虫歯や歯周病で歯を抜く方へ!入れ歯・ブリッジ・インプラントの選び方・比較
1. 虫歯や歯周病を我慢して歯医者へ行かないと「手遅れ」になることも。歯を抜いた後の治療方法は?
虫歯の痛みをロキソニンで我慢していたが我慢しきれなくなって歯医者へ駆け込む……。
歯肉炎、歯周病による歯ぐきの腫れや出血を気にせずに放置していたら歯がグラグラして慌ててて歯医者へ飛び込む……。
そして、歯科医師から「もうこの歯は抜くしかないですね」と告げられる……とてもショックですね。
抜歯する時の痛みに関する不安はもちろんですが、最大の心配事は、「歯を抜いた後の治療は何が良いのか?」「どれぐらいの値段で治療ができるのか?」ということではないでしょうか。
現在日本国内で行われている、歯を失った時の治療方法(補綴治療:ほてつちりょう)は、大きく分けると以下の3つがあります。
- 入れ歯(有床義歯:ゆうしょうぎし) ※部分入れ歯・総入れ歯
- ブリッジ(架工義歯:かこうぎし/冠橋義歯:かんきょうぎし)
- インプラント(人工歯根:じんこうしこん)
この記事では、ブリッジやインプラントとも比較しながら、入れ歯のメリット・デメリットや「入れ歯に見えない入れ歯」など最新の入れ歯情報、入れ歯を作る時の歯科医院の選び方について紹介します。
2. 自分の歯は何本?歯を抜くことになった原因は?年齢と歯の本数の関係
「自分の親世代、祖父・祖母の世代では歯を失っている人が多かったが、同世代ではあまりそのような人を見かけない」
そんな風に感じている方は多いのではないでしょうか。
参考:歯の喪失の実態 | e-ヘルスネット 情報提供(厚生労働省)
実際、厚生労働省の報告書によると、
50代後半から60代前半の平均の歯の本数: 15本(1981年)→23本(2011年)
60代後半から70代前半の平均の歯の本数: 9本(1981年)→19本(2011年)
ということで、過去30年の間に、各世代の「自分の歯」の本数は、8~10本程度増えているということになります。
ですから、先に書いたように「最近は歯を抜いている人が少ないように感じる」というのは、正しいのです。
一方で、永久歯の本数は合わせて32本、親知らず4本を除くと28本ですから、2011年の時点においても、50代後半から60代前半の方は平均で5本、60代後半から70代前半の方は平均で9本の歯を何らかの理由により失っている、とも言えます。
次に、どのような理由で歯を失っているのか、年代別に原因を見ていきましょう。
参考:歯の喪失の原因 | e-ヘルスネット 情報提供(厚生労働省)
どの世代でも見られるのは、「虫歯」を原因とする抜歯です。
若い世代(10代、20代、30代)では、「その他」が大きな割合を占めていますが、その多くは智歯(親知らず)の抜歯と考えられます。
40代後半以降の抜歯の原因第1位は「歯周病」です。
日本では成人の80%以上が歯周病になっていると言われていますが、糖尿病、高血圧症、心臓病といった生活習慣病と同様、サイレント・ディシーズ(静かな病気)と呼ばれており、気が付かない間に症状が進行して、気が付いた時には手遅れになるケースが多いようです。
若い方でも、歯科検診で「歯肉炎(歯ぐきの腫れや充血)」「歯周炎(歯と歯ぐきの境目の溝が深くなる)」と言われたら要注意!
放っておかず、早めに歯科医院で治療を受けることが、自分の歯を守ることにつながります。
※「破折:はせつ」は、「歯の根の骨折」という意味で、虫歯治療で神経を取った後に歯が乾燥して脆くなるのが主な原因です。
3. 絶対に歯を抜いたままにしておいてはいけない4つの理由
理由その1:口元の見栄えが悪い、見た目が気になる
前歯が抜けたら見栄えが悪いけど奥歯だったら見えないというのは誤りです。
試しに鏡の前で歯を出して笑ってみてください。
軽く微笑んだだけでも、前歯(左右・上下に3本ずつ、合わせて12本)だけでなく、奥歯まで見えるという方が多いのではないでしょうか?
