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2017年2月27日更新

食物アレルギーを食べて治していく経口免疫療法の方法や注意点、実施病院

食物アレルギーの経口免疫療法は、研究段階の治療法ですが一部の大病院の小児科・アレルギー科で行われています。決められた量を少しずつ食べて、寛解を目指します。食物経口負荷試験で原因食物の特定が必要です。本人の年齢や体質に応じて治療が行われます。
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今の日本では、国民の3人に1人は何らかのアレルギーを有しているとする報告があります。

参照:アレルギー疾患の現状等-厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課

中でも、食物アレルギーは乳児期や乳幼児期に発症しやすいとするデータがあります。

参照:第2章疫学-食物アレルギー診療ガイドライン2012ダイジェスト版

卵や牛乳、小麦アレルギーは多くの場合は成長するにつれて症状がおさまりますが、症状がおさまらない子もいます。

現在、アレルギー症状が改善しない子供に対する、”アレルギーの原因となる食べ物を少しずつ食べていく”治療法「経口免疫療法」の研究が進んでいます。
この記事では、食物アレルギーの原因・検査方法と、「経口免疫療法」の進め方や注意点、治療を実施している病院についてご紹介します。

1. 食物アレルギーは鶏卵・牛乳・小麦で6割!?年齢別から分かるアレルギーの特徴

食物アレルギーの定義「食物に対する免疫の過敏な反応」

食物アレルギーについて日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会が次のように定義しています。

食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」をいう

引用元:第1章定義と分類-食物アレルギー診療ガイドライン2012ダイジェスト版-日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会

私たちが持っている免疫という仕組みは、本来は有害なウィルスや細菌から身体を守るために働いています。

しかし、免疫機能の未熟さや消化吸収機能が未発達であるといった理由から、無害であるはずの食べ物も異物として認識してしまう場合があります。

免疫機能が食べ物を異物として認識してしまうと、身体に様々な症状が表れます。

代表的な症状は、アナフィラキシーやじんましん、皮膚炎です。

こうして、身体を守るはずの免疫が無害な食べ物についても反応してしまうようになった状態を「食物アレルギー」といいます。

食中毒や急性胃腸炎、乳糖不耐症とは異なる

食べ物を食べて、腹痛や吐き気などの症状が出ても食物アレルギーであるとは限りません。

例えば、一部のキノコやフグの特定の部位に含まれる毒による症状や、腸炎ビブリオやo-157などの細菌やウィルスによる急性胃腸炎、牛乳を飲んだ時にお腹を下してしまう乳糖不耐症とは区別する必要があります。

自己判断で食物アレルギーであると決めつけず、きちんと医療機関を受診することが大切です。

食物アレルギーの原因食物は鶏卵や牛乳、小麦、ピーナッツなど様々

食物アレルギーの原因食品は様々ですが、日本では鶏卵・牛乳・小麦が三大主要アレルギー原因食品とされ、全体の約6割を占めています。

現在、食物アレルギーの症例数の多い鶏卵、牛乳、小麦の3品目に加えて、症状が重篤なそば、落花生(ピーナッツ)、甲殻類(えび、かに)の計7品目は消費者庁の定めるアレルギー表示において原材料名の表示が義務付けられている特定原材料です。

