1. 産後うつとは?
「産後うつ」とは、産後に現れるうつ症状のことです。
育児ノイローゼと言われることもありますが、産後うつは女性ホルモンのバランスの崩れを原因とする症状、育児ノイローゼは育児ストレスからの症状、と言われています。
産後に多い訴えとしては以下のようなものがあり、産後うつや育児ノイローゼの原因、きっかけとなります。
身体の問題 | ・体調が悪い ・もともともっている病気が悪化した ・疲れやすい ・ずっと切迫流産で入院していたので、体力が落ちている ・食欲がない ・間食ばかりしている ・体重が元に戻らない |
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経済面 | ・仕事を辞めたので経済的に不安 ・夫の収入が少ないので、今後どうなるか不安でたまらない ・預けて気分転換したいが、ベビーシッター代がない |
仕事・勉強 | ・仕事には復帰するが、大事な仕事から外されたので怒りと焦りがある ・せっかく仕事が見つかったところだったので、あきらめきれない ・せっかく大学院に入ったのに、勉強を続けられるだろうか ・保育園に入れるか心配 ・本当に仕事と育児の両立ができるのか |
夫との関係 | ・暴力、暴言があり、耐えられない ・夫が浮気している ・夫が生活費をくれない ・夫が自分の行動を制限する ・夫がうつで働けていない ・別居中。離婚するかどうか迷っている ・妊娠、出産後に夫の性格が変わった ・性的欲求がなくなり、夫に責められる |
住環境 | ・家が狭くて子育てしにくい ・ワンルームなので、子どもが泣くと夫が激怒する ・引っ越してきたばかりで、土地勘がない ・小児科はどこの病院がいいかわからず不安 ・子どもが泣くと、近所に聞こえる。どう思われるか心配 |
上の子どもとの関係 | ・上の子が乱暴で幼稚園でいつも注意を受ける ・上の子に発達・言葉の遅れがあり心配 ・上の子が赤ちゃん返り |
実家との関係 | ・親が病気 ・父親が乱暴なので母親が心配 ・子育てに口出ししてくるので耐えられない ・もともと関係が悪いので、援助を頼めない |
夫の親族との関係 | ・出産後、夫の家族と同居するようになってうまくいかない ・同居ではないが、出産後、夫の家族が頻繁に来たり旅行に誘われ負担 ・夫の親族が、子育てに口出ししてきて負担 |
子どもとの関係 | ・泣かれるとどうしてよいかわからない ・母乳で育てたいのに母乳が出にくい ・かわいいと思えない |
自分のこと | ・友だちは、皆独身。子どもの話ができず、時間も合わず孤独感 ・ネットショッピングで浪費してしまう ・酒量が増えた ・家の中でできる趣味がない。気分転換がまったくできない ・ひとりでいられる時間が少なくてつらい |
<出典> 西園マーハ文:産後メンタルヘルス援助の考え方と実践
2. あなたにも産後うつの症状がでている?先輩ママの体験談と簡単セルフチェック
産後うつの主な症状は、精神的に不安定になる、イライラする、眠れなくなる、子どもが愛せなくなるといったものです。
出産後、嬉しくなったり悲しくなったり、プレッシャーに押しつぶされそうになったり、情緒不安定で眠れなくなりました。
最初は、どのみち二時間後には授乳だしと、むりに眠らずに起きていました。
私は陣痛が48時間続き、緊急帝王切開になり、体調がなかなか安定しなかったこと。激しく泣く赤ちゃん。喘息発作が落ち着かなかった事、むやみに、完全母乳育児を勧める助産師さん…お祝いにと、やたら尋ねてくる親戚。なんか、疲れてしまいました。泣けてきて、ボーッとして、嬉しいより、辛い気持ちが辛くなり、私自身が、もしかして産後うつ?と思い、医師に相談しました。
出産して3週間したころから突発的なかゆみに悩まされました。
赤ちゃんの隣で寝ているときも、夜中の授乳中も、料理で火を使っているときでさえ、かゆくて一時的に何もできなくなるくらいでした。特に肩周りと首周辺のひりひり・ずきずきしたような痛みですが、あまり強く引っ掻くと後になるので爪で浅く何度もこする程度でした。
そんな突発的なかゆみとイライラ、持病の坐骨神経痛と育児の疲労がたまって、つい赤ちゃんに当たってしまいそうになったことが何度もありました。はっと思いとどまるたび「私が悪いんだ…この子は何も悪くないのに。私が生んでしまったばっかりに…ごめんね」と涙ぐみ、そのころから家事も赤ちゃんの面倒を見ることすらできなくなってしまい、怖くて、泣いてばかりいました。頼れる親類も近くにいなく、夫はずっと仕事で悩みを打ち明けることすらできない毎日でした。
私も1歳5ヶ月の息子がいます。
息子を出産して以来、従姉妹の二の舞にならないようにと気をつけてきたつもりですが、旦那や義母に理由なくイライラしたり、些細なことでもイライラが抑えきれず子供にまで怒鳴ってしまうことが増えています。頭でわかっているつもりなのに感情のコントロールができません。