歯が無いことがコンプレックスで、人前で思いっきり笑うことができない、というのは悲しいことですよね。
最近では「笑うことがストレスを解消し、それによって免疫力が高まり、大きな病気の予防につながる」という事実が様々な研究により明らかになっています。
理由その2:残りの歯が傾く、飛び出ることにより、噛み合わせ・歯並びが悪くなる
歯を抜けたままにしておくことは、周辺の歯や上下の噛みあわせる歯に対して悪影響を及ぼします。
歯が抜けて「すき間」ができると、両隣の歯は徐々にすき間の方へ傾き、倒れこんできます。
さらに、残っている歯が全体的にすき間の方へ移動することで、残っている歯の間にもすき間が出来るようになります。
また、抜いた歯の上下に噛みあわせていた歯は、相手がいなくなることによって延びて飛び出してきます。
その結果として、噛みあわせや歯並びが悪くなります。
すき間の上下左右の歯が全体的に移動することで、咀嚼力、つまり食べ物を噛む力が弱くなってしまうのです。
また、歯並びが悪くなることで、歯みがきをするのが難しくなり、虫歯や歯周病になる確率も高くなります。
1本の歯の治療を怠ったことで、さらに多くの歯を失うことに……そんなことになる前に、歯を抜いた(歯が抜けた)後は、しっかりと治療を受けましょう。
理由その3:発音がしにくくなる、滑舌が悪くなる
「歯が1本抜けたぐらいでは会話には影響がないだろう」と考えるのは誤りです。
前歯を失ってしまうと、主に「さ行」「た行」「な行」「ら行」が発音しにくくなると言われています。
また、奥歯を失うと、空気が漏れることにより、「き」「し」「ち」などの発音がしづらくなります。
自分では「平気」と思っていても、他の人が聞いたら違和感があるということもあります。
心配な方は、新聞や本を読み上げるのをご家族に聞いてもらい、チェックすると良いでしょう。
理由その4:認知症のリスクが高まる
「噛む」という行為によって、脳が活性化すると言われています。
具体的には、咀嚼行為により脳内の血流が良くなり、「感じる」「身体を動かす」「記憶する」「思考する」「意欲を高める」といった、生きていく上で欠かせない脳の活動を司る細胞が刺激されるのです。
逆に言えば、「歯がない」「うまく噛めない」という状態が続くことで、脳の老化が進んでいきます。
近年、高齢者の口腔ケアが重要視されていますが、神奈川歯科大学の研究によると、65歳以上の高齢者を対象として調査したところ、歯が20本以上残っている人と、歯が19本以下(入れ歯などの義歯は未使用)の人を比較すると、後者の方が1.85倍も認知症になりやすいことが明らかになっています。
4. 歯を抜いた後の治療方法は3種類。メリット・デメリット、費用、治療期間は?
何歳から入れ歯にする?年代別に見る入れ歯・ブリッジ・インプラントの割合
それでは、歯を抜いた方は、その後にどのような治療を受けているのでしょうか。
参考:歯の喪失の実態 | e-ヘルスネット 情報提供(厚生労働省)
50代後半から60代前半の方は、約50%がブリッジ、約20%が部分入れ歯、約5%が総入れ歯、約4%がインプラントの治療を受けています。
60代後半から70代前半の方は、約50%がブリッジ、約40%が部分入れ歯、約20%が総入れ歯、4%がインプラントの治療を受けています。
※複数種類の治療を受けている場合には両方の治療方法をカウントしているため、合計は100%を超過しています。
それでは、「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」とは、どのような治療方法なのでしょうか。順番に説明します。
入れ歯とは?