参照:アレルギー表示について-消費者庁

graph_cause2016

引用元:食物アレルギーの原因食物-食物アレルギーねっと

食物アレルギーの原因食品は、鶏卵、牛乳、小麦が全体の6~7割を占めています。

ですが、年齢を重ねると原因食品は変わってきます。

引用元:第2章疫学「表2-1年齢別原因食品」-食物アレルギー診療ガイドライン2012ダイジェスト版

この表は、食物アレルギーを新たに発症した人を原因食品と年齢で区別したものです。

鶏卵や牛乳は6歳までの乳幼児期では大きな割合を占めていますが、年齢が大きくなるにつれその割合は減っていきます。

鶏卵や牛乳に代わり、エビやカニなどの甲殻類やソバ、果物類、ピーナツが年齢が大きくなるにつれ割合が増えていきます。

また、小麦はどの年齢層においても、常に一定の割合で発症が確認されています。

2. 食物アレルギーの検査は参考程度?原因食物の特定や量の確認

食物アレルギーの診断では、必要に応じていくつかの検査が実施されます。

①問診

問診では、主に以下の内容について医師から聞かれます。

  • 疑われる原因食物(食卓に並んでいた食材や、発症の数時間以内に食べたおやつなど)
  • 摂取時の症状
  • 摂取してからの時間
  • 乳児期の栄養方法(母乳や離乳食の内訳)
  • 食習慣
  • 環境因子
  • 既往歴
  • アレルギー性疾患の家族歴
  • 服薬状況(特に成人の場合、「β遮断薬」や「非ステロイド性抗炎症薬」)
  • 運動との関連(運動中に発症したなど)

食物アレルギーを発症した場合に備えて、日頃から食事を食べた日付や内容、症状を記録する食物日誌をつけることが大切です。

食物日誌は、原因食物の発見だけでなく、治療の経過観察にも役立ちます。

医師が子供の状態を把握したり治療の流れを決めるときにも、食物日誌はとても大切な情報になります。病院に行くときは必ず持って行くようにしましょう。

引用:食物日誌を付けよう-大鵬薬品

②血液検査

血液の中にアレルギー反応を引き起こす血中抗原特異的IgE抗体が、それぞれの食物に対してどれくらいあるのかを調べます。

測定の結果はクラス0からクラス6までの7段階で示され、クラスが大きくなるほど血中抗原特異的IgE抗体の量が多いことを表します。

このとき気を付けなければならないのは、血中抗原特異的IgE抗体の値と食物アレルギー症状が発症する割合は必ずしも相関関係があるとは限らないことです。

つまり、クラス6の場合でも発症しないこともあれば、クラス1でも発症してしまうことがあります。

ですので、血液検査は参考程度に考えた方がいいでしょう。

③皮膚テスト(プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト)

腕あたりの皮膚にアレルゲンのエキスを1滴垂らして、プリック針もしくはスクラッチ針で皮膚表面に小さな傷をつけます。

皮内テストの場合、アレルゲンのエキスを皮膚表面に注射します。

15分後、皮膚の赤みや腫れの様子からアレルゲンを判定します。

④食物除去試験

アレルギーの原因がある食物だと疑われる場合、疑わしい食物を2~4週間完全に除去して症状がおさまるか観察します。

食物を完全に除去するとは、その食物を全く食べないことや触れないことです。母乳栄養で育てている赤ちゃんの場合、お母さんも除去を行う必要があります。

医師の判断のもと、除去する食物や期間をしっかりと定めて、きちんと守るようにしましょう。

⑤食物経口負荷試験

食物経口負荷試験では、食物アレルギーの原因であると疑わしい食物を実際に食べることで症状や様子を観察します。

食物経口負荷試験の目的は三つあります。

  1. アレルギー症状を引き起こす食物(アレルゲン)の特定
  2. 耐性獲得(原因食物を食べられるようになるかどうか)の判断
  3. 症状が引き起こされる閾値の確認

アレルギー症状やアナフィラキシーが引き起こされるリスクがあるため、必ず特定の医療機関で受診しなければなりません。絶対に自宅で行うことは止めてください。

具体的な施設基準は次の通りです。

1.小児科を標榜している保険医療機関

2.小児食物アレルギーの診断及び治療の経験を10年以上有する小児科を担当する常勤の医師が1名以上配置されている

3.急変時等の緊急事態に対応するための体制その他当該検査を行うための体制が整備されている

引用元:診断-食物アレルギーの診療の手引き2014

また、全国の食物経口負荷試験を実施している病院をご紹介します。来院の際、詳しい内容などは必ず病院へ事前にご確認ください。

参照:全国の食物経口負荷試験を実施している病院を「病院口コミ検索Caloo」で探す

2017年現在、食物経口負荷試験は入院と外来のどちらの場合も保険適用が可能です。(9歳以上の子供の外来の場合は除く)

