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腫れ、かゆみ、発熱。インフルエンザ予防接種を受けた後の副作用(副反応)と対処法

発症予防や重症化を防ぐのに有効なインフルエンザの予防接種。

予防接種を受けた後、注射をした箇所が赤く腫れたり、熱が出るなどの症状が現れたことはありませんか?

これらの症状は、ワクチンを接種した時に起こる「副反応(ふくはんのう)」と呼ばれるもの。

インフルエンザの場合、重い障害が残ったり、命にかかわる事は少ないと言われていますが、人によっては、皮膚だけでなく、全身症状が出ることもあり、病院を受診するべきか迷ってしまうこともあります。

そこで今回は、インフルエンザ予防接種の副反応の種類と対処法、注意点などをご紹介します。

1.インフルエンザの予防接種による「副反応(ふくはんのう)」って?

インフルエンザの予防接種が必要なワケ

季節性のインフルエンザが毎年流行するのは、ウイルスの型が少しずつ「変異」しているから。

インフルエンザウイルスの型は数年に一度大きな変異を起こしますが、それだけではなく、毎年少しずつ小さな変異を繰り返しています。

一度インフルエンザにかかり、ある型の免疫がついたとしても、その翌年に変異した型が流行したら感染を防ぐことができません。

さらに、せっかくワクチンを接種してできた抗体も、2~3ヶ月でだんだん弱くなってしまい、1年後には効果が弱まってしまいます。

もちろんワクチンを打ったからと言って100%発症を抑えることはできませんが、症状を軽くし、重症化を抑えるためにも、毎年、その年に流行するウイルスの型を予想して製造されたワクチンの接種を行う必要があるのです。

副作用と副反応の違いは?

例年、10月頃から接種が始まり、毎年の恒例行事の一つとして受ける人も多いですが、接種を受けた人の中には腫れや赤みなどの「副反応(ふくはんのう)」が現れる人がいます。

なかには注射を刺す時のチクッとする痛みよりも、「注射をした後に腫れたり痒くなったりするのが嫌!」という人もいるのではないでしょうか?

副反応とは、「ワクチンで免疫を付けようとする際、同時に起こってしまう好ましくない変化」のこと。副作用と意味は同じですが、「ワクチンの効果を得るために副次的(主ではなく二次的)に起こる生体の反応」という意味で「副反応」という言葉が使われています。

「副反応」とは、ワクチン接種により免疫をつけることに伴って発生する、免疫の付与以外の反応です。通常の医薬品で言う「副作用」と同様の意味です。

(引用)厚生労働省 新型インフルエンザ予防接種後副反応報告について

副反応と聞くと、どうしても「怖い!」というイメージがありますが、そのほとんどは日常生活に支障のない程度の軽いものがほとんど。

まれにショックや呼吸困難などの重い症状が出ることもありますが、小さな子供や高齢者などが、インフルエンザを発症して重症化や死亡するリスクに比べると極めて少ないため、毎年のワクチン接種が推奨されています。

(参考)一般社団法人 日本ワクチン産業協会
※こちらのページではワクチン接種後の副反応や注意点について分かりやすく説明しています。

(参考)インフルエンザワクチンについて
※インフルエンザワクチンの効果や接種時期など詳しい情報を見ることができます。

2.インフルエンザワクチンによる副反応の種類

「ワクチンを接種する」ということは、微量のウイルスを強制的に体内に注入すること。

体内に入ったワクチンは、免疫システムの働きで「異物」と認識され、私たちの体はそれを排除するための「抗体」を作り出します。

これは言ってみれば、強制的に体にアレルギー反応を起こさせているということ。副反応が起こるのは、身体の正常な防御反応であり、自然なことなので、ある程度は仕方がないことなのです。

とは言え、不快な症状が起こるのは気になりますよね。実際にインフルエンザワクチンの接種で起こる主な副反応と対処法を見て行きましょう。

皮膚症状(注射した部位に表れる症状):赤み・腫れ・痛み

予防接種時に表れる副反応で一番多いのが注射した部位周辺(二の腕の肘寄りの辺り)に起こる皮膚症状。予防接種を受けた人全体の10%~20%に見られますが、生活に支障が出ない程度のものがほとんどです。

  1. 赤み(発赤:はっせき)……注射した部位やその周辺が円状にじんわりと赤みを帯びる
  2. 腫れ(腫脹:しゅちょう)……注射した部位やその周辺が腫れる。腫れは固く、しこりになることも。
  3. 痛み(疼痛:とうつう)……注射をした部位、又は腫れた部分がズキズキと痛い。または触ると痛む。

ワクチン接種後、上記のような症状が現れ、熱感やかゆみを伴うこともあります。これらの症状は接種したインフルエンザワクチンに対して体が正常に反応し、体内に抗体が産生された証拠。通常、2~3日で症状が落ち着くので心配することはありません。

皮膚症状が出た時の対処法は?範囲が広範囲の場合は受診を!