入れ歯は、義歯の中で最も歴史が古い治療方法です。
特に日本では「噛める入れ歯」が普及したのが世界で一番早く、江戸時代には木製入れ歯が庶民の間でも使われていたと言われています。
参考:歯の博物館
現在使われている入れ歯は、大きく分けると「総入れ歯(総義歯/全部床義歯)」と「部分入れ歯(部分床義歯/局部床義歯)」の2種類があります。
名前が示す通り、歯が残っていない場合に使うのが総入れ歯、歯が残っている場合に使うのが部分入れ歯となります。
総入れ歯は、「義歯床(ぎししょう)」と呼ばれる土台の部分と、「人工歯」で構成されています。
部分入れ歯は、「義歯床」「人工歯」の他に、「クラスプ」という金具部分があります。
総入れ歯は、土台である「義歯床」が歯ぐきの粘膜と吸着することで、安定します。
部分入れ歯は、 「クラスプ」を残っている歯に引っ掛けることで安定します。
※「食事をする時に噛むと痛い」といった症状が起こる場合には、歯ぐきにあたる部分に「裏打ち材」と呼ばれるシリコン素材のクッションを取り付けることも可能です。
入れ歯は保険適用で作ることが可能で、後述のブリッジやインプラントと比較すると最も安価ですが、「異物感がある」「噛む力が弱くなる」「見栄えが良くない」といったデメリットがあります。
一方で、保険適用外(自由診療・自費診療)で入れ歯を作る場合には、素材の選択肢が広がり、入れ歯の調整に十分な時間を掛けることが可能となるので、これらのデメリットが解消された入れ歯を作ることも可能となります。
入れ歯の治療期間は、虫歯や歯周病などの治療が終わった後、1ヶ月~2ヶ月程度で完成します。
ブリッジとは?
ブリッジは、主に失った歯の本数が少ない場合に用いられる治療方法です。
喪失歯の両隣に残っている歯を削って土台を作り、そこにブリッジの名前の通り、橋を架けるように人工歯を被せます。
ブリッジは、「ポンティック」と呼ばれる人工歯と、土台の歯に被せる「クラウン」と呼ばれる人工歯、それらをつなぐ「連結部」で構成されています。
ブリッジは保険適用で作ることが可能で、部分入れ歯と比較するとやや高価ではありますが、インプラントと比較すると非常に安価です。
また、部分入れ歯と比較すると、安定性が高く異物感が少ないというメリットがあります。
ただし、ブリッジは、失った歯の両隣の健康な歯を土台とするために削る必要があり、土台の歯には「大きな負担が掛かる」「歯垢が蓄積される」ことで虫歯や歯周病になりやすくなるというデメリットもあります。
ブリッジの治療期間は比較的短く、早ければ1~2週間で治療が完了する場合もあります。
インプラントとは?
インプラントは、失われた歯の根の代わりに人工歯根を埋め込み、その上に義歯を取り付ける治療方法です。
手術により歯ぐきを切開して、顎の骨の一部「歯槽骨(しそうこつ)」に人口歯根を埋め、その上に「アバットメント」と呼ばれる土台を取り付け、「クラウン」と呼ばれる人工歯を被せます。
インプラントは、部分入れ歯やブリッジと比較すると、噛み心地や見た目は「最も自分自身の歯に近い」と言われています。また、ブリッジとは異なり、健康な歯を敢えて削る必要もありません。
ただし、デメリットは、その費用です。
インプラントは保険適用外、つまり自由診療(自費診療)でのみ治療を受けることが可能ですが、入れ歯やブリッジと比較すると、1本あたり平均で30万円~40万円と非常に高価になっており、失った歯の本数が多ければ多いほど、経済的な負担が大きくなります。
また、インプラントは手術を伴う治療であることから、以下の様な疾患を持っている方は、安全上の理由により、治療を受けることができない可能性があります。
- 高血圧
- 糖尿病
- 急性肝炎、肝硬変、重度の肝疾患
- 心不全、心筋梗塞、重度の心臓病
- 血液透析を受けるような重度の腎疾患
- 骨粗鬆症
インプラントの治療期間は、手術後に人工歯根と顎の骨が結合するまで3か月から6か月程度の期間を空ける必要があるため、全体では4か月から1年近く掛かる場合もあります。
インプラントは術後のメンテナンスが大切
インプラント手術をして人工歯根を埋め込んだ後、残念ながら撤去しなければならない場合があります。
日本歯科医学会の調査によると、インプラントを埋め込んでから10~15年後に残っている確率は、上のあごで90%程度、下のあごで94%となっています。
インプラントの除去が必要となる原因は、主に「歯周炎」です。
インプラントを埋め込んだ場合は、以降、最低でも年に2回は歯科医院でメンテナンス(清掃)を受ける必要があります。
その受診を怠ると、歯垢が蓄積されて歯ぐきが腫れ、自分の歯(天然歯)よりも短い期間で歯周炎が進行すると言われています。
決して安くはないインプラント治療なのですから、寿命を少しでも延ばすためには、自分の歯(天然歯)以上に丁寧な手入れをするようにしましょう。
「格安」「激安」のインプラントを謳う歯科医院には要注意!
