1.「たかが咳」と侮るなかれ。変わった咳・慢性の咳には要注意。
「逆流性食道炎=胸やけ」だけではない。「逆流性食道炎」が疑われる咳の特徴とは?
「逆流性食道炎」は胃の中の胃液が食道に逆流して粘膜がただれて炎症を起こしてしまう病気です。
嘔吐、胸やけ、呑酸(すっぱいものがこみ上げる)などの消化器に症状が現れるのは良く知られていますが、実は「咳」の症状も現れることがあるのです。
「むず痒く、乾いた咳が止まらない。」
「とても激しく咳きこむので息ができない。」
「夜中、寝ていても突然発作のように咳が止まらなくなる。」
などの苦しい咳症状が長期間続き、ひどくなると、咳きこみすぎて胸の痛みなども引き起こすことがあります。
(体験談)夜になると止まらない原因不明の咳。長い間苦しみました。
私は、もう長い間、咳に苦しんできました。夜、寝るとひどくなることが多く、乾いた咳が、ちょうどうとうとしてきたころに出て困っていました。
昼間はさほどでもないので、放っておいたのですが、仕事柄、結核は困るので、胸部エックス線検査もし、血液検査をしても、異常なしでした。
辛い咳の症状は「風邪かな?」と勘違いしてしまうことも。
風邪であれば通常、1~2週間でだんだんと症状が治まってくるのに対し、「逆流性食道炎」が原因である場合は長期にわたり、慢性的に原因不明の激しい咳が出続けるのが特徴です。
ですが、その自覚症状からだけでは、判別がつきづらく、正確に判断することは難しいのです。
「逆流性食道炎によって乾いた咳が止まらない」そのメカニズムとは?
「逆流性食道炎」は消化器の病気。なのになぜ咳症状がでる?
食道の一番上の部分は肺につながっている気管の入り口である「喉頭」に接しています。
寝転んだりして胃液が逆流すると、食道の上の部分にまで流れ込み、ついには咽頭にまで到達してしまいます。
胃にはバリア機能があって強い酸性度の胃液から守られているのですが、咽頭にはそのバリア機能がありません。
その結果、「喉頭」の粘膜が炎症を起きてしまい、慢性的な咳や生体ポリープができてしまい声が出ない、声がかすれるなどの症状が現れるようになります。
2.俳優 玉山鉄二さんも罹患!逆流性食道炎による長引く咳(慢性咳嗽)の診断基準とは?
芸能界でも「逆流性食道炎」を患っている人はたくさんいますが、なかでも俳優の玉山鉄二さんはこの咳の症状に苦しんだといいます。
ちょうど映画の撮影期間中だったそうですが、ある時、「尋常じゃないくらいの咳」が止まらなくなり、医療機関を受診したところ「逆流性食道炎」と診断されたそうです。
「しつこい咳(慢性咳嗽)の原因は、逆流性食道炎」とする診断基準
咳がなかなか治らない……。でも風邪や喘息でも咳が続くことはあるし……。
どのような基準で「逆流性食道炎」と診断されるのでしょうか?
- 慢性咳嗽(まんせいがいそう:3週間~8週間以上続く咳)がある。
- 胸やけや吐き気、呑酸(どんさん:すっぱいものや苦いものが口の中にこみ上げる)などの消化器症状がある。
- 内視鏡検査(胃カメラ)で「逆流性食道炎」の所見がある。
これらの3つの条件が揃うと「逆流性食道炎」であると考えられます。
特に間違いやすい「咳喘息」との違いは?
胸やけなどの消化器症状があれば、「逆流性食道炎」の可能性があるのも分かりやすいのですが、なかには「空咳」だけが続いていて胸やけ・呑酸などの消化器症状が全く出ないケースもあります。
特に症状が似ていて間違いやすいのは「咳喘息」です。
「逆流性食道炎」の場合、食道に炎症が起きて、「コンコン」という「空咳」が続きますが、「喘息」のように気管支には痰や水分などは詰まっていません。
そのため、ずっと喘息の薬を処方され、飲んでいたとしても、症状は改善されません。
実際、「喘息」だと思っていた方が「逆流性食道炎」の治療を開始したところ、症状が和らいだというケースもあります。
一方で「逆流性食道炎」と「喘息」は因果関係があるともいわれており、もともと喘息がある場合、逆流性食道炎を併発しやすく、咳症状が悪化することもあるようですので注意が必要です。
内視鏡検査(胃カメラ)を受ければ一目瞭然!
内視鏡検査(胃カメラ)とは先端に小型のカメラを内蔵した直径1センチ程度の柔らかいチューブを口から挿入し、食道や胃の内部を確認する検査です。
「胃カメラは苦しい」というイメージもありますが、最近では口よりも負担の少ない鼻から管を入れるタイプの「経鼻式内視鏡検査」を実施している病院も多くなっています。
食道から胃の細部までの状態をクリアな画像で確認することができるので、ポリープや炎症もいち早く見つけることが出来ます。
健康保険の適用もされています。
3.逆流性食道炎の咳症状の治療法
しつこい咳にも”酸分泌抑制薬”。胃酸の逆流を防ぐことがポイント!
