1.感染力の強いおたふく風邪はワクチン接種で予防できる!
おたふく風邪ワクチンはなぜ必要なの?
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)はムンプスウイルスにより、耳下腺と言われる唾液を分泌する腺に炎症を起こしてしまう感染症で、毎年100~200万人がかかると言われています。
高熱が3日ほど続き、ピーク時には耳下腺(首、あごの周りなど)が2倍になるほど腫れあがり、食事や会話が出来ないほどの痛みが1週間程度続きます。
飛沫、接触により感染するため、密接な接触が多い幼稚園や学校で発症者が出ると感染が一気に広まってしまうことから、第二種学校伝染病にも指定されています。
特効薬もなく、発症すると対症療法のみで回復を待つしかないおたふく風邪ですが、現在ではインフルエンザと同じように、予防ワクチンが開発されています。
潜伏期間は2~3週間と長く、発症しても3割程度は不顕性感染(感染しても症状が出ない)であるため、気づかない間に感染し、ウイルスをばらまいてしまったりと、なかなか予防するのは難しいため、感染防止にはワクチン接種が有効だと考えられているのです。
ワクチンの接種率が上がれば、地域的な大流行も防ぐことができるため、最近では積極的に予防接種を勧める小児科のお医者さんも増えてきています。
(参考)国立感染症研究所 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)
おたふく風邪の症状・感染については以下の記事で詳しく説明しています。
2016年夏大流行!感染力が強い「おたふく風邪」の症状・経過・感染経路
腫れ始め前後5日が感染力ピーク!おたふく風邪の感染期間・予防法・体験談
予防接種の目的は「感染の予防」だけでなく「重症化を防ぐ」こと!
残念ながら、ワクチンを接種したからと言って100%おたふく風邪にならないわけではありません。
90%以上の確率で抗体が出来ると言われていますが、残り10%については免疫がうまくできず、後になって発症することがあります。
ですが、発症した場合も症状は軽く、「重症化」は防ぐことが出来ます。
おたふく風邪予防接種の目的は、「感染を予防すること」だと思われがちですが、それだけではなく、「万一感染した時の重症化を防ぐこと」でもあるのです。
なかには予防接種をしてもだんだんワクチンの効果がなくなってくるなら、実際にかかったほうが確実な終生免疫になって良いのではないのかと思われる方もいらっしゃるようです。
しかし、発症している間は、顔がひどく腫れ、痛みや高熱などの辛い症状に1~2週間程度は苦しむことになりますし、まれではありますが、「髄膜炎」や「ムンプス難聴」といった命にかかわる合併症や一生後遺症に苦しむというような重篤なケースになってしまう恐れがあります。
ワクチンを受けていても、副反応(副作用)は0ではありませんが、未接種でおたふく風邪を発症した場合に起きる合併症に比べると、圧倒的に数は少なく、軽症で済む場合がほとんどのため、ワクチン接種が有効であると考えられています。
【体験談】腫れが引くのに1週間…。罹ると終生免疫が付くとは言うが、痛がってる様子はかわいそうだった!
完全に腫れがひいたのは1週間くらい経ってからでした。おたふく風邪は特効薬がなく対処療法のみだそうで、痛い時はカロナールを飲ませたり、患部を冷やしていました。小さい時にかかった方がいいとは言いますが、腫れて痛がっている時は本当に可哀想でした。
(引用)4歳の娘がおたふく風邪に!完全に腫れが引くまでほぼ1週間・・・
上記のように小さなお子さんが、辛い症状に苦しむ姿を見るのは親御さんにとってとても辛いものです。
有効なワクチンがある現在、防げる病気は防いであげるほうが良いという考え方が主流になってきています。
(参考)国立感染症研究所 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)
2.おたふく風邪ワクチンってどんなもの?