インプラントの相場は1本あたり平均で30万円~40万円と書きましたが、インターネットで検索すると「格安」「激安」をウリにしている歯科医院が存在するのも事実です。
もし、そのような歯科医院を探そうとしている方がいたら、1回立ち止まって、よく考えてみてください。
インプラント治療は「外科手術」です。
「格安・激安で外科手術をやります」と看板に書いてある病院を見て、あなたはその病院に行こうと思いますか?
2007年には東京都内の歯科医院でインプラント治療を受けた70歳の女性が、手術中の動脈損傷により死亡するという事故も発生しています。
参考:歯科インプラント手術死亡事故の原因と結果、教訓
安心してインプラント治療を受けられる歯科医院は「医師・スタッフの経験が豊富である」だけでなく、
「設備が整っている」
「手術時の衛生管理が整っている」
「信頼できるメーカーのインプラントを使用している」
「保証制度がしっかりとしている」
といった条件を満たすことが必要です。
これらを全て満たすためには、それ相応のコストが掛かるということが理解できると思います。
ですから、インプラント治療を受ける歯科医院を探す時には、「安い」金額で受けられる診療所ではなく、「適正な」金額で受けられる診療所を探すことを心がけましょう。
5. 入れ歯・ブリッジ・インプラントのどれが良いか分からない……そんな方のための選び方のヒント
自分の歯が1本も残っていない場合の治療方法の選び方
歯が1本も残っていない場合は、健康な歯を土台とするブリッジ治療は受けられないので、「総入れ歯」か「インプラント」が選択肢として残ります。
前述の通り、インプラントの相場は1本あたり平均で30万円~40万円ですから、全ての歯をインプラントにする場合の費用は数百万円となります。
経済的にそれだけの費用を負担できるのであれば「インプラント」を検討すべきですが、それ以外の場合は「総入れ歯」を選択することになります。
※2002年以降、インプラントを1~2本埋め込んで入れ歯を固定させる治療法「インプラントオーバーデンチャー」も急速に普及しています。
自分の歯が1本以上残っている場合の治療方法の選び方
健康な歯が残っている場合、特に失った歯の本数が少ない場合は、「部分入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」から選択することになります。
以下の条件を満たす場合には、まずインプラントを検討してみるのが良いでしょう。
- 失った本数分のインプラント治療費用を負担することが可能である
- 骨粗鬆症や重度の糖尿病などの疾患を抱えていない健康体である
- 定期的にメンテナンスのために歯科医院へ通院することが可能である
若い年代(30代、40代、50代)の働き盛りの方であれば、これらの条件を満たしている方は多いことでしょう。
一方で、60代、70代、80代と年齢が上がるにつれて、経済的な事情が厳しくなる、様々な病気に掛かる、歯科医院への通院が難しくなるといった事情が出てきます。
そのような場合には、「部分入れ歯」または「ブリッジ」を検討すべきでしょう。
「部分入れ歯」と「ブリッジ」の比較ですが、一番重要なのは、失った歯の「本数」と「位置」です。
ブリッジで保険適用となるのは、以下の条件に当てはまる場合です。
・失った歯の位置が前歯の場合:上の歯であれば連続して2本まで、下の歯であれば連続して4本まで
・失った歯の位置が奥歯の場合:連続して2本まで
上記の条件を満たす場合は、保険適用内でブリッジ治療を受けることが可能です。
(保険適用外であれば、失った歯が上記の条件以上の場合でもブリッジにすることは可能です。)
もう1点、「入れ歯」と「ブリッジ」を比較する上で考慮すべきポイントは「残っている歯への影響」です。
ブリッジは健康な歯を削ってその上から「クラウン」を被せますが、土台の歯には歯垢が蓄積しやすい、通常の歯の1.5~2倍の負担が掛かる、といった点から、将来的には健康であった土台の歯を失う可能性が高いというのが実情です。
※入れ歯の場合は取り外して掃除をすることが可能なので、より衛生的であると言えます。
「入れ歯は後戻りできる治療」
「ブリッジは後戻りできない治療」
という考え方もできるので、どちらにするか迷っている方は、
①まず入れ歯を試してみる
②どうしても「違和感がある」「上手く食べ物が噛めない」場合にはブリッジを検討する
という順番で治療を受けるのも良いでしょう。
6. 「違和感がある」「噛みにくい」「見た目が悪い」は昔の話?入れ歯の最新事情
入れ歯のデメリットとして、「異物感がある」「噛む力が弱くなる」「見栄えが良くない」といった点を挙げました。
保険適用内で作成する入れ歯にこのようなデメリットがあることは、歯科医師であれば誰でも認めることです。
しかし、自由診療(自費診療)であれば、このようなデメリットを克服した、最新技術を用いた入れ歯を作ることが可能です。
最新の入れ歯について、特長と価格を紹介していきます。
※以下で紹介する料金はあくまで目安です。口内の状況により、入れ歯の作成に必要な費用は変動するので、歯科医師に相談をして見積もりを貰うようにしましょう。
汚れや臭い(口臭)が付きやすい…そんな悩みを解消する「イボカップ床」の入れ歯
保険適用で作る入れ歯に汚れや臭いが付きやすくなる原因の一つが、土台に使うプラスチックの「気泡」に入り込んだ細菌であることをご存知でしょうか?
