通年性アレルギー性鼻炎の原因はダニアレルギー!「舌下免疫療法」効果・副作用・費用・開始時期
部屋の掃除や埃っぽい場所に行くと、鼻水がダラダラ、くしゃみが中々止まらなくなることはありませんか?
それって、もしかしたら「ダニアレルギー」によって、通年性アレルギー性鼻炎になっているかもしれません。
2014年に行われた厚生労働省の調査では、通年性アレルギー性鼻炎を持っていても、約40%の人が何も治療をしておらず、放置したままであることが分かりました。
そんなダニアレルギーによる通年性アレルギー性鼻炎に対して、今や完治する可能性がある治療「舌下免疫療法」があるのです!
今回は、ダニアレルギーによって生じる「通年性アレルギー性鼻炎」の症状や原因・予防方法とダニアレルギーの根治治療として話題の「舌下免疫療法」について、治療薬(アシテア・ミティキュア)や治療開始時期・治療期間・副作用など、東京都小平市にある「喜平橋耳鼻咽喉科」村川 哲也先生に解説いただきました。
1.一年中アレルギー症状が出る「ダニアレルギー」の症状・原因・予防法
花粉の季節だけといった特定の季節だけでなく、一年中アレルギー反応が出てしまうのは、本当につらいですよね。
鼻アレルギー診療ガイドライン(2016年版)によると、国民の約1/4(23.4%)の人が通年性アレルギー性鼻炎であるというアンケート結果が報告されています。
通年性アレルギー性鼻炎の症状:くしゃみ・鼻水・鼻つまり
通年性アレルギー性鼻炎とは、主にダニがアレルギーの原因物質(アレルゲン)として鼻粘膜に付着することで、くしゃみ、鼻水、鼻閉などのアレルギー症状が一年中出現する病気です。
他にも、動物の上皮、真菌(カビ)、昆虫なども原因となり得ます。
■ダニアレルギーを発症する年齢層
発症の低年齢化が進んでいます。
6歳前後から発症する患児が急激に増加しますが、1~2歳で既に症状が出現していることもあります。
日本耳鼻咽喉科学会の統計では、小学校で9.3%、中学生で11.1%と報告されています。
■ダニアレルギーと「気管支喘息」「アトピー性皮膚炎」との関係
ダニは、アレルギー性鼻炎以外にもアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患の原因となっています。
また、気管支喘息とアレルギー性鼻炎は、同一の器官(気道)に炎症が発生するアレルギー性疾患という共通点があることから、密接に関連している病気として、近年”one airway, one disease”という概念が提唱されるようになりました。
one airway, one disease概念とは?
上気道のアレルギー性鼻炎と下気道の喘息は、臨床的・病態論的に相互に関連しているため、総合的に扱うとする概念。
アレルギー性鼻炎に対する早期治療は、喘息などのアトピー疾患全般によい影響をもたらすとされる。
2001 年にARIA*1(Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma)において提唱された概念。
*1ARIA:Allergic Rhinitis and its Impact on Asthmaの略。世界保健機関(WHO)と協力して活動する非政府組織(NGO)で、アレルギー性鼻炎と喘息などの影響について、調査研究している。
(引用)One airway,one diseaseからみた喘息と鼻副鼻腔炎:耳鼻咽喉科からのアプローチ
さらに、気管支喘息とアレルギー性鼻炎の合併率は高く、気管支喘息の50~80%にアレルギー性鼻炎が、アレルギー性鼻炎の30~40%に気管支喘息が合併しているとする調査結果があります。
(参考)鼻炎症状と喘息症状の連関についてのアンケート調査|アレルギー59(6),688-698,2010
こちらのページでは、埼玉医科大学アレルギーセンター・耳鼻咽喉科・呼吸器内科合同で、鼻症状と喘息症状の連関頻度および影響について行われたアンケート調査結果が考察されています。
ハウスダストとほぼ一緒「ダニアレルギー」発症の原因・増加する時期
ハウスダストとは、アレルギーの原因物質の混合物で、99%以上がダニです。
残り1%に真菌、昆虫等が含まれます。
つまり、ハウスダストアレルギーの原因は、ほとんどがダニであり、微量に他の原因も含まれます。
また、アレルギーの検査をすると、ハウスダストとダニの陽性率は99%程度一致しますので、ダニとハウスダストはほぼ同じと考えて下さい。
■ダニアレルゲンが増加する時期
生きているダニは、「夏」に最も数が多くなりますが、アレルギーの原因になるわけではありません。
アレルギーの原因となるのは、ダニの死骸や糞便です。
そのため、ダニアレルゲンとしては、夏に増えたダニが死ぬ「初秋から晩秋」にかけて最も増加します。
防ダニシーツや布団乾燥機の活用を!ダニアレルギー予防対策
布団・ベッドのダニは、繊維の奥深くに潜む為、完全に除去することはできません。
従って、最初からダニが繊維に侵入することのない防ダニシーツがお勧めです。
「薬剤加工」「高密度織り」「防水加工」の加工方法がありますが、この中でも防水加工による防ダニシーツが最もお勧めです。
また、ダニを死滅させるには、天日干しで布団の表面温度が50度を越える必要があります。
冬は温度が下がり、効果は低くなるので、布団乾燥機の利用をお勧めします。
空気清浄機やふとんクリーナーは、ダニアレルギーに効果的?
