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2016年8月18日更新

片頭痛(偏頭痛)は起こる前に予防する!新しい片頭痛の「予防療法」とは?予防薬の種類・効果・副作用

辛い頭痛発作が起きてしまった時の治療の他に、最近では「頭痛を予防する」新しい治療が注目されています。予防的にお薬を飲むことで痛みを感じることなく、片頭痛をコントロールする方法とは?気になる費用や副作用など詳しくご紹介します。
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1.頭痛が起きる前に薬を飲んでコントロール。「予防療法」は片頭痛(偏頭痛)の新しい治療法。

片頭痛の「予防療法」は、痛みが起きていなくても、毎日薬を服薬することで、頭痛発作を起きないようにコントロールする新しい治療法です。

昨年秋に放送されたNHKの情報番組「ためしてガッテン」でも片頭痛の予防療法が紹介され、話題となりました。
ためしてガッテン| あ!薬を飲むその前に 頭痛を元から断つSP (NHK・2015年10月14日放送)

これまでの痛みの発作が起きた時に、頓服的に痛みを抑える対症療法の治療に対し、薬を前もって服用することで、もっと積極的に頭痛をコントロールしていくことが目的の治療法で、これからは片頭痛治療のスタンダードとして普及していくと思われます。

「予防療法」はどんな人に向いている?

予防療法は頭痛発作が頻繁に起きる患者さんに最も適した治療法です。

日本頭痛学会の「慢性頭痛診療ガイドライン2013」では以下のような場合、「予防療法」が有効であると定められています。

  • 月に2回以上の頭痛発作が起きている場合。
  • 一度の頭痛発作であっても症状が重く、日常生活を送るのに支障がある場合。
  • 急性期治療薬の量が過剰になってきている場合。

鎮痛剤やトリプタン系製剤などの急性期治療薬を使った従来からの痛みを抑える治療法は、現在でも有効ですが、頭痛が頻発している時に、毎回薬を使用していると、効果が薄れてきたリ、過剰摂取になる恐れがあります。

市販の鎮痛剤やトリプタン系製剤を長期間にわたって使用していると、今度は薬剤が原因で起こる「薬物乱用頭痛」になることが分かっており、救急搬送などの深刻なケースも多数起きています。

そのため、日常的に頭痛発作を抑えるための予防薬を飲むことによって、発作の発生を抑え、薬剤の摂り過ぎも防ぐ予防療法が勧められています。

片頭痛の鎮痛剤の使用やトリプタン系製剤などの急性期発作治療薬については以下の記事で詳しく説明しています。
鎮痛剤の過剰摂取には薬物依存の危険性も。片頭痛を治療する薬の種類・副作用・服用タイミング

(参考)一般社団法人 日本頭痛学会 慢性頭痛の診療ガイドライン2013

※2013年に発行された慢性頭痛の治療方法を示したガイドラインです。

2.気になる「予防治療」の内容とは?効果、期間、費用

片頭痛の予防薬は、継続して使うことで効果が期待できます。

使用を続けるうち、頭痛発作の回数や強さを減らすことが出来たり、発作時の急性治療薬が効くようになる、肩こりが減るなどのメリットがあり、症状の重い患者さんほど大きな改善が見られることが特徴です。

ガイドライン推奨の使用法とは?効果が出るまでに3ヶ月は試すことが必要。

服薬の回数や量は、使用する薬剤や患者さんの症状により異なりますが、毎日最低一回は薬を服用をすることになります。

また、これらの予防薬は効果を感じるまでに時間がかかるのが特徴で、最低3ヶ月程度は続ける必要があります。

1ヶ月~2ヶ月で服用を止めてしまうと、短期間で元に戻る例が多いことが分かっています。

最低3ヶ月以上という治療期間の長さが予防療法を行うデメリットとも言えるでしょう。

通常、治療期間は3ヶ月~6ヶ月程度で、治療を続けるうちに片頭痛の発作が月1~2回以下に減れば、片頭痛のコントロールが良好ということになります。

その良好な状態が2ヶ月以上続くようであれば、徐々に薬を減らしていくことをガイドラインでは推奨しています。

6ヶ月以上継続した場合は、一旦、予防薬を中止するか減薬、または他の薬剤に変更するなどして様子を見ます。

【体験談1】予防薬を飲み続けるうちに効果が。発作の回数も、症状も軽く!

先生に診察して頂いたところ、片頭痛という病名でした。 ただの頭痛だとずっと思って来ましたが…
そこで初めてこれが片頭痛だと知りました。

それから片頭痛の予防の薬を処方して頂き、
続けて飲んでいるうちに、
1ヶ月に 2回…
2ヶ月に 1回と、 だんだん頭痛の回数が少なくなり、また、頭痛の継続時間も短くなっていきました。
薬を飲むようになってから
ここ 3ヶ月間は全く片頭痛は起きていません。
このまま痛みが無くなると良いなと思っています。

ただの頭痛と思っていても
片頭痛かもしれないので
症状が辛いときは我慢せず病院を受診することをおすすめします。

(引用)片頭痛、我慢せず病院を受診して良かった!!