「イボカップ床」は同じプラスチック素材の床(土台)ですが、通常の入れ歯と比較すると、より気泡を少なくすることができるので、保険適用の入れ歯と比較して、「汚れにくい」「臭いが付きにくい」入れ歯となり、さらに強度も増すので、壊れにくいという特長もあります。
厚さは保険適用の入れ歯が約3mmであるのみ対して、イボカップ床の場合は1.5~2mmと少し薄くなるので、異物感もやや軽減されます。
イボカップ床入れ歯の費用は、総入れ歯で約30万円、部分入れ歯で約20万円〜が相場です。
違和感がある、食べ物が食べにくい…そんな悩みを解消する「金属床」の入れ歯
プラスチックと金属。口の中に入れた時に違和感があるのは、どちらの素材だと思いますか?
「金属の方が固くて異物感がありそう……」と思われる方もいるかもしれませんが、入れ歯に関して言えば、土台がプラスチック製の入れ歯と比べて、金属製の入れ歯の方が違和感を軽減することが可能です。
その秘密は、入れ歯の「厚さ(薄さ)」にあります。
プラスチック製の入れ歯の厚さが約3mmであるのに対して、金属製の入れ歯の場合は約0.5mmまで薄くすることが可能です。
金属製入れ歯の特長は薄いだけではありません。
素材の特性上、温度が伝わりやすくなっているので、食べ物や飲み物の「熱い」「冷たい」を感じやすくなります。
冷たいビールを飲む時、暖かい味噌汁やコーヒーを飲む時を想像してみてください。
食べ物や飲み物の”おいしさ”を感じるためには、「味覚」や「におい」「見た目」だけでなく「温度」がとても大切であることが分かるでしょう。
金属の種類には色々とありますが、一般的には「コバルト」という金属が多く使われています。
「コバルト」と聞くと「コバルトブルー」を想像されるかもしれませんが、金属そのものの色は銀白色となっています。
金属床(コバルト)入れ歯の費用は、総入れ歯で約40万円〜、部分入れ歯で約25万円〜となります。
また、金属アレルギーを持っている方の場合は、「チタン」という金属がおすすめです。
チタンはペースメーカーや人工関節など、「体内に埋め込む」用途に広く用いられていることからも分かる通り、「金属アレルギーを起こしにくい」という特長があります。
(ただし、絶対に金属アレルギーにならないわけではありませんので、心配な方は事前に金属アレルギーパッチテストを受けると良いでしょう)
金属床(チタン)入れ歯の費用は、総入れ歯で約55万円〜、部分入れ歯で約30万円〜となります。
入れ歯だと他人に気付かれたくない…そんな悩みを解消する「ノンクラスプデンチャー」
「入れ歯を付けている人」を思い浮かべた時、最も特徴的なのは、「クラスプ」と呼ばれる銀色の金属(金具)部分なのではないでしょうか。
金属(金具)部分は「バネ」とも呼ばれていて、残っている自分の歯に引っ掛けることで部分入れ歯を固定する役割を果たしています。
この「クラスプ」を金属(金具)ではなくプラスチックにした入れ歯が「ノンクラスプデンチャー」です。
※別名として、「スマイルデンチャー」や「ナチュラルデンチャー」といった呼び方もあります。
クラスプが金属部分の代わりに弾力のあるプラスチックとなっており、自身の歯ぐきの色と同化して、「目立たない」「入れ歯に見えない」ことが最大の特長となっています。
ただし、口の中の状態によっては、「ノンクラスプデンチャー」でしっかりと固定できない場合もあるという点には気をつけましょう。
ノンクラスプデンチャーの費用は、約22万円〜が相場と言われています。
7. 「理想の入れ歯」を手に入れるために。歯科医院の選び方・名医の探し方
インプラント対応の歯科医院は増えているが、入れ歯治療に強い歯科医院は減る一方。その理由は?