テストの方法は実施している医療機関で様々ですが、基本的にごく少量から始めて15~30分毎に摂取量を段階的に増やしていきます。

卵の場合、1gから始めて最終的に1/2個~1個まで増やします。

牛乳の場合、1滴から始めて最終的に30ml程度まで増やします。

小麦の場合、うどん0.5g(2㎝)程度から始めて最終的に30g程度まで増やします。

食物経口負荷試験では、2つ以上の食物を同時に進めることは出来ません。

ですので、事前に①~④の検査で原因食品を絞り込んでから食物経口負荷試験に臨むことで、本人や料金の負担を減らすことができます。

除去治療や経口免疫療法などのアレルギー治療を進める上で、原因食品や症状の具合を知ることや、耐性獲得の可能性を見極めることは非常に重要です。

3. 食物アレルギーの新たな治療法「経口免疫療法」の手法や手順

食物アレルギーの原因食物(アレルゲン)に対して、避けるのではなく食べることで、問題なく食べられるようになること(耐性獲得)を目指す「経口免疫療法」という新しい治療法の研究が進められています。

経口免疫療法の2つの手法とメリット・デメリット

食物アレルギーの経口免疫療法では、「緩徐免疫療法(slow OIT)」と「急速免疫療法(rush OIT)」の2つの治療法があります。

緩徐法と急速法の主な違いを表にまとめました。

治療期間や増量のタイミングは、患者さんの体質や受診する医療機関によって異なることがあります。

緩徐法 急速法
治療期間 半年~数年 数ヶ月~半年
病院を受診するタイミング 初めの1回~数回のみ 増量期の間は入院
負荷回数 1日1回を週2回以上 1日複数回
増量のタイミング 1、2ヶ月毎に1.5~2倍 毎回1.2~2倍
メリット 急速法に比べ比較的安全 重症患者向け
デメリット 重症患者に効果が見込まれない 緊急時にすぐ医療機関を受診出来る環境が必要

2度の食物負荷試験と自宅で食べ続ける特徴的な治療

経口免疫療法では、毎日原因食物を決められた量ずつ摂取することで、原因食物を食べられるようになることが目標です。

経口免疫療法の手順は、大きく4段階に分かれています。

  1. 食物経口負荷試験
  2. 増量期
  3. 維持期
  4. 確認試験

1. 食物経口負荷試験

経口免疫療法を実施する場合、必ず食物負荷試験を受診していることが条件です。

食物経口負荷試験で、原因食物(アレルゲン)の特定と閾値の確認(食物をどのくらい食べると症状が出るか)を行います。

医師が患者に経口免疫療法による治療の適応があると認めたとき、受診を希望することが出来ます。

2. 増量期

経口負荷試験での結果をもとに、原因食物の目標量が決められます。

増量のペースは緩徐法と急速法で異なります。また、実施する病院や患者本人の体質によってもペースは異なります。

緩徐法の場合、数ヶ月~半年間で1~2ヶ月毎に1.5~2倍ずつ増量を繰り返します。

急速法の場合、1~2週間で毎回1.2~2倍ずつ増量を繰り返します。また、増量期の間は入院しなければなりません。

3. 維持期

目標量まで達成することが出来たら、引き続き目標量を3カ月程度毎日食べ続けます。

緩徐法と急速法のどちらの場合でも、自宅での摂取となります。

増量期と維持期では、家庭での食事に気を付けるだけでなく、幼稚園保育園・学校、万一アレルギー症状が起こった場合に備えて近くの医療機関にあらかじめ協力をお願いしておきましょう。

4. 確認試験(食物経口負荷試験)

