痛みがあっても適度に活動することが早期回復につながる!
腰が痛い時は動くのも辛く、痛みがなくなるまでまずは安静にしようと思う方がほとんどではないでしょうか?
これまでは確かに腰痛を発症してしまったら「ベッドで安静にする」というのが一般的でした。
しかし、最近では「過度の安静は逆に症状を長引かせる」ということが分かってきています。
安静は必ずしも有効な治療法とはいえない。急性腰痛に対して痛みに応じた活動性維持はベッド上安静よりも疼痛を軽減し、昨日を回復させるに有効である。
職業性腰痛に対しても、痛みに応じた活動性維持はより早い痛みの改善につながり、休業期間の短縮とその後の再発予防にも効果的である。
(引用)腰痛診療ガイドライン2012
これはぎっくり腰のような急性腰痛の場合でも例外ではありません。
発症後72時間未満、可能な限り日常生活を維持していた患者さんと、ベッドで4日間安静にしていた患者さんでは、回復スピードは同程度だったという報告もあります。
介護の現場など、日々腰を酷使していることによっておきる職業性の腰痛も、なるべく普段通りの生活をすることで、痛みが早く改善され、職場復帰が早くなる事が分かっています。
寝たきりにならず普段と同じような活動を維持することは、体力、筋力の低下を防ぎ、早期復帰を目指すためにも大切です。
もちろん、無理な運動は良くありませんが、早期回復には多少痛みが残っていたとしても、寝たきりは避け、出来ることから身体を動かす事を心がけましょう。
(参考)腰痛診療ガイドライン2012
3ヶ月以上続く慢性腰痛は運動が効果的!
急性腰痛と違い、3ヶ月以上も鈍い痛みがダラダラと続く慢性腰痛は様々な要因が複雑に絡み合い、原因がはっきり特定できない場合も多くあります。
骨には異常がないのにシップや痛み止めの鎮痛効果も思ったように得られず、長期間不快な痛みに苦しんでいる方多くいらっしゃるのではないでしょうか?
腰に痛みがあると身体を動かす事を極力避けようとしてしまいますが、実は「慢性腰痛には運動療法が効果的である」ということが分かっています。
慢性腰痛の方を対象に行った運動療法と薬物療法の効果を比較した調査では、「痛み」だけをとった場合、治療効果はどちらも同じくらいでしたが、「QOL(生活の質)」、「運動機能の回復」という面から見ると、運動療法の方が効果が高いという結果が出ています。
痛みを抑えるだけの治療と、QOL(患者さん自身が望む自分らしい生活を送ること)を高める治療は同じではありません。
いつ痛みが起きるかと腰の心配ばかりしているのではなく、腰痛持ちであっても前向きにアクティブに動けるということは、自分の可能性を広げ、これからの毎日を楽しく充実させることにつながります。
(参考)腰痛診療ガイドライン2012
どんな運動が適している?ストレッチ、筋トレ、有酸素運動の三本柱。
腰痛診療ガイドラインでは「週に1~3回、定期的に運動すること」が推奨されていますが、ストレッチなどの軽い柔軟体操は毎日少しずつでも行うことで、腰痛の改善と再発予防の効果はさらに高まります。
腰痛の改善や予防に適した運動療法には以下のようなものがあります。
- ストレッチなどの「柔軟体操」
- 腹筋や背筋を鍛える「筋力トレーニング」
- ウォーキングや水中歩行などの「有酸素運動」
ストレッチと筋肉トレーニングの効果とは?
