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2018年1月24日更新

2017年は過去最多!2018年は?「RSウイルス感染症」の流行状況や症状、迅速検査

RSウイルスの患者数が1万人を超え、過去10年で過去最多となった2017年。風邪と似た疾患ですが、赤ちゃんや高齢者の場合、重症化する事もあるので注意が必要です。RSウイルスの症状や検査方法、2018年の流行予測などをまとめました。
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1.流行パターンが異例だった2017年「RSウイルス感染症」-2018年の動向は?

急性呼吸器感染症の一つである「RSウイルス」の患者数が、2017年9月に全国的に急増し、過去10年で最多の報告数となりました。

その名の通り「RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)」が病原体となる感染症で、「発熱」「咳」「鼻水」といった風邪に似た症状が現れます。
どの年齢層でも感染しますが、特に小さな赤ちゃんや子供を中心に流行し、年齢が低い程重症化しやすい特徴があります。

国立感染症研究所の調査によると、2017年8月28日~9月3日の1週間に全国の約3,000ある定点医療機関(小児科)から報告されたRSウイルス患者の報告数は、10,189人。この数字は、前年の約5倍近くの患者数となりました。

(参考)IDWR 感染症週報 1週(1/1~1/7)厚生労働省/国立感染症研究所

※横軸は週数(1月~1週目がスタート)、縦軸は患者数。赤紫の白丸線が2017年、赤の太字が2018年の患者数

油断大敵!2018年のRSウイルス流行状況

RSウイルスは、例年、9月頃から季節性インフルエンザに先行して流行が始まり、年末をピークに春先まで流行するのが一般的

ところが、上のグラフを見ても分かるように、2017年は27週(7月9日~15日)頃から患者数が増え始め、これまでのシーズンに比べるとかなり早いペースで増加し、1万人を突破した9月(35週~37週)を境に減少傾向に転じました。

また、これまでは南や西日本から流行が始まり、東日本へと流行が広がっていくのが通例でしたが、2017年は沖縄に次いで北海道で流行が始まり、その後、東京、神奈川、大阪など各地で同時期に流行が見られるようになっていたのも特徴的でした。

このように当たり年だった2017年は、例年とは違う流行時期やパターンでした。

2018年の動向が気になるところですが、IDWR 感染症週報第1週(1/1~1/7)によると、今のところ例年通りの報告数(約1,300例)となっており、中でも1歳未満の報告数が全体の約80%を占めています。

「それほど流行ってない」と油断しないで、インフルエンザ同様、普段からしっかりと対策をしておく必要があります。

まずは「RSウイルス」の症状や感染経路などの知識を身に付けておきましょう!

(参考)IDWR速報データ 2018年第2週 |厚生労働省/国立感染症研究所

2.乳幼児は特に注意を!RSウイルスの症状と特徴

咳やくしゃみなどによる飛沫感染の他、感染者とのスキンシップ、おもちゃなどのウイルスのついた物を触ることによる接触感染でも感染するRSウイルス。

2~8日程の潜伏期間(実際は4~6日程度が多い)を経て、発熱、咳、鼻水など風邪のような症状が現れてきます。

全体の99%は5歳以下の子供。呼吸器系の持病のある高齢者も要注意!

RSウイルス患者のほとんどは乳幼児です。

大人や学童期くらいの子供になると既に体内に抗体を持っているため、かかっても「鼻かぜ程度」で済んでしまうことが多いためです。

2017年1月~8月27日までの年齢別調査の結果でも、0歳と1歳がそれぞれ37%と38%と最も多く、その後2歳、3歳と続き、全体の99%が5歳以下の小児となっています。(※小児科での調査のため、大人のデータはなし)

生後1歳までに50%、2歳までにほぼ100%の人が感染すると言われているRSウイルスは、何度もかかることもありますが、特に初感染の場合に症状が重くなるケースが多く、全体の2~3割は気管支炎肺炎を併発することも。

特に新生児生後6カ月以内の赤ちゃん、生まれつきの免疫不全心疾患ダウン症などがあると重症化しやすいことが分かっています。

「高熱が続く」「ゼロゼロとした呼吸(喘鳴:ぜいめい)」「呼吸数が多い、苦しそう」「呼吸時に胸やお腹がペコペコへこむ」などの症状がある時はRSウイルスの兆候かもしれません。

「様子がいつもと違う……。」と異変を感じた時は早めに受診するようにしましょう。

また、健康な大人であれば発症してもRSウイルスが重症化することはまずありませんが、最近、肺や呼吸器の慢性疾患のある高齢者は重症化の危険があるということも分かってきました。