上記の方は、受診した医療機関で片頭痛と診断され、予防薬を飲み始めたところ、だんだんと発作の回数も減り、3ヶ月間全く発作が起こらないまでになりました。

ご自分に合った予防薬を見つけることで、劇的に生活の質を高めることができます。

(参考)一般社団法人 日本頭痛学会 慢性頭痛の診療ガイドライン2013

急性治療薬との併用で片頭痛のコントロール効果を高める!

予防薬は発作を起こりにくくしますが、完全になくなるわけではありません。

予防薬を続けていると発作が起きた時も軽いもので済む場合も多いですが、それでも痛みが起きてしまった時は、トリプタン系製剤などの急性期発作治療薬との併用もポイントになります。

普段の予防薬の服用と発作時の急性期発作治療薬の両方をうまく使っていくことで、より積極的な症状のコントロールを目指します。

費用もリーズナブル!だから治療を続けやすい。

1個(1錠)1,000円(3割負担で300円)近くするトリプタン系製剤に比べると、予防薬は数十円程度ととてもリーズナブルです。

高価なトリプタン系製剤の使う頻度を減らすためにも効果的です。

【体験談2】急性治療薬と予防薬をうまく使うことで、頭痛発作が改善、費用も抑えられた!

鎮痛剤の飲み過ぎは、頭痛を誘発するという説もあり、自己判断は危険だと思い、思い切って専門医にかかりました。
先生によると、片頭痛の特効薬はいくつかあるが、相性があるため効果があるかどうかは飲んで試してみるしかない、とのことでした。

ただ保険が効くものの1錠300円もする高額のため、少しずつ処方して様子を見てみましょう、とのことで最初は比較的優しめのレルパックスをいただきました。
残念ながら私には効果が弱く、次にゾーミッグを試しましたが、これもまたあまり効果を感じず、最終的にはマクサルトが一番自分には合っていたようで、飲んで1時間ほどで痛みが和らいだ時には嬉しかったです。ただこれも、飲むタイミングが遅かった時には効果がありませんでした。

合わせて、ミグシスという片頭痛の予防薬を紹介され、これを朝晩、生理前から飲み始めて生理時の片頭痛を予防しています。飲んだからといって100%片頭痛が予防できているわけではなく、ミグシスを飲んでいても残念ながら頭痛になる時がありますが、以前よりは激しい頭痛の頻度は少なくなったように思います。
季節の変わり目は頭痛が起きやすいので、毎朝ミグシスを飲むようにアドバイスされたので、時期によっては毎日飲んでいます。
ミグシスの方が薬代が安いし、予防薬で予防する方がお財布にも優しく、頭痛発作も防げることが多いので、生理など頭痛が起こるタイミングがわかっている人には、効果的だと思います。

(引用)市販薬が効かないひどい片頭痛。症状緩和はマクサルト、予防にはミグシスを服用。

上記の方は、自分に合った急性治療薬を試しながら、ミグシスという予防薬も併用されています。

薬剤の値段の安い予防薬を併用することで、コストを落としながら症状のコントロールに成功されました。

あの片頭痛の辛い痛みを感じなくて済むことは(軽減する)、何よりも患者さんにとってうれしいことであり、今後は予防治療が中心になっていくと思われます。

(参考)こばやし小児科脳神経外科クリニック トリプタンの副作用と問題点

※こちらは兵庫県にある専門医による頭痛外来を持つクリニックのサイトです。トリプタン製剤について詳しく書かれています。

3.予防薬の種類にはどんなものがある?保険の適用は?

ここまで予防薬の効果について説明してきましたが、実際、予防に使われる薬はどのようなものがあるのでしょうか?

現在、健康保険適用が認められている主な片頭痛の予防薬は以下の4種類です。

◆塩酸ロメリジン(製品名:テラナス、ミグシス)

カルシウム拮抗薬という高血圧の治療に使われる系統の薬剤です。
ロメリジンはその中でも片頭痛の予防を目的に開発されました。
テラナスは今後、生産中止の予定で、同じ薬効を持つミグシスへ移行されるものと思われます。
人によっては眠気、めまい、ふらつき、吐き気などの副作用が現れることがあります。

(参考)おくすり110番 ロメリジン塩酸塩

◆バルプロ酸ナトリウム(製品名:デパケン)

