2016年夏大流行!感染力が強い「おたふく風邪」の症状・経過・感染経路
1.「おたふく風邪」はウイルス性の急性感染症。最近、患者数が増加、流行の兆しが!
おたふく風邪は正式名称を「急性耳下腺炎(きゅうせいじかせんえん)」といい、ウイルスによる急性の感染症です。
耳の下にある唾液を作る働きのある耳下腺(じかせん)が腫れ、顔が「おたふく」のように腫れることから「おたふく風邪」と呼ばれています。
ムンプスウイルスというウイルスに感染することによって発症するので別名「ムンプス」とも呼ばれます。
以前は秋から春先にかけて多く流行が見られましたが、最近では季節に関係なく流行するようになってきました。
3年ほどの周期で大流行が見られていますが、ここのところじわじわと患者数が増加、流行の兆しが見られ、これからの動向に注意が必要です。
耳の下の痛み、発熱…おたふく風邪の特徴とは?発症に気付いた時。みんなの体験談
【体験談】4歳の娘が耳を痛がる!ほっぺが腫れ38℃の発熱でおたふく風邪と診断。
4歳の娘が夕方、耳たぶあたりを触って、少し痛いというので、「軽い外耳炎か中耳炎になったのかな?」と思い耳鼻咽喉科へ。
しかし、どちらでもないということで様子を見ることになりました。翌日、朝から「耳を触ったら痛いよー」と泣き出したので、顔を見ると痛がっている側のほっぺが腫れていました。体が熱かったので熱を測ったら38℃越えていて、またまた耳鼻咽喉科に。
結果は「おたふく風邪」でした。
【体験談】耳の痛みからか機嫌が悪くグズグズ。微熱だったが受診したところおたふく風邪が判明。
息子が2歳のとき、おたふく風邪になりました。
ある日、耳が痛がるようになり機嫌が悪くグズグズしていました。
耳鼻科を受診させてみようかと思った矢先に、なんとなく息子の体が熱いような気がしましたので熱を計ったところ、
37.5℃の発熱がありました。耳鼻科がよいのか、小児科が良いのか迷ったのですが、まだ小さかったので小児科を受診させることにしました。
受診の結果、おたふく風邪と判明しました。
【体験談】片方のみの痛みから始まり、数日後には両方腫れて…。痛み止めが効かず泣き出すことも。
左耳の下が痛いみたいで、少し熱もありました。病院で、みてもらうとおたふく風邪でした。何日かしたら、反対の耳も腫れると思う、と先生に言われると、実際にその通りになり、顔が、おたふくのようになってしまいました。病院で貰った、熱冷ましと痛み止めを服用させていましたが、痛み止めの効果があまり続かず、泣き出してしまうこともありました。痛み止めも、服用回数以上飲ませるわけにはいかず、冷やせば、痛みが楽になると聞いたので、顔を冷やすようにもしました。
おたふく風邪の診断には血液検査を行うこともありますが、結果が出るのに時間がかかるため一般的ではありません。
実際の診断には、お医者さんの問診や触診、周囲に流行があるかなどの状況をみて診断されることが多いようです。
潜伏期間は通常の風邪より長い!気づかぬ間に感染してることも。
おたふく風邪の初期症状は、喉の痛みや頭痛などがあることもあり、風邪の引きはじめと思い込んでしまうことも。
次第にほっぺたが腫れてきたり、耳の下の痛みが出て初めて気づくことも多いです。
おたふく風邪はムンプスウイルスに感染していきなり発症するわけではありません。
症状が現れた時にはすでに感染から2週間~3週間ほど経ってしまっています。
発症までには潜伏期間があり、気づかぬ間に感染してしまっていることが多いのです。
(参考)国立感染症研究所 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)
2.特徴的なおたふく風邪の症状とは?発症からの経過・感染ルート
特徴的な症状としてまず、片側または両側の耳の下(耳下腺)が腫れ、続いて38℃前後の発熱症状が現れます。
耳下腺は両方腫れることが多いですが、片方しか腫れが出ない場合もあり、圧痛(あっつう:押すと痛い)や嚥下痛(えんげつう:飲み込むときの痛み)がおこります。
発症後、48時間が症状のピークと言われ、症状がひどい場合は顎下腺(がっかせん:あごの下の唾液分泌腺)や舌下腺(ぜっかせん:舌と下あごの間にある唾液分泌腺)といった耳下腺以外の唾液分泌腺も炎症を起こし、顔の下半分が2倍になるくらい腫れあがります。
その間は食事がとれなかったり、会話もままならないほどの強い痛みがおこります。
痛みは徐々に和らいできますが、腫れがおさまり、完全に痛みが引くまでは1~2週間ほどかかることもあります。
【体験談】顔が2倍に腫れた!痛みがひどくご飯が食べられない。
熱は出るし耳の下から顎にかけてどんどん腫れいき、見ると物凄い二重顎で顔が2倍になってました。痛いし見た目が凄いしでもう泣きたくなりました。
ただ腫れるだけならいいのですが、痛くて痛くてご飯も食べられません。お腹は空くのですが食べようと口を開けると耳の下から顎の辺りにズーンと重っ苦しい痛みが走ります。この痛みがひどいものでとてもご飯を食べようなんて思えませんでした。涙が出るほど痛かったです。
なので飲み物はストローで。食事はお粥やおじや。ゼリーやプリンなどの噛まなくても食べられるもの。噛むなんて考えただけで恐ろしいです。
感染ルートはどこから?飛沫、接触で感染するため、集団生活の場で一気に拡散!!
