1.突然の高熱+喉にできた水疱(口内炎)が痛い=夏風邪「ヘルパンギーナ」の症状かも。
ヘルパンギーナを知っていますか?
小さいお子さんがいらっしゃる家庭では、ピンとくるかもしれませんが、そうでもないと案外知られていないことの多い「ヘルパンギーナ」。
ヘルパンギーナとは、造語です。
アンギーナ angina(ラテン語で「扁桃炎」)に、ヘルプ herp(ギリシャ語で「這う」)を付けたもので、「水疱が喉の奥(扁桃炎)に這うように広がっている様」から由来しているようです。
ヘルパンギーナの原因は、手足口病と同じ”エンテロウイルス”。
ヘルパンギーナとは、急性のウイルス咽頭炎のことです。
ヘルパンギーナの原因となる病原体は、エンテロウイルス群に属する”コクサッキーウイルス(A群)”を主としたウイルスで、他にも、コクサッキーウイルス(B群)、エコーウイルス、エンテロウイルス(68型~72型)と、ヘルパンギーナを発症させるウイルスは複数存在することから、一度ヘルパンギーナにかかっても再びかかってしまう可能性がある病気なのです。
また、例年5月頃より西日本から増え始め、7月にかけて感染ピークとなり、8月頃から減り始め、9~10月になるとあまり見られなくなる、いわゆる夏風邪の一種です。
手足口病の症状との違いって?ヘルパンギーナは、高熱+手や足の発疹症状がない。
<ヘルパンギーナの3大症状>
①39~40度の高熱
②上あごの粘膜やのどの奥(口腔粘膜)にだけ、水疱ができる
③のどの炎症(咽頭炎)
水疱は1~5ミリくらいの大きさで、その水疱が破れた時、粘膜がむき出しになることから、喉が非常に痛く感じます。
痛みから、水分を取ることすら嫌がる子ども(赤ちゃん)もいるでしょうが、感染ピークの夏場では、高熱と汗であっという間に脱水症状を起こす可能性が高くなります。
こまめな水分補給を心がけましょう。
なお、どうしても取れない場合には、早めに病院を受診し、脱水症状を回避する点滴などの処置をしてもらいましょう。
熱 | 発疹 | |
---|---|---|
ヘルパンギーナ | 39~40度の高熱 | 口の中だけに水疱ができる |
手足口病 | 37~38度までの発熱
(発熱しない場合もある) |
口の中に水疱が出来る
+ 手や足、全身に発疹が広がる |
手足口病の原因となる病原体もヘルパンギーナと同じ”エンテロウイルス”(厳密には、コクサッキーウイルスの型が異なる)なので、症状に似ている部分があるのです。
高熱が出ているのに、喉の痛み以外の鼻水や咳などよくある風邪症状がない場合には、ヘルパンギーナの可能性が高いでしょう。
<ヘルパンギーナの好発年齢>
5才以下が全体の9割を占めます。1才がもっとも多く、次に2、3、4才の順となり、0才と5才はほぼ同じくらいの症例が報告されているようです。
ヘルパンギーナの一番の感染経路は”飛沫感染”。
ヘルパンギーナの感染経路は、手足口病と同じです。
①飛沫感染
感染者のせきやくしゃみに含まれるウイルスによる空気感染。
②接触感染・糞口感染
水疱(水ぶくれ)の内容物や便に排出されたウイルスが手などに触れ、口や目などの粘膜に入ることにより感染。
子どもの場合、舐めて唾液や鼻水がついたおもちゃの貸し借りで手が触れてしまっても、うつってしまうことがあるので注意が必要です。
(参考)ヘルパンギーナ|東京都感染症情報センター
こちらのページでは、東京都のヘルパンギーナの流行状況も確認できます。
2.いつまでうつる?ヘルパンギーナにかかったら、1か月はうつす危険アリ。
ヘルパンギーナは、エンテロウイルス感染→潜伏期間→発症→回復期/二次感染期間という過程をたどり、潜伏期間~二次感染期間まで約1か月間、他人へ感染させてしまう可能性があるため、注意が必要です。
発熱時が一番危険!感染力が強いヘルパンギーナは潜伏期間もうつる。
<潜伏期間> 2日~5日
残念ながら、潜伏期間中にエンテロウイルス感染による自覚症状はあまりなく、発症後に感染が発覚します。
<発症> 2日~4日
初期症状は、喉の水疱・口内炎や突然の発熱(39度~40度)です。
お子さんが「口が痛い」と訴えたり、発症症状や周りの流行状況から、ヘルパンギーナへの感染が疑われる場合があるかもしれません。
<ヘルパンギーナ疑いで、お子さんの喉を見るのは、ちょっと待って!>
前述したとおり、ヘルパンギーナは”飛沫感染”および”接触感染”が感染経路です。
そのため、水疱や口内炎が出来ているかどうか、口腔内を確認する場合、家庭内での二次感染を予防するために、使い捨ての手袋をつけたり、マスクをつけたりしてから確認しましょう。
口中の水疱は、発生から2~3日後にただれてくるので、その時には非常に強い痛みを伴いますが、1週間もすれば口内の皮膚は回復してきます。
また、発熱時は最も感染力が強くなりますので、要注意です。
なお、ヘルパンギーナでの発熱は、通常2~3日で下がってきますが、39度以上の高熱が4日以上続く場合、別の病気も併発している可能性もあるので、速やかに病院を受診しましょう。
急激に熱が上がることがあることから、熱性けいれんを起こすことがあります。
<回復期/二次感染期間> 発症から3週間
ヘルパンギーナの3大症状が完治するには、約1週間の治療期間が必要です。
また、症状が治まり、見た目には元気に見えても、エンテロウイルスは2週間~3週間程度、便などから排出されるため、この時期の二次感染には最大の注意が必要です。