抗てんかん薬と呼ばれている系統の薬剤で神経細胞の興奮を鎮め、脳血管の収縮や拡張を抑えます。
眠気、ふらつき、頭痛、吐き気、不眠などの副作用が現れることがあります。

(参考)おくすり110番 バルプロ酸ナトリウム

◆プロプラノロール塩酸塩(製品名:インデラル)

β遮断薬と言われる、高血圧治療に使われる薬剤ですが片頭痛の予防にも効果があります。
だるい、めまい、手足の冷えやしびれ、眠気などの副作用が現れることがあります。

(参考)おくすり110番 プロプラノロール塩酸塩

◆アミトリプチリン塩酸塩(製品名:トリプタノール)

うつ病などの治療に使われる薬ですが、片頭痛にも影響が大きいセロトニンの代謝を改善する働きがあり、難治性の片頭痛の際に良く用いられます。
トリプタノールの保険適用は原則「うつ病」「夜尿症」のみですが、片頭痛の処方も、例外的に保険適用が認められています。
口が乾く、眠気、立ちくらみ、めまい、便秘などの副作用が起こることがあります。

(参考)おくすり110番 アミトリプチリン塩酸塩

以上の薬剤が主に予防療法に使われています。

これらのお薬の中から、それぞれの患者さんの症状に合わせて使用することで発作を予防していきます。

予防薬の副作用は?

上記の予防薬の種類の説明にもありますが、患者さんにより副作用が現れる場合があります。

軽い場合はだんだんと身体が慣れてくることもありますが、他の予防薬に変更することで副作用が改善されることもあります。

気になる症状が現れた場合は、自己判断でお薬を中断したりせず、主治医の先生の指示を仰ぎましょう。

妊娠中・授乳中の予防薬の使用はできる?

胎児や乳児への影響を考え、原則、妊娠中や授乳中の予防療法はすすめられていません。

基本的に妊娠中は女性ホルモンの関係で片頭痛は軽快することが多く、そもそも片頭痛の薬を使用することは少ないですが、どうしても必要な際は妊娠中でも使用可能とされているプロプラノール塩酸塩が処方されます。

しかしこの場合も、少なくとも出産の2週間前には使用を中止するようにします。

4.頭痛のない生活を目指すために。予防治療は長期戦で取り組む覚悟が必要!

治療をしても片頭痛治の効果が出ない時。それは「共存症」による影響かも?

せっかく片頭痛の治療をしているのに、なかなか改善が見られない……。

そんな時は、「共存症」が関係しているのかもしれません。

共存症とは1人の患者さんが2つ以上の病気を持っている時、それぞれの病気のことをさします。

共存する病気は遺伝的環境的にメカニズムが似ているものが多いようです。

共存症があると、お互いの病気が影響を及ぼし、相乗して症状を悪化させてしまったり、薬の効果がうまく得られないことがあります。

片頭痛の共存症の主なものは以下の通りです。

  • うつ病、パニック障害、双極性障害、不安障害などの精神疾患
  • てんかん(神経疾患)
  • アレルギー性疾患、喘息、自己免疫疾患など免疫疾患

その他、心疾患や高血圧、脳血管障害なども共存症になる場合があります。
これらの場合、それぞれの共存症にあった薬(抗うつ薬、抗てんかん薬、抗アレルギー薬など)を使うことで、片頭痛を予防することが出来ることがあります。

かかっている診療科のそれぞれに先生にお薬手帳を見せるなどして確認し、共存症を考慮に入れた薬の処方をお願いするようにしましょう。

これまで効果が見られなかった場合でも、薬剤を変えることで格段に予防効果が上がる場合があります。

うつ病が原因で頭痛に悩む方の体験談については、以下の記事で詳しく紹介しています。
うつ病で頭痛!?身体症状の異変をキャッチし早期治療に役立てる!うつ病体験談

(参考)スッきりんのバイバイ頭痛講座

※ファイザー株式会社運営の片頭痛に関する様々な役立つ情報が多数掲載されているホームページです。

(参考)慢性頭痛治療ガイドライン市民版

※慢性頭痛診療のガイドラインを一般の方にも分かりやすく解説したサイトです。

最終的には薬がなくても頭痛が起きないことが目標

片頭痛の予防療法は、頭痛発作による痛みがおきていなくても、とりあえず毎日飲み続ける必要があります。

予防の効果が現れるまでに時間がかかる場合や、副作用が起きて合うお薬が見つかるまでは、いくつかの薬を試さなければならないこともあります。

治療期間も半年以上と長期に渡るので、予防治療の目的と方法をよく理解していないと、続かなくなることもあります。

時間はかかっても、最終的には薬のいらない生活を目指すことをしっかりと自覚し、長い間苦しんできたあの片頭痛の痛みを無くすために、積極的に予防療法に取り組んでいきましょう。

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