子供の間での感染が多い、おたふく風邪は、3歳~6歳児までの小さな子供の発症が全体の6割を占めています。
くしゃみや咳などの飛沫や接触で感染し、その感染力はかなり強力なため、幼稚園や学校など集団生活をする子供の間でひとたび発症した子が出ると、あっという間に流行が広がってしまいます。
学校で流行が広がる恐れがある「学校伝染病(第二種)」に指定されていて、発症後5日たって完全に腫れがとれるまで登園、登校停止の措置をとることが定められています。
熱が下がって元気そうに見えても、耳下腺の腫れがあり、痛みが残っているうちはウイルス感染の危険性があります。
再登園、再登校の判断は慎重に行う必要があるので、必ずお医者さんの許可を得てからにしましょう。
ウイルスに感染しても症状が出ない場合もある!不顕性感染とは?
お子さんの場合、おたふく風邪の特徴である顔の腫れが少なかったり、あまり熱が出ない場合もあります。
また、感染しても全く症状がない「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」が多いのもおたふく風邪の特徴で、全体の3割ほどと言われています。
特に1歳未満の赤ちゃんなどはこの不顕性感染が多く、症状が現れても軽く済むことが多いようです。
不顕性感染の場合、症状が全くないので、気づかないままに終わってしまうこともありますが、身体の中にはウイルスを持っている状態です。
普段と同じ生活をしているうちに、いつの間にか周囲の人に感染を広げてしまっているという場合もあります。
また、感染してから発症するまでの潜伏期間中の感染力が一番強いとも言われ、なかなか感染を防ぐことは出来ず、一気に大きな流行につながってしまうことも多いのが現状です。
(参考)国立感染症研究所 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)
3.おたふく風邪の治療とは?辛い症状を和らげる対症療法がメイン。
顔の腫れや痛みの症状が強いと一刻も早く治したくなりますが、おたふく風邪はウイルス性のため、抗生物質は効果がなく、現在、有効な抗ウイルス剤もありません。
治療は、基本的に安静にして症状が治まるのを待つほかありませんが、熱や腫れの痛みには解熱鎮痛剤を使って症状を和らげるための対症療法を行います。
腫れのピーク時は、痛みのため、飲み込んだり、噛んだりといった動作が辛く、食事もとれない状態が数日続くこともありますが、水分だけは不足しないように気を付けなければなりません。
もし、ストローなどを使っても水を飲み込むことが出来ないほど痛みがひどく、脱水を起こしてしまった時には、すぐに病院を受診して、水分や電解質を点滴するなどの措置が必要になります
髄膜炎、難聴、時には合併症が起こることも。
確率は多くはありませんがおたふく風邪を発症すると、以下のような合併症を起こすことがあります。
◆髄膜炎
おたふく風邪を発症した患者さんの1割程度に「髄膜炎」という合併症が起きることがあります。
ウイルスが脳と脊髄を覆っている保護膜である髄膜に入ってしまい、炎症が起きて意識障害やけいれんなどの重篤な症状を引き起こします。
おたふく風邪発症から3日たっても高い熱が下がらなかったり、嘔吐やけいれん、頭痛などが続くようならば早めに医療機関を受診しましょう。
◆ムンプス難聴
ムンプスウイルスが内耳に入ってしまって炎症を引き起こす「ムンプス難聴」も2万人に1人程度の割合で起きることがあります。
やっかいなことに症状のない不顕性感染でも起きる場合もあり、発症するとなかなか改善せず、永続的に聞こえに障害が出るため注意が必要です。
15歳以下の発症が多く、特に5歳~9歳に多くみられるムンプス難聴ですが、片方の耳だけに起こることも多いので、お子さんの場合、自分では症状に気づかない場合もあります。
おたふく風邪を発症したお子さんに呼びかけをしてみても反応がない、聞こえがおかしいなど気になる兆候がある時は、すぐに耳鼻咽喉科のある医療機関を受診しましょう。
◆睾丸炎・卵巣炎
思春期(10歳以降)に発症すると、男性の場合、20~30%の割合で睾丸炎(精巣炎)を発症することがあります。
まれに、不妊につながることがあるので注意が必要です。