維持期が終了したら、2週間原因食物を完全に除去します。

これは、毎日あるいは定期的に原因食物を食べていれば発症しない状態(脱感作状態)から通常の状態に戻すためです。脱感作状態は原因食物をいつ食べても大丈夫な状態(寛解)とは異なります。

その後、医療機関で再び食物経口負荷試験を行い、症状や反応が出ないかどうか確かめます。

食物を問題なく食べられるようになっていた場合、日常生活(外食、学校など)での食事の制限を解除していきます。

確認試験でアレルギー症状があると認められた場合、もう一度維持期からやり直します。

4. 経口免疫療法に用いられる食品と目標量の一例(大まかな目安)、治療できる年齢

経口免疫療法は、現在鶏卵、牛乳、小麦、ピーナッツなどで治療が行われています。

甲殻類(えび・かに)アレルギーやそばアレルギーなどその他の食物アレルギーは、経口免疫療法による治療の研究が進んでいないため現在実施されていません。

経口免疫療法では、医師が定めた目標量に向けて徐々に食品の摂取量を増やしていきます。自宅で行うときは量をきちんと測るように気を付けましょう。

また、発症のリスクを減らすため生の食材(生卵や魚のお刺身)は経口免疫療法では用いません。

鶏卵アレルギーの場合

鶏卵アレルギーでは、ゆで卵や卵を用いた加工食品(卵焼きやオムレツ)で治療を行います。ゆで卵の場合、卵黄と卵白に分けて摂取することが出来るので、より正確に治療を進めることが出来ます。鶏卵の目標量は、1/2個~1個(25g~50g)です。

牛乳アレルギーの場合

牛乳アレルギーは生牛乳で治療を行います。牛乳の目標量は、100ml~200mlです。

小麦アレルギーの場合

小麦アレルギーは茹でたうどんで治療を行います。小麦の目標量は、50g~100gです。

ピーナッツアレルギーの場合

ピーナッツアレルギーはピーナッツで治療を行います。摂取量が少ない時期は粉末状にして摂取します。ピーナッツの目標量は5~10粒です。

大豆アレルギーの場合

大豆アレルギーは豆腐や煮豆で治療を行います。大豆の目標量は2粒~4粒です。

魚アレルギーの場合

魚アレルギーは焼き魚や煮魚で治療を行います。魚の目標量は30~60gです。

経口免疫療法を受けることが望ましい年齢は4歳~20歳

食物アレルギーの経口免疫療法は、年齢によって治療の効果や難易度に違いがあります。

0歳~3歳(乳児~乳幼児期)

0歳~3歳の子供は食物アレルギーの経口免疫療法に不向きであるとされています。

理由は2つあります。

1つ目は、まだ年齢が幼いため症状が表れたときに訴えることが難しく、また治療を続ける意思を持ち続けることが難しいためです。

経口免疫療法では、じんましんやアナフィラキシーなどの副作用のリスクが常に伴います。

発症したとき、症状の具合や程度をはっきりと伝えることが出来なければなりません。

また、同じ治療を半年~数年間続けることは大人であっても相応の覚悟や忍耐力が必要です。生まれて間もない子供にそのような長期的な治療をすることは向いていません。

2つ目は、自然寛解が見込まれるためです。

乳児期・乳幼児期の食物アレルギーの主な原因食物である卵、乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)、小麦は年齢を重ねるにつれて自然と食べられるようになる(耐性を獲得する)とされています。

耐性を獲得する割合は3歳頃までに50%、7歳頃までに90%です。

参照:その他重要事項-食物アレルギーの診療の手引き2014

ですので、経口免疫療法による治療を始める前に、様子を見ながら耐性を獲得するのを待った方が良いとする考えがあります。

4歳~6歳(幼児期~学童期)