20~30年程前までは、義歯治療といえば入れ歯が主流でしたが、現在はインプラント市場が急速に拡大しています。
その背景を考える上で、インプラントの治療技術や素材の向上はもちろんですが、忘れてはいけないのは、「歯科医院の増加」です。
「全国の歯科医院の件数は、全国のコンビニの件数よりも多い」ということを知っていますか?
2016年6月のデータでは、コンビニエンスストアの件数が54,157件であるのに対して、歯科診療所の件数が68,875件となっています。
歯科医院経営の観点で考えると、このように「供給過多」の状況では、「より多くの患者を集める」ことよりも「患者1名あたりの単価を上げる」ことが重視される傾向にあります。
その結果として、インプラント治療を受けられる歯科医院は増加する一方で、専門的に入れ歯の治療を受けられる歯科医院は減少しているというのが事実です。
「入れ歯が得意」な歯科医院を探すための3つの方法
それでは、安心して入れ歯を作ることが出来る歯科医院は、どのように探せば良いでしょうか?
インターネットを活用して、安心して入れ歯の治療を任せられる歯科医院を探す方法を紹介します。
方法その1:歯科医師の専門をチェックする
歯科医院のホームページには、多くの場合、歯科医師のプロフィール・経歴が載っているので、それをチェックします。
失った歯を人工物で補う治療を専門用語では「補綴(ほてつ)」と呼びます。
「補綴(ほてつ)」は、少し難しい言葉ですが、「補」は「おぎなう」、「綴」は「つなぎあわせる」という意味で、主に医療において「身体の欠損した部分を人工物で補う」という意味合いで使われます。
まずは「経歴」や「所属学会」の欄に「補綴」の文字があるかどうかを探しましょう。
特に、「有床義歯補綴学」「部分床義歯補綴学」といった分野を専門としている方は、即ち「入れ歯の専門家」であると言って良いでしょう。
方法その2:院内に歯科技工士のスタッフが所属していることを確認する
歯科医院のホームページをチェックする際は、歯科医師と合わせて、「歯科技工士の所属有無」にも注目しましょう。
「歯科技工士」とは、歯の詰め物や被せ物、差し歯や入れ歯などの義歯を作る、国家資格を持った技術者です。
歯科技工士が常駐していない歯科医院では、入れ歯の型取りを歯科医師が行った後に、院外の歯科技工所へ発注することになります。
その場合は、歯科技工士が患者の口内や顔を直接見ることができません。
また、入れ歯の修理や調整が必要になった場合には、ある程度の期間が必要となります。
それに対して、歯科技工士が所属している歯科医院では、患者に対して直接、入れ歯の噛み合わせや歯の色などを確認でき、修理や調整も診察中に対応することが可能です。
また、院内に歯科技工士が所属していない場合でも、「入れ歯を専門とした歯科技工士・歯科技工所と契約している」とホームページに明記している歯科医院を優先的に選ぶと良いでしょう。
方法その3:ズバリ「入れ歯専門」の病院や歯科医院を探す
大学病院では、診療科として「義歯外来」を置いているところがあるので、近くにそのような病院がある場合は選択肢の一つとして検討してみると良いでしょう。
また、決して数は多くありませんが、入れ歯を専門としている歯科医院もあります。
Googleなどの検索エンジンで「入れ歯 専門」と検索して、通える範囲にそのような歯科医院があるかどうか、調べてみましょう。
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