おたふく風邪ワクチンは「生ワクチン」と言われるものです。
生きたウイルスを弱毒化したもので、ワクチンを注射することで体内に抗体を作ります。
子供は2回接種が標準。1歳以降ならば接種可能。
おたふく風邪ワクチンは1回でも効果はありますが、お子さんの場合、1回だけだと有効性が落ちやすいため、2回の接種によりしっかりと免疫を付けることが日本小児科学会によって推奨されています。
ワクチンは1歳のお誕生日以降であれば接種することができます。
1回目を受けてから4週間あければ2回目の接種は可能ですが、きちんと免疫を付けるために、まず集団生活が始まる前の1歳過ぎたら1回目を接種し、5歳前後の就学前に2回目の接種を行うのというのが推奨されています。
他の定期接種のワクチンとの間隔や同時接種を行うかなどの接種スケジュールは、かかりつけの小児科の先生に相談をして進めていきましょう。
【体験談】幼稚園流行時に4歳娘が感染!予防接種していなかったため、症状がひどかった。
4歳の娘が、幼稚園で流行した際にかかりました。
予防接種をしていなかったので、酷かったです。
はじめに左、続いて右も腫れてきて、痛いよ~と言っていました。
お薬も効かないので、保冷剤で冷やしながら安静にしているしかなく、かわいそうでした。
入園前に予防接種していませんでした。本当に申し訳なかったです。稀に耳に後遺症が残ることがあるとは知らず、予防接種より、罹った方がしっかり免疫つくかな。。お友達も結構予防接種していない人もいるし、小学校に入るまでに罹らなかったら予防接種受けようかな・・等と勝手に判断してしまい、いざ罹ってみると予想以上に痛がり、
大事な幼稚園の発表会も欠席しなければならず悔やまれました。やっぱり予防接種で防げるもの、万一かかっても酷くならないようにうけられる予防接種はしっかりうけるべきだと思いました。
水疱瘡の予防接種も受けていなかったのですが、おたふくかぜが治ったあと、うけに行きました。
その後、水疱瘡にかかりましたが、予防接種のおかげか、ほんの2・3個水泡が出来ただけで済みました。自費での接種になると思いますが、できるだけ幼稚園に入る前に2回接種をおすすめしたいです。
最近、おたふく風邪は季節に関係なく流行するようになってきていて、いつ流行するか分かりません。
突然の発症で楽しみにしていたイベントなどに出られなくなってしまうのはとても残念ですね。
就園、就学に向けて計画を立てて予防接種をしておくと安心です。
(参考)ワクチンで子どもを守る! おたふくかぜワクチン
※ワクチンで予防できる感染症(VPD)から子供たちを守ろうという目的で運営されているサイトです。
気になる費用は?自治体の補助の有無を調べよう!
現在のおたふく風邪ワクチンは、定期接種ではなく、任意接種(希望者だけが受ける)のため自費となっています。
1回の接種につき、5,000円~7,000円程度と決して安い金額ではありません。
これが、おたふく風邪ワクチンの接種率が他の予防接種に比べて低くなっている要因の一つにもなっていますが、自治体によっては一部費用を助成する制度があるところもあります。
ただし、対象となる年齢などは、それぞれの自治体によって異なるので、対象年齢が過ぎてしまって利用できなかったということがないように早めにお住いの自治体の詳細を調べておくようにしましょう。
3.やっぱり心配!接種後の副反応(副作用)。どんな症状がおきる?
アナフィラキシーなど接種直後のアレルギー反応に注意。
おたふく風邪以外の予防接種後と同じですが、接種後、30分はアレルギー反応が起きていないか注意する必要があります。
発熱、顔の腫れ、咳、蕁麻疹、などの症状や、まれに急なけいれん、意識障害などのアナフィラキシーショックが起きることがありますので、しっかりとお子さんの様子を観察して、何か気になる時はすぐにお医者さんに確認をとるようにしましょう。
接種後の異常が特になかったとしても、接種当日は激しい運動は避ける、お風呂は1時間以上空ける、注射部位をこすらないなどに気を付けて過ごしましょう。
ワクチン接種による合併症は?1,000~2,000人に1人程度の無菌性髄膜炎発症の可能性が。
おたふく風邪ワクチンのウイルスは弱毒化されていますが、完全な無毒ではないため、副反応(副作用)もゼロではありません。
接種後、2週間くらいの間に発熱したり、耳下腺が腫れるなどの副反応(副作用)が起こることがあります。
ほとんどが悪化することはなく、自然に治りますが、まれに「無菌性髄膜炎」を発症することがあります。
発熱や嘔吐、機嫌が悪い症状が続くようなら、小児科、内科のかかりつけの病院を受診しましょう。
無菌性髄膜炎はワクチン未接種で自然感染した場合は100人に1人程度で発生すると言われています。
未接種の場合に比べて、ワクチン接種後の発生率は1,000~2,000人に1人程度と低く、万一、発症しても軽く済むことが多いようです。
また同じく、ごくまれに「脳炎」を起こすことも分かってきましたが、これも自然感染のおたふく風邪の場合の脳炎発生率(毎年30人程度)に比べると低い確率で、症状も軽く済むことが分かっています。
4.おたふく風邪ワクチンは大人も必要?大人の感染は重症化しやすい!