「逆流性食道炎」の治療には過剰に分泌されている酸を抑えるお薬を処方されます。
- パリエット
- タケプロン
- ネキシウム
- オメプラゾール
これらはプロトポンプといわれる胃の壁細胞にある胃酸分泌の仕組みの大元であるプロトポンプに結合して、その働きを直接抑え、過剰に分泌されている酸を抑えるPPI(プロトポンプインヒビター、プロトポンプ阻害薬)といわれるお薬です。
これらのお薬を服用すると、胃酸の分泌が抑制されるため、胸やけなどの症状が治まるとともに、咳の症状も抑えることが出来ます。
状況により、他にも食道の粘膜を保護する薬、胃酸を中和する薬、食道の運動を活発にする薬などが併用されます。
胸やけなどの症状は1週間程度で治まってきますが、咳の症状が軽快するには2週間程度と比較的時間がかかります。
また、少し症状が治まったからと、治療をやめてしまうと、この病気は再発することが多いので注意が必要です。
自覚症状は治まっても、まだ食道の炎症は残っている場合があるためです。
必ず医師の指示に従って治療を続け、勝手な判断で薬の服用をやめたりしないようにしましょう。
(体験談)逆流性食道炎のお薬で咳症状が治まった!
最初は、内科の先生の勧めで、牛乳を飲んだり、寝るときに枕を高くする、食べてすぐに横にならない、炭酸や香辛料はとりすぎないようにする、など、なるべく薬に頼らない方法を試してきました。でも、一向に良くならず、お医者さんを変え、お薬を処方してもらったところでした。お薬は、タケプロンOD15という、薬です。薄いピンク色の錠剤です。
その内科の先生によると、逆流性食道炎の場合、乾いた咳が出て、長期間続くことがある、ということでした。まさか、胃腸関係の疾患が、咳に関係するとは思っていませんでしたが、結構、そういう人は多い、ということでした。
今は、胃酸の苦しみは、変りませんが、いざとなれば薬があると思うと仕事でどうしても困るときなど安心できますし、咳は確実におさまってきています。
咳を抑える為に気を付けたい事4カ条
お薬による治療以外にも、普段の生活で自分で気を付けられることはあります。
「食事」と「生活習慣」がキーポイントです。
1.食事に気を付ける。
高たんぱくで脂肪分の多い食品、糖度の高い食品、刺激の強い食品は胃液の分泌を盛んにしてしまいます。
アルコールやカフェイン、炭酸なども負担になるので取らないようにしましょう。
食べ過ぎない、ゆっくりよく噛んで食べることも大切です。
胃酸の分泌を活発にしないような、胃に負担のかからない食事を心がけましょう。
2.寝る時の姿勢に気を付ける。
横になると、胃酸の逆流が起こりやすくなり、咳も出やすくなります。
クッションや枕などで上体を少し高くして寝るようにしましょう。
身体の右側を下に寝ると楽になるという説もあるので試してみるのも良いですね。
また、食後は胃酸の分泌が盛んになっています。食後2~3時間は空けてから寝るようにしましょう。
枕元にはお水などを用意しておいて起きた時に飲むようにすると、寝ている間に高まった胃酸を中和してくれます。
3.腹圧をかけないように気を付ける。
腹圧が上がると、胃液が押し上げられ、咽喉に上がると咳が出ます。
ベルトやきつい下着などは腹圧を上げてしまうので、体を締め付けないような衣服を選ぶようにしましょう。
また、座っている時に背中を丸めて作業をする、無理に重いものを持ち上げる、前かがみの作業をするなども腹圧がかかるので普段の姿勢にも気を付けましょう。
4.ストレスを溜めないように気を付ける。
ストレスを溜めると、食道の粘膜の胃酸に対する感受性が高まって症状が起きやすくなります。
就寝中の咳で睡眠不足になりやすいので、日中、適度に休息をとるなどの対策をとりましょう。
上記の4つのことはは咳だけに限らず、「逆流性食道炎」の症状全般に共通することです。
さらに咳の場合、「空気の悪い場所を避ける」など咳の出やすい環境に身をおかないことも大切です。
どれも基本的なことばかりですが、今一度、見直すことによって辛い症状が少しでも和らぐならとてもうれしいですね。
4.「逆流性食道炎だから大丈夫」と自己判断はNG。
逆流性食道炎は誰もが罹りやすい病気であり、今すぐに命にかかわる病気ではありません。
だからといって治療を行わずそのまま放置してしまうと、少しづつ症状が進行して「潰瘍」になってしまうことも。
また炎症を繰り返しているうちに食道の細胞組織が変化し、「バレット食道」というものに変わってしまうこともあります。
この「バレット食道」は食道がんになるリスクが高いとも言われているので、気を付けなければなりません。
症状の悪化を防ぎ、これ以上の進行を抑えるためにも早めに正しい治療を受けることが何よりも大切といえるでしょう。