女性の場合は、発症患者さんの7%程度が卵巣炎を発症しますが、特に不妊原因になる心配はないとされています。
◆膵炎
お腹の痛みや圧迫感、吐き気や発熱が続くこともありますが、重症化することはほとんどなく、1週間ほどで回復します。
◆難聴
2,500~5,000人に1人程度の割合で難聴が起こる場合があります。片側に起こることが多く、聴覚細胞が死滅してしまう重い合併症で治療は困難です。
◆脳炎
5,000に1人程度の割合で、髄膜炎と併発して脳炎を起こし、意識障害や痙攣をおこすことがあります。
(参考)あやし小児科医院 第2ホームページ
※こちらのページにはおたふく風邪の合併症について詳しい情報が掲載されています。
子供だけじゃない!大人の発症も。看病中のパパ、ママの感染に要注意。
主に小さな子供の間で流行る感染症のおたふく風邪ですが、大人もかからないというわけではありません。
むしろ、発症すると、年齢が上がるほど高熱になったり、腫れがひどかったりと重症化する恐れがあるので注意が必要です。
お子さんがおたふく風邪になり、看病しているうちに感染、パパやママが発症してしまうケースがとても多くみられます。
子どもの頃に罹り、抗体ができている場合は、感染することはありませんが、子どもの頃罹っていなかったり、覚えていないようなときはマスクや手洗い等、念入りに行い、感染の予防をしましょう。
【体験談】娘がおたふく風邪を発症!すでに自分は罹ったはずと思い込み感染。娘より高い高熱に。
娘がおたふく風邪になったとわかったのは、娘の両耳の下が腫れていたからです
おたふく風邪についてはかかりつけの小児科をはじめ、区の保健所からも説明を受けていました
なのですぐに熱を計ったり、病院につれていったりと焦らず対応することができたのですが、てっきり自分はもうおたふく風邪にかかったことがあると勘違いして移ってしまいましたおたふく風邪はヒマツ感染らしいので、恐らく娘のくしゃみで感染したと思います
ただ娘の場合は熱が一番高いときで38度だったのですが、わたしの場合は40度まで上がりました
また関節という関節が全て痛むので動くのが苦痛でした
もしかしておたふく風邪じゃないかも!?似てる症状、間違いやすい病気
おたふく風邪と同じように耳下腺が腫れて痛みが出る「反復性耳下腺炎」は症状が似ていて、間違いやすい病気です。
コクサッキーウイルスやパラインフルエンザウイルスというようなおたふく風邪のムンプスウイルスとは違うウイルスに感染することによって起こされる病気です。
耳下腺の腫れている箇所を押すと軽い痛みがありますが、発熱は起こらず、1~2週間で回復しますが、同じ症状が繰り返し、起こることがあります。
おたふく風邪は一度発症し、身体の中に抗体ができると再度かかることはないので、おたふくが繰り返しているかも?と感じる時は一度、耳鼻咽喉科で検査をして専門の先生に診断をしてもらうようにしましょう。
(参考)(参考)国立感染症研究所 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)
4.おたふく風邪をどう防ぐ?予防にはワクチン接種が有効。
普通の風邪よりも潜伏期間が長いおたふく風邪は、知らない間に感染を拡大してしまっていることがあります。
予防にはワクチンがありますが、流行してからのワクチンでは効果がありません。
余裕をもって集団生活を始める前にワクチン接種をするなど、早めに対策をしておきましょう。
また、いつ始まるかわからない流行に対して日常から出来る対策としては、風邪や他の感染症と同じように、手洗い、うがいを励行し、人ごみに出るときはマスクの着用することが効果的です。
それでも発症してしまったら……。ゆっくり休んで免疫を高めよう!
発症すると、1週間は辛い症状が続きますが、一旦、かかることで免疫を作ってしまえば、再度発症することはない病気です。
発症してしまったら、治るまでは仕方ないと割り切って、ゆっくりと身体を休め、体力をつけて回復を待ちましょう。
顔が腫れて痛いときは氷嚢や冷シップなどで冷やすとしばらく痛みが和らぎます。
日にちが経過すれば必ず腫れや痛みの症状は和らいできます。
辛い時はムリに我慢しないで、解熱鎮痛剤もうまく使い、症状のひどいピークの時期を乗り越えるようにしましょう。
コメントを残す