ストレッチ(柔軟体操)は場所を選ばず、強さも自分で調節できる手軽な運動です。
反動をつけず、ゆっくりとした動きで筋肉を伸ばすことで、筋肉の緊張をとり、血行が改善し、痛みで固まってしまった筋肉を柔軟にすることが出来ます。
痛みを感じるほど強くやるのは逆効果で、「痛気持ち良い」程度に行います。
はじめは可動域が狭くても徐々に伸びるようになってくるので、毎日継続して行うようにしましょう。
加齢や運動不足により腹筋や背筋が衰えると、上半身を支えている腰への負担が大きくなり、腰痛が起こりやすくなります。
筋力トレーニングで腹筋や背筋を鍛えるとともに、身体の深層の筋肉「インナーマッスル」を併せて鍛えることが腰痛の予防になります。
しかし、腰痛症状がある状態でいきなりハードな筋力トレーニングを行うことは、逆に腰の筋肉を傷め、症状を悪化させる危険性があるため、痛みが治まってから徐々に、再発防止のために行うようにしましょう。
ストレッチや筋肉トレーニングについては以下の記事で詳しく説明しています。
慢性腰痛の改善に効果的!ストレッチ、筋トレ「腰痛体操」の正しい方法とは
おすすめの有酸素運動は?①ウォーキング
有酸素運動は痛みがある状態でも自分で強度を調整しながら行うことができ、腰痛の改善効果が高い運動です。
お金もかからず、思い立ったらすぐに始められるウォーキングは、歩く速さや距離などを調整し、それぞれ自分に合ったペースで歩くことが出来るのがメリットです。
背筋を伸ばし、正しい姿勢で歩くことで骨や関節、腹筋や背筋などを自然に鍛えることが出来る他、全身の血行を良くし、カロリーも消費するので腰痛の原因である肥満も解消することができます。
さらに、公園など屋外を気持ちよく歩けば気分転換にもなり、ストレス発散になるので心因性の腰痛にも効果があります。
(出典)腰痛ナビ
※こちらのサイトでは日常的な作業を腰に負担をかけずに行う方法について詳しく解説しています。
しかし、せっかくのウォーキングも、背中が丸まっていたり、反りかえりすぎなど悪い姿勢では逆効果になり、むしろ膝や腰への衝撃を与える動きになってしまいます。
正しい姿勢(胸を張り、おへその下に力を入れ、頭の上から糸で引っ張られているイメージ)で身体のアライメント(軸)を意識しながら歩くことが大切です。
これまで運動をしてこなかった人が急に長時間行うと、さらに痛みが悪化する場合もあるので、まずはゆっくりとした散歩程度のスピードで無理なく始め、慣れてきたら少しずつ距離を伸ばして最終的には毎日30分程度できるようになる事を目指します。
おすすめの有酸素運動は?②水中歩行
腰痛がある時は、泳ぐよりも、腰回りの筋肉を意識しながら水中でゆっくり歩く方が痛みの改善に効果的です。
水には浮力があり、腰までつかると体重の50%、胸までつかると30%程度に負荷を減らすことが出来るので、関節に余計な負担がかからず、肥満や腰に痛みがある場合でも無理なく行うことができます。
浮力には腰痛で凝り固まった筋肉の緊張も和らげる効果があり、筋肉を緩め、血液がスムーズに流れるようになるため、少しの動きでも運動効率は高まります。
また、水の中で行うことで精神的なリラクゼーション効果も同時に得ることが出来ます。
水の抵抗を利用し、筋肉への負荷も動きやスピードによってそれぞれ自分にあわせてコントロールすることが出来るのもメリットです。
呼吸を意識しながら、背筋を伸ばし、目線は進行方向を見て、手は自然に振りゆっくりと丁寧に歩くようにします。
無理のない歩幅で、時間は30分を目安に行いますが、途中でも痛みが強くなるようなら中断するようにしましょう。
身体の冷えは腰痛を悪化させるので、温水プールを利用し、プールから上がった後もジャグジーやサウナなどで十分身体を温めることも忘れないようにしましょう。
(参考)『腰の痛み』全解説
※こちらのサイトでは、腰痛をおこす様々な原因、症状、治療法などについて詳しく解説しています。
ラジオ体操でもOK!?短時間の体操でも継続することで効果は出る。
運動が大切なのは分かったけれど、プールやウォーキングさえも辛いというような場合でも諦めてしまうことはありません。
日本人なら誰でも知っているラジオ体操でも腰痛の改善には効果があります。
平成十二年に日本体育大学の浅岡直美さんが「ラジオ体操についての一考察」というテーマで調査し、まとめた論文には、ラジオ体操(第一・第二)の効果について「十三種類の運動によって全身を動かし、ふだんの生活では使用しない筋肉や関節、骨に影響を与える。
特に筋肉や関節を十分動かすことによって柔軟性の向上、血行増進からの肩こり、腰痛の予防・回復を期待することができる。
また、骨に刺激を与えることによって骨の成長・活性化を促し骨密度低下の予防・回復も期待することができる」と、述べられています。(引用)NPO法人 全国ラジオ体操連盟
所要時間も3分程度と気軽に毎日行えるラジオ体操でも、毎日続けることで少しずつ筋力を鍛えることができ、腰痛の改善にも効果があります。
【体験談】生活に支障のある腰痛が、「ラジオ体操」をはじめとする運動療法で劇的に回復!