空気清浄機は空気中にいるダニの死骸や糞を吸い取ることはできますが、カーペットなどの繊維の中にいるダニは除去できず、カーペットの上を歩くと、再びダニが空気中に舞い上がります。
従って、ダニアレルギーの方はカーペットよりもフローリングの方が、掃除機や雑巾掛けでダニを効率よく除去できます。
また、ふとんクリーナーは、ダニの糞や死骸などのハウスダストを除去するので、天日干し・布団乾燥機の後に使用すると効果的です。
2.子供もOKに!ダニアレルギー「舌下免疫療法」効果・治療期間・費用
つらいダニ(ハウスダスト)アレルギー症状でお悩みの方、薬物治療を行ってもあまり効果が出ない方などは、一度治療を検討されてみてはいかがでしょうか?
根治治療「ダニアレルギー舌下免疫療法」の特徴と効果
免疫療法とは、病気の原因となるアレルゲン(ダニアレルギーの場合:ダニ抽出エキス)を少量から増量して体内に入れ、体質を徐々に改善させる治療です。
ダニアレルギーに対する免疫療法は、2015年から12歳以上に対して開始され、2018年2月から11歳以下も保険適応に追加されました。
免疫療法は、アレルギーを完治させる唯一の根治治療です。
ただし、全員が無症状になる訳ではありません。
数割は完治しますが、完治しなくても症状が非常に軽くなり、薬を減らすことができます。
完治20%、非常に効果的30%、効果あり30%、効果なし10~20%程度と予想されます。
また、効果が現れてくるには数か月は必要で、治療開始から1年以上かけて効果が高まっていくものとしています。
ダニアレルギー舌下免疫療法で使われる治療薬・治療期間・開始時期
ダニアレルギー舌下免疫療法で使われる治療薬には、アシテアとミティキュアの2種類があります。
どちらもヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニが50%ずつ含まれており、内容、有効率、副作用ともに違いはありません。
■治療薬「アシテア」「ミティキュア」の特徴
また、気になる味ですが、アシテアとミティキュアどちらも「ほとんど無味」です。
注意点は、ラムネのように唾液に接触するとすぐに溶けますので、濡れた手で触らないように気を付けて下さい。
■ダニアレルギー舌下免疫療法の治療期間
5年間継続が必要です。
有効か否かは1~2年経たないと分からず、短期間で治療を終了すると、治療終了後の効果が持続しないと考えられています。
また、ジョギングと同様に風邪を引くなど体調不良の際は休んで、回復したら再開します。
毎日1ページしかできない問題集のようなものと思って下さい。
休んだら終了がそれだけ遅くなりますが、多少間隔が空いても(維持期であれば、数か月)再開できます。
初回投与の2週間後に再診していただき、問題がなければ1ヶ月毎に再診していただきます。
■ダニアレルギー舌下免疫療法の治療開始時期
スギ花粉症と異なり季節性がないので、いつからでも開始できます。
保険適用で1日60円!ダニアレルギー舌下免疫療法の費用
薬価は3割負担の方で、1日に約60円です。
東京都内など、”子ども医療費助成”がある自治体にお住まいのお子さんの場合には、無料もしくはわずかな負担金で行うことも可能です。
子どももOKに!ダニアレルギー舌下免疫療法の治療方法・通院回数
これまで、ダニアレルギー舌下免疫療法は12歳以上を対象としていましたが、2018年2月より11歳以下の子どもにも適応となりました。
- 舌下(舌の下)に治療薬(アシテア/ミティキュア)を入れます。
- すぐに薬が溶けてきますが飲み込まず、アシテアは2分間、ミティキュアは1分間経ったら飲み込みます。
→飲み込んだ後5分間は、うがいや飲食NG。 - この治療を1日1回、自宅で行います。
なお、唾液に溶けた薬を2分間飲み込まずに待つ必要があるので、5歳以上のお子さんを想定していますが、待てれば4歳児でも可能な場合もあります。
治療薬に含まれるダニエキスの用量は、アシテアの場合3日目から、ミティキュアの場合2週目から3倍に増量となります。
■ダニアレルギー舌下免疫療法の治療回数
初回のみ院内で服用して、異常がないか30分間、院内での経過観察が必要となります。
翌日からは自宅で服用し、2週間後に再診が必要です。
その後は、1か月に1回の定期通院となります。
3.ダニアレルギー舌下免疫療法がおすすめの人・受けられない人
では、ダニアレルギー舌下免疫療法は、誰でも受けられるのでしょうか?