【体験談】子供からの感染!子供の頃に罹ってなかったため発症。
子ども二人が相次いでおたふくかぜにかかりました。
7歳と3歳、特に3歳は片方の耳しか腫れず、とても軽いものでした。
無事回復して安心していたら、なんと私がかかってしまいました。
なぜかものが飲み込みいくいなあと感じていたら、身体がどんどん
だるくなって、急激に眠気が。
測ってみると38.6度の熱でした。
もしかして!と思い病院を受診すると、おたふくかぜとの診断でした。
母に確認してみましたが、確かに私が子どもの頃おたふくにかかったかどうか
記憶が定かではないとのことでした。私自身も記憶にないので、
おそらくかかって居なかったのではないでしょうか。
大人の場合、良くあるのが上記の方ようにお子さんの看病によって感染し、発症してしまうケースです。
大人が感染すると、子供よりも症状がひどく、重症化する恐れが高まります。
40度以上の高熱が続き回復が遅れたり、男性の場合、2~3割ほどの確率で生殖器に障害がおき、精巣炎(睾丸炎)などを引き起こし、無精子症(男性不妊)の原因となる事があります。
女性の場合も7%程が卵巣炎になる確率があり、こちらは直接不妊の原因にはなりませんが、辛い下腹部痛などの痛みを伴います。
(参考)国立感染症研究所 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)
大人でも発症の恐れはある。罹患していない場合はワクチンを。まずは抗体の有無を調べよう!
いつ流行りだすか分からないおたふく風邪。
子供の頃に罹患していない大人は、子供と同じく内科や耳鼻咽喉科でのワクチン接種で予防するようにしましょう。
大人は1回のワクチンで効果があります。
また、子供の頃に罹ったかどうかがはっきりしない場合や、過去に受けたワクチンの抗体が残っているか知りたい時は採血による抗体検査で確認できます。
万一、すでに抗体があるのにワクチン接種をしたからといって副反応(副作用)が起きる心配はほとんどありませんが、まずは抗体検査を行い、抗体がないことが判明した時にはワクチン接種をするというのが一番おすすめの方法です。
妊娠希望の女性は早めに抗体チェックを。パートナーや同居家族も接種の協力を!!
おたふく風邪は、妊娠中に発症しても胎児の先天性奇形には影響はないと言われていますが、妊娠初期に発症すると、流産の可能性が30%程度高まるので注意が必要です。
さらに妊娠中は薬も自由に飲めず、辛い症状を和らげる対症療法が思うように行えないので、まずは感染しないように気を付けなければなりません。
ですが妊娠中は、他のワクチンと同様、おたふく風邪ワクチンも受けることが出来ません。
将来、妊娠を考えている女性で抗体を持っていない場合は、早めにワクチン接種を受け、接種後3ヵ月は妊娠を避けるようにしましょう。
また、パートナーや同居家族で抗体を持っていない人がいる場合も、万一のことを考え、早めに接種してもらうようにしましょう。
5.おたふく風邪は防げる病気(VPD)。後から後悔しないために。
世界中にはワクチンがなく、未だに感染を防げない病気はたくさんありますが、おたふく風邪は数少ないワクチンで防げる病気=VPD(Vaccine Preventable Diseases)の一つです。
アメリカなどの欧米諸国では定期接種(公費で全児童に行われる)に組み込まれ、すでにおたふく風邪はほぼ絶滅状態となっています。
日本では任意接種(希望者だけが行う)だということもありますが、せっかくワクチンがあるのに受けなかったことで感染して辛い症状に苦しんだり、ムンプス難聴などの重篤な後遺症が残る恐れのある感染症を防がない事はとてももったいないことだと言えるのです。
(参考)KNOW VPD! VPDを知って、子どもを守ろう。
感染後のワクチンでは効果がない!前もって準備をしておくことが大切。
おたふく風邪は、これまでお伝えしてきた通り、流行に気付きにくい病気です。
まだ流行に至っていない時期に、おたふく風邪が疑われる場合、その診断にはアミラーゼ(消化酵素)の検査や血液検査などを行って判定する必要があります。
血液検査は、急性期と回復期の2回の採血によるペア血清検査で結果が出るまで1~2週間かかり、結果が出る頃には治ってしまっていることも多く、その間にさらにウイルス感染は拡大してしまっていることも多くあります。
ワクチンを接種してから抗体が出来るまで2週間程度かかるので、流行が確認されてからワクチン接種をしても間に合いません。
「あの時ワクチンさえ接種していれば……。」と後から後悔しないためにも、その効果や副作用など、正しい情報を得ることが大切です。
ワクチン接種の内容を良く理解し、計画的にワクチンを受けることをおすすめします。
(参考)耳鼻咽喉科 アレルギー科 清水おかべクリニック
※こちらのページはおたふく風邪の診断方法について分かりやすく説明されています。