毎晩の夜泣き、進まない離乳食。お恥ずかしながら、米とお菓子以外は一切食べず、いまだに昼間も夜中もおっぱいに頼っています。
周りのお母さん達はキラキラ楽しそうに見えるのに、自分だけが育児に苦戦しているように感じて
「早く死にたい」「毎日なんにも楽しくない」
「寝ているときしか可愛く思えない」と口走ってしまうこともあります。
多かれ少なかれ、ママになれば誰しもが経験することではありますが、今一度、客観的に自分のことを振り返り、セルフチェックしてみましょう。
当てはまる項目が多いと産後うつの可能性があるので、対策方法を検討してみることをおすすめします。
- 笑うことができず、物事のおもしろい面もわからない
- 物事を楽しみにして待つことができない
- 物事がうまくいかない時、自分を不必要に責める
- 理由もないのに不安になったり、心配する
- 理由もないのに恐怖に襲われる
- することがたくさんある時に、うまく対処できない
- 不幸せで、眠りにくい
- 不幸せで、泣けてくる
- 悲しくなったり、惨めになる
- 自分自身を傷つけるのではないかという考えが浮かんでくる
<出典> 吉田敬子:母子と家族への援助ー妊娠と出産の精神医学
3.先輩ママから学ぶ、産後うつに対する4つの方法
対策1. 思い切ってお医者さんに相談してみる。
目的は主に2つで、精神的な安定を取り戻すためと睡眠不足を解消するためです。
最初は抵抗感を感じると思いますが、気持ちが沈んでいる状況が3週間以上続いている場合には、一度受診してみることをお勧めします。
すると、ちょっとお薬飲んでみます?気持ちがラクになりますよ。私も飲んだことあるんですよと言われて。一週間、授乳しながら飲みました。
そうこうしているうちに、一年が過ぎていて、すっかり元気に。
受診の事を聞きつけた実家の母も遠出して見に来てくれるというので、(ここで意地を張って赤ちゃんに何かあったらどうする!)と自分に言い聞かせ、安定剤を飲みました。
始めはびっくりするほど眠くて(これが副作用か!)と思い、あわてて電話で確認したら『極度の疲れからくる脱力でしょう』といわれ、母が子守をしているうちに3~4時間眠ったらすっかり気分が晴れやかになりました。
また、授乳をしながらの服薬に不安を感じることもあると思いますが、それも含めてお医者さんに相談してみてください。
服薬しながら完全母乳で子育てしているお母さんもいらっしゃいます。
私は完全母乳でしたが、先生に確認のもと、スルピリドをいうお薬を処方してもらいました。薬を飲むと精神的に落ち着きます。うまくいけば1日1錠で済むときもありました。
産後半年経ちますがかれこれ2ヶ月薬無しで生活しています。普段通りでいられています。まずは気持ちが沈んでいる状況が3週間以上続いたら、一度受診することをおすすめします。赤ちゃんのためにも!
対策2. ご自身の周りにある相談先を活用してみる。
お薬を飲むだけでなく、誰かに今の状況を知ってもらうというところから始めると良いです。
親族やパートナーに頼ることができる方は、積極的に子育てに関わってもらい、それが難しい方は、各自治体が運営しているファミリーサポートセンター、子育て支援センター、児童館のスタッフの方にお話をしてみるのも良いでしょう。
以下のように無料で子育てについての電話相談やカウンセリングができる機関も存在しているので、活用してみましょう。
①子育て・女性健康支援センター(運営:公益社団法人 日本助産師会)
②子育てホットライン ママさん110番(運営:社会福祉法人 日本保育協会)
③のびのび子育て電話相談室(運営:日本児童家庭文化協会)
Tel:03‐3428‐0192
対策3. 産後うつをテーマにした子育てブログを見てみる。
同じような経験を持った方の体験談を読むことで、孤独感の解消につながったり、具体的な困り事への解決策を知ることにつながります。
また、ご自身でもイライラしたことや不安なことを一言・二言でも記録に残していくことをお勧めします。
記録に残していくことで、客観的に自分を捉え直し、心を落ち着けることができます。
対策4. がんばっている自分に気付く
最後に、一番大事なこととして、今の自分を認めて褒めてあげてください。
あなたは毎日とてもよく頑張っています。
子育ては、親と子どもが1対1の状態になりがちで、親の行動を他の人が正しく評価し、褒めるということが難しくもあります。
そんな中、あなたがあなたの子育てに批判的になってしまうと、自然と心も苦しくなります。
子育てをする中で、できなかったことに目を向けがちですが、1日の終わりに、今日できたことや楽しめたことを振り返り、書き出してみるのもよいですね。
4.産後うつを克服するために一人で抱え込まず、相談してみることから始めましょう!
はじめてのことばかりの子育てで、不安にならない人はいません。
最初から完璧にできる人もいません。
お医者さん、電話相談、行政サービス、同じ経験をした方のブログなど、活用できるものは全て活用し、ママの気持ちが少しでも楽になればいいですね。