに感謝し、愛することは、自分自身を大切にすることと同じです。
「あ~、腰が痛い。イヤだな」ではなく、「どうしたの?」とからだに話しかけてください。そしてからだの声を聴いて、からだと良い関係を築いてほしいです。
—人生っておもしろい。からだってすごい。私は心の底からそう思えた。
(本文p197,主人公の気持ちより)
【紹介書籍】
「人生を変える幸せの腰痛学校 ―心をワクワクさせるとカラダの痛みは消える」
伊藤 かよこ (著)
プレジデント社 (2016/11/12)