4歳~6歳の子供は食物アレルギーの経口免疫療法に向いているとされています。

理由は2つあります。

1つ目は、たとえアナフィラキシーなどの副作用が起こっても、食べられるようになるために治療を諦めないことが出来るからです。

親や周囲の協力は必要ですが、アレルギーの原因食物を食べたいという意思をしっかり持つことが出来るようになるため、治療を続けることが出来ると考えられます。

2つ目は、エピペンの注射が可能になる点です。

エピペンとはアドレナリンが充填されている自己注射器です。使用制限は年齢によってではなく、体重が15㎏以上(3歳の子供の平均体重程度)と定められています。

エピペンを使用することで、万一アナフィラキシーが起こっても応急処置を取ることが出来ます。

エピペンについては、こちらのサイトを参照してください。

参照:アナフィラキシー補助治療剤 – アドレナリン自己注射薬 エピペン-ファイザー株式会社

7歳~19歳

7歳以上の子供は、経口免疫療法を受診することが出来ますが、治療の継続に注意が必要です。

理由は2つあります。

1つ目は学校での体育や部活動、登下校などで運動する機会が多くなるためです。

重篤なアレルギー症状のアナフィラキシーのリスクを増幅させる要因として、運動があります。

参照:アナフィラキシーガイドライン-一般社団法人日本アレルギー学会(クリックするとダウンロードが始まります)

「食物アレルギーの経口免疫療法実施に当たり必要な指導内容の検討」の報告の中で、経口免疫療法を治療中に運動(体育の授業のランニング、登校中のダッシュ)をしたことによりアナフィラキシーが発症した事例が紹介されています。