特に、ヘルパンギーナは、1才~2才台の赤ちゃんが多くかかる感染症です。
おむつ替えの際に二次感染しないよう、マスクや使い捨て手袋を使うなどして、家庭内で二次感染しないよう注意しましょう。
ヘルパンギーナは出席停止扱いではない。解熱し食欲が戻れば、外出や登園は一応OK。
ヘルパンギーナについては、学校保健安全法による「学校において予防すべき伝染病(学校感染症)」の中に明確に規定されていません。
そのため、罹ったら直ちに出席停止措置を取らなければならないということは、ありません。
しかし、前述の通り、ヘルパンギーナの主症状である高熱の間は、エンテロウイルスが一番うつりやすい時期であることと、また、ひどい口内炎は大人でもかなり辛く、小さな子どもにはとっては、それこそ耐え難く、痛みからきちんと食事が取れないことも多いため、やはり熱が下がって、水疱などの口内炎症状が治まり、元気になるまでは自宅で安静にしていた方がよいでしょう。
また、通われている保育園や幼稚園によっては、感染拡大を防ぐため独自の登園基準を設けている場合があるかもしれません。登園は園の方針を確認の上、判断しましょう。
(参考)ヘルパンギーナとは|国立感染症研究所
こちらのページでは、確定診断の方法についても、詳しく解説されています。
3.免疫力が落ちている看病疲れのお母さんは要注意!大人でもヘルパンギーナに感染する。
ヘルパンギーナの罹患は、5才以下の子どもが全体9割を占めると前述しましたが、病原菌エンテロウイルスは子どもだけが感染するウイルス感染症ではありません。
大人のヘルパンギーナは、子どもより重症化しやすい。
<症状>
- 発熱
→子どもと同じように39度~40度の高熱が出ますが、子どもよりも長引きます。 - 水疱/口内炎
→子どもと同じように口内に水疱や複数の口内炎ができますが、かなり痛みが強いと感じる方が多いようです。
その他、強い倦怠感や関節に痛みが出ることもありますので、症状が出ている間は仕事なども控えて、安静に過ごした方がよいでしょう。
大人がヘルパンギーナにかかる場合、ストレスや疲労、夏バテなどで体調不良の時や免疫力が落ちている場合がほとんどです。また、ヘルパンギーナを発症している子どもの看病をしている親(主に母親)にうつってしまうケースもよくあります。
万が一、子どもが保育園や幼稚園などでウイルスをもらってきてしまったとしても、マスクで二次感染防止に努め、無理のない範囲で看病をするなど自分の体調管理にも注意しましょう。
(体験談)子どもからうつって、入院するほど重症化。3日間は点滴のみ。
39度の高熱がでたのは、子供が手足口病になって4日ほどたった頃でした。
大人にうつっても夏かぜ程度で済むことが多いそうですが、私の場合は重症化しており入院することになりました。
その頃には食事もほとんどできなくなっていました。
大きな水泡ができており水でものどが痛むほどでしたので、入院して3日くらいは点滴だけの生活でした。必要な栄養はその中に入っているのか、空腹感はありませんでした。
その後、おかゆなどを徐々に食べられるようになり1週間ほどで退院できました。有効な治療法はないらしく、抗菌剤の点滴をして休養するしかなかったようです。
(体験談)ヘルパンギーナで重症化。足の痛みがひどくなって、トイレもハイハイで行く状態に。
喉があまりに痛く、唾も飲み込めないので市販の風邪薬を飲むと少し和らいだが、また夜になると痛い、という状態でした。
鏡で喉の奥を見て、びっくり。
なんか白い膿のようなブツブツがいっぱいついていた。次の日まで我慢していたが、しんどすぎて動けないと友達に連絡すると車で病院まで送ってくれました。
診察の結果、ヘルパンギーナという事で痛み止めの入った点滴をして帰宅しました。喉の痛みは日に日に和らぎましたが、大変なのはここからでした。
熱があるときになんとなく足も痛いなあ、と思ってたのですが、こちらは日に日に痛くなる。
まさに筋肉痛をひどくしたような痛みなのですが、歩けなくなってトイレにもハイハイで行く状態に。
仕事も2週間休みました。
風邪の時にウイルスがいろんな場所で戦って炎症を起こすそうです。
4.ヘルパンギーナの予防対策のポイントは、”飛沫感染”を防ぐことにあり!
”飛沫感染”対策には、手洗い・マスクの徹底が重要。
ヘルパンギーナの病原菌であるエンテロウイルスは、現在有効な抗ウイルス剤やワクチンなど特効薬はありません。
治療法は、不快症状への対処療法となります。
<ヘルパンギーナの予防ポイント>
- 流行時には、手洗いやうがいを念入りに行う。(特に配膳前、食事前、排便後、おむつ取り替え後の手洗いは、徹底すること)
- 咳やくしゃみをする時には、口と鼻をティッシュ等で覆ったり、マスクをする。(咳エチケットが大事!)
- タオルの共用を避ける(プール時やトイレのタオルの共同使用など、要注意!)
- おむつ交換も注意深く行う。
- 他人にうつさない心配りをもつ。
エンテロウイルスは感染力の非常に強いウイルスです。また、子どもでも1才など赤ちゃんが、よりかかりやすい夏風邪です。
子どもの些細な変化を見逃さず、また、”飛沫感染”がヘルパンギーナの感染拡大の原因であるということを忘れずに、日ごろから予防対策を取って、楽しい夏を過ごしましょう。