2016年9月7日更新

石川県七尾市の高級旅館加賀屋で発生した食中毒「腸炎ビブリオ」は日本生まれだった!

9月6日に石川県が、2日に同県七尾市和倉温泉の有名旅館「加賀屋」で食中毒が発生したことを発表しました。原因は腸炎ビブリオ菌。実はこの病原菌、日本人が発見したことをご存知でしょうか?腸炎ビブリオ菌が発見されたシラス事件について特集します。
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1. 高級旅館加賀屋で腸炎ビブリオ菌による食中毒が発生とのこと

石川県は9月6日、和倉温泉にある高級旅館「加賀屋」に泊まった男女15名が食中毒に感染したことを発表しました。

2日に宿泊した男女15名が下痢やおう吐などの食中毒の症状を訴えました。

原因は、腸炎ビブリオによるもので、発生した経緯は、夕食に出されるお刺身をしっかりと洗っていなかったためとされています。

2. シラス食中毒事件と腸炎ビブリオが見つかった経緯

この腸炎ビブリオという細菌は、実は一人のある日本人によって発見されました。

「近代細菌学の祖」と呼ばれる細菌学者、ルイ・パスツールやロベルト・コッホでも発見できなかった理由は、日本人特有の食文化にありました。

シラス事件と藤野恒三郎氏と腸炎ビブリオ

1950年、大阪府南部で患者272名、うち死者20名を出す戦後最大の食中毒事件が発生しました。

腹痛や下痢を訴えた患者が、共通して食べていたのが、しらす干し(関西だとちりめんじゃこ、京都ならややとと)でした。

しかし、サルモネラやO157など、既に知られていた食中毒を引き起こす病原菌がしらす干しや患者の体内から発見されなかったため、当時は第三者による毒物混入のような刑事事件として扱われたそうです。

そんな中、大阪大学微生物病研究所の藤野恒三郎教授は、この食中毒は未知の細菌による感染症であると判断し、解剖や分析を行いました。

その結果、新種の病原菌を突き止め、シラス事件の原因の断定に成功しました。

その後、藤野教授の後を継いだ多くの研究者による様々な研究が進められ、「腸炎ビブリオ」という名前が付けられました。

参照:藤野恒三郎−腸炎ビブリオの発見 – 栄研化学

著名な海外の細菌学者が発見できなかった理由の一つとして、海外では現代でこそ生食がだんだん広まって来ていますが、20世紀まではヨーロッパなどでは魚を生で食べるなんて考えられない方法だったからでしょう。

まさに、腸炎ビブリオ菌は日本の食文化に不幸にも適合してしまった細菌であるといえます。

なお、腸炎ビブリオの「ビブリオ」とはvibrio(振動するを意味するラテン語vibroが由来)であり、細菌が水中で活発に動き回る特徴を指しています。ビブリオ属の細菌は、腸炎ビブリオの他、コレラ菌もこの特徴を持っています。
決して本を意味するbiblio(ラテン語: biblionに由来)ではありませんので、注意しましょう。

バイブレーション(vibration)とバイブル(bible)の違いからも意味の違いが分かります。

余談ですが、ちりめんじゃこといえば、昔はタコやエビがごちゃ混ぜに入っていましたが、最近は見かけませんね。どこにいったのでしょうか、あのチリメンモンスター達は。

腸炎ビブリオの特徴

腸炎ビブリオの形は、発見者の藤野教授が表したように「丸くて太っちょ」です。長さ2マイクロメートル(0.002ミリメートル)のずんぐりむっくりした形で、一本の太い鞭毛と、周りに細い鞭毛をもっています。

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引用元:腸炎ビブリオ-「食品衛生の窓」東京都の食品安全情報サイト

また、好塩菌であるため、塩のある方が増殖が活性化する特徴と、海水温が20度以上のときに活発に増殖する特徴をもっているため、海水温が高い夏の時期に食中毒が発生しやすいです。

分裂の速さも驚異的で、最適な環境の場合、腸炎ビブリオ菌は10分間に1回分裂します。

さらに、細菌はn回の分裂で2のn乗個に増殖するため、例えば1個の腸炎ビブリオ菌が4時間後には1500万個をゆうに超えます。

細菌の増殖速度は豊臣秀吉に仕えた曽呂利新左衛門の逸話を思い出します。

諸説ありますが、秀吉から何でも褒美を取らすと言われたときに、曽呂利新左衛門は米粒と将棋盤を用意します。
1マス目には米を一粒、2マス目には米を二粒、3マス目には米を四粒のように倍々で米粒を増やしていって、81マス目までの米が欲しいと申し出ました。
初めはその程度でいいのかと高をくくった秀吉ですが、よくよく考えるとあまりに膨大な量になってしまい、慌てて辞退したという逸話です。

この増殖力が、食中毒を引き起こす細菌の強さの一つになっています。

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