参照:食物アレルギーの経口免疫療法実施に当たり必要な指導内容の検討-慶應保健研究,34(1),029-032,2016

アレルギー症状の発症を防ぐために、治療中は運動を控えることが大切です。

2つ目は学校側の十分な理解と協力が必要な点です。

食物アレルギーの経口免疫療法は、いまだ研究段階の治療法です。

ですので、子供が通う学校でも経口免疫療法に対する理解や協力する姿勢が整っていない可能性があります。

日本学校保健会が発行している「学校のアレルギー疾患に対する取組みガイドライン」の中でも、経口免疫療法についての記述はありません。

参照:学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン-財団法人日本学校保健会

アレルギー症状を発症するおそれがあることや、原因食物の摂取量は厳しく守らなければならないことなどをきちんと説明し、協力をお願いしましょう。

20歳以上

成人年齢を超えると、経口免疫療法による治療が難しくなります。

理由は2つあります。

1つ目はアレルギー症状の原因が様々考えられるため、経口免疫療法で治療できるとは限らないためです。

偏食(毎日同じものを食べる、好き嫌いが多いなど)やストレスが目立つ生活を送っていると、突然食物アレルギーを発症することがあります。

まずはアレルギーを引き起こす原因の1つである生活習慣を改めることが大切です。

参照:大人のアレルギーの特徴-環境・生活習慣型アレルギーケアフォーラム

2つ目は大人のアレルギー原因に多い果物・野菜アレルギーや甲殻類(えび・かに)アレルギーに対して、経口免疫療法の有効性を証明する研究結果がないためです。

5. 食物アレルギーの食事療法における食物除去法と経口免疫療法の比較

食物アレルギーの治療における食事療法の基本的な姿勢は、「食物除去」です。

食物除去は食物経口負荷試験により原因食物を正確に診断し、必要最小限の食物を完全に食べないようにします。

その後、成長による耐性の獲得を視野に入れながら、定期的(3ヶ月~半年ごと)に診断を受け、適切な時期に除去をやめて少しずつ食べ始めます。

除去の間は栄養バランスに考慮した代替食品による食事が必要です。

食物除去法のメリット・デメリット

食物除去法のメリット

  • 治療中のアレルギー症状の発生リスクが低下する
  • 様々な年齢や体質の患者に治療が出来る

食物除去法のデメリット

  • 代替食品の用意など食事に十分気を付ける必要がある
  • 「必要最小限の除去」のため、正しい医師の診察と定期的な受診が必要

原因食物の除去では、栄養面やQOLの重要さをふまえた「必要最小限の除去」を行うことが大切です。

念のためといって、必要以上に加工食品の種類や食べる量を制限せずに、食べられるものを増やしていくことが食物除去法の大きな目的です。

参照:第9章治療-食物アレルギー診療ガイドライン2012ダイジェスト版

経口免疫療法のメリット・デメリット

経口免疫療法のメリット

  • 本来摂るはずの必要な栄養を摂取することが出来る
  • ライフスタイルや食生活に大きな変更を強いられない
  • 特に卵アレルギーや小麦アレルギーでの治療効果が高い

経口免疫療法では、代替食品に頼らずに治療を進めることが出来るため、原因食物から必要な栄養を摂取できることが見込まれます。また、除去食のストレスや負担が少なくなります。

また、鶏卵アレルギーは60%、小麦アレルギーでは80%の患者が寛解したというデータがあります。

参照:経口免疫療法の実際と問題点-国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部

経口免疫療法のデメリット

  • 治療中のアレルギー症状の発生リスクが高まる
  • 牛乳など食品によって治療効果に大きな違いがある
  • 年齢や症状、体質によって受診出来ない場合がある

食物除去に比べて原因食物に接する機会が多くなるため、アレルギー症状の発生するリスクが高まります。

また、牛乳は寛解した割合が約30%であるなど、原因食物(アレルゲン)によって効果に大きな差があります。

6. まだ研究段階の治療法。経口免疫療法の注意点や副作用

食物アレルギーの経口免疫療法は2017年現在、研究段階の治療法です。

日本小児アレルギー学会は、経口免疫療法を一般診療として取り扱うべきではないとしています。

また、「経口免疫療法を専門医が体制の整った環境で研究的に行う段階の治療である」と位置付けています。

参照:食物アレルギーに対する経口免疫療法(Oral Immunotherapy: OIT)に関する本学会食物アレルギー委員会の見解-日本小児アレルギー学会

経口免疫療法は、現在も受診出来る医療機関が限られており、私たちにとって身近な治療法になるにはまだ時間がかかりそうです。

経口免疫療法を実施した際に考えられる副作用

副作用は食物を摂取した直後~48時間以内に発症します。

これらの症状が表れたときは、速やかに医療機関を受診して治療の継続に関する診断を受けましょう。

<皮膚科領域の症状>

かゆみ、むくみ、じんましん

<耳鼻咽喉科領域の症状>

くしゃみ、鼻づまり、口内やのどの腫れ、かゆみ

<眼科領域の症状>

目のかゆみ、まぶたの腫れ、涙が止まらない

<消化器科領域の症状>

腹痛、おう吐、下痢

<呼吸器科領域の症状>

のどの締め付け、声のかすれ、ぜーぜーと息が苦しい、激しい咳

また、重篤な副作用であるアナフィラキシーが表れた際は、速やかに大きな病院を受診してください。またエピペンを所持している場合は迅速な注射が必要です。

7. 保険も適用、経口免疫療法にかかる費用と実施している病院

食物アレルギーの経口免疫療法にかかる費用

2017年現在、経口免疫療法は保険が適用されています。また、食物経口負荷試験も保険が適用されています。

乳幼児医療証を適用すれば、さらに費用の負担を減らすことが出来ます。

食物経口負荷試験は、外来の場合3,000円~10,000円程度です。入院の場合20,000円~30,000円程度です。(保険が適用された場合)

経口免疫療法は、急速法の場合入院しなければならないので、70,000円程度です。緩徐法の場合来院のたびに診察料がかかります。仮に2年間で月に1回受診した場合約30,000円です。

食物アレルギーの経口免疫療法を実施している病院

経口免疫療法は内科や小児科、アレルギー科で実施されています。

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神奈川県には、食物アレルギー治療について有名な病院「独立行政法人 国立病院機構 相模原病院」があります。

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