生肉とE型肝炎ウィルス(HEV)の関係性。豚肉は生で食べるなって教わりました?
2016年9月27日に放送されたNHKの情報番組「あさイチ」で、イノシシの刺身という沖縄県西表島の郷土料理が紹介されていました。
果たしてこの料理、家庭や料理店で真似しても良いものなのでしょうか。
というか、肉を生のまま食べると、寄生虫やウィルス感染症の危険が高まります。
今回は、ウィルス感染症の代表格、E型肝炎ウィルスと生肉の関係性についてお伝えします。
1. E型肝炎は世界各地で見られるウィルス感染症
ウィルス性肝炎は、A型からE型まである肝炎ウィルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です。
感染すると、肝臓の細胞が壊され肝臓の働きが悪化します。
肝臓の症状について詳しくはこちらの記事をお読みください。
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E型肝炎ウィルスの感染経路、潜伏期間、症状の特徴
感染経路は主に経口感染
E型肝炎ウィルスは中東地域や、インドやネパールなどの東アジアを中心とした世界各国で感染が確認されています。
そのほとんどが、糞便などで汚染された水を飲んだり、加熱が不十分や汚染された肉を食べた場合でした。
しかし、日本国内でも、豚や鹿、イノシシなどを生で食べた場合に同様にE型肝炎ウィルスに感染されている報告がされています。
決して、先進国だからといって安心・油断していい病気ではありません。
潜伏期間は2~9週間
E型肝炎ウィルスの潜伏期間は2~9週間で、平均6週間です。
この1ヶ月半にわたる潜伏期間の影響で、感染した原因の特定が難しくなっています。
不顕性感染が6割、症状はA型肝炎ウィルスと類似
E型肝炎は発症せずに不顕性感染ののち、自然治癒や自然消滅するケースがある病気です。
もし発症した場合、代表的な症状は黄疸、その他発熱や吐き気、食欲不振、肝腫大です。
通常、安静にしていれば快方へ向かいますが、まれに劇症肝炎に繋がります。免疫が低下している人や、妊娠晩期の妊婦さんは発症リスクは高まります。
E型肝炎ウィルスの感染状況、日本は感染者数が増加中!?
世界は中央アジア、東南アジアが中心
例えば旅行に行ったとき、E型肝炎ウィルスは、リゾート地でも、都市部でも、地方でも、森林や山の奥でも感染するリスクがあります。
特に注意すべきなのは、上水道と下水道が未整備の国です。
雨季で、豪雨や大規模な洪水などの水害が発生したとき、E型肝炎感染のリスクが高まります。
一度の流行で1,000人単位の発症が起こります。
日本の患者数は増加中。北海道が最も報告数が多く、東京都は2番目。
引用:最近のE型肝炎の増加について(2016年4月27日現在)-国立感染症研究所
2012年から2016年4月第4週までのデータでは、日本国内では701件の感染が報告されています。
都道府県別にみると、一番多いのが北海道で158件(28%)、次に多いのが東京都で125件(13%)です。なので、東日本が全体の86%の報告数を占めています。
引用:表2-最近のE型肝炎の増加について(2016年4月27日現在)
北海道の報告が多い理由は、定かではありませんが、畜産業が盛んで、また自然との距離が近いことが考えられます。
2. 「生肉は食べない方が良い」とは人類が編み出した知恵のはず
世界では、飲料水の汚染などから感染するE型肝炎ウィルスですが、上下水道がほぼ完備されている日本でなぜ感染が広がるのでしょうか。
その答えは、日本独自の食文化にあります。
日本では、刺身を筆頭に、食べ物を生のまま食べる文化があります。
肉に関しても、馬刺しが有名です。
あの、甘いながらも臭みがあって、にっちゃにっちゃした食感が忘れられないのでしょうか。
ブタ、イノシシ、シカ。生やレバーで食べるのは、もはや無謀?
国内でE型肝炎ウイルスの感染報告があった701例のうち、感染源が判明したのは290件でした。
多かった素材を並べると、ブタ(121件)、イノシシ(34件)、シカ(32件)です。
全てのブタやイノシシが、E型肝炎ウィルスを持っているとはいえません。
ただ、生肉を摂取したことによって、ブタの体内にあったウィルスと患者の体内から検出されたウィルスの遺伝子配列が完全に一致したケースもあります。
この事態を受けて、厚生労働省は2015年9月から飲食店で生レバーなど豚肉の生食の提供を禁止しました。
しかし、この増加率や感染者数をみると、提供を禁止するよりも、国民の衛生観念の低さが起因のような気がしてなりません。
ジビエを美味しく食べることと、野生動物を生で食べることは必ずしも一致しない
イノシシやシカを食べるときは、ジビエ料理として頂くことがあります。
ジビエ料理とは、狩猟によって獲た、鹿、ウサギ、野鳥などの野生動物の料理です。
狩猟で獲た野生動物は、畜産の動物よりも新鮮さや香りの面で優れているとも言われ、多くの美食家の注目の的です。
しかし、きちんと加熱処理の大切さが行き渡っている欧米諸国に比べ、刺身の感覚でジビエ(野生動物)も生で味わおうとする人が増えるのは当たり前かもしれません。
厚生労働省も、ジビエ料理についてもきちんと加熱処理を施すように求めていますが、法令による規制までには至っていません。
参照:ジビエ(野生鳥獣の肉)はよく加熱して食べましょう-厚生労働省
国内でジビエ料理を食べる場合、きちんと加熱処理がされているか確かめましょう。
新鮮さすなわち生食という誤解をしないよう注意が必要です。