不快な症状を和らげようとして、ついつい掻いたり揉んだりしてしまいがちですが、患部を刺激すると悪化することもあります。アイスノンや冷やしタオルなどで優しく患部を冷やすと症状が和らぎます。

但し、腫れや赤みが腕全体や肩を越えて全身に広がるような場合は正常とは言えません。軽度のアナフィラキシー症状が起こっている可能性があり(アナフィラキシーについては3章で後述します)、病院で抗アレルギー剤投与などの処置が必要になる場合もあるので、ワクチンを接種した医療機関を受診するようにしましょう。

(参考)病院口コミ検索Caloo 病気体験レポート「予防接種の翌日に5センチ程度の腫れが出た!」

※2歳のお子さんの発赤、腫脹の例。予防接種の翌日に現れ、3日ほどで消失しました。

全身症状(身体全体に現れる症状):発熱・頭痛・悪寒・倦怠感

皮膚症状以外にも、予防接種を受けた方の5~10%に見られるのが以下のような全身に現れる症状です。

  1. 発熱……37℃台の微熱であることが多い。
  2. 頭痛……発熱に伴い、頭痛が起きる。
  3. 悪寒……発熱に伴い、寒気を感じることがある。
  4. 倦怠感……発熱に伴い、だるさを感じる。

接種後に発熱すると、「もしかしてワクチンでインフルエンザを発症したのでは?」と心配になってしまうことも。

しかし、予防接種で使われるワクチンは「不活化ワクチン」と言ってウイルスの病原性をなくして無毒化したもの。ワクチン接種がきっかけでインフルエンザを発症するということはありません。

熱が出た時の対処法は?高熱や症状が長引く場合は受診を!

子供の場合などは、ワクチンを接種した6~12時間後に熱が出て、1~2日続く場合もあります。発熱時には頭痛や悪寒、倦怠感(だるさ)を伴うことも。水分をしっかりとり、安静を保って様子を見るようにしましょう。

症状が微熱程度で2~3日以内に治まるようであれば、正常な副反応であり心配はありません。38℃を超える高熱が出た場合や、症状が長引く場合は、アセトアミノフェンなどの解熱剤を投与する事もあるのでワクチンを接種した医療機関に連絡し、受診するようにしましょう。

(参考)一般社団法人 日本ワクチン産業協会
※こちらのページではワクチン接種後の副反応や注意点について分かりやすく説明しています。

(参考)国立感染症研究所 インフルエンザとは

ワクチンに含まれる添加物「チメロサール」による「過敏症」の場合も!

通常のインフルエンザワクチンには「チメロサール」という物質が添加されています。

水銀を含む有機化合物(有機水銀)であるチメロサールには殺菌作用があり、不活化ワクチンを安定させるための防腐剤として使用されています。

人によってはこのチメロサールの成分に過敏反応し、発熱、発疹、じんましん、発赤(赤み)掻痒感(かゆみ)などの「過敏症」が起きる場合もあります。

WHO(世界保健機関)では、チメロサールをなるべく使用しないという方向性を示しており、昨今、ドイツなどのヨーロッパではチメロサールフリーワクチン(チメロサールが含まれていない)が使用されるようになっています。

日本でも、いくつかの製薬会社でチメロサールフリーワクチンは製造されていますが、その数量はまだ限定的。安定した供給が難しいため、依然としてチメロサール添加のワクチンが多く使用されているのが現状です。

これまでチメロサールを気にしたことはなかったという方も、毎年、接種するたびに強い症状が出て心配な場合は、チメロサールフリーのワクチンを扱っている医療機関に問い合わせてみるのも良いでしょう。

チメロサールについては以下の記事で詳しく説明しています。
有機水銀を含まないチメロサールフリーのインフルエンザワクチン 2017年生産動向と妊婦・胎児への影響

(参考)もろおかクリニック
※こちらのクリニックではチメロサールフリーのワクチン接種を行っています。インフルエンザの予防接種と副反応についてのQ&Aで分かりやすい説明を見ることができます。