小さなお子さんと同様、体調面に不安のある高齢者の場合は、日頃からまわりのご家族がしっかり観察し、早い時期に異変に気付いてあげられるように心がけておきたいものです。

■RSウイルスの症状については以下の記事も併せてお読みください。
生後6か月未満&初感染は重症化も!RSウイルス感染症の症状・感染経路・体験談

(参考)国立感染症研究所 RSウイルス感染症とは
※こちらのサイトではRSウイルスについての詳しい情報や調査結果を見ることができます。

3.10~30分で判明! RSウイルスの迅速検査とは?

素早い診断に有効!迅速検査キットによる診断

医療機関で行うRSウイルスの判定には「迅速検査キット」が多く使用されています。
RSウイルスキット

(参考)日本ベクトン・ディッキンソン株式会社RSウイルスキット「BD ベリター™ システム RSV」

検査方法はインフルエンザと同じ。綿棒で鼻の粘膜をぬぐって採取し、ウイルスが検出されるかを調べます。

検査の所要時間はわずか10~30分程度。患者さんの負担が少ない上に、すぐに結果が分かるのがメリットです。

【体験談】いつもの風邪とは違う症状、検査の結果RSウイルスでした

次男が風邪を引き、発熱。
大体いつものパターンで、鼻水→セキと続きますが、夜寝ている時も呼吸がぜーぜーいっていてすごく苦しそう。
喘息気味なのかなと思って受診したところ、検査でRSウイルス感染とわかりました。

今までも寝ている間にセキが苦しくて起きてしまうことはありましたが、こんなにも呼吸が苦しそうだったことはなく、明らかにいつもの風邪とは違うと感じました。

熱が下がってからは食欲も戻りましたが、飲み込むタイミングでセキが出てしまって履き戻してしまうことがあったり、気管支の炎症がおさまるまでしばらくかかりました。

ゼリーやプリンなど喉ごしのよい物がよかったです。
熱が高い時はけいれんなどを起こしていないか、気を付けて見ていました。

(引用)風邪かと思ったら呼吸がぜーぜー苦しそう。いつもと違う症状はRSウイルスかも。

健康保険適用になる場合・ならない場合

このように素早い診断に役立つ迅速検査ですが、実際にはインフルエンザのように誰でも検査をするというわけではなく、健康保険が適用になるケースも限られています。

なぜならば、RSウイルスには特効薬があるわけではなく、治療は風邪と同様、症状を和らげる対症療法になるので、わざわざ検査をしてRSウイルスを特定する必要性があまりないこと、また、1歳以上であれば軽い鼻かぜ程度で済む場合も多く、重症化するリスクがかなり少なくなるということなどが理由と考えられます。

迅速検査時に健康保険が適用になるのは以下の3つの場合です。

  • 1歳未満の乳児
  • パリビズマブ製剤の適用となる患者(※)
  • 入院中の患者

上記の条件には当てはまらなくても、検査を希望する場合は自費で行うことになります。

検査の費用は、保険適用外の場合、全額自己負担となるため約3,000円程度。実際には初診料や他の検査や処置などによって費用は異なります。

(※)パリビズマブ製剤とは、 先天的な心疾患などがあり、重症化のリスクがある幼児に使用するRSウイルスの感染予防のための薬剤のこと。

(参考)国立感染症研究所 RSウイルス感染症とは

4.再流行もありえる!?基本的な対策でしっかり予防を

RSウイルスは春まで流行が続くことが多く、地域性もある感染症なので、これから再び患者数が増えていく可能性もあります。

もし、ご自分や家族が発症して重症化しなかったとしても、ウイルスは体内に残っている場合もあります。知らないうちに感染源になってしまうかもしれないということも忘れないようにしましょう。

小さな赤ちゃんや高齢者のいらっしゃるご家庭で、特に気を付けたい事は以下の4つ。

  • 手洗い、うがいの徹底
  • マスクの着用など咳エチケットの徹底
  • 家具やおもちゃの除菌(アルコール、塩素系どちらも効果あり)
  • 風邪のような症状がある時は近づかない

どれも基本的なことですが、RSウイルスは予防ワクチンもないため、上記のような基本的な予防をしっかりすることが最大の防御になるのです。

これらの対策は、RSウイルスだけでなく、現在流行中のインフルエンザなど他の呼吸器感染症の予防にも役立つものばかり!ぜひ心がけてみて下さいね。

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