前述した通り、免疫療法はあえて病気の原因となるアレルゲン(ダニアレルギーの場合:ダニ抽出エキス)を体内に入れ、体質を徐々に改善させる治療なので、ダニアレルギー全ての人が治療できる訳ではないのです。
ダニアレルギー舌下免疫療法がおすすめの人
舌下免疫療法の事前検査として、採血検査でダニアレルギーと確定した方が適応となります。
- ダニアレルギー性鼻炎で、症状が強くでていて、薬を飲んでも効果が少ない方。また、少しでも症状を軽くしたい・薬を減らしたい方
- 薬を内服すると、眠気など困る副作用が出てしまう方
- 将来にわたって、症状に悩むのが心配な方
- アレルギー症状が勉強や仕事に支障となるので、少しでもよくしておきたい方
- 鼻みずやくしゃみが問題となる職種についている方
- 将来に妊娠した際に薬が使えないのが不安な方
鼻症状だけでなく、ダニが原因の気管支喘息の場合、気管支喘息の症状も改善されています。
また、臨床試験は5歳から65歳が対象でしたが、実際には投与できる方なら年齢の下限も上限もありません。
喘息発作中はNG!ダニアレルギー舌下免疫療法が受けられない人
- 喘息発作が出現している間は治療できません。
→喘息を持っている人でも、喘息症状が出現していなければ、治療できます。 - ステロイド(副腎皮質ホルモン)の飲み薬、免疫抑制剤、β遮断薬(高血圧治療)、三環系抗うつ薬との併用は出来ません。
→ステロイドでも点眼・鼻噴霧・吸入・軟膏は併用可能。 - 重篤な心臓疾患、がんの治療中、妊娠中は治療できません。
- スギ花粉の舌下免疫療法とは、同時に開始できません。
→一方を開始して数ヶ月間異常がなければ、朝と夜に分けて併用できます。
4.ダニアレルギーの舌下免疫療法の副作用・出やすい時期
「舌下免疫療法」は、基本自宅で行う治療法ですので、患者さんが主体となって治療を進めていく形となります。
また、治療期間も長くなりますので、服用方法や注意点などよく理解して、分からない点は必ず医師に確認することが大切です。
ダニアレルギー舌下免疫療法の副作用や起こる割合・時期
ダニアレルギーのある方の舌下にダニのエキス剤を投与しますので、痒みや腫れ・違和感など口腔内の副作用が出現することがありますが、98%は軽症です。
残り2%も生命にかかわるような重篤な副作用は、報告されていません。
また、くしゃみ・鼻水といったアレルギー性鼻炎症状も出やすくなります。
軽減しない場合は、抗ヒスタミン剤等のレスキュー薬を用います。
なお、投与開始直後が最も副作用が出現しやすく、1ヶ月を経過すると、殆どの場合、副作用は消失するか著明に軽減します。
5.ダニアレルギー舌下免疫療法が受けられる病院「喜平橋耳鼻咽喉科」
治療実績は約500例!喜平橋耳鼻咽喉科の「ダニアレルギー舌下免疫療法」
当院ではダニアレルギーの舌下免疫療法を約500例、スギ花粉症の舌下免疫療法を約700例行っています。
即効性はないものの、緩やかに鼻症状が軽減され、気管支喘息の症状が改善されている方もいらっしゃいます。
また免疫療法治療開始後、ご多忙で月1回の通院が困難な場合でも、副作用がないと確認できている方には、自宅に処方箋を郵送で送ることも可能な「遠隔診療」がご利用いただけます。
5年間継続するのは大変ですが、人生100年の時代を迎えますので、少しでも若いうちに開始して、ダニアレルギーのない生活を送って下さい。
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