(参考)横浜市衛生研究所 チメロサールとワクチンについて
(参考)横浜市衛生研究所 インフルエンザワクチンについて

3.知っておきたい!接種後すぐに受診が必要な重篤な症状

前章でご説明した通り、赤みや発熱など、ある程度の副反応は体の生理現象であり、ほとんどが数日で治まるので心配ありません。

しかし、まれに強いアレルギー反応などの深刻な症状が現れることがあります。以下のような症状が現れた時はすぐに医療機関を受診する必要があります。

急性の過敏反応「アナフィラキシーショック」

アナフィラキシーショックは、ワクチンを接種後におこる急性の過敏反応のこと。

≪アナフィラキシーとは≫

医薬品(治療用アレルゲンなどもふくみます)などに対する急性の過敏反応により、医薬品投与後多くの場合は 30 分以内で、じんま疹などの皮膚症状や、腹痛や嘔吐などの消化器症状、そして息苦しさなどの呼吸器症状を呈します。

また、突然、蒼白、意識の混濁などのショック症状があらわれることがあります。

(引用)厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー

ワクチンに含まれる何らかの成分にアレルギーがある場合、以下のような激しい症状が急に起こることがあります。

  1. 38℃を超える突然の高熱
  2. けいれん
  3. 全身に及ぶ湿疹やじんましんなどの皮膚症状
  4. 呼吸困難などの呼吸器症状
  5. 手足のしびれなどの神経症状
  6. 腹痛、胃痛、おう吐などの消化器症状

症状の多くは接種後5以内に起こることが多いので、30分は接種した医療機関で待機し、24時間は様子をしっかりと確認する必要があります。

特に、小さなお子さんの場合は、症状がはっきり出なかったり、症状を自分で説明ができないこともあります。機嫌が悪い、元気がない、寝てしまうなど、「いつもと違う」と思われることが初期症状である場合もあるので、周囲の大人がしっかりと観察しておくことが大切です。

呼吸困難は、窒息すると命に関わることもあるため、緊急の処置が必要になります。医療機関以外の場所で息苦しさを感じた時は、一刻も早く救急車を呼ぶようにしましょう。

アナフィラキシーの原因は?卵アレルギーの人は接種に注意

アナフィラキシーを起こす原因の中でも特に多いのが卵アレルギー。なぜならインフルエンザウイルスのワクチンはにわとりの卵で培養されているためです。

ほぼ精製の段階で除去されているとはいえ、重度の卵アレルギーがある場合は事前に接種を控える場合もあります。しかし、必ずしも絶対ダメ!という訳ではなく、受ける人の体調(アレルギーの状態)によっては接種可能な場合もあります。

また、卵アレルギー以外にも、過去に医薬品でアレルギーを起こした事があるという方もアナフィラキシーが起こる可能性が高くなります。必ず事前に医師に伝え、よく相談してから接種するようにしましょう。

(参考)厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー


原因不明の麻痺(まひ)が出る「ギラン・バレー症候群」

あまり聞きなれない「ギラン・バレー症候群」は何らかのウイルスや細菌の感染症の発症時に多い症候群なのですが、まれにインフルエンザワクチンなどの医薬品により発症することがあります。

なぜ起こるのか詳しい原因は不明ですが、発症の多くは接種後2週間目に見られ、ほとんどが6週間以内に起こっています。以下のような異常感覚や運動麻痺が現れた場合、ギラン・バレー症候群の可能性があります。

  1. 手や足に力が入らない、しびれる(左右差あることも)
  2. 歩行時につまずく、階段が登れない
  3. 物が掴みづらい
  4. 顔の筋肉が麻痺する
  5. 物が飲み込めない
  6. 呼吸困難

発症後、1日~2週間で急速に筋力が低下するのがギラン・バレー症候群の特徴。軽いものであれば自然に治ることもありますが、入院治療が必要になる場合もあります。

放置して進行すると全身に麻痺が広がってしまいます。手足のしびれなどを感じ、「おかしいな」と思った時は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

