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2016年9月13日更新

徘徊、暴言…介護トラブルを解決する優しさのケア「ユマニチュード」とは。

在宅での介護には様々なトラブルがつきもの。意思疎通が上手く出来ず患者さんや介護する家族も多くのストレスを抱える事に…。フランスで始まった「ユマニチュード」という患者さんも介護者も幸せになるケアについてまとめました。
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患者さんとの向き合い方が分からない…。介護にはたくさんの問題が!

ある日、突然大切な家族が認知症と診断されたら…。

なんとか家族でお世話して、できるだけこれまで通り生活させてあげたい、そんな風に思うのではないでしょうか?

しかし、そんなご家族の気持ちとは裏腹に、介護中には様々なトラブルが起きてくることがあります。

病気の進行が進むにつれて、「コミュニケーションが取れない」「言うことを聞いてくれない」時には攻撃的になり「暴言や暴力をふるう」というような困った症状が出ることがあります。

毎日、懸命に介護をしているご家族は、意思疎通がうまくいかない難しさから精神的に追い込まれてしまうことも少なくありません。また、患者さん本人もさらに殻に閉じこもってしまい、孤立していく…といった問題も出てきています。

そんな介護の問題を解消する方法として、フランスで行われている「ユマニチュード」という介護ケア法が、2011年から日本でも導入され、注目を集めています。

魔法のケア!「ユマニチュード」とはどんな方法?

ユマニチュードとは「認知症の人との人間関係を築き、絆を作る介護法」のこと。

フランス人のイヴ・ジネスト氏が考案した介護ケア法で、フランスでは35年前から導入され、現在、カナダやドイツといった国でも取り入れられています。

「見つめる、話しかける、触れる」を基本とした150からなる細かいケア法ですが、「認知症の患者さんと平等に、信頼関係を築く」ということがすべての基本になっています。

私たちの目から見ると困った問題行動に見える「大声を出す」「暴れる」といった認知症患者さんの特有の行動は、認知機能の低下した患者さんにとっては身を守るための行動である場合があります。

例えば、患者さんを立たせようとする時、「腕を引っ張る」「掴む」という行為をすることがありますが、認知症の患者さんは、この行為を「無理やりされた」と思い込んでしまいます。
実際はお世話をしているつもりでも患者さんは「意地悪をされた」「この人は敵だ」と受け取ってしまうことがあるのです。

その結果、患者さんは本能的に自分の身を守ろうとして、大きな声を出したり、怒ったりという行動につながります。

介護のプロでない私たちが、患者さんとの向き合い方を知らないままお世話を始めるとうまくいかないことは多々あります。

まずは患者さんとの人間関係を築き、認知症特有の症状を理解した上でケアを行うことが大事なのです。


(参考)NHK認知症キャンペーン「ユマニチュードって何?」

信頼関係を築く具体的な方法。ユマニチュードの基本とは?

◆患者さんの視野に入る位置で、しっかりと目を合わせる。

認知症の患者さんは視野が狭く、情報の入り口が狭くなっています。
後ろから突然、声をかけると驚いてしまったり、怒ったりすることがあります。
遠くから回り込み、少しずつ前に近づき、患者さんと水平の位置から視線を合わせて自分の存在を知らせるようにします。

◆話しかける時は笑顔で!

視線が合ったのを確認してから、少し大げさなくらいの動作、笑顔で優しいトーンで前向きな言葉をかけるようにします。
自分は「友達であり、敵ではない」ということを伝えましょう。
この時、患者さんの反応を見ながら、背中や腕をさするようにすると、患者さんの感情に働きかけ、さらに安心することが出来ます。

◆触れる面積を増やし、安心させてあげる。

触れる時は、引っ張ったり、腕をつかむと無理やりやらされていると思い込み、拒絶されてしまうことがあります。
介助して立ち上がらせる時は、手と腕を下から支えて両手で抱え込むようにする。
触るというのは、「あなたのことを大事にしています」というメッセージを伝える動作です。
触っている面積が多いと患者さんは安心します。

さらにご紹介した基本の3つの技術にプラスして、「立つ」ということも重要になります。

患者さん本人が立ち上がることで、人間としての誇りを感じさせ、自分はここにいると自覚し、介護する人も同じ目線で平等だということを知らせることが出来ます。

いかがですか?ちょっとしたコツや心遣いで出来そうな気がしませんか?

このように、ただの行為として行うのではなく、患者さんとの心のコミュニケーションを重視して行うことが毎日の介護をうまく行うためには大切なのです。

感情に働きかけるケアで問題行動は8~9割なくなる!

驚くことに上記のような方法で患者さんと信頼関係を築いた後は、介護が驚くほど楽になり、問題行動の8~9割は減るといわれています。

また、患者さん本人に生きる意欲が出てきたり、ほとんど意思疎通ができなかった患者さんに笑顔や会話が戻ったなど驚きの効果が確認されています。

「ユマニチュード」とは患者さんの感情に働きかけるケアです。

認知症の患者さんにも人間としての尊厳はあり、理解をしてほしいと思っています。「認知症だからどうせ分からないだろう」と思うのは間違いなのです。

認知機能が落ちても「感情」は最後までなくなりません。

介護する側、される側、みんなが幸せになるために。

ユマニチュードは患者さんだけでなく、介護者にとっても幸せと楽しさを感じられるケアです。

介護するご家族も、何年かぶりに以前のような患者さんの笑顔が見られた時、「お世話をしていて嬉しい、幸せ」と感じられることでしょう。

大切なご家族のためにこれから介護を始められる方、また現在介護に悩まれている方はぜひ「ユマニチュード」を勉強し、取り入れてみてはいかがでしょうか?

ニュースなどでも日々、介護の大変さばかりが取りざたされる昨今、「優しさのケア」と言われる「ユマニチュード」が広まりつつあることは明るい希望と言えるでしょう。

(参考文献)

・「ユマニチュード入門」 本田美和子、イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ

・「ユマニチュード認知症ケア最前線」 NHK取材班 望月 健

ユマニチュード入門
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ユマニチュード 認知症ケア最前線 (角川oneテーマ21)

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低周波機器の使用による物忘れの予防改善に関する調査

募集

物忘れの多い方を対象とした調査にご協力いただける患者様を募集します。



対象

60歳から75歳までの男女・物忘れが多い方

通院場所

相模原中央病院(神奈川県相模原市中央区)

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