1.漢方で「逆流性食道炎」を治すという選択。
逆流性食道炎の治療で、最近、漢方薬による治療が注目されています。
漢方の専門医でなくても、西洋薬にはない漢方の力に注目し、治療に取り入れるお医者さんも増えています。
医師の処方箋がある場合、健康保険の適用になります。
逆流性食道炎の薬(PPI)が効かない!?
医療機関で逆流性食道炎の治療を開始すると、まずは代表的なPPI(プロトポンプインヒビター、プロトポンプ阻害薬)というお薬が処方されます。
これは、過剰に分泌された胃酸を抑え、食道への逆流を抑える事ができるお薬です。
胃酸をコントロールすることで、逆流性食道炎によって引き起こされるつらい症状を治すのが目的です。
通常はお薬を飲み始めてから、1週間程度で、効果を感じられる場合が多いのですが、なかには長期間、PPIを飲んでいてもなかなか効果を感じられない方がいらっしゃいます。
そのような方でも漢方薬での治療を行って、「不快な症状を感じなくなった!」と劇的に改善したケースはたくさんあります。
漢方治療はこんな人に向いている!
・しばらくPPIを飲んだが逆流性食道炎の不快な症状が改善しない。
・ストレスが原因で逆流性食道炎になった。
・不眠、下痢など逆流性食道炎の症状以外にも体のどこかに不調がある。
上記の3点に思い当たる方は、一度、漢方治療を試してみる価値があるかもしれません。
2.漢方治療ってどんな治療?
漢方では「この病気にはこの薬」というような対処療法はなく、PPIのように胃酸を中和させるというような効き目はありません。
東洋医学では、「1つの特定の病気にスポットを当ててそれを治療する」のではなく、「トータルで身体のバランスを整えて、体質そのものを改善していく」という考えのもとにお薬が処方されます。
また、一人一人の体質を重視しているので、同じ病気、同じ症状であっても体質によっては違う漢方薬が処方されるケースもあり、そこが西洋薬とは大きく違っている点です。
「胃の状態を整える漢方薬」とはどんなもの?
逆流性食道炎の場合、主に「胃のバランスを整える」お薬が処方されます。
逆流症状がある人は、胃の働きが悪化しているケースが多いので、まず漢方薬によって胃の働きを良くする必要があります。
まず胃の調子を整えて、胃の中のものが消化されやすいように改善していくのです。
消化器は1本の管でつながっているので、胃の症状が緩和されると、胃酸の分泌も抑えられて、その結果、胃酸の食道への逆流を抑えることが出来るのです。
代表的な漢方薬「六君子湯」(りっくんしとう)
「胃の働きを良くする」と言われていて、逆流性食道炎で処方される代表的な漢方薬です。
PPIを長い間飲んでいて、あまり効き目のなかった方も、六君子湯を飲んで全く症状が出なくなったケースもあります。
胸やけなどの胃腸症状の他にも、喉の痛みや異物感、咳症状のある逆流性食道炎の治療にも効果が期待されています。
六君子湯には他にも効能があり、関節炎、各種アレルギーなどに効果があると言われています。
3.西洋薬とは違う。漢方薬の飲み方のポイントは?
効果的な漢方の飲み方は?
漢方は西洋薬と違って空腹時にお薬を飲みます。
胃の中が空っぽのほうが成分が吸収されやすいためです。
独特な漢方薬の臭いや味が苦手な方もいらっしゃいますが、あたたかい白湯にといてゆっくり飲むのが胃にはおすすめです。
即効性もある!漢方薬の効き目とは?
漢方はゆるやかな効き目なので長期間飲まないと効果がない、と言われることもあります。
ですが、症状や体質にピッタリの合うものを処方すると、西洋薬と同じくらい早い効果が出る場合もあります。
実際、六君子湯を処方された方のなかには、「1年以上、胃の不快な症状で悩んでいたが、漢方薬を飲み始めて1週間程度で症状がなくなり、スッキリ治った」というように劇的に回復する例もあります。
但し、この場合でも自覚症状がなくなっただけで、炎症は続いている場合があるので、すぐにお薬を止めてしまうと元に戻ってしまう恐れがあり注意が必要です。
漢方薬には副作用はない?
漢方は一般的に体に優しいと言われています。
ですが、体質に合わないお薬の場合は逆に、体調が悪くなってしまうこともあります。
残念ながら逆流性食道炎に効果のある「六君子湯」にも体質的に合わない方がいるのも事実です。
また、他のお薬との飲み合わせなども考慮しなければなりません。
発熱やのどの痛み、身体のむくみ、などの副作用があらわれることがあります。
しばらく飲んでみてこのような症状が出てきた場合は、無理に続けず、お医者さんに相談してみることが必要です。
まだある!逆流性食道炎に効果のある漢方薬
漢方薬は一人一人の体質を見て処方するので、六君子湯以外の漢方薬を処方される場合もあります。
六君子湯が体質に合わなかったからと言って、あきらめることはありません。
下記の2種類の漢方薬も最近、逆流性食道炎の治療によく処方されています。
◆半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
【体質】心身ともに疲れやすく、冷え性、うつ傾向、気分がふさぐ、のどがつかえる感覚。
【効能】のどに異物感のある神経性胃炎、それにともなう咳など。
◆半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
【体質】特に問わない。体力がないとあまりむかない。
【効能】食欲不振や胃もたれ、吐き気、嘔吐、おなかがゴロゴロ、下痢気味
4.逆流性食道炎の治療でうれしいおまけも!?漢方薬まとめ
逆流性食道炎の原因は食事や生活習慣に起因するものが多いと言われていますが、その根底にはストレスなど心因性のものが大きな影響を与えていることが少なくありません。
仕事や人間関係でストレスをためてしまい、その発散のために食べすぎたり飲みすぎたりしてしまうなど、複雑な要因がからみあって、逆流性食道炎を発症してしまうケースがとても多いからです。
漢方薬は身体全体のバランスを整えるので、服用しているうちに「うつ症状」「疲れやすい」「下痢」などの他の症状が改善される相乗効果が期待できる場合もあります。
最近では薬局でも漢方薬は販売しており、手に入れやすくなっていますが、自分に適した薬を自分で見極めるのは難しいので、きちんと医療機関で処方してもらうほうがよいでしょう。
今、飲んでいる逆流性食道炎の薬が効きづらく、辛い症状がなくならないと悩まれている方は、一度、お医者さんに相談してみてはいかがでしょうか?