(参考)ギラン・バレー症候群 重篤副作用疾患別対応マニュアル 厚生労働省
(※)ギラン・バレー症候群の症状や発症時の対処法などが分かりやすくまとめられています。

予防接種が原因かは不明ですが、参考までにCalooに投稿されたギラン・バレー症候群の体験談をご紹介します。

【体験談】手足のしびれ、だけど原因不明。ギランバレー症候群の疑い

海外から帰国して、はじめは、手の指の先に、時折、電気が走るようなピリピリ感がありました。気持ちがわるいな、と感じる程度で、気に留めていなかったのですが、そのうち頻度が多くなり、無視できないほどになりました。また脚のモモから膝にかけて、ピリッとやはり、電気が走るようになり、そのうちそれがだんだん足の先へ移っていきました。

痛みというよりも、突然の、ピリッとした走る刺激がする、という感じだったで、近所の病院へ行きました。
たまたま内科の先生の担当日だったので、その同じ病院で、今度は、神経科の先生がいらっしゃる日に、ということで、再度日を改めました。神経科の先生は、とても丁寧にみてくださったのですが、やはり原因がわからず、地域の大きな病院へ紹介状を書いていただき、そちらへ移りました。
予約をしていったところ、ギランバレー症候群の疑いがある、ということで検査をするかどうか、という話になりました。

(引用)手足の先がピリピリとするが原因は判明せず。ギランバレー症候群の疑い

ワクチン接種による重篤な健康被害には救済措置も。

予防接種を受けた後、万一、上記のような重い副反応による健康被害が起こった場合は、治療にかかった費用などの「救済措置」を受けることができます。

インフルエンザは「予防接種法」の中で「二類疾病」に指定されており、以下に該当する人は市町村により「定期接種」を行うことが定められています。(義務ではなく本人の希望制。一部自己負担あり)

  • 65歳以上の者
  • 60歳以上65歳未満の者であって,心臓,じん臓又は呼 吸器の機能に自己の身辺の日常生活行動が極度に制限される程度の障害を有する者及びヒト免疫不全ウイル スにより免疫の機能に日常の生活がほとんど不可能な程度の障害を有する者

(引用)厚生労働省 予防接種ガイドライン

万一、上記に該当する方に重い健康被害が起こった時には、予防接種法に基づき「予防接種健康被害救済制度」が適用され、治療費の給付などの救済措置がとられます。(但し、入院が必要と認められる程度の治療の場合)

詳しくは以下のページをご覧ください。
厚生労働省 予防接種健康被害救済制度

上記以外の方のインフルエンザの予防接種は「任意接種」となるため、健康被害が起こった場合には、「医薬品副作用被害救済制度」によって救済措置がとられます。(但し、入院が必要と認められる程度の治療の場合)

詳しくは以下のページをご覧ください。
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医薬品副作用被害救済制度

4.インフルエンザ予防接種時の注意と過ごし方。

ここまで軽いものから重いものまで、インフルエンザワクチンで起こる可能性のある副反応とその対処法をご説明しました。

万一の体調変化に備え、接種後は以下のようなことに気を付けて過ごしましょう。

予防接種後に気を付けたいこと4つ

①接種後、30分程度は特に体調の変化に気を付け、何かあった時に医師とすぐに連絡が取れるようにしておきましょう。

②接種当日でもお風呂に入って構いませんが、注射部位はこすらないように気を付けましょう。

③接種当日は激しい運動や大量の飲酒などは控えましょう。

④副反応は数日たってから起こることもあります。万一、症状が現れた場合に原因の見極めが難しくなるため、抜歯や手術などは、かかりつけの医師と相談して余裕を持ったスケジュールで行うようにしましょう。(但し緊急の場合を除く)

ワクチンは効果だけでなく、副反応も理解して受けることが大切。

不要な副反応を減らすためには、持病やアレルギーのある方だけでなく、当日の体調が悪い場合も接種を見送る必要があります。そのためには体温測定や、記入した予診票を元に行う医師の問診が欠かせません。

実際、副反応の発生やその程度は起こってみないと分からないケースが多く、必ずしも問診で発見できるという訳ではありませんが、医師による健康チェックを行い、より良いコンディションでワクチンを接種するという事が、私達が自分でできる最大の防御方法となります。

接種を行うには、必ず、ワクチンを受ける本人の同意が必要です。(未成年の場合保護者)

接種を受ける側の私たちも、すべてをお医者さん任せにしてしまうのではなく、ワクチンのメリットデメリットをしっかり理解した上で納得して接種を受けるようにしたいですね。

(参考)厚生労働省 予防接種ガイドライン
※インフルエンザをはじめとする予防接種の種類とその効果、注意点などがまとめられています。

(参考)予防接種法
※こちらのサイトでは予防接種法の内容を見ることができます。

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