もともと腰痛持ちで第二第三腰椎が出ている状態です。
2年ほど前から生活に支障が出る腰痛となりました。
色々な病院や整骨院など通いましたが、当日は少し良くなるものの継続性は無く・・・。
無理をしたため坐骨神経痛を発症(笑)
歩くことも非常に困難で、ベッドから起き上がるのに30分もかかり、着替えもとんでもない時間がかかるような毎日が続きました。大きな病院では神経ブロックの注射か、治る可能性は低いが手術を勧められました。
ブロック注射は5回ほど試しましたが翌日には効果が無くなります。
その度に長時間待たされ、あちこちの移動で歩くこと・座ることも困難な身としては通えない。
手術もリスクが高いと言うことで、大きな病院に通っても治らないんだな、と諦めました。
評判の良い整骨院に通い、かなり良くなりましたがやはり持続はしない。。。
友人のスポーツドクターに相談すると運動療法を勧められました。
仕事で座りっぱなしの生活で、私の場合は筋肉量が落ちているのが大きな原因でした。
ドクターの言う通り、
・ 股関節を柔軟にすること
・ 1時間に1度は椅子から離れ体を動かすこと
・ 背筋を鍛えること
・ できるだけ毎日ラジオ体操をすること
・ 足首、手首、首を冷やさないこと
などのメニューを指導され実践すること1週間、病院に行こうが接骨院に行こうが翌日には元通りだった体が、動かせるようになってきました。2週間ぐらいで坐骨神経痛はかなり良くなり、ピリッとしたあの痛みも殆ど感じること無く生活ができるようになりました。
それ以来は、できるだけ体を動かすように努力をしています。今は坐骨神経痛は全く無く、腰痛は少しありますが生活にはさほど支障はないようになってきました。
腰痛の原因は筋肉の萎えがあるそうです、年齢に応じた運動を短時間でも続ける事で少しずつ筋肉量が増えるそうで
す。病院に通って治らない場合は、運動療法もお試しになられては如何かなと思います。
特にラジオ体操はお勧めです。(引用)坐骨神経痛になって
いかがですか?ラジオ体操ならできそうとハードルが下がった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
体操は立って行うのが辛い場合は椅子に座って行っても大丈夫です。
一日にしてみたら軽いほんのちょっとの運動でも続けることで体は変わっていきます!
「継続は力なり」で上記の体験談の方も生活に支障があるほどの腰痛が改善されました。
(出典)かんぽ生命 ラジオ体操第一 実演
無理して行うと逆効果。楽しく、マイペースが大切!
せっかく始めた運動でも、残念ながら症状が悪化してしまう人もいます。
いくら運動が大切と言っても、痛みのある時に過度な運動をしてしまったのではせっかくの努力が無駄になってしまいます。
最初はごく軽い運動から始め、ぎっくり腰などの急性腰痛の場合は痛みがおさまってから行いましょう。
また「絶対やらなきゃ」と義務感を持ってやるのではストレスになるので、楽しみながら取り組むことが大切です。
自分の適正な運動量が分からない時は、最近はスポーツクラブなどでも身体の痛みを改善するための「個人プログラム」を組んでくれるところもあるので利用するのもおすすめです。
専属のトレーナーが自分にあったプログラムを作成し、正しい行い方などを教えてくれるので効果も高く、応援してくれる人がいるとモチベーションも上がりますね。
慢性化した腰の痛みは一日や二日でなくなることはありませんが、地道に続けているうちに、いつの間にか「楽になった!」と思える日が来るかもしれません。
そのためにもまずは始めてみることが大切!ぜひ毎日の生活の中に少しずつ「運動」を取り入れてみましょう!
(参考文献)
- 水の浮力で腰痛を治す―水中の“無重力”作用がやさしく癒す 木原美智子著